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定電圧ダイオードは、pn接合の降伏を利用した素子で電流の変化に対して電圧変化の少ない2端子素子である。そしてpn接合を降伏させて使用することを前提としたつくりになっている。
しかし、定電圧ダイオードは温度に対しては降伏電圧が一定であるとは限らない。
たとえば、降伏電圧35Vの素子はおよそ+30mV/°Cの温度係数をもち、100°Cの温度変化で3Vも変化する。定電圧ダイオードの電圧の温度係数は、5.6V付近で0になり、高電圧になるにつれ温度係数が+に増加する。
電流依存性は9V付近が急峻で、もっと高い電圧では基板抵抗が影響して流れ初めはシャープであるが、オーミック性の電流依存性が大きくなる。低い電圧では、降伏特性はソフトで順方向ダイオードの直列接続よりも電流依存性が大きい場合もある。
安価な機器では、ほぼ0温度係数となる5.6V付近の定電圧ダイオードが多く使われる。
定電圧特性は降伏電圧が高い方がシャープなので、ダイオードと定電圧ダイオードを組み合わせた温度補償形があり、順ダイオードが1個の物は6.4V、2個の物は8V付近となる。
定電圧ダイオードの使用に際しては、流す電流の変化と温度変化に伴う降伏電圧の変動に十分配慮することが必要である。
特に高電力で使用する場合には自己過熱による温度上昇があるので、起動時に降伏電圧が徐々に増加する。
定電圧ダイオードは多く、基準電圧を得るために使用されるが、他の使い方としては電圧サージの制限用素子としても使われる。この際には、サージ電流の継続時間を考慮して定格以上の電流を流す設計にならざるを得ない。
定電圧ダイオードの耐電流は、仕様には記載されていないので自己責任で使うことになるが、サージの継続時間の平方根の逆数に比例して耐電力が上がる。
品種にもよるが、アナログエンジニアは非繰り返しでは公称1Wの定電圧ダイオードに1KWのサージ電力を吸収させることもある。
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essemyさん おはようございます。
40年ほど前には、pn接合の端部での部分降伏を避けるため、ガードリング(降伏電圧がより高く深い拡散層)を施したツェナーダイオードがありました。
電圧の割に、降伏特性がシャープで回路性能には有利だったのですが、コスト面で使い切れませんでした。
半導体の仕様の中で、特に余裕がないと感じている項目のひとつは、パワートランジスタのASOです。1割も余裕がない感じです。
投稿: 5513 | 2010年6月22日 (火) 09時51分
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仕様は、接合温度から決まっているでしょうから、サージよけに使う場合でしたら、問題ない場合が多いという話、たしかにそうです。よく分かりました。
ツェナーダイオードみたいなローテクな製造プロセスで作られた接合は、相当に頑丈と思います。最近のMOSプロセスで作られた接合では、素子間分離の端あたりが最初に破壊します。接合の破壊は、接合面積とか不純物のプロファイルも関係すると思いますけど、主は、破壊が開始する欠陥などが主要因だと想像してます。
実例があって参考になりました。
投稿: essemy | 2010年6月22日 (火) 00時22分