[フレーム]

山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

ここブログでは新書を10点満点で採点しています。

2005年05月

新書とは思えない密度の濃さの本。おなじ講談社現代新書の『<子ども>のための哲学』なんかと比べてもはるかに読みづらいです(いい意味でも悪い意味でも)。『<子ども>のための哲学』がある程度著者にとって答えの出ている問題を取り上げているのに対して、こちらはまだまだ考えている途中のような問題が取り上げられています。
個人的に興味深かったのは第3章の「私的言語の可能性」を扱った部分。ウィトゲンシュタインが否定したと思われる私的言語を、同じくウィトゲンシュタインの言葉から復活させようという試みは、個人的に納得はできなかったけど面白かったです。あるていど哲学になじんだ人でないと難しい気もしますが、読み応えはある本です。
永井均『私・今・そして神―開闢の哲学』
台湾の日本が大好きな若者たちである「哈日族(ハーリーズー)」について、その現象と歴史を分析した本。「日本文化のどういうところが受けているのか?」という分析に関しては物足りない面があり、特に日本のドラマや漫画などの中でどういったものが台湾で受けているのか?という部分が欠けている点は物足りないです。ただ、この本は意外と知らない台湾の現代史を知ることができる本でもあります。国民党政府による北京語の強制や1987年まで続いた戒厳令など、改めて台湾の複雑なアイデンティティを考えさせられます。

酒井亨『哈日族 -なぜ日本が好きなのか』
「負けた教」というネーミングそれほどいいと思わないけど、現代の若者たちに広がる「確固たる自信のなさ」ともいうべき気分を分析したこの本は、「社会の成熟度と個人の成熟度は反比例する」というスタンスのもとに、決して説教や単なる世代論にはならず、現代社会の様々な問題をえぐり出しています。特に少年犯罪の分析に関しては、2003年の長崎幼児殺人事件における「少年犯罪という『祭り』」の指摘など、鋭いものが多いです。「大きな事件には必ずそれを見る側の欲望が投影されている」、そのことを改めて気づかせてくれる本です。
ソシュールの思想を解説した新書で、内容的にはわかりやすいです。哲学系の人が書いたのではなくて言語学系の人が書いた本なので、例えば比較言語学とソシュールの目指した一般言語学の違い、通時態と共時態の関係など、よりクリアーになると思いいます。ただ、シニフィアンとシニフィエを「所記」と「能記」書くのは慣れてないぶんちょっとわかりにくい。あと、ソシュールの考えを説明したあとにすぐさま自分の疑問点を挟むんですが、もうちょっとまとめて疑問点を出してくれた方が、読む方としては読みやすいかな。

町田健『コトバの謎解き ソシュール入門』

記事検索
月別アーカイブ
★★プロフィール★★
名前:山下ゆ
通勤途中に新書を読んでいる社会科の教員です。
新書以外のことは
「西東京日記 IN はてな」で。
メールはblueautomobile*gmail.com(*を@にしてください)
人気記事
タグクラウド
traq

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /