「若者代表」が炎上 たかまつなな氏の年金改革発言が波紋を広げる@coki2025/1/20より私は厚生労働省の年金部会の委員を務めています。
— たかまつなな/笑下村塾 代表 (@nanatakamatsu) January 18, 2025
「高所得者の厚生年金保険料上げ、27年9月から厚労省案」との日経新聞の報道により、「大増税だ」「現役世代の負担が増える」という不満の声が高まっています。
⚫️日経新聞記事https://t.co/ot6NzzSpBn... https://t.co/SIZfHy19f7 pic.twitter.com/hAzGJG9Wdt
厚生労働省の社会保障審議会年金部会委員を務めるタレントのたかまつなな氏が、2027年9月施行予定の厚生年金保険料引き上げ案を支持する意見をSNSで発信し、激しい批判にさらされている。
同氏の発言が「現役世代や子育て世代の負担を軽視している」と受け取られ、多くの反発を招いた一方で、議論を促進した功績を評価する声も聞かれる。
少し前の話ですがさて厚生労働省の委員も務めるタレントのたかまつななさんが厚生労働省の厚生年金引き上げ案を支持する事をツイッターで表明して、炎上したそうです。
制度上低く設定されていた高所得者層の保険料率を普通の人に近づける案を支持したタレントが炎上した光景
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https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r6/ippan/r60214kanagawa.pdf より
高所得者の厚生年金保険料上げ、27年9月から 厚労省案@日経新聞2025年1月16日より
厚生労働省は、2027年9月をめどに高所得会社員の厚生年金保険料の上限を引き上げる調整に入った。賞与を除く年収798万円以上の人が対象で、保険料収入を増やし年金財政を改善する狙いがある。働く高齢者が年金を満額受け取りやすくする見直しも26年4月で調整する。
ちなみにこの厚生年金の変更内容はと言いますと、最も簡単に言えば所得がいくらでも最大月59475円の年金保険料の最大額をアップするというものです。
大きな反響。「標準報酬月額のルール通りだし、もらえる年金は増える」というのが厚労省の言い分だと思いますが、そもそも元の標準報酬月額の仕組みが搾取的で駄目。多少賃上げをしてもインフレで相殺されるし、この所得層なら年金を増やすより子どもや投資に回したいはず。https://t.co/hNcxaf56zc
— おときた駿(音喜多駿) / 社会保険料引き下げを実現する会代表 (@otokita) January 17, 2025
「年金は積立方式ではなくネズミ講」というのは言いえて妙であり、池田信夫さん @ikedanob とは課題点や解決策について部分的に考え方の相違はあるものの、結論含めて多くの点で同意します。... https://t.co/rRzRiF2tYO
— おときた駿(音喜多駿) / 社会保険料引き下げを実現する会代表 (@otokita) January 21, 2025
若者代表が高齢者と厚労省に丸め込まれてるんじゃ無理だな。利益代表者として選ばれている意味を全く理解できていない。理屈じゃなくてひたすらゴネて交渉してこい、トランプを見習え。 https://t.co/1sgdU9L7rU
— すてぃーぶ (@SteveFixedIncom) January 19, 2025
たかまつなな『悪いのは高齢化であって厚労省は悪くない。社会保険料は都合の良い税金。老人のために現役の男はもっと金出せよ。少子化?それは私の責任じゃない』(意訳)
— Henry (@HighWiz) January 20, 2025
若者の代表ヅラしたかと思えば今度は厚労省の代表ヅラ。
こんな実績も能力もない世間知らずがどんな経緯で委員になったのか。 https://t.co/9ggm6JmaRo
炎上している光景を見ると基本的には「若者代表面して現役世代の負担増に賛同するとは何事か」と言う事なのですが、興味深いのは元参院議員の音喜多俊氏が「元の標準報酬月額の仕組みが搾取的で駄目」「年金は積立方式ではなくネズミ講」と書いている事です。
厚生年金保険の保険料@日本年金機構より
2.標準報酬月額
厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を、保険料や年金額の計算に用います。
現在の標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。 報酬月額は、通勤手当等を含めた報酬に加え、事業所が提供する宿舎費や食事代等の現物給与(全国現物給与価額一覧表)の額も含めて決定されます。
さて標準報酬月額については年金機構には上記のように書かれています。所得税では対象にならない通勤手当なども含めて負担額が決定されているので負担が高めとなるのはありますが、これを搾取と言うのは微妙です。
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月給額と厚生年金保険料の関係@https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r6/ippan/r60214kanagawa.pdfより作成
また最初のように少し触れたように月給65万円以上であると保険料は59475円のままで変わない事から、高所得者層の負担率が低下し、上のグラフをみると一見高所得者層が低所得者層を搾取しているという構図ならそう言う風に見えなくはないですが、本来保険料であり、この59475円の保険料で公的保険としては十分な給付ができるという考え自体はありですし、そもそもたかまつなな氏が賛同したのはこの上限を緩和し、高所得者層の負担率を低所得者層に近づけるものですからむしろ搾取に見える部分は緩和されるという見方も可能です。
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2023年度の運用状況@年金積立金管理運用独立行政法人より
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予定積立金額との比較(長期的なリスク)@2023年度 業務概況書
また少子化によって保険料を払う現役世代が減るので破綻するというのも一見わかりやすいですが、GPIF年金積立金管理運用独立行政法人の2023年度の運用状況を見ると積立金245兆円、2001〜2023年まで、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍を経た年平均収益率4.36%、また長期的な見通しの中間値で2050年段階で積立金600兆円と言った数字を見る限り、絶対はないにせよ少子化の影響を見越しても十分な備えがあると言って良い段階にあるのではと感じます。
https://news.yahoo.co.jp/profile/commentator/nakatadaigo/comments/01d33944-f65b-4872-97dd-1d406acf359fより
この記事は説明が不足しており、誤解を生じさせます。等級表には上限(現行は32等級で65万円)がありますが、この上限額は全加入者の平均標準報酬月額(単純に平均給与と考えてください)の2倍程度に設定するように改定することが法律に明記されています。この数年、平均標準報酬月額の2倍が65万円を上回っており、ルール通りなら新しく33等級を設置すべきだがどうすべきか、という議論が年金部会に諮られたという話です。直近でも、令和2年に32等級がこのルールに基づいて追加されました。
実際専門家による解説を見ると法律上平均標準報酬月額の上限は概ね平均給与の倍に設定する必要があり、その前提で上限を拡大する必要がある為この引き上げ案が出て来たとの事で、その確認のための委員会であるなら、そもそも普通の人の保険料率を上げる話でなく、制度上低く設定されていた高所得者層の保険料率を普通の人に近づけるというものであり、安易に負担増を受け入れるべきではないという姿勢そのものは分かるものの、ここまで炎上させるのはどうかと思います。むしろ逆にこの手のヒステリックな炎上騒動の背景には世代間格差を煽りつつ高所得者層の負担増を是が非でも防ぎたいという意思を感じるのは私だけでしょうか?
昭和と令和の負担率を比較する
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1983年と2015年の所得税率(左:昭和59年度税制改正の要綱 、右:No.2260 所得税の税率@国税庁)
さて昭和の頃と比べて、負担率が上がったと言われます。その中で所得税がどうだったかと言いますと実は税率は基本的に下がっています。上は昭和59年の税制改正前の税率と現在の税率を比較したもの、特に昭和59年と比較して所得400万円〜900万円の箇所と1000万円以上の箇所で大きく違いがあるように映ります。
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(左:税率・税負担等に関する資料@財務省、右:税率の変遷@大阪府寝屋川市)
また住民税も同様で今は10%均一の住民税がかつては累進課税で所得150万円以上でどんどん税率が上がり高所得者層ほど今より税率が高くなっています。
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https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/20151019_27zen23kai6.pdfより
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https://www.yamada-partners.jp/hubfs/uploads/2018/04/003.pdf?hsLang=ja-jp より
ただし社会保険料に関してはさすがに今の方が負担率が倍近くになっていて、かつ上限もかつての倍近くになっています。また給与所得控除も平成に入って公職者層に厳しいものに変化しています。言って見れば昭和の頃は今に比べて、所得税は高所得者を中心に高く、社会保険料はその逆、給与控除は高所得者にとって昭和の頃が有利と言った感じでしょうか?
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昭和と令和の負担率比較
さて上記資料などを基にトータルでどうだったかを比較してみました。ちなみに条件を単純化する為、独身、40歳未満での比較としています。1個人の試算なので間違っている個所はあるかもしれませんが大まかな傾向はつかめると思います。概ね年収1000万円を超える高所得者層にとっては令和の方が負担率は低く、年収が低いほど令和の方が負担率が高くなっています。 ちなみに社会保険料の料率は以下の様になっています。
1983 2025
厚生年金 :5.3% 9.15% (厚生年金保険料率の変遷 参照)
健康保険 :2.47% 5.01%
雇用保険料:0.5% 0.6% (https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/08/dl/s0824-6i04.pdf 参照)
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所得・住民税率推移@税率・税負担等に関する資料より
さてこのような状況を生み出したのは当然所得税・住民税の高所得者を中心とした減税にあります。その推移を財務省に資料から見ると
1994年:最高税率88→65%(23%引き下げ)
2006年:最高税率65→50%(15%引き下げ)
2015年:最高税率50→55%(5%引き上げ)
こうして見ると1993年に政権交代した事の影響が最も大きく、次いで小泉政権の影響も大きいです。ただし安倍政権で最高税率を引き上げ、平成時代に行われた高所得者に有利な所得・住民税減税路線を転換している事が見て取れます。
応援団の大きな声に押されて玉木雄一郎は令和の小泉純一郎になっていくのだろうか?
男性未婚率、所得で4倍の差 賃金底上げに何が必要?@日経新聞2023年9月10日より
30代男性の所得と未婚率の関係を分析すると、所得が低いほど未婚率が高い傾向が浮かび上がります。年収100万円台で76.3%、年収800万円以上の層では17.3%と最大4倍超の差が出ました。高所得の女性がさらに年収の高い男性を結婚相手に求める傾向もあります。少子化対策には所得を上げ、結婚のハードルを下げていくことが重要です。
さて近年少子化の主原因は未婚化であり、その背景には男性の所得の低下が言われています。そう考えると高所得者でなく低所得者の手取りを増やす必要があります。そして現在「手取りを増やす」と言う政策で国民民主党の玉木雄一郎に勢いがあります。しかし彼の声の大きな応援団を見ているとどうしても世代間対立を煽って小泉純一郎や細川護熙の様な「高所得者の手取りを増やす」方向にもっていこうと思えてなりません。象徴的な言葉になりますが玉木雄一郎が応援団の大きな声と煽りに負けて令和の小泉純一郎になるのか注目したいところです。
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