速報と書きつつ1月遅れですがゆいレールの2006年度決算のプレス発表があったようです。
モノレール債務超過/06年度決算@沖縄タイムス5月23日
沖縄都市モノレール(那覇市、湖城英知社長)は二十二日、二〇〇六年度決算見込みを発表した。売り上げに当たる営業収益は、乗客増などで前年度比3%増の二十四億九千二百三十三万円となったものの、設備や車両などの減価償却費(約十八億三千四百万円)が大きく、経常損失は十六億四千七百七十八万円の赤字。繰越損失を含めた当期未処理損失は資本金(七十三億三千三百六十五万円)を約一億六千二百万円上回る七十四億九千五百五十九万円となり、〇三年の開業以来初めて債務超過となった。
昨年度の決算に関してはHPに書いたのですがその際の予想より1年早く債務超過してしまったようです。
取り敢えず記事上に乗っている数字を昨年度と比較しますと(単位:万円)
2006年度 2005年度 差
営業収益: 249233←241846 7387増加
償却前費用※(注記)1: 191233←169002 22231増加
償却前損益: 58000← 72844 14844減少
減価償却費: 183400←199886 16486減少
経常損失: 164778←165965 1187減少
※(注記)1:2006年度は営業収益ー償却前損益、2005年度は減価償却費を除く営業費用+支払利息ー営業外収益
本来何の努力も無く減少する減価償却費の減少分1億6千万円に比べ経常損失の改善分が1000万円と言うのは実質的に経営が悪化しているとも見られます。
その要因として大きいのは償却前営業費用の増分2億2千万円でこの増加で営業収益の増加分7千万円、減価償却費の減少分1億6千万円と言う改善部分をチャラにしてしまっている感じです。
さてこの2億2千万円の原因は何でしょうか?
法定点検や塩害発生などの修繕費が約二・三倍の二億五千四百七十五万円となったことが響いた。
修繕費の増加が大きいようです。実際金額ベースで大まかに比較すると(単位万円)
2005年度:11076(2006年度の額を2.3で割った額)
2006年度:25475
増加分 :14399
償却前費用の増加分:22231
差:7832
確かに修繕費の増加分が2/3を締めますが残額が8千万円近くあります。修繕費を除く償却前費用が16億円弱ですから5%近い伸びになります。これについては後述します。
さてここまで書いてきてこのゆいレールに関してどう思われたでしょうか?「ずさんな需要予測が外れて赤字に苦しむ3セク鉄道」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。さて需要予測と乗客数の推移を昨年の決算レポートで調べた際には
年度 乗車人員 需要予測
2003 31905 31350
2004 32049 32258
2005 35940 33197
と太字で強調しているのですが3年中2年は需要予測の数字をクリアし今年度に関しては
〇六年度の乗客数は千三百六十四万八千四百七十四人で、一日平均三万七千三百九十三人。目標の三万七千人を4%上回った。
との事です。この目標の3万7千人に関しては需要予測よりも大きな数字を設定していてそれを上回る結果を出したと言う事です。
それでも営業収入の2/3にもなる16億円以上の赤字を出し、債務超過に陥ったと言うのは恐ろしい事です。極端に言ってしまえばこれまでの赤字3セク問題で散々取りざたされた需要予測と言う数字には何の経営的な意味合いが無いと言う事を証明していると言っても過言ではないのです。
何と無く感じるのはかつての需要予測は当らないまでもそれを満たせば一定の経営を保障していたのかもしれませんが今の需要予測は当るかもしれませんが何の経営的な保障が無いと言う事なのかもしれません。
さてそんなこんなで債務超過に陥ったゆいレール今後存続の為に
同社は中長期計画で、固定資産税の減免や県、那覇市の転貸債を財源に借り入れた開業前設備資金の返済期間延長など4項目の行政支援を求めた。固定資産税については「県外の第三セクターのモノレールには、ほとんど減免措置が講じられている」(同社)が根拠だ。
と言った形で行政への支援を受けつつ生き残りを計るようです。債務超過や資金繰りの悪化を期に行政への支援を受けて生き残ると言うのは多くの第3セクター鉄道で行われている事です。しかし同じモノレールでは気になる出来事もあります。
産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の認定について(北九州高速鉄道株式会社)by国土交通省@2005年7月28日より
(1)事業再構築計画に係る事業の目標
北九州高速鉄道株式会社は、昭和60年1月9日に小倉(現平和通)・企救丘間8.4kmを開業し、平成10年4月1日のJR九州小倉駅までの延伸開業を経て、現在、小倉・企救丘間8.8kmの軌道事業(モノレール事業)を経営している。
輸送人員は平成16年度において約1,135万人(1日平均約3万1千人)であり、北九州市民の重要な交通機関として定着している。
平成10年度以降は単年度黒字の計上を継続しているものの、開業後20年を経過し、今後、100億円にものぼる車両・変電設備・運行管理システム等の大規模更新が予定されていることから、これに備えて財務体質を強化する必要があるが、初期投資等に係る借入金等により、平成16年度末で約148億2千万円の債務超過状態にある。
このため、北九州市等からの出資金82億円の100%減資を行なった上で最大株主である北九州市を引受先とする第三者割当増資を実行し、累積損失を解消するための無償減資を実施するなどの施策を含め、更なる財務体質の改善を検討していくこととした。
一昨年の2005年、福岡の北九州モノレールが産業再生を適用し実質的に破綻してしまった件に関するプレスリリースです。この路線は太字部で強調しているように曲りなりにも黒字化しこの申請を出した時点で7年連続の黒字だったのですが結局この跡予定されていた大規模修繕への負担に耐え切れないと言う判断で産業再生法、即ち破産への道を選んでしまった訳です。
ゆいレールは北九州モノレールと同様にこの破綻への道をひた走っていると見て否定する材料はあるでしょうか?
さらに厳しい事に今回の費用増加の理由の理由として挙がっている塩害による修繕費の増加、そして残りの8千万円の増加の問題も出てきます。記事では言及が無いので何とも言えないですが、個人的には金利の負担増加が気になる所です。
こう言った面を考えるとある意味で北九州モノレールよりも厳しいのかもしれません。
ただゆいレールに本当に未来が無いかといえばそんな事も無いと思います。理由としては
・現在の赤字額16億円は開業費の償却年約4億円の負担も含めた物でそれが今年で終了するので今後はその分収支が改善する事
・現状でも乗客は増加傾向にあること
・現在ガソリン価格が高騰している中で負担額が安定(少なくともガソリンのように2〜3年で4割も値上げは考えられない)している鉄道の存在意義が増す事
と言った事が挙げられます。
少なくとも償却前損益がプラスであり、残すほうが負担額が少ない以上残すべきですし、その意義はあると考えます。
何だか昨年の決算レポートの簡易版の様になってしまいましたがこの辺で失礼します。
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モノレール債務超過/06年度決算@沖縄タイムス5月23日
沖縄都市モノレール(那覇市、湖城英知社長)は二十二日、二〇〇六年度決算見込みを発表した。売り上げに当たる営業収益は、乗客増などで前年度比3%増の二十四億九千二百三十三万円となったものの、設備や車両などの減価償却費(約十八億三千四百万円)が大きく、経常損失は十六億四千七百七十八万円の赤字。繰越損失を含めた当期未処理損失は資本金(七十三億三千三百六十五万円)を約一億六千二百万円上回る七十四億九千五百五十九万円となり、〇三年の開業以来初めて債務超過となった。
昨年度の決算に関してはHPに書いたのですがその際の予想より1年早く債務超過してしまったようです。
取り敢えず記事上に乗っている数字を昨年度と比較しますと(単位:万円)
2006年度 2005年度 差
営業収益: 249233←241846 7387増加
償却前費用※(注記)1: 191233←169002 22231増加
償却前損益: 58000← 72844 14844減少
減価償却費: 183400←199886 16486減少
経常損失: 164778←165965 1187減少
※(注記)1:2006年度は営業収益ー償却前損益、2005年度は減価償却費を除く営業費用+支払利息ー営業外収益
本来何の努力も無く減少する減価償却費の減少分1億6千万円に比べ経常損失の改善分が1000万円と言うのは実質的に経営が悪化しているとも見られます。
その要因として大きいのは償却前営業費用の増分2億2千万円でこの増加で営業収益の増加分7千万円、減価償却費の減少分1億6千万円と言う改善部分をチャラにしてしまっている感じです。
さてこの2億2千万円の原因は何でしょうか?
法定点検や塩害発生などの修繕費が約二・三倍の二億五千四百七十五万円となったことが響いた。
修繕費の増加が大きいようです。実際金額ベースで大まかに比較すると(単位万円)
2005年度:11076(2006年度の額を2.3で割った額)
2006年度:25475
増加分 :14399
償却前費用の増加分:22231
差:7832
確かに修繕費の増加分が2/3を締めますが残額が8千万円近くあります。修繕費を除く償却前費用が16億円弱ですから5%近い伸びになります。これについては後述します。
さてここまで書いてきてこのゆいレールに関してどう思われたでしょうか?「ずさんな需要予測が外れて赤字に苦しむ3セク鉄道」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。さて需要予測と乗客数の推移を昨年の決算レポートで調べた際には
年度 乗車人員 需要予測
2003 31905 31350
2004 32049 32258
2005 35940 33197
と太字で強調しているのですが3年中2年は需要予測の数字をクリアし今年度に関しては
〇六年度の乗客数は千三百六十四万八千四百七十四人で、一日平均三万七千三百九十三人。目標の三万七千人を4%上回った。
との事です。この目標の3万7千人に関しては需要予測よりも大きな数字を設定していてそれを上回る結果を出したと言う事です。
それでも営業収入の2/3にもなる16億円以上の赤字を出し、債務超過に陥ったと言うのは恐ろしい事です。極端に言ってしまえばこれまでの赤字3セク問題で散々取りざたされた需要予測と言う数字には何の経営的な意味合いが無いと言う事を証明していると言っても過言ではないのです。
何と無く感じるのはかつての需要予測は当らないまでもそれを満たせば一定の経営を保障していたのかもしれませんが今の需要予測は当るかもしれませんが何の経営的な保障が無いと言う事なのかもしれません。
さてそんなこんなで債務超過に陥ったゆいレール今後存続の為に
同社は中長期計画で、固定資産税の減免や県、那覇市の転貸債を財源に借り入れた開業前設備資金の返済期間延長など4項目の行政支援を求めた。固定資産税については「県外の第三セクターのモノレールには、ほとんど減免措置が講じられている」(同社)が根拠だ。
と言った形で行政への支援を受けつつ生き残りを計るようです。債務超過や資金繰りの悪化を期に行政への支援を受けて生き残ると言うのは多くの第3セクター鉄道で行われている事です。しかし同じモノレールでは気になる出来事もあります。
産業活力再生特別措置法に基づく事業再構築計画の認定について(北九州高速鉄道株式会社)by国土交通省@2005年7月28日より
(1)事業再構築計画に係る事業の目標
北九州高速鉄道株式会社は、昭和60年1月9日に小倉(現平和通)・企救丘間8.4kmを開業し、平成10年4月1日のJR九州小倉駅までの延伸開業を経て、現在、小倉・企救丘間8.8kmの軌道事業(モノレール事業)を経営している。
輸送人員は平成16年度において約1,135万人(1日平均約3万1千人)であり、北九州市民の重要な交通機関として定着している。
平成10年度以降は単年度黒字の計上を継続しているものの、開業後20年を経過し、今後、100億円にものぼる車両・変電設備・運行管理システム等の大規模更新が予定されていることから、これに備えて財務体質を強化する必要があるが、初期投資等に係る借入金等により、平成16年度末で約148億2千万円の債務超過状態にある。
このため、北九州市等からの出資金82億円の100%減資を行なった上で最大株主である北九州市を引受先とする第三者割当増資を実行し、累積損失を解消するための無償減資を実施するなどの施策を含め、更なる財務体質の改善を検討していくこととした。
一昨年の2005年、福岡の北九州モノレールが産業再生を適用し実質的に破綻してしまった件に関するプレスリリースです。この路線は太字部で強調しているように曲りなりにも黒字化しこの申請を出した時点で7年連続の黒字だったのですが結局この跡予定されていた大規模修繕への負担に耐え切れないと言う判断で産業再生法、即ち破産への道を選んでしまった訳です。
ゆいレールは北九州モノレールと同様にこの破綻への道をひた走っていると見て否定する材料はあるでしょうか?
さらに厳しい事に今回の費用増加の理由の理由として挙がっている塩害による修繕費の増加、そして残りの8千万円の増加の問題も出てきます。記事では言及が無いので何とも言えないですが、個人的には金利の負担増加が気になる所です。
こう言った面を考えるとある意味で北九州モノレールよりも厳しいのかもしれません。
ただゆいレールに本当に未来が無いかといえばそんな事も無いと思います。理由としては
・現在の赤字額16億円は開業費の償却年約4億円の負担も含めた物でそれが今年で終了するので今後はその分収支が改善する事
・現状でも乗客は増加傾向にあること
・現在ガソリン価格が高騰している中で負担額が安定(少なくともガソリンのように2〜3年で4割も値上げは考えられない)している鉄道の存在意義が増す事
と言った事が挙げられます。
少なくとも償却前損益がプラスであり、残すほうが負担額が少ない以上残すべきですし、その意義はあると考えます。
何だか昨年の決算レポートの簡易版の様になってしまいましたがこの辺で失礼します。
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