回路シミュレータでもっとも普及しているのは,SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)である。
他のCAEツールと同様に,便利であるが,解析ツールであり,それ以下でもそれ以上ではない。
私は,SPICEで設計を煮詰めてから,試作を通常行う。
SPICEで出る現象は大抵実機でも発生するが,SPICEで発生しない現象も試作してみるとかなりの頻度で発生する。
しかし,実機で発生した現象の多くは,デリケートなデバイスパラメータや寄生素子をチューニングすれば,パソコン上で再現することがある。
SPICEは有力なアナログ回路の解析手段であるが,モデルに組み込まれていない現象も多くある。元の生まれが,アナログ集積回路の試作回数を減らすためのツールであるからである。
当然,ダイオードやトランジスタのモデルは,集積回路工学を色濃く反映したものであり時には半導体工学の知識も必要とする。
SPICEを導入した事業所は数多くある。しかし,設計の支援ツールとして活用している事例は,半導体メーカ以外からはあまり耳にしない。設計ツールはそれを使いこなす設計技術があってこそ実践で初めて役に立つ。
シミュレータがあれば,アナログ回路設計が左団扇でできる思ったら大間違いである。(過去にはそのようなキャンペーンを大々的に張った技術雑誌もある)
シミュレータを使いこなすには,結果の分枝が手解析で予測できる程度の設計技術が必須である。
SPICEはゲーム機ではない。プロの真剣勝負の場で,このモデルでこのパラメータ値で考えたら何が現実に起こりうるのか,それを事前に発見するツールである。
大型計算機上で稼動するSPICEに出会ってから,30有余年,今でもSPICEを自宅のPCで使用しているアナログエンジニアである。デバイスパラメータはかなりの程度自分で生成できる。また生成する必要があるのだ。
コーヒーの宣伝ではないが,多少の違いは判るアナログエンジニアである。
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