つれづれなるままに



写真:増発に備えます@大原駅

さて前回に引き続きいすみ鉄道の社会実験レポート、今回が最終回です。

イベント見聞録2009年2月28日いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る〜上総中野駅他編〜
イベント見聞録2009年2月28日いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る〜プロローグ〜
イベント見聞録2009年2月28日いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る〜大多喜駅編〜
イベント見聞録2009年2月28日いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る〜国吉駅編〜

総元駅に到着する大原行き列車

写真:総元駅に到着する大原行き列車

さて総元駅付近を散策し、もうそろそろ暗くなり始めたので、列車に乗って大原に向かいます。行きは高速バスだったので帰りは大原から外房線経由です。
17:21に総元を出発した列車の乗客は7人ほど、養老渓谷帰りの散策客と見受けられます。
ある種まったりとした雰囲気の車両だったのが一変するのが大多喜駅、ここで駆け込み乗車を含めて9名の高校生の乗車があります。更にお隣城見ヶ丘ではSCでのバイト帰りであろうか、更に1名の高校生も加わります。一時期この周辺の外房線や内房線では高校生のマナーの悪さが問題視されていましたが、確かにここでもお世辞にもお行儀が良いとは言い切れませんでした。
しかし良く考えればこの路線の利用者の大半はこう言った高校生、ある意味この鉄道は教室の延長なのかもしれません。

県立高等学校再編計画第1期実施プログラム@千葉県教育委員会
いすみ鉄道周辺(いすみ鉄道、外房線(茂原以南)、小湊鉄道沿線)の高校再編
2004年度 大 多 喜、大多喜女子→大多喜高校
2005年度 勝 浦、御 宿→勝浦高校
鶴舞商業、市原園芸→鶴舞商業高校
2006年度 茂原農業、茂原工業→茂原農業高校

そんないすみ鉄道のお得意様である彼ら高校生の視点で見ると結構厳しい現実が見えてきます。上は彼らが中学生の頃2004〜6年度に統廃合されたいすみ鉄道周辺の県立高校なのですが、実に4校を数えます。この時期に統廃合された県立高校が7校、いすみ鉄道沿線の第7学区の普通科高校が5校ですから人によっては中学校時代に通う事が可能な高校が半減したと言う事すらありうる数字です。

かしてつ・・・その後より
5月22日に調査が行われ1日辺りの代行バス利用者数は876人、鉄道時代の2005年度が2125人だったのを考えると41%と半減以下に定期客は4割以下の水準に
2005年度との主な比較は
全体利用者:41%
定期客:4割弱
石岡〜常陸小川:68%
常陸小川〜玉造町:12%
玉造町〜鉾田:20%

区間的には玉造町〜常陸小川間の落ち込みが酷くまた学生を中心とする定期客の減少も大きいと言う事で、石岡地区と鉾田地区の交流が大きく落ち込み中高生の進路選択が大きく狭まっていると考えられます。


またそんな彼らの後輩たちに視点を移すとどうでしょう。今回の社会実験はいすみ鉄道再生を目指した施策として行われた訳ですが、逆に万が一いすみ鉄道が廃線になったらどうなるか、それを考える上で参考になりそうなのが上の鹿島鉄道廃線後の状況ではないでしょうか?存続運動を主導した小川高校のある常陸小川までの区間ではともかくとしてそこから先の流動はほぼ壊滅と言った状況にあります。
これをいすみ鉄道に当てはめて考えるならば大多喜から小湊鉄道沿線の市原市内への通学と言う選択がほぼ不可能になると言った感じになります。いすみ鉄道沿線の千葉7学区の普通科高校は現在5校ですが、小湊鉄道沿線には3校の普通科高校があるのでこの辺の中学生にとって進学先の選択が相当なレベルで狭まると考えられます。

北総線学生定期割引率拡大に関する考察
北総鉄道2005年度決算レポート
北総鉄道沿線自治体日本鉄道賞子育て支援賞受賞

逆にいすみ鉄道を高校の統廃合によって進路選択の幅が狭まった中学生たちがより広範囲の高校を進学先に選択できるようにするための手段として活用できないだろうか?そんな事が教室の延長のように列車で振舞う高校生たちを見ていて浮かんできました。
例えば同じ千葉県内の千葉ニュータウンでは運賃の高さで「子供3人引っ越し準備(子供の通学定期が高額すぎるので子供が高校に入る前に引っ越す)」事が言われていたのですが、それに対するフォローとして千葉ニュータウン地域限定と言う形ではありますが行われた学割定期への補助によって全線における通学定期客が5.7%増、通学定期収入6.6%増と言う成果(2005年度)を挙げています
当然人口増加地域である北総線沿線といすみ鉄道沿線を同列には語れませんし、大多喜以東から小湊鉄道沿線への通学が難しい現状のダイヤの改善もあわせて行う必要もありそうですが、沿線学区の高校統廃合のペースが速く、高校生の通学がドル箱といえるいすみ鉄道のような路線こそこう言った取り組みは有効な気がするのですがいかがでしょうか?

大原駅

写真:大原駅

どっぷり日が暮れて大原駅に到着しました。大多喜・城見ヶ丘で乗車した高校生たちは2人ほど国吉で降りた他は大原まで乗車、総元時点で乗車していた散策客は皆ここで下車し、各々乗り換えていきます。

外房線千葉行き

写真:外房線千葉行き

よくよく考えるとこの大原駅まで乗りとおしたお客さんを見ると散策の観光客と高校生と言う組み合わせで実は地元の人がいない事に気づきます。
ふと国吉の増元寺の売店のおばちゃんにこんな事を言われたのを思い出しました。「この辺の人は千葉や東京に行くのにバスで茂原に出るのよ
と言う事で外房線のダイヤを調べてみると以下のようになっていました。
朝ラッシュ時(東京着9時前)
茂原発着
東京方面直通快速:5本
東京方面直通特急:2本
大原発着
東京方面直通快速:1本
東京方面直通特急:1本
昼間(蘇我発10:00〜16:00基準)
茂原発着
普通・快速:18本
特急:6本
大原発着
普通・快速:6本
特急:5本

確かにいすみ鉄道の発着する大原駅と茂原駅では大きな差がある事が見て取れます。

いすみシャトルバス@いすみ市
交通手段(アクセス)@三育学院短大より
・千葉駅より、外房線に乗車。茂原駅下車し大多喜行きの路線バスに乗車し、大多喜駅で下車。駅前よりタクシー7分。
(注記)千葉から学院にお越しの際、上記の他、大原駅まで進みにいすみ鉄道に乗車することもできます。


実際沿線のいすみ市では茂原方面へのアクセスのためにアクセスバスを走らせ、沿線の短大ではアクセス手段として茂原や五井からのスクールバスを宣伝している状況です。
確かに現状のいすみ鉄道のダイヤは決して便利だとは言いがたいのですが、現状ではこの地域への中心地である茂原、県庁市である千葉、そして東京の各方面への地元の一般客を誘致しようにも外房線に足を引っ張られていると言っても過言ではない状況ではないでしょうか?

千葉駅を発着する総武快速線列車

写真:この電車がもっと大原まで来てくれたら・・・

長浜駅@Wikipedia
黒壁スクエア

これは当然いすみ鉄道だけの問題ではありません。勝浦等魅力的な観光地のある外房地区全体、もっと言えば2006年にぬれ煎餅でブレイクした銚子電鉄のある銚子を中心とした北総地区、アクアラインバスの攻勢で日中の特急がほぼ臨時化された内房地区など千葉県のベッドタウン以外の地域全体が鉄道等の公共交通をはじめとした交通インフラの未発達で観光等の潜在能力を発揮できていない状況にあるのではないのでしょうか?
この潜在能力を発揮するには鉄道を中心とした公共交通の整備にもう少し尽力していく必要があるのではないでしょうか?例えば地域活性化の有力事例として語られる滋賀県長浜市の黒壁スクエアでは地域を走る北陸本線の直流電化とそれに伴う新快速電車の直通が大きな原動力になったと言われています。長浜地区は途中に京都を抱えるとは言え大都市大阪との距離は120km、東京駅から120kmと言うと銚子、鴨川、千倉等房総半島方面の特急の終着駅はほぼ全部収まり千葉県全域が入る計算になります。
いすみ鉄道の苦境は「もっと長浜のように鉄道に力を入れてくれ!!」と言うベッドタウン以外の千葉県全体の叫びではないだろうか?そんな事を昭和時代からの旧型電車の中で感じてしまいました。

いかがだったでしょうか?エピローグは見聞録と言うよりも何だか昔から書いている主張の焼き直しみたいになってしまいましたが、それでも「もう少しできる事があるだろう?」と言う部分は色んな意味で感じました。

そんないすみ鉄道の今後の発展を祈りつつ今宵は筆をおきたいと思います。
P.S.3/28〜4/5に沿線の大多喜町で大多喜城さくらまつりと言うイベントが開催されます。特に4/4,5は様々なイベントが準備されていますので今年のお花見にいかがでしょうか?
大多喜城さくらまつり@大多喜町

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タグ :
#いすみ鉄道
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#JR東日本
#外房線

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