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オペアンプは扱えるが,トランジスタはどうもという回路屋さんが最近増えている。
個別部品で組む電子回路では,半導体デバイスの2次的特性を考慮して最終性能を予測しなければならないが,オペアンプの方が前提となる知識は少なくて済む。
オペアンプなら,オフセット電圧,バイアス電流,利得帯域幅積,スリューレートなどを知っているなら,キルヒホッフの法則と複素数の計算ができれば,回路の原理動作と性能予測まで可能である。
しかし,トランジスタの中では比較的扱いやすいバイポーラトランジスタ回路でも,数多くの回路形式があり,しかもバイポーラトランジスタの寄生素子と非線形性を考えると,解き方に工夫が必要であるとともに,計算量も多い。対数,指数関数は扱えて当然であり,小規模な回路でも連立方程式の次数が高くなる。
現在のトランジスタを含む実用回路では,基本現象,たとえばコレクタ-ベース間に存在する容量Cobの周波数特性に及ぼす効果を定量的に扱おうとするなら,数ページの計算が必要となるだろう,Cobはコレクタ電圧依存性のある容量なので,出力状態によって,Cobの値も変化する。
エミッタ接地回路の入力抵抗r(hie)だけを考えても,ベース電流IBの関数でr=VT/IB(VT:熱電圧,室温で約26mV,VT=kT/q,k:ボルツマン定数,T:絶対温度,q:電子電荷)。エミッタ接地増幅器の電圧利得を2-3%精度で予測しようとするなら,バイアス抵抗の分流効果やアーリー効果,エミッタバイパスコンデンサの周波数特性,信号源抵抗までは考慮する必要があるだろう。
トランジスタ回路は,ブラックボックス化され,数式モデル化できるオペアンプ回路より遥かに奥が深い。
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