ちょっと実験的な試みとしてVJ風な日記を書いてみる。
さて本日の特集は「追憶のリビドー」と題しまして、80年代後半から90年代前半、個人的に思春期にリアルタイムで接し、その後の人格形成に大きく影響したロックを集めてみました。
10歳の頃に聞いたビートルズでロックに目覚めて以来、60年代のロック、ポップスをあさるように聴いてきましたが、ちょうど思春期の頃、14歳くらいですか、その頃になると思春期特有の「過剰な暴力衝動」のはけ口、暴力的カタルシスを得るために極めてハードなロックに特化して音楽を聞くようになったんです。
で、まずはツェッペリンだのクラプトンだのジミヘンだのクリムゾンといったヴィンテージロックにドップリ漬かって行ったわけですが、なにもそんな自分が産まれる前のロックばかり聴いていたわけではなくて、一応その時点でのリアルタイムのヒット曲も聴いてはいました。洋楽しか聴きませんでしたが。
最初はあの有名なベストヒットUSAというチャート番組でリアルタイムのヒット曲を追いかけていまして、一応ちゃんとした普通のリスナー人生も歩んではいたんですよ。その頃のヒット曲を今聴いたら妙な気分になりますね。音楽的にどうのこうのとか分析的に聴くのとは別に、いわゆる「懐メロ」感覚で聞けてしまいます。今では聴くことなどありえないようなダンスものとかヘビメタもんとかも「ヒット曲」として楽しんで聴いていました。
しかし高校生にもなりますとそうしたヒット曲に対する興味は一気に失せました。
時は1990年1991年辺り、まさにグランジ・ムーブメントが吹き荒れようとしておりまして、ちょうどその辺りから音楽評論家の渋谷陽一氏がDJを勤めるラジオ番組のヘビーリスナーになりまして、その番組でリアルタイムのロックを摂取しておりました。
ではまずはそのグランジをある意味象徴するバンド、ニルバーナを一曲。
Nirvana Territorial Pissing
http://www.youtube.com/watch?v=d_UQWjx3HRo&feature=related
個人的にはこの曲がニルバーナとの出会いでありまして、これを夜中にヘッドフォンで大音量で聴きながら盛り上がってヘッドバンギングしておりましたら、ヘッドフォンが外れて爆音が漏れて親にどやされるというドリフのコントのようなエピソードが思い出されます。
この曲、今聴いても血が沸騰しますが、グランジと言うとひたすら歪んだギターをかき鳴らしガナリまくるというイメージがありましたがさすがはニルバーナ、コード進行なんかは結構ひねくれてますが、メロディーはしっかりとポップで覚えやすく、爆発的に売れたのもうなずけます。
では次はニルバーナよりもデビューは早く、ある意味グランジを先取りしていたようなバンド、ダイナソーJrを一曲。
Freak Scene-Dinosaur jr
http://www.youtube.com/watch?v=Q4yiujTyubI
このバンドはニルバーナよりもハマりまして、やる気の無い歌と轟音ギターソロが異様に破壊的でカッコいいですな。
このバンドは、デビューは80年代半ばで当初はもっとネオアコっぽい音だったんで、グランジ世代に出てきたバンドよりはやはり若干オールドウェイブな感覚がありました。
何せギターヴォーカルのJマスシスは二ールヤングがフェイバリットですからね。二ールヤング直径の情緒過剰なギターソロを延々弾きまくる所が最大の魅力だったんですけど、ギターも歌もオールドウェイブな「泣き」の感覚、というよりはもっと「投げやり」でして。そこが実にグランジな時代性とマッチしてましたね。根拠不明な暴力性を醸し出すたたずまいが俺好みでした。
続いては暴力パンダことブラック・フランシス率いるピクシーズの曲を一曲。
Pixies - Planet of Sound
http://www.youtube.com/watch?v=SvKCJDUBE2w&feature=related
これもカッコいいですね。ハゲでデブで地味なチェックのシャツを着てるっていう、いわゆるロックスターとは対極にあるようなヤツが轟音ギターをかき鳴らしてシャウトするっていうのが当時のトレンドだったんですね。
グランジってのはいわゆるLAメタルのような「いかにも」なスターを中心に、情緒過剰なメロドラマと優等生的水準の楽曲を武器にロックビジネスでしたたかに生き抜いていくっていう80年代的感覚の、まさに反動みたいなもんでしたね。
そう、LAメタルという言葉が出ましたが、80年代のロックといえばもうヘビメタ、といってもいいくらいヘビーメタルというジャンルが隆盛を誇ったわけですがその80年代が終わる頃、へビメタとは全く別の感覚で登場したハードロックバンドがおりました。
「黒いツェッペリン」というキャッチコピーを持って登場したリヴィング・カラーです。ではそのデビューシングルを。
Cult Of Personality-Living Colour
http://www.youtube.com/watch?v=tTjKWq9Gges
凄まじいバンドですね。このやたらと筋肉質なグルーヴを体験したら、白人のハードロックなんかヌルくて聴いてられませんよ。
まあ一応ハードロック的なギターの音はしてますが、やってることは殆どファンクですよね。ツェッペリンも黒いグルーヴを持ってましたが何せこっちは本物の黒人。アスリートの筋肉のような硬質な「しなり」はちょっと他に類を見ないもんです。93年には解散してしまいましたが21世紀になって再結成してますね。
さて、ファンキーなロックとして衝撃を受けたのが次のバンド、スクリーミング・ヘッドレス・トーソズ。へんてこなバンド名ですが音もかなり変です。
Screaming Headless Torsos - Vinnie
http://www.youtube.com/watch?v=PDjK_p64zdc&feature=related
リヴィング・カラーもそうでしたけどファンクなグルーヴの中にジャズ的な要素があるのが俺好みなんですよね。非常に肉体的なものの中に知的な感覚を捻りこむって言うのがツボなんです。クリムゾンもツェッペリンもその口です。
このスクリーミング・ヘッドレス・トーソズは確か80年代、ニューヨーク辺りでスタジオミュージシャンとして活躍していた連中が集まって作ったバンドだったと記憶してるんですが、いわゆる「グランジ」的な成り立ちとは対極にある、非常にプロフェッショナルな作りの音ですね。その辺が好きながらもどこかハマり切れなかったところですが、この曲は異様にカッコいいですし、初めて知った頃は聴きまくってました。
では次も80年代にシーンに登場してきたアーティストで、90年代手前に新たに結成したバンドの曲です。ロリンズ・バンドで一曲。
Rollins Band - Low Self Opinion (Live)
http://www.youtube.com/watch?v=JxHvnORVNw&feature=related
裸に筋肉ムキムキって感じでいかにも頭悪そうですが、実はこのヘンリー・ロリンズは正体はインテリで、後にはどっかの州の州知事にもなっておりました。
しかし俺はこの雄たけび系ヴォーカルってのが好きなんですね。ナルシスティックに声をひっくり返しながら歌うフェミニンな歌がどうも好きになれないんですわ。日本にはそういうバンド一杯いました。いや、今も脈々とそういう系譜がいますね。
当時は洋楽ファン特有のスノッブな感覚で、どこか日本のロックを馬鹿にしてたんですが、17歳の頃初めて本気でハマれる日本のロックバンドに出会いました。ヘンリー・ロリンズも真っ青の絶唱を聞かせます、エレファントカシマシの「男は行く」
エレファントカシマシ 男は行く
http://www.youtube.com/watch?v=BU8hh3XnLK0&feature=PlayList&p=244654FEEC2DDB7B&playnext=1&index=53
このバンドはホントにどっぷりつかりました。もちろん今でも好きですけどね。
とにかくこの曲を件の渋谷陽一の番組で聞いて以来、とりつかれたように聴きまくり、一時は自己同一化してこのバンドのヴォーカルの宮本の一挙手一投足に心を震わされ、一言一句を宗教の教義ように聴いておりました。
あと、このヴォーカルをなんとか自分でも体現してみたくて、それで喉に致命傷を与えるような発声法を発明してしまうんですよねぇ...。このころから自分の資質と自分の嗜好のどうしようもない「錯誤」というのが顕在化し始めるわけです。まあそれはどうでもいいんですけど。
さてまた洋楽のほうに戻りますが、ちょうどグランジ全盛の頃、デジタルロックも勃興してきます。そんな呼び方をしていたかどうかは記憶にありませんが、デジタルビートの上に歪んだギターやヴォーカルが乗るというスタイルです。そのスタイルの元祖としては80年代からミニストリーというバンドがおりましたし、90年代初頭にはイギリスにカーターUSMなんてバンドもおりましたが、やはりここはナイン・インチ・ネイルズでしょう。
Happiness In Slavery-Nine Inch Nails
http://www.youtube.com/watch?v=EONzIbe6RQo
この情念一発みたいなヴォーカルと自己完結型の音作りはハマりましたねぇ。
ライブはともかくスタジオ録音は全部このトレント・レズナー一人でやっているらしく、このぶちきれた歌を一人スタジオでやっているかと思ったら妙に元気付けられました。
情念系ヴォーカル繋がりって訳ではないんですが、業の深さを感じさせるヴォーカルスタイルと、キュートなルックスの落差で一時期凄まじい人気を博していたバンドがありました。デイジー・チェインソウです。
Love Your Money-Daisy Chainsaw
http://www.youtube.com/watch?v=K76ALpWrS_0&feature=related
90年代前半に一気に人気バンドになって、その後は消息知らずみたいな状態になったバンドなんですが、近年再結成されてちょっと驚きました。
まあそれはともかく、このヴォーカルのケイティという女の子、とにかくエキセントリックなイメージが先行してました。あるときのライブではいきなりスキンヘッドになってましたし、ひらひらの洋服を引きちぎりながら転げまわってましたね。
ルックスはかなり可愛いんですが、歌はかなりトリッキーというか錯乱状態で、イメージ的にはジョニー・ロットンにちょっと似ています。ジョニーから知性を抜いたような感じといえば怒られますが。
バンドサウンド自体も暗黒系パンクって感じで、この曲なんかはヒット曲なんでそうでもないけど、アルバムの曲はもっとへヴィーで強烈でした。
さてグランジの話に戻りますが、1994年にニルバーナのカート・コバーンが自殺してグランジはある意味終わります。
グランジ的なバンドはまだ一杯いましたし、ニルバーナ以後を引き受けるパール・ジャムなんてバンドもいますが、やはり時代の空気としてはポストグランジを求めるって感じで、それを最も象徴的に背負って登場したのがベックでした。
Beck - Loser
http://www.youtube.com/watch?v=TJN3PGqDRNg
ベック系列のアーティストって他には思い浮かばないくらいこの人って唯一無二なんですけど、結局グランジなんいう、その象徴が自ら自殺して封じ込めたような巨大なムーブメントの「次」を担うようなトレンドは誰も生み出せなかった。ちょっとしたトレンドはその後もありましたが、グランジやパンクのように世代病として植えつけられるほどの巨大なムーブメントというのはその後ありませんでした。
しかしベックは「サンプリング」と「コラージュ」という手法を駆使して革新的な音楽を一人でどんどん生み出し、ある意味その後のロックの延命法の指針を示したといってもいいかもしれません。レディオヘッドやホワイト・ストライプスもベックが敷いたロック文法を下地にしているといっても過言ではないと思います。
ちょうど同じ頃、カート・コバーン自殺より1年ほど前、一人の女性アーティストの登場に衝撃を覚えました。
最初にシーンに登場したのは80年代ですが、ソロとして全く新しい感覚を持って1993年に登場したのがビョーク。
Bjork - Hyper-Ballad
http://www.youtube.com/watch?v=zikYczQIyGs&feature=related
この人は出身がアイスランドということもありますが、ロック云々とはちょっと別の文脈から出てきた人です。
ただ当時の個人的な感覚としては、巨大な「虚無」を爆音で鳴らすという、ある意味先の見えないグランジという音楽になんだか途方にくれていた時、打ち込みのビートでハイパーかつポジティブに時代を体現していたビョークは非常に輝いて響きました。
それまではロック一穴主義的な思い込みで打ち込みのビートを毛嫌いしていましたが、ビョークの鳴らす生命力が脈打つようなデジタルビートに、凝り固まった自らの感性が自然にほぐれていくのが快感でした。
ニルヴァーナが「絶望」と「虚無」を爆音に乗せて時代の気分を体現していた時期、再び「怒り」という根源的な衝動を持ってロックシーンに登場したバンドがいました。その名をレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンといいまして、1992年にデビューアルバムを発表して以後10年間、個人的には最も熱くなれるロックバンドとして常にその動向に注目していました。
ではそのレイジのデビュー当時の曲を一曲。
rage against the machine - freedom
http://www.youtube.com/watch?v=vqcM5lVoteQ&feature=related
簡単に言うとヒップホップの直接性をハードロックのサウンドでやるという、言葉にしてみればシンプルな方法論なんですが、とにかくこのスタイルは非常に斬新だったんです。
考えてみれば、ブラックミュージックの要素を白人が取り入れて新たなロックを創出するというロックのお家芸的なあり方だったんですが、単に方法論的に面白いからやってみようという動機ではなく、自分たちのメッセージを伝達する手段として、絶対にあのスタイルで無ければならないという必然が彼らにはあったから、その後雨後のタケノコのように発生した「ミクスチャー・ロック」とは全然桁外れの説得力を持ちえた訳です。
まあそんな理屈っぽいことをウダウダ言わなくても、十分に気持ちのいロックなんですけどね。
さて長々とやってきましたがそろそろおしまいです。この実験的で誰も喜ばないような試みにお付き合いしてくれた人がいるのならばありがとうといわせていただきます。
最後の曲は1990年にヒットした曲で、その年の気分を代表する曲として個人的に非常に心に残っている名曲です。
もともとはプリンスの手になる曲ですが、感動的な歌声とPVで完全に自分のものにしていますね。
個人的にはその時点(15歳)で既にヒットソングなんぞを聴いても何の感動もできなくなっておりましたが、その年唯一の奇跡的なまでに感動的なヒット曲として今でもよく覚えておりますで。
ということで最後はシンニード・オコナーで愛の哀しみ、ナッシング・コンペアー・トゥ・ユーです。それではさようなら。
Nothing Compares To You -Sinéad O'Connor
http://www.youtube.com/watch?v=rO8JWbG6bVw&feature=related
さて本日の特集は「追憶のリビドー」と題しまして、80年代後半から90年代前半、個人的に思春期にリアルタイムで接し、その後の人格形成に大きく影響したロックを集めてみました。
10歳の頃に聞いたビートルズでロックに目覚めて以来、60年代のロック、ポップスをあさるように聴いてきましたが、ちょうど思春期の頃、14歳くらいですか、その頃になると思春期特有の「過剰な暴力衝動」のはけ口、暴力的カタルシスを得るために極めてハードなロックに特化して音楽を聞くようになったんです。
で、まずはツェッペリンだのクラプトンだのジミヘンだのクリムゾンといったヴィンテージロックにドップリ漬かって行ったわけですが、なにもそんな自分が産まれる前のロックばかり聴いていたわけではなくて、一応その時点でのリアルタイムのヒット曲も聴いてはいました。洋楽しか聴きませんでしたが。
最初はあの有名なベストヒットUSAというチャート番組でリアルタイムのヒット曲を追いかけていまして、一応ちゃんとした普通のリスナー人生も歩んではいたんですよ。その頃のヒット曲を今聴いたら妙な気分になりますね。音楽的にどうのこうのとか分析的に聴くのとは別に、いわゆる「懐メロ」感覚で聞けてしまいます。今では聴くことなどありえないようなダンスものとかヘビメタもんとかも「ヒット曲」として楽しんで聴いていました。
しかし高校生にもなりますとそうしたヒット曲に対する興味は一気に失せました。
時は1990年1991年辺り、まさにグランジ・ムーブメントが吹き荒れようとしておりまして、ちょうどその辺りから音楽評論家の渋谷陽一氏がDJを勤めるラジオ番組のヘビーリスナーになりまして、その番組でリアルタイムのロックを摂取しておりました。
ではまずはそのグランジをある意味象徴するバンド、ニルバーナを一曲。
Nirvana Territorial Pissing
http://www.youtube.com/watch?v=d_UQWjx3HRo&feature=related
個人的にはこの曲がニルバーナとの出会いでありまして、これを夜中にヘッドフォンで大音量で聴きながら盛り上がってヘッドバンギングしておりましたら、ヘッドフォンが外れて爆音が漏れて親にどやされるというドリフのコントのようなエピソードが思い出されます。
この曲、今聴いても血が沸騰しますが、グランジと言うとひたすら歪んだギターをかき鳴らしガナリまくるというイメージがありましたがさすがはニルバーナ、コード進行なんかは結構ひねくれてますが、メロディーはしっかりとポップで覚えやすく、爆発的に売れたのもうなずけます。
では次はニルバーナよりもデビューは早く、ある意味グランジを先取りしていたようなバンド、ダイナソーJrを一曲。
Freak Scene-Dinosaur jr
http://www.youtube.com/watch?v=Q4yiujTyubI
このバンドはニルバーナよりもハマりまして、やる気の無い歌と轟音ギターソロが異様に破壊的でカッコいいですな。
このバンドは、デビューは80年代半ばで当初はもっとネオアコっぽい音だったんで、グランジ世代に出てきたバンドよりはやはり若干オールドウェイブな感覚がありました。
何せギターヴォーカルのJマスシスは二ールヤングがフェイバリットですからね。二ールヤング直径の情緒過剰なギターソロを延々弾きまくる所が最大の魅力だったんですけど、ギターも歌もオールドウェイブな「泣き」の感覚、というよりはもっと「投げやり」でして。そこが実にグランジな時代性とマッチしてましたね。根拠不明な暴力性を醸し出すたたずまいが俺好みでした。
続いては暴力パンダことブラック・フランシス率いるピクシーズの曲を一曲。
Pixies - Planet of Sound
http://www.youtube.com/watch?v=SvKCJDUBE2w&feature=related
これもカッコいいですね。ハゲでデブで地味なチェックのシャツを着てるっていう、いわゆるロックスターとは対極にあるようなヤツが轟音ギターをかき鳴らしてシャウトするっていうのが当時のトレンドだったんですね。
グランジってのはいわゆるLAメタルのような「いかにも」なスターを中心に、情緒過剰なメロドラマと優等生的水準の楽曲を武器にロックビジネスでしたたかに生き抜いていくっていう80年代的感覚の、まさに反動みたいなもんでしたね。
そう、LAメタルという言葉が出ましたが、80年代のロックといえばもうヘビメタ、といってもいいくらいヘビーメタルというジャンルが隆盛を誇ったわけですがその80年代が終わる頃、へビメタとは全く別の感覚で登場したハードロックバンドがおりました。
「黒いツェッペリン」というキャッチコピーを持って登場したリヴィング・カラーです。ではそのデビューシングルを。
Cult Of Personality-Living Colour
http://www.youtube.com/watch?v=tTjKWq9Gges
凄まじいバンドですね。このやたらと筋肉質なグルーヴを体験したら、白人のハードロックなんかヌルくて聴いてられませんよ。
まあ一応ハードロック的なギターの音はしてますが、やってることは殆どファンクですよね。ツェッペリンも黒いグルーヴを持ってましたが何せこっちは本物の黒人。アスリートの筋肉のような硬質な「しなり」はちょっと他に類を見ないもんです。93年には解散してしまいましたが21世紀になって再結成してますね。
さて、ファンキーなロックとして衝撃を受けたのが次のバンド、スクリーミング・ヘッドレス・トーソズ。へんてこなバンド名ですが音もかなり変です。
Screaming Headless Torsos - Vinnie
http://www.youtube.com/watch?v=PDjK_p64zdc&feature=related
リヴィング・カラーもそうでしたけどファンクなグルーヴの中にジャズ的な要素があるのが俺好みなんですよね。非常に肉体的なものの中に知的な感覚を捻りこむって言うのがツボなんです。クリムゾンもツェッペリンもその口です。
このスクリーミング・ヘッドレス・トーソズは確か80年代、ニューヨーク辺りでスタジオミュージシャンとして活躍していた連中が集まって作ったバンドだったと記憶してるんですが、いわゆる「グランジ」的な成り立ちとは対極にある、非常にプロフェッショナルな作りの音ですね。その辺が好きながらもどこかハマり切れなかったところですが、この曲は異様にカッコいいですし、初めて知った頃は聴きまくってました。
では次も80年代にシーンに登場してきたアーティストで、90年代手前に新たに結成したバンドの曲です。ロリンズ・バンドで一曲。
Rollins Band - Low Self Opinion (Live)
http://www.youtube.com/watch?v=JxHvnORVNw&feature=related
裸に筋肉ムキムキって感じでいかにも頭悪そうですが、実はこのヘンリー・ロリンズは正体はインテリで、後にはどっかの州の州知事にもなっておりました。
しかし俺はこの雄たけび系ヴォーカルってのが好きなんですね。ナルシスティックに声をひっくり返しながら歌うフェミニンな歌がどうも好きになれないんですわ。日本にはそういうバンド一杯いました。いや、今も脈々とそういう系譜がいますね。
当時は洋楽ファン特有のスノッブな感覚で、どこか日本のロックを馬鹿にしてたんですが、17歳の頃初めて本気でハマれる日本のロックバンドに出会いました。ヘンリー・ロリンズも真っ青の絶唱を聞かせます、エレファントカシマシの「男は行く」
エレファントカシマシ 男は行く
http://www.youtube.com/watch?v=BU8hh3XnLK0&feature=PlayList&p=244654FEEC2DDB7B&playnext=1&index=53
このバンドはホントにどっぷりつかりました。もちろん今でも好きですけどね。
とにかくこの曲を件の渋谷陽一の番組で聞いて以来、とりつかれたように聴きまくり、一時は自己同一化してこのバンドのヴォーカルの宮本の一挙手一投足に心を震わされ、一言一句を宗教の教義ように聴いておりました。
あと、このヴォーカルをなんとか自分でも体現してみたくて、それで喉に致命傷を与えるような発声法を発明してしまうんですよねぇ...。このころから自分の資質と自分の嗜好のどうしようもない「錯誤」というのが顕在化し始めるわけです。まあそれはどうでもいいんですけど。
さてまた洋楽のほうに戻りますが、ちょうどグランジ全盛の頃、デジタルロックも勃興してきます。そんな呼び方をしていたかどうかは記憶にありませんが、デジタルビートの上に歪んだギターやヴォーカルが乗るというスタイルです。そのスタイルの元祖としては80年代からミニストリーというバンドがおりましたし、90年代初頭にはイギリスにカーターUSMなんてバンドもおりましたが、やはりここはナイン・インチ・ネイルズでしょう。
Happiness In Slavery-Nine Inch Nails
http://www.youtube.com/watch?v=EONzIbe6RQo
この情念一発みたいなヴォーカルと自己完結型の音作りはハマりましたねぇ。
ライブはともかくスタジオ録音は全部このトレント・レズナー一人でやっているらしく、このぶちきれた歌を一人スタジオでやっているかと思ったら妙に元気付けられました。
情念系ヴォーカル繋がりって訳ではないんですが、業の深さを感じさせるヴォーカルスタイルと、キュートなルックスの落差で一時期凄まじい人気を博していたバンドがありました。デイジー・チェインソウです。
Love Your Money-Daisy Chainsaw
http://www.youtube.com/watch?v=K76ALpWrS_0&feature=related
90年代前半に一気に人気バンドになって、その後は消息知らずみたいな状態になったバンドなんですが、近年再結成されてちょっと驚きました。
まあそれはともかく、このヴォーカルのケイティという女の子、とにかくエキセントリックなイメージが先行してました。あるときのライブではいきなりスキンヘッドになってましたし、ひらひらの洋服を引きちぎりながら転げまわってましたね。
ルックスはかなり可愛いんですが、歌はかなりトリッキーというか錯乱状態で、イメージ的にはジョニー・ロットンにちょっと似ています。ジョニーから知性を抜いたような感じといえば怒られますが。
バンドサウンド自体も暗黒系パンクって感じで、この曲なんかはヒット曲なんでそうでもないけど、アルバムの曲はもっとへヴィーで強烈でした。
さてグランジの話に戻りますが、1994年にニルバーナのカート・コバーンが自殺してグランジはある意味終わります。
グランジ的なバンドはまだ一杯いましたし、ニルバーナ以後を引き受けるパール・ジャムなんてバンドもいますが、やはり時代の空気としてはポストグランジを求めるって感じで、それを最も象徴的に背負って登場したのがベックでした。
Beck - Loser
http://www.youtube.com/watch?v=TJN3PGqDRNg
ベック系列のアーティストって他には思い浮かばないくらいこの人って唯一無二なんですけど、結局グランジなんいう、その象徴が自ら自殺して封じ込めたような巨大なムーブメントの「次」を担うようなトレンドは誰も生み出せなかった。ちょっとしたトレンドはその後もありましたが、グランジやパンクのように世代病として植えつけられるほどの巨大なムーブメントというのはその後ありませんでした。
しかしベックは「サンプリング」と「コラージュ」という手法を駆使して革新的な音楽を一人でどんどん生み出し、ある意味その後のロックの延命法の指針を示したといってもいいかもしれません。レディオヘッドやホワイト・ストライプスもベックが敷いたロック文法を下地にしているといっても過言ではないと思います。
ちょうど同じ頃、カート・コバーン自殺より1年ほど前、一人の女性アーティストの登場に衝撃を覚えました。
最初にシーンに登場したのは80年代ですが、ソロとして全く新しい感覚を持って1993年に登場したのがビョーク。
Bjork - Hyper-Ballad
http://www.youtube.com/watch?v=zikYczQIyGs&feature=related
この人は出身がアイスランドということもありますが、ロック云々とはちょっと別の文脈から出てきた人です。
ただ当時の個人的な感覚としては、巨大な「虚無」を爆音で鳴らすという、ある意味先の見えないグランジという音楽になんだか途方にくれていた時、打ち込みのビートでハイパーかつポジティブに時代を体現していたビョークは非常に輝いて響きました。
それまではロック一穴主義的な思い込みで打ち込みのビートを毛嫌いしていましたが、ビョークの鳴らす生命力が脈打つようなデジタルビートに、凝り固まった自らの感性が自然にほぐれていくのが快感でした。
ニルヴァーナが「絶望」と「虚無」を爆音に乗せて時代の気分を体現していた時期、再び「怒り」という根源的な衝動を持ってロックシーンに登場したバンドがいました。その名をレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンといいまして、1992年にデビューアルバムを発表して以後10年間、個人的には最も熱くなれるロックバンドとして常にその動向に注目していました。
ではそのレイジのデビュー当時の曲を一曲。
rage against the machine - freedom
http://www.youtube.com/watch?v=vqcM5lVoteQ&feature=related
簡単に言うとヒップホップの直接性をハードロックのサウンドでやるという、言葉にしてみればシンプルな方法論なんですが、とにかくこのスタイルは非常に斬新だったんです。
考えてみれば、ブラックミュージックの要素を白人が取り入れて新たなロックを創出するというロックのお家芸的なあり方だったんですが、単に方法論的に面白いからやってみようという動機ではなく、自分たちのメッセージを伝達する手段として、絶対にあのスタイルで無ければならないという必然が彼らにはあったから、その後雨後のタケノコのように発生した「ミクスチャー・ロック」とは全然桁外れの説得力を持ちえた訳です。
まあそんな理屈っぽいことをウダウダ言わなくても、十分に気持ちのいロックなんですけどね。
さて長々とやってきましたがそろそろおしまいです。この実験的で誰も喜ばないような試みにお付き合いしてくれた人がいるのならばありがとうといわせていただきます。
最後の曲は1990年にヒットした曲で、その年の気分を代表する曲として個人的に非常に心に残っている名曲です。
もともとはプリンスの手になる曲ですが、感動的な歌声とPVで完全に自分のものにしていますね。
個人的にはその時点(15歳)で既にヒットソングなんぞを聴いても何の感動もできなくなっておりましたが、その年唯一の奇跡的なまでに感動的なヒット曲として今でもよく覚えておりますで。
ということで最後はシンニード・オコナーで愛の哀しみ、ナッシング・コンペアー・トゥ・ユーです。それではさようなら。
Nothing Compares To You -Sinéad O'Connor
http://www.youtube.com/watch?v=rO8JWbG6bVw&feature=related
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