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koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

たまごの話

4月も下旬に入りました。はじめの頃は、まだ余裕がありましたが、徐々に主任業務と授業準備に追われ、気づくとあっという間にこの時期に。今月の私は、たまごに心を奪われつつ、天狗にお目にかかり、気合を入れなおしてもらいました(天狗の話はまた次回)。

最初のたまごは、イースター(キリストの復活祭)エッグ。今年は4月4日でしたが、「復活」にあやかって生命力の源である「たまご」がこのお祭りのシンボルとなっています。このたまごを隠して探す遊びも有名ですね。我が家では、家族が写真のような折り紙を作ってくれたので、これを家の中に隠して見つける、という遊びをしました。なかなか楽しかったです。

うさぎ入りたまご?
(うさぎもイースターの象徴。子だくさんなことから豊穣の意を表します)

日本では、『日本書紀』神代巻冒頭文にある、天地が分かれず混沌とした状態を「鶏の子(たまご)のごとし(ようである)」と表現しているのが思い出されます。漢籍にも同じ表現があるので、漢字文化圏共通の認識かもしれませんが、世界の混沌をドロッとした質感で表しつつ、始まりのパワーを「たまご」に見出していたのでしょう。

また平安時代では、『伊勢物語』五十段に「鳥の子を十ずつ十は重ぬとも思はぬ人を思ふものかは」という歌が詠まれています。「たまごを十個一つにしてさらに十個(計100個!)重ねるような難しいことがあり得たとしても、自分を思ってくれない人を愛しく思うことがあるでしょうか」という意味です。

この歌を受けて『蜻蛉日記』では、作者が糸で雁のたまごを十個つなげたものに、卯の花(ウツギの花)をつけて贈り物をします。この行為の意図は、「このようにたまごを十個重ねられるのですから、思ってくれない人を思うことも私はできます」となります。ちなみに当時、たまごは食さなかったので、この十個のたまごがその後どうなったのか、少し気になりますね。
たまごとうのはな
(イメージ画像。たまごは、生絹(すずし)の糸でつなげたそうです)

また、話は変わって、今月は「ゆるキャンしろさんかく」(ゆるいキャンプの略)という漫画になぜか家族そろってはまりました(自粛生活で自然が恋しいから?)。そこに出てきた山梨名物「温玉揚げ」(温泉たまごを揚げたもの)を家で作ってみました。

温玉揚げ
(外はカリッ、中はとろっの温玉揚げ。衣は少な目ですが美味しかったです)

『枕草子』では、「あてなるもの」(高貴で優美なもの)に「かりのこ」(雁のたまご)が挙げられています。たまごは、その白くてつるっとした形も含めて、昔から人々の想像力をかきたてていたようです。面白いですね。





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