Img_0338 正確には電流→電圧変換回路で、その基本形は反転形OPアンプ回路の入力抵抗を割愛したものである。回路の形はシンプルだが、実用品を作るとなると結構難しい。
実用的には、微小電流(100fA程度)を電圧に変換するか、ビデオ帯域近く以上の帯域で高速応答させる用途に使うこともある。電子あるいは光センサとともに使う場合には、過渡応答のチューニングが必要なこともある。
OPアンプの入力段は低周波では仮想短絡が成り立つので、2端子電流源の電流を短絡状態で測定していることになる。
多くの教科書では、反転増幅器からOPアンプ回路を紹介するが、電流・電圧変換回路はもっともシンプルな形をもち、OPアンプ回路を理解する上で重要な概念を含む。
しかし、この回路はOPアンプ回路の本質的な理解を要求されるので、丸暗記する回路ではないことも確かである。
アナログエンジニアはこの回路を電流の対数増幅器の基礎と位置付けている。電流対数増幅器はいくつかの回路形式があるが、実用になっているものは電流増幅器形式で、しかも、変換係数の中に物理定数を含む。
リニアにしろ、対数増幅にしろ、多くの精密な光/電子/X線などの電流の検出には、その目的に特化した電流増幅器が使われている。分析機器の装置性能の鍵を握る回路でもある。
私の現役で活動できる期間はあとどのくらいあるのだろうか?それは、まだ見えていない。
多くのセンサ/アクチュエータと精密アナログ回路を扱えるエンジニアは多くない。現在の電子化された機器の中で研究生活を送るのであれば、この分野に無知では居れない筈だろう。多くの事象がセンサ/センサエレクトロニクスに支えられて観測されているのである。
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高電圧回路といっても電子回路の範疇では数10kV、数mA以下の領域である。10数kVを超える付近から、絶縁が困難になる。
固体絶縁ならもっと低い電圧から難度が高くなる。電子回路としての高電圧回路は電子回路であるが故に、電界集中が少ない形状の部品を使うことがかなり難しい。
液体絶縁なら強制放電させて、その模様を観測することもやってやれなくはない。もちろん、一旦放電させれば、回路の損傷は伴う。
高電圧回路の昇圧回路にはコッククロフトウォルトン回路(CW回路)およびその変形回路をを主として使うが、高電圧のハイサイド上での回路の保護はかなりの困難さがある。実験がやりにくいとともに、対策の手法は部品の能力の限界まで使わざるを得ない。しかも、手掛かりは、強制放電による部品損傷個所だけであることが多い。
放電の頻度は、設計する側から見ると、統計量に近い。電圧に対する加速係数が多少なりとも判明しているオイル絶縁の場合は、最初から品質を作り込める。しかし、固体絶縁となると、私の場合には、実時間で実績を重ねて弱点を補う形を取る。固体絶縁には部分放電という、いわば固体中の雷があり、進行性の損傷モードがある。部分放電は充填剤や固体絶縁の不均一さによっても生じる。高電圧用セラミックコンデンサには、「交流用」コンデンサもあるから、その道の方にはよく知られれている故障モードの一つだろう。
強電の難しさと電子回路の繊細さを併せ持つ回路:それが電子回路における高電圧回路であろう。
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Img_0318 アナログ電子回路において受動部品の選定は重要な設計作業のひとつである。とくにセンサ絡みの回路では、その精度を左右する。
工業、理化学機器用途では、抵抗Rの第一選択肢は金属皮膜抵抗であるが、アナログエンジニアは重要箇所では金属箔抵抗も使用する。V社のものが有名である。金属箔抵抗を使いこなせなければ、精密アナログ回路の真の設計者とは言えないのではないだろうか。
金属箔抵抗は0.01%、10ppm/°Cよりも良好な特性をもち、高価、かつ入手性も悪い。汎用基準抵抗としても使える。
抵抗精度、温度係数のマッチングはさらに良好である。わたしは、自宅でも、数ppm/°C程度まではある方法で実測できる。
受動部品の中でもっとも信頼のおける部品はRであるが、その中で王様的ポジションを占める金属箔抵抗の使いこなしは、使い手/設計者の意志を厳しく問う。
現在は、電気信号を出力するセンサの時代でもある。センサの原理とその校正方法を知ることなく自然界と会話すべきではないだろう。センサを知らない科学者/研究者は数多く存在する。昨今の社会的話題で強く感じる一部の科学者と称する人たちの不毛の議論の遠因には、センサに対する無知に端を発しているような気がしてならない。
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Img_0320 写真は、とある機器に組み込まれていたスイッチング電源。右側の薄黄色のパルストランスがその設計状態を左右する。SW電源の心臓部であるから、そのトランスの定数が一般に明かされることはまずないだろう。
アナログエンジニアはSW波形をみるだけで、およその設計状態とトランスの定数を概算できる。
非常用電源に使われるUPSはもっと複雑である。
絶縁形SW電源は、L、C、R可変でしかもその安定化制御には一次遅れ系が使われることが多いので、負荷状態に依存して過渡応答が異なる。
電源装置の設計は、回路システムの全電力を扱うので設計そのものが難しい上、コストもまたかなり低い。
リニアアンプを「電源」と呼ぶ場合もある。このような呼び方は理化学機器においてとくに多くみられる。このような呼び名が付される場合には、低レベルの設計しかなされていない場合も多く認められる。
ハイテク製品=高度な電子回路を使った製品とは限らない。
おおくのプラント用とくに屋外用センサに付随する信号処理回路は、地味な仕様であるがそれなりの作りになっている。それが産業用途の電子回路の世界である。電源装置は常に付随し、システムの信頼性を大く、左右する。現代電子システムのライフライン、それが電源装置である。
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Img_0311 アナログ回路の信頼性は一般にデジタル回路と規模が同程度なら、その信頼性は一桁以上低いものとされる。その理由は、デジタル回路に比べて故障/異常動作する条件が厳しいことも一要因である。自然界と対話する以上、故障判定基準の厳しさは避けられないだろう。
現在のデジタル回路では、半導体プロセスを開発する人、その特性を測定する人、ゲートレベルでの設計者、機能ブロックでの設計者、回路システムの設計者、そのシステムを動かすためのソフト設計者、営業など会社全体でひとつのチ-ムを構成していると言えよう。
この設計システムのおかげで、高い信頼性を構築していると言って過言ではないだろう。
デジタル回路:一般の設計者にとって、いまや「回路」技術といえる状況ではないだろうが、このシステムのおかげで安定した故障率を担保できる。
アナログエンジニアは、個別部品を用い自然界と対話する回路設計する。産業用、理化学機器用、自動車用、原子力用および各種電源回路を得意とする。
これらの回路は、自然界と対話するシステムが必須とするものばかりである。
アナログ回路においては、さまざまな故障モードがあるが、それらを熟知し設計にその故障モードを反映しているなら、回路が小規模であるが故に信頼性を大きく向上できる。
優秀なアナログ回路設計なくして、理化学機器をふくむ優秀な計測システムあり得ない。その理解なくして、優秀な研究もまたあり得ないだろう。
ゆえに私はアナログへの道を歩んだ。そして、その道をいまも歩いている。
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「電源回路が設計できれば回路屋として一人前」とよく言われる。なぜなら、電子回路の多くの設計課題を含んだ回路であり、低コスト、高信頼性が必要な課題である。そして、電子回路システムの命運を握る回路でもある。
アナログエンジニアは2度にわたり、少ない文献を頼りに独学で電源回路の設計技術を取得して行った。
電源回路は電子装置の総ての電力を扱うので、そのサイズは装置全体の大きさの何割かを占める回路部分である。負荷は大きく変動するので、広いダイナミックレンジが必要で多くの場合、非線形問題となる。
トランスを用いた整流・コンデンサ平滑回路は定性的には簡単であるが、定量的には解析的にその出力電圧すら求めることは容易ではない。トランスの取引条件まで知る必要がある。部分的には、得られない仕様項目を含む。
そして、その後段には安定化電源回路システムが多くの場合付随する。これもまた、難しい課題を含む。
通常、安定化電源回路は2種類に大別される。直列安定化電源とスイッチング電源である。
スイッチング電源に関する本の先がけは、おそらく、「スイッチングレギュレータ」、嶋村弘則著、産報出版(1979.8)ではないだろうか。多分、著者のネミックラムダ社の時代の物。よく読めば、多くの設計課題、各種の設計上の手法も提示されている。
スイッチング電源は、NASAの人工衛星の電源装置を小型、軽量する目的で開発されたものと認識しているが、原典は私は知らない。
スイッチング電源は基本的に、磁性体のコア特性を理解したうえでパルストランスを設計しなければならない。起動上の課題やEMCの問題もあるとだけコメントしておこう。
電源装置は負荷の短絡を当然想定するので、その保護はふつう行う。
電源装置が大きいという技術者、科学者は、現実の電子システムの本質を知らない2流以下のレベルにとどまっている筈だろう。
そして、強電関係の電源システムはさらに大規模かつ想定する事象が多くなる。そのサイズ故に、輸送上の問題も存在する。今の時代、電源システムの理解なくして、科学、電子技術を論じることは困難であろう。本格的な技術、科学議論においては、分野を問わず、電源システムの理解が無ければ、机上の空論となりかねない。
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この記事は、同年齢、理科系の猪瀬直樹東京都副知事への、アナログエンジニアからのささやかなメッセージでもある。回路設計では常に決断を走りながらやらねばならない。
Photo_2 写真は今月の3/23日、3/24に書店に並ぶ予定の私の最新著書。
著者贈呈本は、通常、発売前に送付されてくる。
日刊工業新聞社刊。
ISBN 978-4-526-0858-4。発行日:2012年3月22日。
まえがきの最後に、少しフォントサイズを落として、
「あらゆるアナログ技術の先駆者、エンジニア、学徒の幸せ祈って」の文言を入れた。
理論的背景に高度の数学を必要とするアクティブフィルタは、いくつかの詳細な成本がある上、実務では今は使われることが少ないので割愛した。
その代わり、システムの要となる電源回路について、詳しく述べた。
昨日、通読し、誤植等をチェックを終えた。
この本は、高校物理、高校数学の復習をしながら、一気に実務レベルの設計まで読者を引き上げる目的で書いた本である。
良書が少ないと言われるアナログ電子回路の教本として、企業の新人および大学教科書としての役割を果たす事を目標にしている。
そして、実務とかけ離れた多くの大学教科書の旧来の記述体裁、特に、hパラメータを主体とするトランジスタや理想オペアンプでの解析などの弱点を補う、アナログエンジニア流の答えでもある。
Introduction to Basic Design and Analysis of Analog Circuit by the Analog Engineer
の英文題名もカバーに表記されている。THE の意味は、センサ、計測器 等々、工業計測と、理化学機器、医用機器 自動車用のセンサ および 各種アクチュエータ、光学も知るアナログ回路屋からのメッセージの意味を込めた。
著者として、この本が、広く他の本と比較の上で、使われることを期待している。
いま、アナログ技術者の質的、量的な減少とともに、教授者も少なくなっている。そして、アナログ技術を評価できる経営者、管理者も極めて少ない。東アジアの国々はもっと謙虚で、知識欲、そして国の効果的な政策と相まって、着実に力を伸ばしている。
もはや、アナログ技術者にとって、国境、言葉の壁はない。そういう激動の時代が現在である。 著者。
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バイポーラ・トランジスタの入力抵抗rは自分で計算すべきものだが、その計算方法を記載した成書はかなり少ない。
また、半導体データシートにhieなどhパラメータが記載されている品種は2SC1815以外視たことがない。しかも、そのデータは各パラメータの代表的数値を表にしているので、パラメータ間には矛盾がある。
そして、ハイブリッドパラメータはエミッタフォロワの機能を表現しにくい、あるいは、表現できない。
入力抵抗rは、基本的にVT/IB VT:熱電圧、 IB:ベース電流 でほぼ表現できる。また、そのように計算すべき値だとアナログエンジニアは考えている。
エミッタ接地増幅器ではアーリー効果を考慮しないと、電圧利得を数%程度の誤差で計算できないが、これを考慮せず、1%精度で求める問題が多く出題される。
大学教科書の多くはhパラメータを使う計算法を使っているが、エミッタ接地回路のような基本的な回路を実際に作り、実測と比較しないで記述しているのではないかとの疑念は消えない。
電子回路本のルーツは、真空管時代からトランジスタの過渡期に著作された東大・東工大の先生のものが、伝統的スタイルになっているように思う。
しかし、実務では、そのような手法はふつう使わない。
大学の回路教育と実務のかい離は消えないまま、ますますアナログ回路の技術者の層が薄くなってきているようだ。
詳述したギャップを独力で埋めることは厳しいものがある。集積回路の設計あるいは回路シミュレータモデルの中身に立ちいらないと、実用レベルの設計はできないだろう。
そして、科学技術の源である、計測技術もまた、ブラックボックス化しつつある。
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Img 図は電流増幅器の基本形。反転増幅器の入力側の抵抗のない形と同じ。
入出力関係式は Vo=R1*I である。
図の矢印を辿れば負帰還が掛ることはすぐ判る。
この回路、点aが仮想短絡になるので、電流源Iの短絡電流を測定していることになる。
アナログエンジニアが経験した最小の電流は実験室レベルでは10fA(10^-15A)、帯域は極めて絞った。もちろん、それなりのオペアンプと実装は必要だ。
信号源の電流源は、例えば、フォトセンサだとかなりの寄生容量を伴うので、短絡電流を測定しなければ、極端に周波数特性が低下するとともに、ステップ応答が次第に振動的になる。
高速オペアンプを使えば、ビデオ帯域をもつ微小電流を、低インピーダンス、高電圧レベルまで一気に増幅することが出来る。
このような電流増幅器は、案外計測、特に理化学機器のフロントエンドに多く使われている。しかし、この回路形式を紹介している本は多くない。
図は自著の原稿の一部である。
本は、
http://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00001210
で、各章末ごとに猫のイラストがある。
オペアンプの本は多数あるが、この本は、アナログエンジニアが、オペアンプ回路の基本から、設計までを伝えるため、敢えて激戦分野であるオペアンプの本に挑戦して著作したものである。
私の年齢になると、伝えるべきことは世に公開することも、その役割だろう。
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Img_0287 写真はアナログ・デバイセズ著、電子回路研究会 訳、CQ出版社刊のOPアンプ大全、全5巻。
内部回路から応用まで、網羅している、おそらくは日本語ではもっとも詳しいOPアンプの本。
各巻3000円-(税別)。
これらの本はCQ出版社の記念事業の一環として邦訳されたと聞く。
本のURLは
http://shop.cqpub.co.jp/hanbai/books/36/36101.htm
http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/36/36111.htm
CQ出版社の現社長GさんはT社時代から、CQ出版の投稿者。私は、その上司T氏も知っている。この本が出版された時代のトラ技編集長、現取締役のTさんとも面識がある。Tの文字は総て別の組織および氏名。
CQ出版社の概要は、
http://www.cqpub.co.jp/cqpub/cqpub/aboutcq.htm
写真の本を読めば、基本的に、オペアンプ自体の設計手法まで理解できる。読みごたえはある。
英語の原典としては、他に
OPERATIONAL AMPLIFIERS (Dsign and Applications),J.G.GRAEME G.ETOBBY
集積回路の中身に立ち入るなら、
BIPOLAR AND MOS ANALOG INTEGRATED CIRCUIT DESIGN、 A.B.GREBENEが有力。
アナログエンジニアはこれらの本を参考にして、勉強した。
本格的に、勉強するためには、英語の原典も読みたいものだ。
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自著の近刊予告:アナログエンジニアによる「アナログ電子回路の基礎と入門!これ1冊」、3/23発売予定、日刊工業新聞社。
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