昨日、ワイセッツ鍋をしながらサンボマスターのライブDVDを観た。
えらく感動してしまった。
ヴォーカルの山口氏はギターをつま弾きながらよく喋る。えらく饒舌に、性急に、扇情的に。
「あなた方のことはよく知らないし将来のことも保証出来ないけど、とにかく今夜はあなた方を全肯定するためにロックをするんですよ!」
言ってることが青臭かろうが気恥ずかしかろうが関係ない。伝えたい言葉と伝えたい意思がそこにあるだけ。
サンボマスターの音はとてもとても激しい。叫びまくっているし暴れまくっている。
でもとてもやさしい。
演奏も言葉もロック風なとかパンク風なとかの余計な装飾はなくただひたすら素直でやさしい。
今あなたに言う 全ての言葉は
ウソじゃないの 夢じゃないの これが最後
夜が明けたら/サンボマスター
「ロック」というのが洋楽を指して言う言葉だった頃、ロックというのはそれはそれはカッコ良くて気持ちのいいサウンドだった。高性能な快楽サウンドマシーンだった。少なくとも個人的には快楽以外の何者でもなかったし、まるで中毒患者の如く音にしがみつくようにしてロックを浴びていた。
しかし日本にもロックがあることを知って一つ気付いたことがある
ロックには強い言葉が必要だ。
考えてみれば洋楽、ジョンレノンでもボブディランでもキングクリムゾンでもいいが、優れたロックには必ず優れた言葉を持っている。
元来英語というのはロックのビートに非常に適している言語なので強いビートには強い言葉が乗るのは必然だったのだ。
日本語のロックを聴いて初めてそのことを自覚した。英語はよく分からんが日本語なら解るからね。
まあ日本語のロックっつってもいろいろあるし洋楽世界の言語感覚をそのまんま平行移入しただけのつまらんもんも山ほどある。
でも「これはロックだ」としか言いようの無い言葉も確かにある。それらの言葉はロックのビートにジャストに乗っかって気持ちいい音となって伝わってくるものでなく、もっとゴツゴツしている。現実に対する異物感として心に突き刺さってきて、ふてぶてしく居座り続ける。
信じたいために 親も恋人をも
すべてあらゆる大きなものを疑うのだ
大人って言うのはもっと素敵なんだ
子供の中に大人は生きているんだ
ラブゼネレーション/ジャックス
金もうけのために生まれたんじゃないぜ
金もうけのために働くのはいやなのさ
金もうけのために生まれたんじゃないぜ/RCサクセション
本当のことなんか言えない
本当のことなんか言えない
言えば殺される
言論の自由/RCサクセション
風はデタラメに吹いていた
乾いたサルマタが青空にはためいて
カツ丼はさらに重く運ばれて来た
ああ ああ ああ
なんて訳の分からない夕暮れなんだ
ああ ああ ああ
なんて、なんてみっともない人類の平和なんだ
なんてひどい唄なんだ/三上寛
薬漬けにされて治るあてをなくし
痩せた体合わせてどんな恋をしているの
今 あなたにGood-Night
ただ あなたにGood-Bye
最後のニュース/井上陽水
痛みは初めのうちだけ 慣れてしまえば大丈夫
そんな事言えるアナタは ヒットラーにもなれるだろう
全てのボクのようなロクデナシのために
この星はグルグルと回る
劣等生でじゅうぶんだ はみだし者でかまわない
ロクデナシ/ブルーハーツ
終わらない歌を歌おう クソッタレの世界のため
終わらない歌を歌おう 全てのクズ共のために
終わらない歌を歌おう 僕や君や彼等のため
終わらない歌を歌おう 明日には笑えるように
終わらない歌/ブルーハーツ
なにもかわらないものはなにもかえられない
このソウルを激しくキックしたい
風向きを変えろ
インディビジュアリスト/佐野元春
黒いバラとりはらい 白い風流し込む oh yeah
悪い奴等けちらし 本当の自由取り戻すのさ
自信を全て失っても 誰かがお前を待ってる oh yeah
お前の力必要さ 俺を俺を力づけろよ
oh ファイティングマン 正義を気取るのさ
oh ファイティングマン yeah
ファイティングマン/エレファントカシマシ
太陽の下 おぼろげなるまま
右往左往であくびして死ね
生まれたことを悔やんで果てろ
つらいつらいと一生懸命同情を乞え
奴麗天国/エレファントカシマシ
あなたが憎くてたまらない あなたが欲しくてたまらない
ひ弱な僕が 夜空で泣いている
あなたをこの手で殺したい あなたをこの手で犯したい
気弱な僕は いつでもそばにいる
ハネムーン/奥田民生
探してみたいな 君の弱点を
謳歌してほしいな 僕のコントローラーを
さっきまで 何か足りなかった
私の腕の中で 揺れながら下の方の名前
呼んでおくれ 叫んでおくれ
私の船の名前 オリエンタルカヌーをその中へ
呼んでおくれ いっておくれ
カヌー/奥田民生
可愛いウチの少女には 注射の後がある
乾いた夏の午後にも 空を見上げてる
幸せを願うノートには 昨日の跡が無い
汚れた街の灯りで あや取りをしてる
太陽が消えた街/桑田圭
二人のことは誰にも内緒だよ とくにママには秘密だよ
僕は君の父親のふりをして 君は僕の娘のふりをして
ふたりでひとつのベッドにもぐりこみ 身体の中をあたためる
外を歩くときは腕を組み 映画を観ながらもふれあって
少年のような恥じらいと 老人のようないやらしさで
やさしく翼広げて 心の中をなめ合う
しかたないさ 好きだもの 涙がこぼれてゆく
しかたないさ 好きだもの 僕らは恋人
パパ/早川義夫
声を出さなくとも 歌は歌える
音のないところに 音は降りてくる
本当に素晴らしいものは解説を拒絶する
音楽がめざしてるのは音楽ではない
音楽/早川義夫
身体で身体を強く結びました
夜の叫び生命のスタッカート
土の中で待て命の球根よ
悲しいだけ根を増やせ
球根/イエローモンキー
パーティーは終わりにしたんだ
暴かれた世界は オレンジのハートを
抱きしめながらゆく とぐろをまく闇
暴かれた世界/ミッシェルガンエレファント
よこしまな僕は
やはり君の涙を美しく思うの
よこしまな よこしまな僕は
やはり君の思い出を美しくしてるの
あなたが人を裏切るなら僕は誰かを殺してしまったさ/サンボマスター
最近、訳あって所謂日本の「ギターロック」のバンドのライブを観に行くことが多々ある。
彼等の出す音は一様に「ロックな気分」にさせてくれる激しい音だ。爆音でスピード感があって格好良い。
でも何も残らない。
「ロックぽさ」をその場にまき散らし、終われば臭いすら残さず消える。
発信者の生理が感じられない。
何を伝えたいのかがわからない。
何故舞台の上にいるのかが解らない。
ナルシズムも自己憐憫もカッコつけもいらない。
激しく狂ったロックのビートに乗った「その人の言葉」が聴きたいだけ。
言葉がそのロックを生かしもするし殺しもする。
この一行、この一言を言うために曲が出来る。
ロックをやりたいから言葉を繕う訳ではない。
伝えたいことがあるからロックになる。
正しい人間じゃないから 同じことをくり返す
許すことだけが 俺に出来ること
今さらばかな/ワイセッツ
この言葉を伝えたくて曲を作った。今ワイセッツのライブで最初にやっている曲だ。
発した瞬間、空気に亀裂は生じるような言葉を産み出したい。
日本語でロックをやる以上はそこを通り過ぎるわけにはいかない。
「サンボマスターは君に語りかける」
素晴らしいタイトルだ。
久々に感動している。
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