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高瀬大介の思い出のプラグインは刹那い記憶

〜高瀬企画発気まぐれ遺言状〜

2009年10月27日05:38
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俺の心のバイブル「迷走王 ボーダー」ていう漫画の狩撫麻礼原作、たなか亜希夫作画というコンビが久々に新作を出した。タイトルは「リバースエッジ 大川端探偵社」


http://www.nihonbungeisha.co.jp/books/pages/ISBN978-4-537-12505-4.html


狩撫麻礼という名前は封印したので今回は「ひじかた憂峰」名義になってます。一応。他にも土屋ガロン名義で「オールドボーイ」なんて名作も生んでます。



たなか亜希夫の凄まじいばかりの画力の進歩には驚かされるけど、基本的にはあの「ボーダー」と同じような狩撫的な世界が展開されていてファンとしては嬉しかった。



80年代真っ只中に連載していた「ボーダー」の頃は、牧歌の時代が消えていくことに対する焦りや哀しみ、得体の知れない体制というものにどんどん飲み込まれていく没個性な人間に対して剥き出しの怒りを表出していたが、この作品は「詠嘆」に近いようなアウトプットになっている。
単に年をとって枯れたというのもあるかもしれないけれど、おそらくこの20年で狩撫麻礼は自覚したのではなかろうか思う。



時代と共に失われていくと思えた「気立てのいい女」や「口約束の時代」や「善良な人間のイトナミ」、「心意気」など、それらはいつの時代でも、決して「多数派」ではないが必ずどこかに存在し決して消えていくことはないと。



「ボーダー」の頃、80年代というのは前時代(例えば全共闘時代)とは真逆の道を選ぶことで「新しさ」になっていたがゆえに、驚くほど簡単に前時代を塗り替えられたし、軽佻浮薄を旨とする人間の唖然とするほどの変わり身の早さに対して、ストレートに怒りの石礫を剛速球で投げられた。



しかしここまで何度も何度も価値観が反転し、あの短小包茎な80年代すらも追憶の彼方になってしまった現代、ある種の「悟り」とも呼べるようなものが狩撫の中に芽生えたのではなかろうか。



相変わらず人間はくだらないし、社会は中庸性を人間に強いるし、あらゆるものが世知辛いけれど、そんな中でも人間にはいとおしい部分もあるし、どうしようもなく感動させてくれる部分もある。



この作品ではその部分を割りと優しく俯瞰するように描かれている。「ボーダー」のように読んだあとアドレナリンが射精する様な高揚感はないけれど、小津映画や成瀬映画を観た後の様な不思議な落ち着きがこの作品の読後感にはある。



今作で一番グッときたフレーズは、



「変態にならねえ方法を知っている、聞きてえか?」

「はあ、教えてください」

「酒だ...酒と仲良くすることさ。静かに静かにケダモノの本能をなだめてやるのさ。これが人類の知恵ってもんだぜ」

「人類の知恵...ですか」


というくだりだ。個人的には狩撫麻礼のセックス観というのは実にしっくりくる。
多くの彼の作品に重要な要素として性描写があるから当然セックスは好きなのだけれど、突出した性的嗜好や変態性欲には拒否感を覚えるという割とノーマルでオーソドックスなタイプだ。フェティッシュやある程度までの変態性は理解できるが、最終的には人間の根源的なイトナミとしてのセックスに帰結する牧歌性。実に共有できる感覚なのだけれど、その感覚を具体的な形で表明したのは俺の知る限り今回が初めてだ。



そうか「酒」か、やっぱ「酒」だよな。確かに納得できる。確かに周りの酒が好きな人に変態性欲を持ってそうな人はいないなぁ。酒があまり呑めない人にはどこか変態の匂いがする、といったら怒られるだろうな(笑)。



そんなエッジの立った変態に陥らずにマトモな人間性を保つためにも酒を呑もうではありませんか。
ということで旨い焼酎が呑めるライブハウスがあるよ。しかも奇遇なことに近々そこで俺たちライブをやるんだ(笑)。偶然だなあ。というわけで告知。


10月29日(木) 「Rock Garden」

open18:00 start18:20 ticket2000円(ドリンク別)
出演:ネクライフ、USUAL RAIN、キョドルト・ヴァレル、くらげ、天国

キョドルト・ヴァレルの出番は3番目の19:40から演奏です。


〒151-0053
渋谷区代々木1-42-4 代々木P1ビルB1
LIVEHOUSE Bogaloo(ブーガル)
tel&fax03−3320−5895
HP http://www.bogaloo.net


今回以降キョドルト・ヴァレルのライブは予定してないので、是非是非遊びに来てくださいな。酒呑みたい人も呑めない人もお待ちしております。

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