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koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

2020年02月

このようなご時世ではありますが、免疫力を上げて(個人的な努力です)、
先日、映画「ヲタクに恋は難しい」https://wotakoi-movie.com/を見てきました。

漫画とアニメは知っていたので、実写化するとどうなるのか(どう表現されるのか)、
映画館で予告を見たこともあり、気になっていました。

原作は、主人公2人(宏嵩と成海)の恋を軸に、いくつかのカップルの有り様を示していて、
彼らの交錯が一つの見所とも言えるので、映画ではそれが最後の最後まで
引っ張られているところがやや残念、ではありましたが、ミュージカル要素やコメディ
要素満載で、なかなか楽しめました。

映画の場合、おそらく情報を削いでいかないといけないので、あまり深くは描かれ
なかったのですが、主人公2人が、実は「幼なじみ」であるということは重要な
設定です。よくあるパターンと言われればそれまでですが、この設定、平安時代から
あります(詳しくは後述)。

しかも「宏嵩」(ゲームおたく)にとっては、「成海」(後に腐女子となる)が「初恋」
であることを示すエピソードが原作にはあり、「初恋」ネタも千年前からありますよ〜、
と思ってしまいました。

有名なのは『伊勢物語』の「筒井筒」です。

むかし、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でて遊びけるを、大人になりにければ、
男も女も恥ぢかはしてありけれど、男は「この女をこそ得め」と思ふ。女は「この男を」と思ひ
つつ、親のあはすれども聞かでなむありける。さて、このとなりの男のもとより、かくなむ、

(男)筒井つの井筒にかけしまろが丈(たけ)過ぎにけらしな妹見ざるまに

女返し、
(女)くらべこし振りわけ髪も肩過ぎぬ君ならずして誰か上ぐべき

など言ひ言ひて、つひに本意のごとく、逢ひにけり。
筒井筒
二人の子どもは、幼い頃、井(水が湧き出る所を木で井筒に囲ったもの)のもとで遊んで
いましたが、大人になると意識し合って会わなくなってしまいます。
しかし男は「この女と結婚したい」と思っており、女も同じように思っていました。
そのため、親の用意した結婚もせずにいましたが、隣の男から「背比べしていた井筒も背が
伸びてとうに過ぎているでしょうよ(大人になりましたよ)。あなたと会わない間に」と
歌が詠み送られてきます。
女もそれに対して「あなたと比べていた髪も肩を過ぎるほど伸びました(大人になりました)。
あなたの為でなくて誰の為に髪上げ(成人の儀)をしましょうか」と熱烈な歌を返します。

二人は「両思い」であって、願い通り、結ばれるのです(ただし結婚後は生活が苦しくなり、
一波乱あります)。

『源氏物語』でも主人公・光源氏の息子である夕霧と雲居雁の「幼な恋」が描かれており、
互いに「初恋」であることは間違いないでしょう。昔から、そのような恋への憧れがあった
ことがわかります(そういえば、以前ブログに書いた『ナルト』では、ヒロインの「サクラ」
と「ヒナタ」、双方の初恋が成就したことになりますね)。

人気ある恋愛ストーリーの王道は、千年前から「幼なじみ」と「初恋」もの、と言える
かもしれません。


先日、家族の誘いで、東京国立博物館で開催されている特別展「出雲と大和」https://izumo-yamato2020.jp/ (〜3/8まで)を見てきました。

「日本書紀成立1300年」という前置きはともかく、この二つの地方を比較しながら展示がなされるのは、ちょっと面白いなあと思いました。

最初にどーんと、出雲大社の巨大な「心御柱」と「宇豆柱」があって、まずはその大きさに、そしてそれらが残っていること自体に神秘を感じました。また勾玉と銅鐸は、出雲の展示だとよくありますが、写真をとっていいコーナーの銅鐸がゴロゴロあってよかったです(並べてあるのではなくてどんな風に出土したかがよくわかる)。
銅鐸レプリカ

出土した銅鐸はたいてい青く腐食しているのですが、そのうちの一つに一か所だけ、銅色がキラキラ見える部分がありました。それは家族から、おそらく掘り出す時にできた傷、と教えてもらいましたが、一個くらい、本物をピカピカにしたらどうか、と言ってみたら「とんでもない!」と言われました。

また勾玉については、グッズ販売が充実していて(あくまで個人的見解です)楽しめました。その写真は最後に。

私は俄然、自分の出自(父方)もあって、「大和」より「出雲」(大国主神話の残る)に注目してしまいました。樹なつみ「八雲立つ」の漫画も昔から好きですね。完全にフィクションですが、最近、主人公が転生したシリーズ(十三年後を描く)が新刊で出ていてびっくりしました。人気作が時を隔てて新シリーズで出るのはよくありますが、古代の物語もそういうものがあったのかしら??

ちなみに大和の展示では、奈良県の石上神宮に伝わる七支刀(国宝)が見ごたえあって良かったですね(以前ブログに書いた石上神宮の話はこちら→「犬の話」)。

また第三章の最後の方に展示されていた『播磨國風土記』(国宝:平安時代書写)にも注目。大和三山の「妻争い」の部分が開かれていました。
次年度は、日本文学史(秋学期)を担当するので、古い時代も復習しておかねば、と思った次第です。

では最後に、私が購入した勾玉グッズの写真です。
かわいいエコバック

勾玉イヤリング

イヤリングはつけてみると思ったより大きくて派手目な感じになりました。この形で指輪にした方が身につけやすいかもしれませんね。


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