仮想短絡の成立する条件は,着目する帯域で差動増幅器の利得が十分にあって,かつ負帰還が正常にかかり,オフセット電圧などを考慮しない場合にのみ成立する。
出力有限,電圧利得無限大では,負帰還が正常にかかれば,オペアンプは±入力端子の電圧差を0にするように出力を制御する。
当然,扱う周波数が高くなれば,オペアンプのGB積から利得は落ちてくるので,高周波では仮想短絡は次第に成立しなくなる。その場合には,90度位相ずれのある,有限利得アンプとして扱う必要がある。
しかし,私は少し複雑なオペアンプ回路を仮想短絡の概念を使って今でも解く。
おもに,周辺回路の受動素子のばらつきの定量的検討を行うためである。DC的に必要な素子精度は厳密に計算できる。受動素子による温度影響の形態も定量的に検討できる。
アナログエンジニアが仮想短絡による解析を行うのは,ひとえに計算量の縮減が必要であるからである。やればできないことはないが,高次連立方程式を解き見通しを得るにはかなりしんどい作業である。
したがって,周辺回路の設計上必要な素子性能を決める際には,オペアンプの2次特性を同時に考慮して計算することはほとんどない。またやらない。
あくまで,入出力関係の基本解析にこの概念を用いる。
DCでは,抵抗測定精度が高ければ,10^-5程度まで理論と実際が合致する。
しかし,オペアンプでたとえば20kHzを扱うなら,有限利得の問題やオペアンプの大振幅動作の問題に直面する。
仮想短絡の概念は,オペアンプの品種を選択するための指針は何も与えないが,その分,周辺回路のばらつきの影響などを詳細に解析できる。
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