ひとたびIC化されたオペアンプの出力電圧範囲・電流出力能力を超えた能力のパワーオペアンプが必要になると,自作するかベンチャー企業に丸投げするかの選択を迫られる。
普段はオペアンプの内部回路設計に立ち入ることは少ないが,いざ,自分(自社)で仕様を決めて作ることになると結構大変なのである。
ブラックボックス化して考え設計していた部分を,いきなり,その内部回路を考慮して設計することになる。このギャップは非常に大きい。
汎用性のある仕様なら,混成集積回路=ハイブリッドICとして入手可能なこともある。しかし,自前で作る必要がある場合には,なにそれを駆動できるアンプ(電源)とだけ指示されて製作する。
これが,若手,ベテランを問わず厳しいのである。
トランジスタ・ダイオードレベルから回路構成を組み上げていくのだが,パワー回路なので熱設計と過負荷保護,過入力時の挙動などさまざまな課題が噴出する。
そして数ヵ月後,パワーオペアンプの自作が首尾よく成功しても評価されることは少ない。
かくして,パワーオペアンプの技術に取り組むことの個人としてのメリットは少なくなり,設計技術は伝承できなくなる。この手のベンチャー企業の基本設計ができる方も老齢化していく。技術のフロンティアでないので学術あるいは大学の世界からの情報発信も非常に少ない。
電子回路のIC化とともに,集積回路プロセスの限界を超えた回路設計はいまや,日本では絶滅危惧技術となりつつある。
これで日本の電子回路技術は大丈夫なのか。憂えるアナログエンジニアである。
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