卒業生向け

【学部長Blog005】(報告編)「ベストティーチャー賞」受賞

2025年7月 6日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース


メディア学部長の三上です.
ありがたいことに,先日「ベストティーチャー賞」を受賞しました.
これは全学で実施している,学生による「授業評価アンケート」で,「学生が授業に意欲的に取り組んだか?」,「自分にとって有意義だったか?」,「質疑応答やつまづきに対する対応が充実していたか?」などの点を加重平均して上位の授業を表彰する制度です.
2024年度の授業を対象に評価して,よく2025年に決定,表彰となりました.
履修者80人以下の授業とそれ以上の授業に部門を分けて表彰しています.

受賞対象となった授業は「ゲーム学入門」という名前の授業で,対象となった2024年にカリキュラム改定により初開講した1年生向けの授業です.
授業準備がギリギリになって,月曜2限の授業なので,毎週土日に慌てて仕上げる感じでした.
いわゆる「ゲーム研究」と「ゲームデザイン」を組み合わせて導入的に1Q(7週)だけで実施するという授業で,「ゲーム研究」は吉田寛先生や小林信重先生の著書を参考書として,ゲームの分析やクリティカルシンキングを早期に実感し,「ゲームデザイン」はカイヨワやホイジンガの遊びに関する研究やMDAフレームワークなどから作成した独自のワークシートから段階的に企画を考えてA4用紙一枚程度にまとめる「ペラコン」をやる感じの授業です.
1年生の月曜2限ということで,大学に入学してすぐの学生なので,とにかく「ユーザー」から「開発者」,「研究者」,「ビジネスパーソン」の視点に切り替えられるようにしたいのと,「答えが一つではない問い」に臨む姿勢や「クリティカルシンキング」を早いうちに身近な題材で体験してもらい,メディア学部生としての土台を作るような授業にしようと設計しました.もともと最初のオリエンテーションが重要と考えていたので機会があればやりたかったので,忙しいのにわざわざ負担を増やしてでも実施したかった授業でした.

ふたを開けたら昨年度は260人が履修(今年は282人)していて,選択授業なのにメディア学部1年生の90〜95%が受講する授業になりました.毎回小グループでやってきた課題のディスカッションなどもするのですが,議論に参加できない学生を出さない工夫が必要でした.もともと1年生なのでまだ知り合いが少ないので,近くにいる人と知り合いたい意欲も手伝って,意外とグループが出来るのと,この段階なら一人でいる学生にも「こっちおいで」と呼んであげると意外と素直にグループに交じって話が始まります.
また,全員議論ができるように,あらかじめ提出させた答えがひとつではない課題(ある意味何を提出しても間違いではない)を報告し合って議論させると,心理的安全性が比較的確保出来て議論できるかなとか考えて設計しました.
「ペラコン」は授業の最終回に提出のあった全258作品すべてを匿名で公表&講評しました.もともと本家CEDECのペラコンは「15秒で企画の良さが審査できるようなシートを!」と募集していますし審査員の皆様にもそのように審査をお願いしている手前,私も15秒(とは言いませんが)で企画の良いところとどこ頑張るともっとよくなるかを,矢継ぎ早にコメントする回をやりました.最終課題のフィードバックをインタラクティブに260人分やるのはさすがに聞いたことがありませんが何とかへとへとになりながら乗り越えました.
(実は最終週の時点ではすでに授業アンケートは提出済なんで,評価には影響しないのですが・・・)


これをきっかけに,ゲームに限らず多くのものに,学生が興味を持って自発的に大学の学びを実践してくれればありがたいです.

2025年7月 6日 (日)

【学部長Blog005】コンテンツとの出会い(3)<アニメ編>

2025年6月 8日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です

少し間が空きましたが,私が興味を持ったコンテンツのアニメ編です.
前にも書いた通り,微妙に映画館へのアクセスの悪い横須賀の片田舎に住む私にとって,映像コンテンツはテレビから入ってくることが多かったです.しかし,外を駆けずり回っていた私がリアルタイムにテレビ見る機会にはそれほど恵まれませんでしたw.
それが変わったきっかけは家庭用のVTRの復旧とレンタルビデオの普及です.
高校に入ったぐらいの時に,少し大型のテレビ(当時は4:3のブラウン管)とVHS方式のビデオデッキが家に来て,話題になった映画を後から見れる機会が実現しました.

そこで,当時高校の時の友達の間で話題になっていた作品を借りてみんなで見ようということになりました.その中にあったアニメ作品が2作品あり,その作品がそれまでのアニメに対する私の印象を変え,今でも記憶に残っています.

一つ目は「風の谷のナウシカ」です.シリアスなストーリーやキャラクタの存在感,立ち振る舞いもさることながら,私が当時特に印象に残ったのは「腐海」の美術表現でした.幻想的な世界を細部まで描写した世界観が印象的で,もともと美術が好きだったこともあり,当時の課題だったエッチング(版画)で「腐海」を題材にして制作するほどでした.

もう一つは「AKIRA」です.壮大な設定の近未来を舞台にした作品で,細部にわたる描写のすばらしさが「カッコよさ」に繋がっていて,何度も見返しました.

東京工科大学で金子先生のつてで,アニメ制作のデジタル化の支援として,業界団体を立ち上げてデジタル化のためのマニュアルを制作することになりましたが,その際に「風の谷のナウシカ」や「AKIRA」に携わったスタッフの方とご一緒に仕事したり,それらのプロダクションの方に使ってもらえるような書籍が発行できたのは大変光栄でした.

このデジタルアニメマニュアルは,今でも多くの人に覚えていただいいます.最近では生成AIの普及によりアニメ制作技術がまた確信することが見込まれています.引き続き「実学主義教育」の観点から,実社会に役立つ教育と研究の社会還元の視点でまた貢献できればと思います.

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デジタルアニメマニュアル
(今でも利用されるフィルムアニメからデジタルアニメへの移行のためのマニュアル

2025年6月 8日 (日)

【学部長Blog004】コンテンツとの出会い(2)<ゲーム編>

2025年5月18日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部長の三上です

ゴールデンウィークで少しお休みさせていただいておりましたがまた再開したいと思います.
前回に続き,私がコンテンツに興味を持つきっかけになり,今でも影響を受けていると思うコンテンツについて紹介してみようと思います.まず今回はゲームの方から.

私はアーケードゲームだと「パックマン」と「ゼビウス」が大好きで,近所の「牛乳屋」や「饅頭屋」と呼ばれる,ゲーセンではないけどゲームが置いてある商店で並んでプレイしていました.そんな私がいわゆる家庭用ゲーム機を購入したのは中学1年(1985年)の冬でした.それまでは任天堂のゲームウォッチを小学校5年ごろに買ってもらって遊んでいましたが,そこまでのめりこむことはなかったです.

最初の家庭用ゲーム機は任天堂のファミリーコンピュータで,当時発売され大人気だった「スーパーマリオブラザーズ」がどうしてもやりたくって,お年玉を使って購入しました.ところが当時のカートリッジソフトはソフトと言ってもハードウェアでしたから,すぐに大量生産できるわけがなく,欲しくても購入できませんでした.

そこで,ハードと一緒に買ったのは当時アーケードから委嘱されたばかりだった「シティコネクション」(ジャレコ)と「ジッピーレース」(アイレム)と「エレベータアクション」(タイトー)でした.「スーパーマリオブラザーズ」は手に入らなかったものの,アーケードゲームとしてもプレイしていた作品が無限に自宅でプレイできるのは本当にうれしい限りでした.

そして,その後私が出会ったのは,今でもシリーズが脈々と続く「ドラゴンクエスト」でした.
まあ,同世代の結構な人数が当時この大ヒットゲームに魅了されたので,今となってはそれほど新鮮味はないかもしれませんが,それまでのゲームと違って,継続してプレイしてストーリーをたどっていくという遊びは斬新でした.

当時はネットなどもなく,攻略サイトは存在していません.ファミコン通信などの雑誌は存在し,攻略本が出始めたころですが,そこまでタイムリーで詳細な情報は出ていないので,学校では攻略の話でもちきりでした.

どれぐらい時間かけたかわかりませんが,それは夢中になってマップ上を探索しまくりました.そして第2作ももちろんのめりこみました.この当時はプレイデータをゲーム機に保存するという概念はなく,プレイデータは「復活の呪文」と呼ばれる,ドラクエ1では25文字,ドラクエ2では52文字のひらがなによる暗号がセーブデータになっていました.一語づつ間違えなく記すのですが,もし間違えているとその日のプレイの記録がなくなり,前の日に逆戻りしてしまいます.スマフォなどもありませんので,画面を写真でとるようなこともできません.インスタントカメラでも持っている人であれば写真に残すこともできたでしょうが・・・(チェキが発売されるのは1998年なのでまだ敷居が高い).
そして,第3作のときはちょうど高校受験のタイミングでした.プレイを始めたら絶対にのめりこむをはわかっていたので,購入はしたものの手を付けずにずっと保管して,試験が終わった日からプレイしました.

ドラゴンクエストは今でも発売されると必ずプレイするゲームとなりました.ドラゴンクエストの作者である堀井雄二さんとはデジタルコンテンツ協会のデジタルコンテンツグランプリで表彰する側として参加して,受賞される堀井さんと直接お話しする機会がありました.とにかく感謝を伝えたことを覚えております.

ファミコン以前に夢中になった「パックマン」の岩谷徹さんや「ゼビウス」の遠藤雅伸さんには,日本デジタルゲーム学会で理事として学会運営をご一緒したり学会で議論する機会にも恵まれ,子供のころに私に影響を与えた皆さんと,社会人になって今度は次の人材を育成する側としてご一緒できたのは本当にうれしい限りでした.

P.S
当時購入したファミコンのゲームはまだ資料として持っています.意外と几帳面な私はパッケージから出した後,外箱や取説は大切にしまっておきましたので,ほぼ新品に近い状態で保存しております!(今度その写真も紹介します)

2025年5月18日 (日)

【授業紹介】情報の「見せ方」「伝え方」をデザインする──「情報デザイン入門」の世界

2025年5月16日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

メディア学部では,昨年度から1年次向けの新しい授業「情報デザイン入門」がスタートしました(担当は私です).

この授業は「情報をどのように人に伝えるか」をテーマに,日常の中にある"情報"を見つめ直し,それをわかりやすく,効果的に伝える方法を考える内容です.

たとえば皆さんが目にする駅の案内板,アプリの画面,Webサイトのレイアウト,動画のサムネイルや編集.
これらはすべて「情報のデザイン」の成果物です.
情報がただ存在しているだけでは意味が伝わらない場合も多く,それを"誰にでも伝わるように整える"のが,情報デザインの役割です.

授業では,情報デザインの考え方や歴史,そして「センスメーキング(Sensemaking)」といった情報を理解・整理するための方法論も学びます.センスメーキングとは,混沌とした情報の中から秩序を見出し,意味を構築していく人間の活動のこと.こうした理論に基づいて,紙のレイアウトやポスター,インフォグラフィック,さらには映像表現など,実際に手を動かしてデザインを行う課題にも取り組みます.

また,近年の情報デザインでは,単に「きれい」「見やすい」だけでなく,「使いやすい」「気づきを与える」ことも重要です.
授業では,ユーザの視点に立ったデザイン(ユーザ中心設計)や,人とモノとの"対話"を生み出すインタラクションデザインなども扱い,Apple Watch や Spotify などの実例をもとに分析を行います.

情報デザインとは,まさに現代を生きるための"読み書き能力"を磨く学びとも言えるかもしれません.
私たちの生活はますます情報に囲まれ,その取捨選択や見せ方が人生を左右する時代です.

「デザインはアートとは違うの?」と思っている人もいるかもしれません.でもこの授業では,情報を"誰かに届けるための工夫"こそがデザインであるという視点から,身近な例や実践を通して学んでいきます.

将来,メディア・コンテンツ制作,広告,アプリ開発,UX/UIデザインなどに関心のある人には,とても魅力的なスタートアップ科目になるでしょう.



文責:菊池 司

2025年5月16日 (金)

【授業紹介】メディア学部でのグラフィックデザイン系の授業

2025年5月14日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

東京工科大学にはデザイン学部がありますが,メディア学部でもデザインに関することを学ぶことができる授業が複数あります.
それは当然,「メディア学」と「デザイン学」が密接に関りがあるからです.
たとえば,グラフィックデザインの知識は,映像での画面構成やカメラワーク,ゲームでのユーザインタフェースのデザイン,商品パッケージやポスターのデザインなどに必要となります.

今期は 4 月から3年次前期の「メディア専門演習:ビジュアルコミュニケーション」が始まっています.
本授業に関しては,こちらのブログで紹介していますのでご覧ください.

後期は1年次を対象として「視覚デザイン入門」があります.
また,今年後期(第3クォーター,第4クォーター)からは新しく「Create with AI」という演習も始める予定です.

機会がありましたら,またこのブログで授業を紹介したいと思います.


文責:菊池 司

2025年5月14日 (水)

【研究紹介】ドライアイスの CG

2025年5月12日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

先日,私たちの研究グループによる研究成果が「International Journal of Asia Digital Art and Design」という国際的な論文誌に採録されました.
この研究では,「ドライアイス」を CG で表現するための手法を提案しています.

ドライアイスは,学校の授業や工場,映像制作などでよく使われています.水などの液体に入れると,モクモクとした白い霧が出て,見た目もとても印象的です.動画では霧がたくさん出てくるシーンがよくありますが,実は「水に入れてから霧が出るまでの流れ(たとえば,ドライアイスが溶ける様子や泡が上がる様子,霧があふれる様子)」は,コンピュータグラフィックス(CG)の世界ではあまり詳しく表現されていませんでした.
なぜかというと,ドライアイスがどうやって霧を出すのか,その正確な仕組みがはっきりしていないため,CGで本物のように再現するのは難しいからです.

そこで私たちの研究では,ドライアイスが水の中で霧を出す様子をCGでリアルに再現する方法を考えました.
まず,ドライアイスが水に入るときの様子を「炎のシミュレーション」を応用して表現します.これにより,水の中で上がってくる泡を滑らかな球体として CG にします.そして,CG の中でドライアイスや容器,泡がぶつかる様子も再現し,よりリアルな動きを出しています(これはAPIC という技術を使っています).
次に,霧を出すために,水面から出てきた泡の位置をもとに「霧のもとになる点(ポイントクラウド)」を作り,それを霧の形に変えます.そのあと,霧が広がる様子を計算するシミュレーションを使って,容器の中に広がる霧を再現します.
霧が上にのぼっていく速さ(風のような流れ)は,この研究で新しく考えた式を使って計算します.
この式では,最初の霧の速さも考えに入れています.また,霧がだんだん薄れて消えていく様子は,水の中に含まれる水蒸気の量によってコントロールしています.

この方法を使えば,水の中でドライアイスが溶けて霧が出る様子や容器から霧があふれてくる様子を,現実に近い形で効率よく CG で表現できます.さらに,今までの「ただ下に流れる霧」だけでなく,もっと自由な霧の表現も可能になります.

論文では,動画へのリンクも紹介していますので,是非ご覧ください.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adada/28/4/28_97/_article/-char/en






文責:菊池 司

2025年5月12日 (月)

【学部長Blog003】コンテンツとの出会い(1)

2025年4月20日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部長の三上です.

今回は,現在の研究テーマとなっているコンテンツとの出会いについてお話ができればと思います.
私の生まれは1972年で,いわゆる団塊Jr.世代(第2次ベビーブーム世代)です.政府の人口動態調査によると 2,038,682人ですから,2024年の720,988人と比較すると3倍近いですね.

私の幼少時代から学生時代にかけては遊び,娯楽がアナログからデジタルに変化していった時代なのかなと思っています.私が生まれたのは東京近郊というか神奈川の南の横須賀というところ(の中でもかなり南の方)です.海岸まで1分,野山(山椒魚がいるような清流もあった)は3分ぐらいの環境なので,おのずから野生児さながらの少年時代を送ります.半面,子供が遊びに行ける繁華街は横須賀中央にありましたが,映画館も規模が小さく,コンテンツに触れるにはいささか不便な場所でありました.

そのころの遊びはというとまさに昭和のレトロな遊びそのもの.公園のような整備された環境があまりなく,自然を生かしての遊びがほとんどでした.海岸はそれなりに砂浜があったので,野球(ソフトボール)やったり,山や小川で昆虫採集したり,空き地でケイドロや鬼ごっこなどと,いわゆる昭和の遊び満載でした.また,近所に住む親戚が工務店を営んでいて作業場があったので,余った木切れとかをもらってきて加工して船を作ったり竹馬作って遊んだりなどしていました.(今でも木工やDIYが比較的できるのはこのころの経験のおかげです)

そんな,昭和の野生児丸出しで野山を駆け巡っていたころ,世間では「インベーダーゲーム」ブームが爆誕します.1980年ごろは小学校3年から4年生にかけての時期でしたが,当時はその年齢でゲームセンターに行ってゲームをやるのはなかなかに難しい時期でもありました.多くの私の周りの同年代の研究者も同じように,興味はありつつもなかなか近づけない時代を感じていたのではと思います.
そしてほぼ同じ時期に爆誕したブームが「ガンプラ」ブームです.こちらは欲しくても売っていないから買えないという時代(今も近いかな)です.ケータイもSNSもないので,どこかのお店に入荷してもその情報はわかりません.ですので,自転車に乗って近所のおもちゃ屋さんをぐるぐる回る日々が始まります.海や野山をかけずりまわり,ガンプラ入荷のうわさが出ると自転車を走らせておもちゃ屋を回り,いつかはいりたいなとゲームセンターを遠目に眺めるという少年時代が続きます.

そんな少年時代に大きな影響を与える出来事が,1980年台中盤に立て続けに起きます.それは,「ファミコン」の誕生と「レンタルビデオ」の普及です.それまで,近づけなかったゲームセンターや行きたくても行けなかった映画館がいつでもアクセスできるようになる,まさに革命的変化が起きるのです.

次回は具体的に少年時代に遊んで現在でも記憶に残っている作品について紹介できたらと思います.

20250420かけずりまわった海岸です

2025年4月20日 (日)

【学部長Blog002】意外と広い専門分野

2025年4月13日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部長の三上です.

隔週更新と思いましたが,頑張れるうちは毎週書こうと思いましたので更新します.

私の現在の専門分野として,大学の教員プロフィールページには「プロデュース、ディジタルコンテンツ制作技術、映画、アニメ、CGアニメーションおよび ゲーム制作技術、制作管理技術
」と記載しています.

プロデュースという点は職種というか,立ち位置の色合いが濃くて,全体を見渡すいわばプロジェクトリーダ的な統括的な部分が専門ですよという意味だったりします.もちろん個々の技術も専門ではありますが全体を統括することが仕事柄多かったことからここを書くようにしています.一方制作技術の込み入った部分も専門とするので,ある意味かなり範囲が広かったりします.実際に同じ業界内でも,つながりがなかったりする人同士が,私を通じてご挨拶する機会があったりするぐらいです.(プロデューサや社長と,現場で面白いツールを開発しているエンジニアなど)

その後ろに「映画」,「アニメ」,「CGアニメーション」および「ゲーム」とつながるのですが,これも「エンタテインメント」,「コンテンツ」という分類では同じように扱われるのですが,要素技術はかなり異なるので,業界は全く異なっているといっても過言ではありません.ここでもゲーム業界の技術カンファレンスであるCEDECCGの世界的なカンファレンスであるSIGGRAPHなどで知り合いとお会いしてお話ししていると,思いもよらない人通しが実は初対面だったりしておひき合わせする機会が多くありました.

こんな経験をさせていただいたのも,やはり東京工科大学でコンテンツ教育を立ち上げた金子先生の影響は大きいと思います.金子先生はもともとテレビ業界の方で,南カリフォルニア大学大学院のシネマ&テレビジョンに留学され,ハリウッドの映画会社MGMでもお仕事をされ,その後CGVFXプロダクションをハリウッドと日本で設立されました.コンピュータを使ったアニメ制作の最先端を走り,3DCGなどの研究も進めました.その後そのCG会社の3DCG部門は当時のナムコ(現在の株式会社バンダイナムコエンターテインメント)に合併されましたので,ある意味ここでゲームともつながってきます.(今年卒業生が株式会社バンダイナムコエンターテインメントにお世話になったのは実に感慨深かったです)

映画,アニメ,ゲームの本来は異なる業界をつないだのは3DCGで,東京工科大学においてもその研究開発をご一緒させていただき,CG業界から映画,アニメ,そしてゲームへと交流の場を広げることができました.

異なる業種や職種の方と仕事をしながらつなげていく力は母校である慶應義塾大学SFC(初代メディア学部長でもある相磯秀夫先生が1990年に立ち上げられました)での経験と最初の職場である総合商社の日商岩井株式会社の影響が強いと思います.

文理芸融合という考え方や,プロジェクト全体の推進のために広くコミュニケーションを図る重要性はこのころから醸成されていたのだと思います.

次回は,この専門領域に興味を持ったきっかけというか,少年時代にコンテンツやエンタメにどのようにはまっていったのかをお話しできたらと思います.

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DMCスタジオでの実写VFX(兼CGアニメーション)のためのMOCAP撮影
(一番右が金子先生,中央にいるのは「FRENDS」のディレクターのRoger Christiansen氏)

2025年4月13日 (日)

学部長就任のご挨拶【学部長Blog001】

2025年4月 6日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

2025年4月1日より東京工科大学メディア学部の学部長に就任しました三上浩司です.
ゲームやアニメ,CG,映画,XRなどのコンテンツ制作技術の研究開発を専門分野に,産業界も大学も垣根なくいろいろと活動してまいりました.

本当はもう少し身軽な立場で自由に動ける方が性に合っているのですが,色々考えて今は私がやるべき時だと判断してメディア学部長をお受けすることにしました.
東京工科大学メディア学部は1999年に日本で一番最初の「メディア学部」として,相磯秀夫先生が立ち上げられ初代学部長に就任してスタートしました.相磯先生は私の母校でもある慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの環境情報学部の初代学部長でもありました.(そんな相磯先生先生の立ち上げ他学部に四半世紀経って学部長として就任できるのは大変光栄です)
当時,私が働いていたエムケイという制作会社(ゲーム,3DCG,アニメ)の代表の金子満先生も教授として設置から加わり,コンテンツの制作技術の研究開発には実際に制作ができるスタジオとスタッフが必要だとの強い思いがあり,私もお手伝い(研究所のプロデューサーというか嘱託技術員)することとなりました.
金子先生はハリウッドのプロダクション「メトロライトスタジオ」のファウンダーの一人であり,アカデミー賞もエミー賞も受賞したCG業界の著名人であり,日本で一番最初にテレビシリーズにCGを用いるなど,革新的な取り組みをされる方でした.また,制作だけでなく東京工業大学(現東京科学大学)で博士号を取得した稀有な方でした.
東京工科大学で制作技術の研究とそれを生かした作品制作をする傍らで,2004年にはゲーム開発教育カリキュラムをスタートさせ,2007年には教員としてメディア学部に参加することになりました.現在まで,先進していたハリウッドの事例をはじめ,国内外の産業界や大学方と交流し,かなりカリキュラムに手を入れながら,奮闘してきました.

メディア学部長は私で8代目になるのですが,これまでは技術系が6名,社会系が1名と,いわゆるエンタテインメントやコンテンツ系の学部長は初めてになります.
さらに,これまでの学部長はメディア学部就任時から教授として活躍された先生でした.一方の私は嘱託技術員から,嘱託研究員,研究所助手,講師,准教授,教授とある意味一番下の方から積み重ねてきました.
この辺りの経験と視野(視座)を生かして,周りの先生方やアラムナイ(OB)の皆様と一緒になって,時代に合わせてさらに発展する学部,大学にしていきたいと思います.

引き続き皆様からのご支援を賜ることができればありがたいです.
よろしくお願いいたします.

今後は隔週ぐらいを目指して,日曜日に学部長としてのBlogの公開をしていこうと思います.

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2025年4月 6日 (日)

2024年度冬の三上・栗原研究室学会発表

2025年3月31日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは。メディア学部助手の栗原です。

本日は他の先生方も報告されていますが、2024年度冬に開催された学会における本研究室の発表についてご紹介したいと思います。

本研究室では2月に行われた日本デジタルゲーム学会第15回年次大会(松山大)、3月に行われた情報処理学会インタラクション2025(一橋講堂)、映像表現・芸術科学フォーラム2025(東京工芸大)の3つでポスターやデモを用いた発表をし、参加者にシステムのデモを体験してもらったり議論をしました(写真はインタラクション2025の1枚)。Img_20250302_135007

その中で学部4年生の発表人数はなんと15名、研究室の配属が16名だったのでほぼ全ての学生が少なくとも1回は(1名は夏と合わせて2回)自身の卒業研究について外部発表を行ったことになります。もう1名についても成果がなかった・間に合わなかったわけではなく、やむを得ない諸都合で見送ったためでした。さらに、学部生だけでなく大学院生4名も映像表現・芸術科学フォーラム2025に発表し、3名は口頭発表を行いました。

このように、たくさんの学生が外部に自身の研究成果を発表できたのは学生が興味のあるテーマを選択し、紆余曲折はありましたが目標に向かって地道に進めることができたからに他なりません。私個人としてはまだまだ伝えきれていない点はあったかと思いますが、研究を進めていく上で得た知見や視点をこれからのキャリアのどこかで活かしてもらえればと思います。

ちなみに、映像表現・芸術科学フォーラム2025では学部生1名と大学院生1名が優秀発表賞を受賞しました。受賞したと聞くと特別優秀という印象があるかもしれませんが、個人的には最後は運も絡むところで多くの他の学生とそこまでの差はないと思っています。ただし、先ほども述べましたがどれだけ研究を地道に続けたか、という点をきちんとクリアしたからこそだと思いますので、そこは忘れないで欲しいと思います。

ここからは個人的な話になりますが、着任1年目で初めて経験することも多く、いくつかのプロジェクトに携わることにもなり大変なようであっという間の1年でした。それらを踏まえて来年度からはパワーアップして励んでいきたいと思います。

それではまた新年度にお会いしましょう。では。

発表した学会のリンク

日本デジタルゲーム学会第15回年次大会: https://digrajapan.org/?page_id=10347

情報処理学会インタラクション2025: https://www.interaction-ipsj.org/2025/

映像表現・芸術科学フォーラム2025: https://expressive-japan.art-science.org/

2025年3月31日 (月)

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