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高瀬大介の思い出のプラグインは刹那い記憶

〜高瀬企画発気まぐれ遺言状〜

2013年08月

2013年08月24日13:04
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バンドのあり方は色々あって、それぞれがそれぞれに意義や思想があるんだろうけど、俺にとっては、かつてやっていたバンド、ワイセッツのように自分の生活や精神性を、メンバー共通の目的の為に捧げるくらいのことをしないと本当の意味でのバンドの充足感を味わえない。



特に曲作り、アレンジ、ライブパフォーマンス、レコーディングといったクリエイティブな面においては全員がそれぞれ自分のものとして取り組まないと最終的な達成感は生まれない。それぞれが自分の中で発展させたりそれらを持ち寄ってアイデア同士をぶつけあったり。シンガーソングライターの出来上がった楽曲をサポートをする、みたいなメンタルではなんかだめなのだ。



バンドの最初の頃はやっぱりそんな感じだった。俺はシンガーソングライターとして出発した人間なので歌詞、曲、ある程度のアレンジをしたデモテープを用意してバンドに持っていってそれをなぞるような感じで再現してた。
で、次第にそういう状態から脱皮していってそれ以上の工程、創作をメンバー全員の協力体制のもとで進めていくようになっていった。
まあ趣味が宅録っつうぐらいの俺なので一応設計図は書くけど別にその通りやらなくていいし、むしろ俺の描く設計図からは予想のつかないような完成形にたどり着く方がテンションが上がった。ワタシ人が思うほどワガママじゃないんです。



それはともかく、彼等の技量やアレンジ能力は高かったし、会話をしていても笑いの絶えない間柄だったし、その会話を音楽に変換する能力も持っていた。だからアレンジに関しては徐々に丸投げ体制になっていったし、むしろ曲がどの方向へ向かえばいいのか聞かせてくれよ、と聞くぐらい彼らの価値判断基準に信頼を置いていた。
勿論いろんなケースがあったさ。「ここのコードは俺が絶対正解!イジラせてなるもんか!」みたいなエゴ剥き出しの時もあったし、時には元々のデモテープからはリズムやBPMが俺の知らないうちに全然変わっていくこともあって途方に暮れたこともあって、ちったあ作曲者に敬意を払えよと思ったこともあるが、でもバンドってそういうもんだと思ってた。



つまりいくら自分が作詞作曲をしていようが、それは「自分の作品」ではなくて「ワイセッツ」の作品だと思っていたということだ。まあそれは長い期間を経て自然とそうなったんだが。



だからバンドが終わった後、ライブのためにいくつかバンド形態での活動もしたけど、それらはあくまで「シンガーソングライターとバックバンド」みたいな範疇を越えるものではなかった。
独善的になっていた訳でもないし、一緒にやるメンバーを技能的に信頼していなかったわけではないけど、共通のビジョンを描いて音楽をクリエイト出来てたか?といえば出来てなかったと言わざるをえない。まあそれは自分がそのビジョンを明確に提示出来てなかったからに他ならないし、共通のビジョンを描けるほど長くて濃密な時間を共有してなかったからしょうがないのだが。



そういう経験から「掛け持ちはいっぱいしてるけど実力のあるミュージシャン」を何人か集めてシンガーソングライターが持ってきた曲を譜面通り再現したところで「バンド」にも「ライブ」にもならないと実感するようになった。そういう形態で素晴らしい音楽を提示するバンド形態の人達も居るしそれはそれで全然良いのだけど、でもやっぱり、メンバー全員がそのバンドを一番大事だと思って、自分の引き出しの中から何かを提供するだけじゃなく、時には新しい引き出しを作る、くらいの取り組みをしている中から生まれるグルーヴは格別に強い。



こないだとある若いバンドの解散ライブを観たのだけど、技量的には荒いし音楽的にもまだまだ稚拙だし解散ということで幾分情緒的になっていたけど、そのバンドが持つ熱量は素晴らしくて、初めてみるバンドだったにもかかわらず身体が動いてしまった。
「情熱に技量が追い付かない」ていう状態のバンドを観たのは久しぶりだった。それぐらい熱量が高かった。そこではリズムがぶれようが曲が一方方向だろうが関係無い。そのバンドの熱に浮かされたのだ。



勿論その頭に血が上ったような状態を維持出来るミュージシャンは中々居ない。いつかは技量も上がって、足りない熱量の代わりを技術で埋めるようなやり方も身につけるかもしない。また技量が上がれば肩の力も抜けて音楽的な意味で間口の広い聞きやすいものになっていく。優れたミュージシャンはそうやって洗練されていくしそれは正しいと思う。


けれど、ぎこちなくて間違っていて聞きづらくても、熱量の高さ、メンバー同士の結束や摩擦、そういった音楽的成熟以前の得体の知れない磁場の塊、そんなものにやっぱいつになっても惹かれる。



一概に否定すべきものではないけれど、ステージで譜面を見ながら演奏している「お仕事」ミュージシャンを見てるとあまり愉快ではない。そのミュージシャンに対してよりもその状態でよしとしているそこの真ん中でヘラヘラしているシンガーソングライターに腹が立つ。もっと突き詰めていってそれぞれのプレイヤーが我がごとのように楽曲を扱ってくれるようになるまで頑張れよ!って思ってしまう。ま、色々状況やバジェットや家庭の事情(byトニー谷)もあるし、お仕事現場ばかりで音楽業界は回ってるからしょうがねぇっちゃあしょうがねぇもんな。




話は唐突に戻るけど元ワイセッツのメンバーも俺以外のメンバーは優秀なミュージシャンの方々なので色んな現場を踏んできている。素晴らしい場所を手にもしている。



けれどワイセッツの頃の音楽に向かう熱量、音楽のあり方、生んだ作品にはちょっと別格な感慨があるようだ。今の各人のレベルに比べれば全然稚拙なんだろうけど、そういう問題じゃない何か、そういうものが確かに存在した。そんな事を前、呑みながら話をした。
セールスだのお客さんの数だのオーバーグラウンドでの活動といった面では結局たいした結果は残せなかったけれど、あのストイックなまでに音楽に向き合って、神経を摩擦させながら生み出した作品やいくつかの異様に盛り上がったライブには、それなりに意義があったと思う。



というわけで毎度のことながら異様に長い前振りになってしまったけど、久しぶりにワイセッツとして集まってライブをやろうと思ってます。
実は2年半くらい前にもやっていて、あん時はワイセッツというバンドのコピーバンドを本人たちがやるっていうコンセプトがあったけど、今回は特にそういうモチベーションは無くて、なんだろうな...再結成でもなく活動再開でもなく...再確認ライブみたいなもんかな?各々の足場を確認するためのライブ。


もちろんそんなテメエ勝手の理由なんて別にお客さんにはどうでもよいわけで、とにかく楽しくて開放感に満ちたライブにする。よてい。
あんまりビッグマウスチックに宣伝するのは性格的にも状況的にも出来ないけど、でもワイセッツっていいバンドだよ。是非遊びにきてほしいです。



2013年9月13日 fri.
イベント名:Rhythm and Business
@LIVEHOUSE 真昼の月夜の太陽
http://mahiru-yoru.com/
Open/Start 未定
Charge 2,000円
出演
ワイセッツ
コロバ・ミルク・バー
ヒゲとボイン
qusco
and more


ウチらの出演時間は20:50で酉だそうです。
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高瀬大介

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