2014年03月
エリック・クラプトン来日公演最終日の日本武道館へ行ってきた。
最後になるだろうといわれ続けて早や10余年。結構頻繁に来日している(笑)が、さすがにもうそろそろ本当に最後になるかもと思い行くことに決めた。さすがに70に手が届こうという大御所に過度な期待は全くする気はないものの、やっぱ好きだし多大な影響を受けた人だし、記念にいっておこうと思いチケ屋で定価よりチョイ高めで購入。
前情報をあえて全く入れず、去年のツアーのブートレグも聴かず、フラットな状態で迎えたが、オープニングの「プリテンディング」という意外なスタートに驚いて、ふと気付いた。
今まで4回ほど生クラプトンを観たことがあったが、最初はジョージ・ハリソンの付き添いツアー、次は全曲ブルースのカバーで固めた1995年の「Nothing But The blues」ツアーを2公演、最後はスティーヴ・ウィンウッドと一緒に来てブラインドフェイスをいっぱいやったやつ、という全部企画ものライブで、純粋にクラプトンのヒット曲を生でバンバン聴くライヴというのは初めてだった。海賊盤で死ぬほど色んな年代のライヴで聴いてたから錯覚してた。
「プリテンディング」は最初に観たジョージ・ハリソンのライヴでもクラプトンコーナーの一曲目でやっていたので感慨深い。
俺がクラプトンに狂いだして最初にリアルタイムの新作として接したのがこの曲を含む「ジャーニーマン」というアルバムだった。そのアルバムを引っ提げての1990〜1991年のジャーニーマン・ツアーはクラプトン史上1〜2位を争うぐらいギターをバリバリ弾いていたツアーだと思ってるので、海賊盤も山のように聴いたし、自分でもよくクラプトン・バンドに合わせて弾いたりしてた。なので、いわゆる大好きな曲というよりも、身体に染み込んでいるといってもいい曲だ。
全盛期ほどではないにしろ、ワウを踏んで力強いフレーズを決める生クラプトンを体感していて徐々にワクワクしてきた。
最終日だけあってバンド全体がこなれていてアッパーな空気だ。
ドラムはスティーヴ・ガッド、ベースはネイザン・イースト、キーボードにクリス・ステイトンというお馴染み過ぎるくらいおなじみのメンバー。正直スリルはないが安定感はありすぎるくらいある。
で、もう一人。オルガンとヴォーカルにポール・キャラック。
この人マイク&メカニックスでヴォーカルやってたオッサンという印象しかなく思い入れはないんだが、なんとこの日3曲も歌ってくれやがりました(笑)。
しかもアンコールでやった唯一の曲がポール・キャラックのヴォーカル・ナンバーってどういうことだよオイ!若者の集まるライブだったら暴動が起きるぞ?
ステージ上の雰囲気だと、クラプトンがアンコール1曲でさっさと帰っていってるとき、ポール・キャラックも他のメンバーも「エ?!」って感じだったから、ひょっとしたら最後にクラプトンの曲で締めるつもりがクラプトンが「もういいや」って感じで終わらせたのかもしれない...。とっとと日本に居るであろう愛人に逢いたかったのか?
帰りに今回の日本公演のセットリスト確認してみたらどうやら予定通りらしい...。なんなんだよ?クラプトンのライヴに来て最後の最後が他人のヴォーカル曲かよ。この人ホンマ欲がないっつうか、ファンの気持ちを良くも悪くもはぐらかす。
ラフなコード弾きから始めて若干アップテンポ気味でアッサリと片付ける「ワンダフル・トゥナイト」を聴いてると、この人、定番のヒット曲をやるのはもうウンザリなんだろうな、キース・リチャーズの名言「(何千回サティスファクションのリフを弾こうとも)俺は一度たりとも同じサティスファクションを弾いた覚えはない」ってのとはちょっと矜持が違うなと思った。事実「コカイン」や「クロスローズ」におけるクラプトンからはあんまり覇気が感じられなかった。それはしょうがないか...。
まあ個人的には90年代初頭のあの過剰にドラマチックなアレンジの「ワンダフル・トゥナイト」よりは100倍いいが。
いわゆる弾きまくり状態ではないものの、「フーチー・クーチー・マン」や「テル・ザ・トゥルース」での力強いプレイ、リズミックなアプローチのソロが印象的な「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は素晴らしかった。
ガッドが叩くときの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は、いつも後半に繰り出すガッドの煽りプレイのお陰でクラプトンも鋭角的なフレーズを連発して名演が多いのだが、今夜のクラプトンもスピーディーなフレーズこそ無かったが、ハードなトーンで決めまくって前半最大の盛り上がりを見せた。
真ん中にたっぷりのアコースティック・コーナーがあった。「アンプラグド」の拡張盤が出たばっかりなので、それのプロモーション的な意味もあったのかな?まあ長めのアコースティック・セットは今に始まったことではないが。
若干ぶっきらぼうにアレンジはされていたものの名フレーズ連発の「レイラ」と、「マイ・ファザーズ・アイズ」っぽい雰囲気にリアレンジされた「ティアーズ・イン・ヘヴン」もやって盛り上がってた。勿論「ドリフティン」や「ノーバディー・ノウズ・ユー」といったアコースティック・ブルースもしっかりと。
このアコースティック・セットの時、クラプトンが珍しくMCをしていた。英語があんまり分からないのでイマイチ自信はないが、
「ここ(武道館)で最初に演奏してから40年たったけど、ここは美しい場所だね。ありがとう」
みたいなことを喋ってたように思う。そのあとに「ティアーズ・イン・ヘヴン」を始めたんだけど、イントロで観客の1人が「ウィー・ラヴ・エリーック!」と叫んだらすぐに「サンキュー」とクラプトンが返して観客全体がどよめいた。この日唯一のクラプトンのリアクションだった。ちょっと感動した。
にしてもアコースティックギターを指弾きするときのクラプトンのフレーズのなめらかさとトーンの美しさはやっぱり素晴らしい。
俺も今頃になって指弾きの素晴らしさに目覚めて練習してるのでついつい聴き惚れてしまった。
指弾きだとピックで弾くよりもさらに繊細にトーンに変化が付けられるし、より肉声に近づくからいいんだよなぁ。ジェフ・ベックが完璧に魔法使いになったのも指で弾き始めてからだ。
後半はお約束通りクラプトン、スタミナ切れで歌もギターも若干流し気味。アタッキーなピッキングをしつつも盛り上がりに欠けるソロ展開にちょっとイラつくが、たまにガッドがケツを蹴ってくれるおかげで「リトル・クィーン・オブ・スペード」のようなスロー・ブルースではなんとか気合いの入ったフレーズをクラプトンから引き出したり、バンド一丸で「クロスローズ」をアッパーに決めたりと助けられる。クリス・ステイトンは凄いプレイヤーだ。70年代後半くらいからクラプトンと付き合っているが年々凄くなってるような気がする。ポール・キャラックのキーボードは割と普通だった...。
そう言えば今回は2階席の後ろの方という、かなりステージから遠くの場所だったんだけど、殆どスピーカーの正面という好位置だったので物凄くクリアーに鑑賞できたのだが、唯一、ネーザン・イーストのベースの輪郭、というか殆ど全てが、ガッドのキックに圧迫されて聞き取れなかった。まあそれほど好きなプレイヤーという訳じゃないので別にいいのだが、そこだけが若干バランスが悪かった。
その分クラプトンのギターが抜け良く聞こえて、まるで極上のオーディエンス録音のブートを聴いてるようだった。本末転倒だろ。ウソウソ。でもスピーカーのほぼ真正面であったのと、手元のアップを執拗すぎるくらいしっかりと撮っている大画面の映像があったので、なんかライヴDVDを観てるような気分になったのは否めない。まあそこはライブハウスでガツンと爆音で聴くのとは違うからね。
前半に書いたアンコールの件で非常に不完全燃焼気味で終わったのでなんとしてももう一回来日してほしいという欲求がメラメラと沸いてきた。エレクトリック・バージョンの「レイラ」も聴きたいしね。もう一回最後にきてくんねぇかなぁ。こういう残尿感をファンに与えるから、そんなファンの総意がウドーに伝わってクラプトンに打診することになってるんじゃ?と邪推したくなる。
でもなんだかんだいって良かった。クラプトンのあのストラトらしくないファットで丸いトーンで高音をキュイーンとキメられるとやっぱグッとくる。好きなんだなぁ。
最後になるだろうといわれ続けて早や10余年。結構頻繁に来日している(笑)が、さすがにもうそろそろ本当に最後になるかもと思い行くことに決めた。さすがに70に手が届こうという大御所に過度な期待は全くする気はないものの、やっぱ好きだし多大な影響を受けた人だし、記念にいっておこうと思いチケ屋で定価よりチョイ高めで購入。
前情報をあえて全く入れず、去年のツアーのブートレグも聴かず、フラットな状態で迎えたが、オープニングの「プリテンディング」という意外なスタートに驚いて、ふと気付いた。
今まで4回ほど生クラプトンを観たことがあったが、最初はジョージ・ハリソンの付き添いツアー、次は全曲ブルースのカバーで固めた1995年の「Nothing But The blues」ツアーを2公演、最後はスティーヴ・ウィンウッドと一緒に来てブラインドフェイスをいっぱいやったやつ、という全部企画ものライブで、純粋にクラプトンのヒット曲を生でバンバン聴くライヴというのは初めてだった。海賊盤で死ぬほど色んな年代のライヴで聴いてたから錯覚してた。
「プリテンディング」は最初に観たジョージ・ハリソンのライヴでもクラプトンコーナーの一曲目でやっていたので感慨深い。
俺がクラプトンに狂いだして最初にリアルタイムの新作として接したのがこの曲を含む「ジャーニーマン」というアルバムだった。そのアルバムを引っ提げての1990〜1991年のジャーニーマン・ツアーはクラプトン史上1〜2位を争うぐらいギターをバリバリ弾いていたツアーだと思ってるので、海賊盤も山のように聴いたし、自分でもよくクラプトン・バンドに合わせて弾いたりしてた。なので、いわゆる大好きな曲というよりも、身体に染み込んでいるといってもいい曲だ。
全盛期ほどではないにしろ、ワウを踏んで力強いフレーズを決める生クラプトンを体感していて徐々にワクワクしてきた。
最終日だけあってバンド全体がこなれていてアッパーな空気だ。
ドラムはスティーヴ・ガッド、ベースはネイザン・イースト、キーボードにクリス・ステイトンというお馴染み過ぎるくらいおなじみのメンバー。正直スリルはないが安定感はありすぎるくらいある。
で、もう一人。オルガンとヴォーカルにポール・キャラック。
この人マイク&メカニックスでヴォーカルやってたオッサンという印象しかなく思い入れはないんだが、なんとこの日3曲も歌ってくれやがりました(笑)。
しかもアンコールでやった唯一の曲がポール・キャラックのヴォーカル・ナンバーってどういうことだよオイ!若者の集まるライブだったら暴動が起きるぞ?
ステージ上の雰囲気だと、クラプトンがアンコール1曲でさっさと帰っていってるとき、ポール・キャラックも他のメンバーも「エ?!」って感じだったから、ひょっとしたら最後にクラプトンの曲で締めるつもりがクラプトンが「もういいや」って感じで終わらせたのかもしれない...。とっとと日本に居るであろう愛人に逢いたかったのか?
帰りに今回の日本公演のセットリスト確認してみたらどうやら予定通りらしい...。なんなんだよ?クラプトンのライヴに来て最後の最後が他人のヴォーカル曲かよ。この人ホンマ欲がないっつうか、ファンの気持ちを良くも悪くもはぐらかす。
ラフなコード弾きから始めて若干アップテンポ気味でアッサリと片付ける「ワンダフル・トゥナイト」を聴いてると、この人、定番のヒット曲をやるのはもうウンザリなんだろうな、キース・リチャーズの名言「(何千回サティスファクションのリフを弾こうとも)俺は一度たりとも同じサティスファクションを弾いた覚えはない」ってのとはちょっと矜持が違うなと思った。事実「コカイン」や「クロスローズ」におけるクラプトンからはあんまり覇気が感じられなかった。それはしょうがないか...。
まあ個人的には90年代初頭のあの過剰にドラマチックなアレンジの「ワンダフル・トゥナイト」よりは100倍いいが。
いわゆる弾きまくり状態ではないものの、「フーチー・クーチー・マン」や「テル・ザ・トゥルース」での力強いプレイ、リズミックなアプローチのソロが印象的な「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は素晴らしかった。
ガッドが叩くときの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は、いつも後半に繰り出すガッドの煽りプレイのお陰でクラプトンも鋭角的なフレーズを連発して名演が多いのだが、今夜のクラプトンもスピーディーなフレーズこそ無かったが、ハードなトーンで決めまくって前半最大の盛り上がりを見せた。
真ん中にたっぷりのアコースティック・コーナーがあった。「アンプラグド」の拡張盤が出たばっかりなので、それのプロモーション的な意味もあったのかな?まあ長めのアコースティック・セットは今に始まったことではないが。
若干ぶっきらぼうにアレンジはされていたものの名フレーズ連発の「レイラ」と、「マイ・ファザーズ・アイズ」っぽい雰囲気にリアレンジされた「ティアーズ・イン・ヘヴン」もやって盛り上がってた。勿論「ドリフティン」や「ノーバディー・ノウズ・ユー」といったアコースティック・ブルースもしっかりと。
このアコースティック・セットの時、クラプトンが珍しくMCをしていた。英語があんまり分からないのでイマイチ自信はないが、
「ここ(武道館)で最初に演奏してから40年たったけど、ここは美しい場所だね。ありがとう」
みたいなことを喋ってたように思う。そのあとに「ティアーズ・イン・ヘヴン」を始めたんだけど、イントロで観客の1人が「ウィー・ラヴ・エリーック!」と叫んだらすぐに「サンキュー」とクラプトンが返して観客全体がどよめいた。この日唯一のクラプトンのリアクションだった。ちょっと感動した。
にしてもアコースティックギターを指弾きするときのクラプトンのフレーズのなめらかさとトーンの美しさはやっぱり素晴らしい。
俺も今頃になって指弾きの素晴らしさに目覚めて練習してるのでついつい聴き惚れてしまった。
指弾きだとピックで弾くよりもさらに繊細にトーンに変化が付けられるし、より肉声に近づくからいいんだよなぁ。ジェフ・ベックが完璧に魔法使いになったのも指で弾き始めてからだ。
後半はお約束通りクラプトン、スタミナ切れで歌もギターも若干流し気味。アタッキーなピッキングをしつつも盛り上がりに欠けるソロ展開にちょっとイラつくが、たまにガッドがケツを蹴ってくれるおかげで「リトル・クィーン・オブ・スペード」のようなスロー・ブルースではなんとか気合いの入ったフレーズをクラプトンから引き出したり、バンド一丸で「クロスローズ」をアッパーに決めたりと助けられる。クリス・ステイトンは凄いプレイヤーだ。70年代後半くらいからクラプトンと付き合っているが年々凄くなってるような気がする。ポール・キャラックのキーボードは割と普通だった...。
そう言えば今回は2階席の後ろの方という、かなりステージから遠くの場所だったんだけど、殆どスピーカーの正面という好位置だったので物凄くクリアーに鑑賞できたのだが、唯一、ネーザン・イーストのベースの輪郭、というか殆ど全てが、ガッドのキックに圧迫されて聞き取れなかった。まあそれほど好きなプレイヤーという訳じゃないので別にいいのだが、そこだけが若干バランスが悪かった。
その分クラプトンのギターが抜け良く聞こえて、まるで極上のオーディエンス録音のブートを聴いてるようだった。本末転倒だろ。ウソウソ。でもスピーカーのほぼ真正面であったのと、手元のアップを執拗すぎるくらいしっかりと撮っている大画面の映像があったので、なんかライヴDVDを観てるような気分になったのは否めない。まあそこはライブハウスでガツンと爆音で聴くのとは違うからね。
前半に書いたアンコールの件で非常に不完全燃焼気味で終わったのでなんとしてももう一回来日してほしいという欲求がメラメラと沸いてきた。エレクトリック・バージョンの「レイラ」も聴きたいしね。もう一回最後にきてくんねぇかなぁ。こういう残尿感をファンに与えるから、そんなファンの総意がウドーに伝わってクラプトンに打診することになってるんじゃ?と邪推したくなる。
でもなんだかんだいって良かった。クラプトンのあのストラトらしくないファットで丸いトーンで高音をキュイーンとキメられるとやっぱグッとくる。好きなんだなぁ。