2024年02月
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写真:経済は廻るのか?@横浜
2024年2月15日は様々な経済報道がなされ、その様そうに頭を抱えるという意味で日本近代経済史上もっとも「訳の分からない1日」だったのではないかと思います。
さて昨年末からささやかれ予兆はあったのですが、日本のGDPがドイツを下回り世界第4位に落ち込みました。
GDPの世界順位逆転は大きなニュースのはずですが、意外に穏やかな状況に見えます。それは背景が日本が日欧米の金利差によりGDPが減少して見えるのに対し、ドイツのGDPが日本の倍近いインフレによって水膨れした状況と言うのが簡単に浮かび上がるからです。ドイツのGDPを再逆転をするためによりインフレ率を挙げたいと思う人はさすがにほとんどいないでしょう。
一方同時期にこんな記事も流れてきました。デフレの中国は当然実質成長率は日本より高いはずですが、ただ2000年代以降多くの人が感じていたであろう「成長する中国と停滞する日本」と言う構図が解消しつつある状況と考えると、逆転を喜ぶというよりもある種の警戒の必要性を感じます。
一方日本国内を見ると株式市場ではバブル後最高値を記録し、一方2半期連続でマイナス成長でリセッション入りが報道されました。
これらの報道を眺めて見て思う感想は最初に書いた様に「訳が分からない」と言うしかないです。
また15日の翌日16日にはGDP世界第1位のアメリカでも消費失速を予感されるニュースが出てきて「訳の分からなさ」に拍車をかけてきました。
こういった時に考えたいのは報道に一喜一憂するよりも足元を見つめて冷静になる事なのかなと思います。足元の失業率は株価同様バブル後最も優良な部類にあり、日本の現状を冷静に見れば、ドイツほどひどいインフレになく、2023年初頭4%だったのが2.6%まで落ち、CPIは落ち着いてきていて、中国の様に若者がひどい失業にあえぐデフレにもないという状況です。
一方バブル後最高値の株価に関しては当然史上最高を更新する可能性もありますが、一方でリセッションと言う報道もある様に当然懸念材料もあります。もし上昇基調の株価を過剰に信じて資産を大きくかけてその後リーマンショックのような状況に陥ったら目も当てられません。
冷静になれ、これは読者と言うよりも筆者自身に言い聞かせている様に書いていますが、読者の皆様も心の片隅においていただけると幸いです。
写真:経済は廻るのか?@横浜
2024年2月15日は様々な経済報道がなされ、その様そうに頭を抱えるという意味で日本近代経済史上もっとも「訳の分からない1日」だったのではないかと思います。
名目GDPは591兆円で世界4位に 実質は2期連続のマイナス成長@朝日新聞@2024年2月15日より
2023年の国内総生産(GDP)は、物価の影響をふくめた名目GDPが前年より5・7%増え、591・4兆円だった。米ドルに換算すると1・1%減の4・2兆ドルで、ドイツ(4・4兆ドル)に抜かれて世界4位に転落した。1968年に西ドイツ(当時)を追い越して以来、55年ぶりに日独が逆転した。
さて昨年末からささやかれ予兆はあったのですが、日本のGDPがドイツを下回り世界第4位に落ち込みました。
日独GDP逆転「喜べない」 ドイツのエコノミストが嘆くわけとは@朝日新聞@2024年2月15日より
――日独のGDP逆転をどう受け止めていますか。
「全く重要だとは受け止めていません。ドイツでも逆転はほとんど話題になっていません。(比較される)名目GDPはドル建てです。日本の名目GDPは日本銀行の金融緩和によって円安になり、為替レートに左右されている面が大きいです。一方、ドイツの名目GDPは高いインフレ率に押し上げられました」
「ドイツの物価の動きを示す『GDPデフレーター』は22年は5.3%で、23年は6%以上と見込まれます。これはインフレの高止まりを意味します。物価が2年以上にわたってコントロールされていないことを示すものです。GDPで3位になったところで、この国の問題が解決されたということでは一切なく、逆にこの国の問題を示しているとも言えます」
GDPの世界順位逆転は大きなニュースのはずですが、意外に穏やかな状況に見えます。それは背景が日本が日欧米の金利差によりGDPが減少して見えるのに対し、ドイツのGDPが日本の倍近いインフレによって水膨れした状況と言うのが簡単に浮かび上がるからです。ドイツのGDPを再逆転をするためによりインフレ率を挙げたいと思う人はさすがにほとんどいないでしょう。
中国の23年名目成長率、日本を下回る デフレが影響@日経新聞2024年2月15日より
内閣府が15日発表した2023年の国内総生産(GDP)速報によると、名目成長率で1977年以来46年ぶりに日中が逆転した。日本はプラス5.7%となり、中国のプラス4.6%を上回った。デフレに沈む中国と、インフレに転じつつある日本の違いを印象づけた。
一方同時期にこんな記事も流れてきました。デフレの中国は当然実質成長率は日本より高いはずですが、ただ2000年代以降多くの人が感じていたであろう「成長する中国と停滞する日本」と言う構図が解消しつつある状況と考えると、逆転を喜ぶというよりもある種の警戒の必要性を感じます。
日経平均株価、終値3万8157円 34年ぶり高値@日経新聞2024年2月15日より
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅反発し、終値は前日比454円(1.2%)高の3万8157円だった。1990年1月11日以来、およそ34年1カ月ぶりに終値で3万8000円台に乗せた。前日の米株式市場で主要株価指数がそろって上昇した流れを引き継ぎ、東京市場でも値がさの半導体関連株を中心に幅広い銘柄に買いが波及した。
日本、2023年10〜12月期はマイナス成長 リセッション入り@CNN2024/2/15より
香港/東京(CNN) 内閣府が15日に発表した2023年10〜12月期の国内総生産(GDP)は年率換算で前期比0.4%減だった。国内消費が弱く、予想外のマイナス成長となった。
マイナス成長は2四半期連続で、日本経済はリセッション(景気後退)入りした。リセッションは通常、2四半期連続で経済が縮小することを指す。
一方日本国内を見ると株式市場ではバブル後最高値を記録し、一方2半期連続でマイナス成長でリセッション入りが報道されました。
これらの報道を眺めて見て思う感想は最初に書いた様に「訳が分からない」と言うしかないです。
米消費に失速兆候 1月小売り0.8%減、迫る値上げの限界@2024年2月16日より
【ニューヨーク=朝田賢治、弓真名】米商務省が15日発表した1月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は前月比0.8%減と、市場予想(0.3%減)を大きく下回った。相次ぐ値上げが消費者の購買意欲を冷やしており、消費が失速する恐れが出てきた。客離れを恐れる企業は値上げを抑える代わりにリストラを迫られている。景気の軟着陸に向け米経済は難しい局面を迎えている。
また15日の翌日16日にはGDP世界第1位のアメリカでも消費失速を予感されるニュースが出てきて「訳の分からなさ」に拍車をかけてきました。
振り向けば韓国...日本のGDP「4位に転落」だけじゃない 実はすでに「G7で最下位」の体たらく@東京新聞2024年2月16日より
内閣府が15日に発表した2023年の名目国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、ドル換算で4兆2106億ドルとなり、ドイツに抜かれて世界3位から4位に後退した。日本の1人当たりの名目GDPは、2022年の時点ですでに先進7カ国(G7)最下位に転落している。本紙の試算では、23年は前年より240ドルほど目減りしており、経済協力開発機構(OECD)加盟国中21位だった22年よりも順位を下げる可能性がある。
内閣府が公表しているOECD加盟国の比較によると、日本は12年には10位とドイツ(16位)よりも上だったが、アベノミクスによる円安などで13年から18〜20位に沈下。1人当たりGDPではこの時から既にドイツに抜かれていた。
歴史的な円安水準となった22年には、前年より6000ドルほど減少して3万4064ドルに。順位もG7で最下位だったイタリア(3万4733ドル)に抜かれて21位となり、比較可能な1980年以降で過去最低となった。
労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)12月分結果@総務省統計局より
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2020年基準消費者物価指数@総務省統計局2024年1月19日より
cpi202212
こういった時に考えたいのは報道に一喜一憂するよりも足元を見つめて冷静になる事なのかなと思います。足元の失業率は株価同様バブル後最も優良な部類にあり、日本の現状を冷静に見れば、ドイツほどひどいインフレになく、2023年初頭4%だったのが2.6%まで落ち、CPIは落ち着いてきていて、中国の様に若者がひどい失業にあえぐデフレにもないという状況です。
シティ、日経平均の高値予想を4万5000円に引き上げ-日銀は緩和維持@Bloomberg2024/2/15より
シティグループ証券は、米国の経済や株式市場の堅調が続く上、日本銀行が緩和的な金融政策を維持する可能性が高まったことなどから、日経平均株価の2024年の高値予想を従来の3万9000円から4万5000円に引き上げた。
一方バブル後最高値の株価に関しては当然史上最高を更新する可能性もありますが、一方でリセッションと言う報道もある様に当然懸念材料もあります。もし上昇基調の株価を過剰に信じて資産を大きくかけてその後リーマンショックのような状況に陥ったら目も当てられません。
冷静になれ、これは読者と言うよりも筆者自身に言い聞かせている様に書いていますが、読者の皆様も心の片隅においていただけると幸いです。
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さて昨年の西武百貨店の騒動の際にもうすうす感じていたことなのですが、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨカドーが北海道・東北などの17店舗を閉店し、この地域から撤退するという報道が出てきました。ヨークベニマルなどグループ内外の企業が事業を引き継ぐ方向で考えられているとの事で17もの店舗がまるまるなくなるわけではないですが、それでもイオンと並び称される日本を代表するスーパーが白河の関以東で見れなくなるのはショッキングな事です。
ネットでは当たり前ですが大型店の進出によって地域の商業が激減したうえで閉鎖によって地域の買い場がなくなる事に対する懸念の意見が見られます。
とは言え一方でイオンと比較して利便性に欠けるイトーヨカドーに対する厳しい意見も見られたのも確かです。
金融セグメントが示す経済圏作成の明暗
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表:7&iとイオンの部門ごと収益の比較(各社2022年決算より)
さてイトーヨーカドーは何故ここまで苦境に陥ったのでしょうか?もう1つの大規模小売であるイオンと比較しながら見ていきましょう。上は両社の2022年度決算説明資料から部門ごとの数値を抜き出したものです。これを見ると
・スーパーだけを見ると利益率(各社右端の列:営業利益/営業収益)は7&iの方がやや良いくらい
・セブン&iは収益の8割、利益は100%以上国内外のコンビニによって挙げられている
・イオンは収益の半分がスーパー(GMS/SM)、だが利益のおよそ半分が金融・ディベロッパー事業によって得られている
・セブン&iの金融部門は利益率が2割近い高い収益性を誇るが利益におけるシェアはイオンが30%近いのに対して7.3%と存在感が薄い
・スーパー部門の営業収益はイオンがセブン&iの4倍近くあり、スーパー部門の規模としてはもはや決着がついている
言って見ればセブン&iとイオンではスーパー部門で必ずしも収益性に差がある訳ではないが、コンビニが名実ともにメイン事業となっているセブン&iと金融・ディベロッパー部門が収益の柱となっているイオンと言う差がイトーヨーカド―の大規模な閉店が目立つ現状を生み出しているのではと思います。
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上:セブン&Iホールディングス2022年決算説明資料より、下イオン2022年決算資料より
この状況は両社の決算資料からも見て取れます。もともと東京の下町が発祥だからと言う面もありますが、セブン&iでは収益性の高いと思われる首都圏へのフォーカスを謳っている反面、イオンでは「シナジーに加え、相互補完により全体での成長を図る」と収益性の低い事業を簡単には見捨てない姿勢を見せています。言って見ればディベロッパーと金融が柱であるがゆえに、仮に直接的には収益性の低い店舗であっても決済の段階で金融に家賃によってディベロッパー部門の収益に繋がっている事がこういった言葉を生み出し、また株主の納得に繋がっているのだと思います。
経済圏作成の遅れによってセブン&iが失ったもの
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セブン&Iホールディングス2022年決算説明資料より
そんな中セブン&iの決算資料を見ると「7iDを軸とした小売・金融一体戦略」が大々的に書かれ、イオンに後れを取る金融事業に対し力を入れている事を金融が収益の主力であるイオン以上に株主・投資家にアピールしているのが見て取れます。
確かに金融に力を入れているのは確かですが、根本的には5年前に騒動になったセブンペイに代表される金融事業の失敗が痛手だったという事なのでしょう。
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ion2015_2022
上:セブン&i、下:イオンの2015年と2022年のセグメント比較
その痛手の大きさはビジネスセグメントからも見て取れます。2015年と2022年の比較で見ると新たにヘルス&ウェルネス事業を追加したイオンに対し、フードサービス、通信販売を失い、また2023年度には西武百貨店の騒動でもあったように百貨店も失いました。
それだけではなく今回の事で祖業であるスーパーも縮小し、従業員もリストラすると言う厳しい状況に陥りました。そしてもはやコンビニ屋さんが余力の最低限で最小限スーパーをやり、コンビニ内のATMで金融を行っているような状況に陥っています。言って見れば金融を軸にした一種のブロック経済の形成に失敗した事が今回の事の背景にあると言えるのではないでしょうか?
JR東日本銀行参入が示す経済圏の時代の深化
そんな中イオンの様に消費社会で大きな存在感のある企業はより自前の経済圏を拡大しようと動いています。上は既にSuica,JREポイントで経済圏をある程度作っているJR東日本が今年銀行に参入する事を報じられたニュースです。
2023年10月1日(日)から 京王線・井の頭線の鉄道乗車ポイントサービスを開始します@京王電鉄
4月5日から鉄道乗車ポイントサービスを開始します!@京急
またJR東日本まで大きくない私鉄でも乗車ポイントなどで経済圏を強めていこうという動きも目立ちます。昨年は京王電鉄、今年4月からは京急が乗車ポイントサービスを開始し、経済圏を強めていきます。
果たしてこの経済圏の時代にどこがイオンの様に成功し、どこがセブン&iの様に失敗するのか、そしてどの様な利益と問題を社会にもたらすかは今後注目していきたいと思います。
イトーヨーカ堂 北海道など17店舗の営業終了し地域から撤退へ@NHK2024/2/9より
大手スーパーのイトーヨーカ堂は、構造改革の一環として、北海道や東北などの17店舗の営業を順次終了し、この地域から撤退する方針を明らかにしました。このうち半数以上の店舗については事業の譲渡などを行うとしています。
イトーヨーカ堂は去年2月までの1年間の決算が3年連続の最終赤字となるなど業績の不振が続き、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは再来年(2026年)2月までの3年間で、33店舗の削減を行うなど、構造改革を進める方針を決めています。
さて昨年の西武百貨店の騒動の際にもうすうす感じていたことなのですが、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨカドーが北海道・東北などの17店舗を閉店し、この地域から撤退するという報道が出てきました。ヨークベニマルなどグループ内外の企業が事業を引き継ぐ方向で考えられているとの事で17もの店舗がまるまるなくなるわけではないですが、それでもイオンと並び称される日本を代表するスーパーが白河の関以東で見れなくなるのはショッキングな事です。
これさあ。ここにヨーカドーが出来ちゃったから「大手には敵わない」と周辺で沢山の小規模店が閉店したのを、その責任を取らず収益悪化だけで「撤退しま〜す」って許される??
— 「女の子が謎」の男 (@OnnaNazo) February 8, 2024
ヨーカドー青森全4店閉鎖
五所川原店(24年3月末)、八戸沼館店(2024年8月頃)閉店が決まっていたが、青森、弘前閉店もへ pic.twitter.com/WTK1GanaWv
ネットでは当たり前ですが大型店の進出によって地域の商業が激減したうえで閉鎖によって地域の買い場がなくなる事に対する懸念の意見が見られます。
「イトーヨーカドー」北海道・東北から撤退へ 構造改革で全14店閉鎖 - 日本経済新聞役割を終えたってことかな。北海道東北で14店舗しかない方が個人的には驚いた。北海道東北の広いエリアに店舗が点在していたら効率悪いよね。
2024年02月09日 14:56
「イトーヨーカドー」北海道・東北から撤退へ 構造改革で全14店閉鎖 - 日本経済新聞青森県内のお店だけの印象だけど「セブンプレミアムを除くと品揃えがイオン以下」というあたりでいろいろ察されるのではないでしょうか。マジメにセブンプレミアム以外に買いに行くものがありません
2024年02月09日 15:26
とは言え一方でイオンと比較して利便性に欠けるイトーヨカドーに対する厳しい意見も見られたのも確かです。
金融セグメントが示す経済圏作成の明暗
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表:7&iとイオンの部門ごと収益の比較(各社2022年決算より)
さてイトーヨーカドーは何故ここまで苦境に陥ったのでしょうか?もう1つの大規模小売であるイオンと比較しながら見ていきましょう。上は両社の2022年度決算説明資料から部門ごとの数値を抜き出したものです。これを見ると
・スーパーだけを見ると利益率(各社右端の列:営業利益/営業収益)は7&iの方がやや良いくらい
・セブン&iは収益の8割、利益は100%以上国内外のコンビニによって挙げられている
・イオンは収益の半分がスーパー(GMS/SM)、だが利益のおよそ半分が金融・ディベロッパー事業によって得られている
・セブン&iの金融部門は利益率が2割近い高い収益性を誇るが利益におけるシェアはイオンが30%近いのに対して7.3%と存在感が薄い
・スーパー部門の営業収益はイオンがセブン&iの4倍近くあり、スーパー部門の規模としてはもはや決着がついている
言って見ればセブン&iとイオンではスーパー部門で必ずしも収益性に差がある訳ではないが、コンビニが名実ともにメイン事業となっているセブン&iと金融・ディベロッパー部門が収益の柱となっているイオンと言う差がイトーヨーカド―の大規模な閉店が目立つ現状を生み出しているのではと思います。
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上:セブン&Iホールディングス2022年決算説明資料より、下イオン2022年決算資料より
この状況は両社の決算資料からも見て取れます。もともと東京の下町が発祥だからと言う面もありますが、セブン&iでは収益性の高いと思われる首都圏へのフォーカスを謳っている反面、イオンでは「シナジーに加え、相互補完により全体での成長を図る」と収益性の低い事業を簡単には見捨てない姿勢を見せています。言って見ればディベロッパーと金融が柱であるがゆえに、仮に直接的には収益性の低い店舗であっても決済の段階で金融に家賃によってディベロッパー部門の収益に繋がっている事がこういった言葉を生み出し、また株主の納得に繋がっているのだと思います。
経済圏作成の遅れによってセブン&iが失ったもの
iy2022kessan2
セブン&Iホールディングス2022年決算説明資料より
そんな中セブン&iの決算資料を見ると「7iDを軸とした小売・金融一体戦略」が大々的に書かれ、イオンに後れを取る金融事業に対し力を入れている事を金融が収益の主力であるイオン以上に株主・投資家にアピールしているのが見て取れます。
7pay大失敗に見る、セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂@Diamond2019/8/20より
「記者会見の動画中継を見ていて、思わずズッコケた」──。セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、「セブンペイ」の中止を発表した8月1日のそれだ。たった3カ月でサービス終了という失態に、ある関係者は言葉を失った。
セブン独自のスマートフォンによるキャッシュレス決済サービスは、7月1日の開始直後にアカウントの乗っ取りによる不正利用が発覚。「2段階認証」がなされていないなど、セキュリティー上の不備が次々と指摘され、9月末での中止を余儀なくされた。
確かに金融に力を入れているのは確かですが、根本的には5年前に騒動になったセブンペイに代表される金融事業の失敗が痛手だったという事なのでしょう。
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上:セブン&i、下:イオンの2015年と2022年のセグメント比較
その痛手の大きさはビジネスセグメントからも見て取れます。2015年と2022年の比較で見ると新たにヘルス&ウェルネス事業を追加したイオンに対し、フードサービス、通信販売を失い、また2023年度には西武百貨店の騒動でもあったように百貨店も失いました。
イトーヨーカ堂が早期退職募集、45歳以上の社員対象...コスト削減のため本社移転も@読売新聞2024年1月31日より
セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂が早期退職者の募集を始めたことがわかった。45歳以上の社員を対象に2月末頃まで募集し、応募者には退職金を上乗せするほか再就職の支援を行う。
それだけではなく今回の事で祖業であるスーパーも縮小し、従業員もリストラすると言う厳しい状況に陥りました。そしてもはやコンビニ屋さんが余力の最低限で最小限スーパーをやり、コンビニ内のATMで金融を行っているような状況に陥っています。言って見れば金融を軸にした一種のブロック経済の形成に失敗した事が今回の事の背景にあると言えるのではないでしょうか?
JR東日本銀行参入が示す経済圏の時代の深化
JR 東日本グループによる新たなデジタル金融サービス「JRE BANK」について@JR東日本2022年12月13日
JR東日本が銀行業に来春参入、Suica会員1億を擁するラスボスの背後にいる「ジョーカー」とは?@Diamond2023/11/13より 東日本旅客鉄道(JR東日本)が鉄道会社として2024年春に初めて銀行事業に参入する。交通系ICカードSuicaの発行枚数は実に約9956万枚、モバイルSuicaは約2303万枚。日本の人口に匹敵する顧客基盤を持つJR東日本の銀行参入を銀行やクレジットカード業界は警戒している。
それもそのはず、1日の乗降客数は約1300万人(首都圏全線)、ポイントカードの会員数も1379万人を誇る。銀行事業がスタートする24年春以降は、これまではチャージ上限2万円の電子マネーSuicaとクレジットカードだけだったが、これに即時決済のデビットカード機能も加わるのだ。
銀行事業開始は、グループの金融子会社ビューカード(東京・品川区)が銀行代理業を手掛けるかたちで「JREBANK」を設立する。ここで口座をつくれば、JR東日本の228駅にあるATMからの現金引き出しが無料になる。首都圏に、通勤・通学で多くの人が毎日使う駅というネットワークを持つ鉄道会社が銀行に参入すれば、その破壊力は計り知れない。実際、国内証券の銀行アナリストは「顧客数の桁が違うので交通系の銀行参入は手ごわい」と語る。
そんな中イオンの様に消費社会で大きな存在感のある企業はより自前の経済圏を拡大しようと動いています。上は既にSuica,JREポイントで経済圏をある程度作っているJR東日本が今年銀行に参入する事を報じられたニュースです。
2023年10月1日(日)から 京王線・井の頭線の鉄道乗車ポイントサービスを開始します@京王電鉄
4月5日から鉄道乗車ポイントサービスを開始します!@京急
またJR東日本まで大きくない私鉄でも乗車ポイントなどで経済圏を強めていこうという動きも目立ちます。昨年は京王電鉄、今年4月からは京急が乗車ポイントサービスを開始し、経済圏を強めていきます。
果たしてこの経済圏の時代にどこがイオンの様に成功し、どこがセブン&iの様に失敗するのか、そしてどの様な利益と問題を社会にもたらすかは今後注目していきたいと思います。
さて2024年1発目1月のランキングです。
1.お金の話その3〜単身赴任のおっさんに学ぶクルマなしの地方・郊外生活〜
2.お金の話その5〜復活する金利が問うもの〜
3.令和の大きな宿題その25 即決を避けるべき時代〜ポストコロナ・インフレ時代に思う〜
4.お金の話その2〜まず100万貯めるんだ〜お金の主人になるために
5.令和の大きな宿題外伝〜電車を失った街が語る事〜
1位にはお金の話その3〜単身赴任のおっさんに学ぶクルマなしの地方・郊外生活〜がはじめて入りました。
もう車が買えなくなったアメリカ人──年収10万ドルの壁@NEWS WEEK2024/1/16
実際アメリカでクルマ離れが大偉大的に起こっているという話ではないと思いますが、先月はこんな記事が少し話題になったようです。日本で言えば平成期に急激にクルマ社会化が進んだと思うのですが、2010年代以降クルマ社会の有形・無形のコストが家計の面でもジワリジワリと知れ渡って来たというのはあると思います。令和の時代に急激な脱クルマが起こると迄は思いませんが、実家住まいや夫婦で1台のクルマを共有する光景と言うのが不定期そうな気がします。
2位にはお金の話その5〜復活する金利が問うもの〜が惜しくも4か月連続1位ならずで入りました。
金利復活、日本株でインフレに勝つ 近づく日銀緩和終了@日経新聞2024年1月21日
能登半島地震の影響があり市場では円安傾向ですが、それでもマイナス金利解消などの金利復活への観測が続いています。
ことしの税制改正 住宅ローン減税の見直しや資産移転促す改正@NHK2024/1/15
その一方で住宅ローン減税の見直しが今年の税制改正で行われ、新NISAがスタートしたのを考えると、「貯蓄から投資」と言うよりも「不動産から金融資産」への転換と言うのが意識される機会が増えてきそうです。
3位には令和の大きな宿題その25 即決を避けるべき時代〜ポストコロナ・インフレ時代に思う〜が入りました。さて2024年はいろいろ動きそうだから落ち着いて即決を避けようと書いた記事です。
能登半島地震であえて問う、20年後に消滅する地域に多額の税金を投入すべきか@JBPRESS2024/1/11
そして記事を書いたときには思いもつかなかったような厄災である能登半島地震に対して過疎地域の復興を止めろと言う即決的な論が繰り広げられています。確かにこういった論は分かりやすいですが、例えば過疎地域でちょっとした仕事と国民年金で経済的に成り立っていた高齢者が都市部に移住したらそれを維持できるのかと言った部分も考えていかないと片手落ちの様な気がします。
4位にはお金の話その2〜まず100万貯めるんだ〜お金の主人になるためにが2022年9月以来のランクインとなりました。
2024年は自分の資産をもっと外貨に換えておこう@東洋経済2024年1月6日
新型NISAが始まったのもあって投資に関する情報がにぎやかです。
小倉優子 NISA恐ろしく疑う「国の推しには裏が」→堀江氏が反論「お得で素晴らしい制度」僕は使わない@デイリースポーツ2024年1月12日
一方で小倉優子さんの発言が注目されましたが懐疑的な意見も目立ちます。確かにどちらも分かるのですが個人的には投資と言うきっかけから「持たざる」状況から脱する一歩目を踏み出す人が増えると良いなと考えています。この記事で取り上げた「まず100万貯めるんだ」と言う言葉にはそういった雰囲気があって味わい深かったので取り上げた次第です。「親ガチャ」なんて言っても良いですが、でもそこから一歩目を踏み出しお金の主人となる人が増える2024年であってほしいものです。
5位には令和の大きな宿題外伝〜電車を失った街が語る事〜が入りました。
北陸エリア 運行情報@JR西日本
能登半島地震の影響で七尾線やのと鉄道等被災地の鉄道の被害が目立ちます。ここ最近地方の旅客鉄道の廃線問題がある事もありますが能登の周りの北陸地方ではこの記事で取り上げたえちぜん鉄道を筆頭に様々な鉄道が危機的状況になりながら地域の力で復活し、輝きを取り戻した鉄道の多い地域です。厳しい状況ではあるものの七尾線やのと鉄道も同じように新しい輝きをもって復活してほしいと思います。
如何だったでしょうか?今月も読者の皆様にとっても私にとっても良い1か月である事を祈ります。
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