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飽和形磁気マルチバイブレータの多くは1kHz前後で設計され、一般には高効率化や高周波向けには不向きとされている。
1970年代、トランジスタが高価であった頃、多数のフローティング補助電源を作成し能動素子を減らす目的で重宝がられた回路方式である。
その多くは角型ヒステリシスコアを用い、急峻な飽和特性により電流依存性の少ない飽和磁束密度Bmが得られる。保持力Hは小さい材料を使用する。
2石式の回路構成はいくつかあるが、ベース電流制限によるコレクタ電流の増加が維持できなくなった時に転流する。コアの磁束密度Bの時間変化と電源電圧Vpの関係は
Vp=nSdB/dt n:1次コイル巻き数、S:コア断面積、B:磁束密度 である。
この式を変形し
dt=nSdB/Vp
半周期はBが-Bmから+Bmに変化する時間だから
T/2=∫dt=∫(nS/Vp)dB=2nSBm/Vp (積分区間は-BmからBmなのでBに関して積分可能。)
したがって、発振周波数 f=Vp/(4nSBm)となる。
なお、コレクタ電流波形はB-H曲線を反映し、時間軸がB、電流軸がHに対応する。
この解析方法はSW電源のトランスにも応用できる。(簡単そうに見えるが、実は足掛け3年かかって私はこの手法に到達した)
アナログエンジニアは飽和形磁気マルチを高透磁箔トロイダルコアを使用し特殊な巻き線構造により、一気に30kHz発振でかつ1次-2次間容量約2pFを実現した。
飽和形磁気マルチバイブレータは、決して高周波発振に不向きではないのだ。うまくコアと巻き線構造を工夫すれば、実験室的には120kHzでも発振した。(出力約1W設計)
また、飽和形磁気マルチを全波整流すると、転流時間は相対的に短いので、小容量の平滑コンデンサでも十分なDC出力を2次側に得られる点もメリットである。
エンジニアたるもの、高周波発振に不向きなどと、安易に否定形の表現を使うべきではないのだ。
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