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koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

2022年03月

3月最終日となりました。早い!一年あっという間。

春休みは短いのですが、なぜか一番のんびりと過ごせます(心理的に)。夏休みは、秋学期があるということで、具体的に学生の顔が浮かぶからでしょうか(あの子、卒業大丈夫かな、とか)。

さてさて、そういうわけで、論文を書きながら、主任として主婦として、それぞれ雑事をこなしつつ、楽しく春休みを過ごしています。

そのような中、いまハマっている作業がこちら。

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はい。平安風の人形作りです。

そして「これを作ってみたい」と思ったきっかけが次の動画です。
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今は、いろいろな「リカちゃん」人形動画が出ていると思いますが、上記が一番最初ではないかと思います。「リカちゃん人形」=「子供のおもちゃ」という思い込みを見事に打ち砕いてくれました。

家族と見たのが最初ですが、私も子供時代にお世話になり、およそ20年前のしがない大学院生時代にも、再度人形を購入し、以下のようなものを作っていた時期がありました(黒歴史)。

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(単《ひとえ》姿のジェニーちゃん人形。袴は厚い布地を買ったせいで結構作るのが大変でした)

平安貴族の装束は、現在の着物とは大分作りが違います。とにかく重ね着が多いこと、布がたっぷり使われていることが特徴でしょうか。色や模様も華やかです。昔、十二単を着せてもらったことがありますが、重くて腕が上がらず、これは動けない、と実感したことがあります。

そのような装束の描写も平安時代の作品には多く出てきますので、それを可視化したいと作ってみましたが、その上の「五衣」や「表着」の制作にまで至らず断念。なんとなく心残りがありました。

その時、参考にした本がこちら。
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写真集として見るだけでも楽しい本ですが、最後に型紙までついていてお得です。

上記の本、捨てないでおいて良かった!と思ったのは、自分でオリジナルの平安風人形を作る際、大いに参考になったからです。型紙も一部、縮小コピーして使いました。

それにしても、まったく参考にするもののない、自分の頭の中での人形を形にする作業、衣装も型紙そのままでは着られないので、色々考えながらアレンジしました。以下、その工程です。

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ぬいぐるみ用コイルで簡単に骨組みを作り、そのまわりを紙ねんどで固めてボディ作り。

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黒いフェルトで髪の毛と男性用の烏帽子を作りました。

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先に、女性の単姿を作りました。腕が動かないので、半そで風に(汗)。

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今は、ここまでできています(3日経過)。左側と右側とでは、衣装の作り方が違います。

左側は、重ね着風に襟だけ貼り付けていますが、右側は、実際に下に二枚着ています。
いろいろ実験的に作りながら作業を進めています。

次は、残った男性の衣装に取り組みます。いや〜難しそう。とりあえず、直衣(のうし)姿を作ろうと思っていますが、狩衣や衣冠束帯、といった衣装もあるので、完成までの道のりは長くなりそうです。

そのうち授業でもお目見えするかもしれません。人形が完成したら、次はセット作り(?)でしょうか。

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次はこちらを参考に作っていきます。あ、でもなかなかガチャガチャ等では、平安風の備品は手に入れにくいと思うでしょ。ところがこのようなものを見つけました。
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いや〜、この御所車、きちんと動きますし、300円とは思えないクオリティです。いま、我が家にこれが3台ありますが、『源氏物語』に描かれる「葵祭の車争い」とか再現してみたいです。

フフ、いつになるかわかりませんが、お楽しみに!




3月も気づくと月末。早いです。昨日は卒業式がありました。昨年は、武道館での式も、大学に戻っての学位交付式もありませんでした。ですので、状況は幾分改善されているように思います。

ただ、世界情勢は、戦争が始まるなど、昨年に比べると悪化し、その影響が日本でも出始めています。燃料費の高騰、それに伴う物価の上昇、さらに食料危機、核戦争、第三次世界大戦、といったワードまで、ネット上をとびかっています。

日本では、度重なる地震も不安の種です。マスクもいつになったら外せるのか見通しが立ちません。
本当に、どこが出口で、いつ行動制限のない日常が戻るのかわからない、社会情勢だと感じます。

一方で、少しずつ、メディアの中には、そのような不穏な社会の陰で苦しむマイノリティの声を拾い出す局が現れてきました。またそのことが、国を動かし始めています(【新型コロナワクチン】接種後の長期間の体調不良 厚労省が全国の都道府県に患者サポートを通知(サンテレビ) - Yahoo!ニュース)

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コロナにかかるのも心配ですが、ワクチンで予想外の症状が出る可能性があることも知っておく必要があるでしょう。

実際、今年度は、接種による体調不良者が学生の中に多く見受けられました。そのことも含めて、卒業生に贈る言葉では「本当にみなさん、よく頑張りました」と言わずにはいられませんでした。

先の見えない世の中、まさにサバイバルのような状況で、頼りになるのは「自分の軸」です。文学部では、資料調査し、先行研究を吟味し、多様な意見、考え方の中、自分の解釈を磨くことに力点を置いてきました。卒業生の皆さんには、ぜひ大学で身につけた思考方法を、己の人生に生かしていってほしいと思います(そのようなことを主任挨拶でも話しました)。


さて、式の後、多くの学生が個人的に挨拶に来てくれました。お菓子をくれた学生もいて、そのお菓子が時期的に桜と関わるものでした。
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(右側はまさに春爛漫。左側は開けると下のような包装紙がでてきました)

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(こちらはリアルな桜の絵でこれまた美しい)

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(右のお菓子箱の中身。桜の塩漬けがのっていて、桃色の餡も美味でした)

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(左のお菓子箱の中身。緑の包みのタイトルは「野づつみ」緑の草餅が餡に包まれ春の野がイメージされました)


『源氏物語』で「桜」と言えば、いくつか象徴的な場面がありますが、お菓子とともに語られるのは、若菜上巻、光源氏の邸宅・六条院の桜の木々の間で行われる若者たちの蹴鞠(けまり)の場面です。

ゆゑある庭の木立のいたく霞みこめたるに、色々紐ときわたる花の木ども、わづかなる萌黄の蔭に、かくはかなきことなれど、善き悪しきけぢめあるを挑みつつ、われも劣らじと思ひ顔なる中に、衛門督のかりそめに立ち混じりたまへる足もとに、並ぶ人なかりけり。
容貌いときよげに、なまめきたるさましたる人の、用意いたくして、さすがに乱りがはしき、をかしく見ゆ。御階の間にあたれる桜の蔭に寄りて、人びと、花の上も忘れて心に入れたるを、大殿も宮も、隅の高欄に出でて御覧ず。

光源氏の息子である夕霧、そして友人の柏木(衛門督)が、この蹴鞠に参加しており、特に柏木は蹴鞠の名手であったようです(並ぶ人なかりけり)。しかも、その容貌は美しく優美で、光源氏やその弟である兵部卿宮もこの蹴鞠を観戦していました。

そのような中、光源氏の妻・女三の宮方の御簾から唐猫が飛び出し、御簾がめくれあがって、その近くにいた女三の宮の姿が露わになります。

几帳の際すこし入りたるほどに、袿姿にて立ちたまへる人あり。階より西の二の間の東の側なれば、まぎれどころもなくあらはに見入れらる。
紅梅にやあらむ、濃き薄き、すぎすぎに、あまた重なりたるけぢめ、はなやかに、草子のつまのやうに見えて、桜の織物の細長なるべし。御髪のすそまでけざやかに見ゆるは、糸をよりかけたるやうになびきて、裾のふさやかにそがれたる、いとうつくしげにて、七、八寸ばかりぞ余りたまへる。御衣の裾がちに、いと細くささやかにて、姿つき、髪のかかりたまへる側目、言ひ知らずあてにらうたげなり。夕影なれば、さやかならず、奥暗き心地するも、いと飽かず口惜し。

「袿姿(うちきすがた)にて立ちたまへる人」というのが女三の宮ですが、くつろいだ「袿姿」(女房のように十二単の正装をしていない)というのが女主人の特徴です。しかし「立ちたまへる」(お立ちになっている)のは異例です。当時の女性は座っているのが基本で、立ち姿を人に見せるのははしたないこととされていました。そもそも他人に姿を見られること自体、まずいのですが、ここでは、長いこと宮に思いを寄せていた柏木にその姿を見られ、これが後の密通に至る発端となります。

女三の宮の衣装は「桜の織物の細長」。これは当時若い女性が好んでよく着ていますが、人妻とは思えない、かわいらしさが「いとうつくしげ」「いと細くささやか」「あてにらうたげ」と繰り返し強調されます。継子の夕霧はこの姿を見て焦りますが、柏木はすっかり心を奪われてしまうのです。

この後、宴が開かれます。

次々の殿上人は、簀子に円座召して、わざとなく、椿餅、梨、柑子やうのものども、さまざまに箱の蓋どもにとり混ぜつつあるを、若き人びとそぼれ取り食ふ。

梨や柑子は果物ですが、椿餅は、椿の葉で挟まれたお餅です。運動してお腹を空かせた若者たちに、むしゃむしゃ食べられています。作り方はこんな感じ。
〜源氏物語のつばきもち〜| レシピ | NHK「グレーテルのかまど」

いただいたお菓子からの連想でした。ごちそうさま。








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