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多くの電子回路教本で記載される負荷線を使った説明/図解法をアナログエンジニアは実務で使った経験は皆無である。
負荷線は1石エミッタ接地増幅器の説明において、トランジスタのコレクタ電圧VCE-コレクタ電流Icの図上に電源電圧Vcc-IcRL(RL:コレクタ抵抗)の直線を重ね合わせて、ベース電流IBをサブパラメータとしたVCE-Ic曲線群との交点から、IBを求めることが多い。
少し親切なものでは、VBE-IB曲線が書き添えられる。この場合は、ベース電圧ΔVBEからΔIBを求め、VCE-IC曲線上で対応するIBから増幅する説明になっているものが多い。
しかし、1石エミッタ接地増幅器の最大関心事はその増幅率で、Vccが10V付近で、その1/2にVCEのバイアスを掛けると、電圧増幅率は-RL・Ic/VT程度(VTは熱電圧=常温で26mV)となり、100数10倍になる。図の表示能力の限界から、現実に使える図解方法にはならない。
エミッタ抵抗が入れば、負荷線を描くのは厄介である。オームの法則とキルヒホッフの法則を文字式で表現できなければ、応用が効かない。実務では、負荷線を使う事は稀であろう。
電源電圧がVccで負荷RLにICが流れれば、VCE=VCC-RL・Icになるだけのことである。能動領域ではIcはhFEを介しIB・hFEとなるが、図はアーリー効果が入ったVCE-Ic曲線がほとんどであるから、図はhFEを定数と考えたものではないにも拘わらず、説明の流れとしてはhFEを定数と考えていることになる。
そして、増幅率A=ΔVo/ΔVi=-hFE・RL/Riの結果が導かれるが、実際にはRi=VT/IBで表現されるから、ほぼIBの逆数で動作条件に強く依存する。Riの求め方に関する記述は、負荷線を使った説明には普通出てこない。
なぜ、実務で使わない、使えない負荷線に固執して一見簡単そうに見えて表現力のない説明法を使うのか。日本では伝統的であるが、良心的な書物や、洋書の専門書には出てこない。このような説明の不親切さは工学的センスを育てるものではないだろう。
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