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koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

6月も明日で最終日となりました。涼しい気候から急に真夏の暑さになって、熱中症の人も急激に増えているようです。ちょっとした外出も、水分補給など、気をつける必要がありますね。

さて、ちょうどひと月ほど前。5月の月末は、大学院の総合史学研究II(文化継承学I)の
授業で、大学院生たち、先生方と、市ヶ谷にある、「市谷の杜 本と活字館」に行ってきました。

「市谷の杜 本と活字館」は、DNP(株式会社:大日本印刷 *そういえば、卒論演習の履修生の
一人が就職していったけれど、どうしてるかしら?)の事業の原点である活版印刷の
職場を一部再現し、文字のデザイン、活字の鋳造から、印刷・製本までのプロセスを展示、
紹介する施設なのだそうで、2021年から一般公開されています。


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1926(大正15)年に竣工された旧営業所棟の建物を修復・復元したそうで、なかなか雰囲気ある建物です。




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正面玄関はこんな感じ。

私は、父が新聞社務めで、活字に関わる(記者の手書き原稿を活字化する)仕事をしていたので、
なんとなく、仕事場を見学に行った時のような、懐かしい空気を感じました。

とはいえ、当時は既に、一字一字、活字を手作業で拾うような仕事ではもうなかったように
思います。

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無数の小さい活字たち。

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その字を組み合わせて。

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印刷されたものはこんな感じ。

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色々な道具を示したキューブもありました。

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活字とは別の、製版のような見本も。

活字本(一字一字、彫られた活字を組み合わせる)は、秀吉の朝鮮出兵により銅活字として
持ち込まれたもので、日本では木活字で作られました。

ただし、大量印刷するのであれば、製版本の方が、手間なく安価に作れたためか、元からあった
こちらが主流になったようです。

しかしながら、古典の古活字本においては、「嵯峨本」と呼ばれる江戸初期に京都の嵯峨野で、
本阿弥光悦らに作られた美麗な書物が有名です(嵯峨本『伊勢物語』など)。

伊勢物語 嵯峨本 | 公益財団法人 五島美術館
(上記のHPで画像が見られます)

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他にはこんな大きな機械も展示されていました。

そして2階に上がると......

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あら楽しい。印刷における色(カラーインキ)の展示です。

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本当に、4色で現実と見紛うばかりの「絵」ができあがるわけですから、不思議です。

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2階は、色の楽しい実験的な展示から、手作りしおりやカレンダーが作れるワークショップ
コーナー、紙の印刷物のショップなど、子供も楽しめそうな展示がたくさんありました。

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製本コーナーは、上記のような展示から、デジタルパネルで、質問に答えながら、注文主の
希望する本を仮想で作れるところもありました。

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こちらも様々な道具が展示されています。

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そして最後は、1階入ってすぐ右にあるカフェコーナーを視察(?)。

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私が選んだのはこちら。ブラックインキ(?)のアイスのせ。美味でした。

総じて、大変たのしく見ごたえがある展示です。おすすめします。


市谷の杜 本と活字館

Ichigaya Letterpress Factory

162-8001
東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
電話:03-6386-0555
開館時間:10:00〜18:00
休館:月曜・火曜(祝日の場合は開館)、年末年始
入場無料






六月に入りました。五月は急に寒くなる日もあって、体の調子もイマイチでしたが、ようやく
夏めいた暑い日も出てきました。わたしは暑い日の方が得意です。

さて、前回の答えです。御簾の外に猫がいるのは、『源氏物語』若菜下巻の女三の宮の姿が見えて
しまう場面。すでに女三の宮の着物の裾は外に出てしまっています。そもそも高貴な姫君が
こんなに端近くにいなければ、猫がとびだして御簾がめくれてしまっても、明るい外から
室内は見えなかったはず。女三の宮は、若い人たちが外で蹴鞠をする様子を見ていたのでは?と
言われる所以です。

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女三の宮を猫のイメージで作るとこんな感じに。展示作品の中には、売り物もありましたが、
この作品はいち早く売れていました。


2枚目、3枚目の猫写真は、『枕草子』「上にさぶらふ御猫は」の章段に登場する猫で、一条天皇に可愛がられていました。その猫の産養が行われている場面(『小右記』に記述あり)。盃があって、お菓子があって、
たくさんの猫がいました。

そして、最後は、『更級日記』より、亡くなった大納言の姫君が猫として出てきたという夢の
話がなされます。当時、猫は犬と違って高貴なイメージがありました。

ちなみに舶来の黒猫(唐猫)を宇多天皇が可愛がっていたのは有名な話。
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本当に生きているみたい。

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黒猫ぞろぞろ。


平安文学の猫の部屋はここまで。つづいて、同展の猫パロディアートを紹介します。
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すべて有名な映画のポスター。みなさん、おわかりになりますか?


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ここまでくると、「うまい!」と膝をたたきたくなります。


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ただ個人的にはこれとか。(「スターウォーズ、帝国の逆襲」のパロディ)

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こちらが好みです。(「犬神家の一族」のパロディ。役者さんの名前まで手が込んでます)


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ゴ〇ラと違って巨大化していてもかわいいので怖くありません。化け猫シリーズ??

以上、展示のほんの一部をご紹介しました。猫は、昔から人とともにあり、さまざまな想像力を
かきたててきたことを実感しました。

展示期間は残り1週間ほど(6月15日(日)まで)。ぜひ見に行ってみてください。







寒い日と暑い日の気温差が大きい今日この頃。なかなか毛布がしまえません。
床暖房を入れてしまう日もあって、五月下旬には珍しい気候のように思います。

それでも、日中は比較的気持ちのいい日が多い五月。

今月は、複数の授業で博物館見学に行きました。

大学院生の平安ゼミでは「目黒雅叙園の百階段」、

大学3年生の演習では「東京国立博物館の常設展」、

昨日は「市ヶ谷の森 本と活字館」(史学の学生もいる大学院生の授業)

に行ってきました。

東京国立博物館の常設展は、大学がキャンパスメンバーズに入っているので、学生証を見せれば、
無料で見学できます。博物館は広いので、見るところはたくさん!
まだ行っていない人はぜひ一度行ってみてください(今回は、藤原行成の自筆の手紙が印象に
残りました)。

それから、平安文学の演習で、院生と行った目黒雅叙園の展示は、以下のようなテーマでした。

「時を旅する福ねこ at 百段階段
〜平安、江戸、大正、昭和、そして現代へ〜
期間:2025年3月20日(木・祝)〜6月15日(日)
(注記)休館日:5月7日(水)(展示替のため)」

「百段階段」とは通称で、ホテル雅叙園東京の前身である目黒雅叙園3号館にあたり、1935(昭和10)年に建てられた当館で現存する唯一の木造建築です。食事を愉しみ、晴れやかな宴が行われた7部屋を、99段の長い階段廊下が繋いでいます。階段は厚さ約5cmのケヤキ板を使用。階段で結ばれた各部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれています。」

「"昭和の竜宮城"と呼ばれた当時の目黒雅叙園の建物の特徴は、装飾の破格な豪華さにあります。最近の研究によると、その豪華な装飾は桃山風、更には日光東照宮の系列、あるいは歌舞伎などに見られる江戸文化に属するものとも言え、なかでも「百段階段」はその装飾の美しさから見ても、伝統的な美意識の最高到達点を示すものとされています。2009(平成21)年3月、東京都の有形文化財に指定されました。」

以上、ホテル雅叙園東京のHPより、百段階段の説明でした。最近は、江戸文化にもどっぷりハマっているので、それも楽しみでしたし、平安時代は、「ねこ」の登場する平安文学の場面が複数再現されている、ということで、こちらも大変楽しみに行ってきました。

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まずはこんな招き猫がお出迎えしてくれます。

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百階段はこんな感じです。

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階段の途中の室内は、様々な意匠が凝らされています。

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そして、平安文学がテーマの部屋は、内装も王朝風でした。

そして、......

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さて、これはどの作品の一場面でしょう。つづいて、こちら。

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なんだか猫がたくさんいて、宴会でもしているよう。

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アップにするとこんな感じ。まるで本物みたいな猫たちです。

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これはちょっとむずかしいかもしれません。


答え合わせは次回ということで。お楽しみに!



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