葵祭れぽ2
いよいよオンライン授業が始まりました。とりあえずまだ演習だけですが、
ゼミのみなさんが元気そうで安心しました。
うまくビデオ映像が出ない、音声が乱れる、スマホが熱くなる、などなど、やはり
トラブルはいくつか発生しましたね。
音声が聞こえない、という場合は、電話回線を使って対応するなど、本当にその場の
「危機対応能力」(?)が試されている気がしました。しかも自宅なので、すべて一人で
対応しなくてはなりません(お願いすればTA(テイーチングアシスタント)の方に
入っていただくこともできるそうですが)。
ZOOMは、チャット機能、投票機能、があり、こちらが質問して回答してもらう、という
ことは、たいへんスムーズにできて便利でした。対面だと、周囲を意識して、なかなか発言
できない学生も多いのですが、チャットなら、そのような気を遣うこともないようです。
ただ講義はどうなるか、ちょっと心配。最初は履修者30人くらいだったので、ZOOMでやります、と
シラバスの補足に書きましたが、先日見たら50人を越えていました(!)。
通信が安定するかしら?不安です。初回やってみて、その後、また検討が必要かもしれませんね。
さて、話は変わって、今回は「葵祭れぽ」第2回です。
葵祭れぽ2
このように「葵祭」のシンボルは「二葉葵」。賀茂神社の神紋として、神社のあちこちで
見ることができます。「葵」の紋と言えば、徳川家の家紋「三葉葵」が有名ですが、こちらの
紋の方が古いのですよ。知ってました?
二葉葵
(高欄の金具に二葉葵が描かれています)
葵の葉
(拝殿の頭上にも葵の葉が見えます)
儀式前の拝殿
(しめ縄や御簾のところにも葵の葉が飾られています)
斎王代
(斎王代じしんも葵の葉を身につけ、周囲も葵の葉で飾られています)
ちなみに第2回「葵祭れぽ」の最後は『源氏物語』葵巻の一場面です。
葵巻といえば、行列に勅使として加わった光源氏の麗姿を見ようと、大勢の人が
つめかける中、その場所取りをめぐって、源氏の恋人・六条御息所方と正妻・葵の上方
との間に起こった「車争い」が有名です。
御息所は人目をしのびながらもセンスのよい車で早くから場所をおさえていたようですが、
遅れてきた葵の上方に無残にも押しのけられてしまいます。
このときの屈辱が、のちに御息所を生霊にし、正妻・葵の上を死に至らしめる、というのが
葵巻における重要な出来事です。
ですので、わたしがこのとき画いた場面は、あまり知られていないかもしれません。
上記の騒ぎのあと、光源氏は、まだ結婚前の若紫(紫の上)と同車して葵祭に出かけます。
そこで、以前関係を持っていた色好みの老女・源典侍の車とばったり出会い、彼女の方から
歌を詠み掛けられるのです。
(源典侍)はかなしや人のかざせるあふひ(葵/逢ふ日)ゆゑ神のゆるしの今日を待ちける
注連の内には
(つまらないことです。あなたは人のものになってしまったのに、神の許しがある今日の逢瀬を待っていました。とてもしめ縄の内に入ることはできません)
ゼミのみなさんが元気そうで安心しました。
うまくビデオ映像が出ない、音声が乱れる、スマホが熱くなる、などなど、やはり
トラブルはいくつか発生しましたね。
音声が聞こえない、という場合は、電話回線を使って対応するなど、本当にその場の
「危機対応能力」(?)が試されている気がしました。しかも自宅なので、すべて一人で
対応しなくてはなりません(お願いすればTA(テイーチングアシスタント)の方に
入っていただくこともできるそうですが)。
ZOOMは、チャット機能、投票機能、があり、こちらが質問して回答してもらう、という
ことは、たいへんスムーズにできて便利でした。対面だと、周囲を意識して、なかなか発言
できない学生も多いのですが、チャットなら、そのような気を遣うこともないようです。
ただ講義はどうなるか、ちょっと心配。最初は履修者30人くらいだったので、ZOOMでやります、と
シラバスの補足に書きましたが、先日見たら50人を越えていました(!)。
通信が安定するかしら?不安です。初回やってみて、その後、また検討が必要かもしれませんね。
さて、話は変わって、今回は「葵祭れぽ」第2回です。
葵祭れぽ2
このように「葵祭」のシンボルは「二葉葵」。賀茂神社の神紋として、神社のあちこちで
見ることができます。「葵」の紋と言えば、徳川家の家紋「三葉葵」が有名ですが、こちらの
紋の方が古いのですよ。知ってました?
二葉葵
(高欄の金具に二葉葵が描かれています)
葵の葉
(拝殿の頭上にも葵の葉が見えます)
儀式前の拝殿
(しめ縄や御簾のところにも葵の葉が飾られています)
斎王代
(斎王代じしんも葵の葉を身につけ、周囲も葵の葉で飾られています)
ちなみに第2回「葵祭れぽ」の最後は『源氏物語』葵巻の一場面です。
葵巻といえば、行列に勅使として加わった光源氏の麗姿を見ようと、大勢の人が
つめかける中、その場所取りをめぐって、源氏の恋人・六条御息所方と正妻・葵の上方
との間に起こった「車争い」が有名です。
御息所は人目をしのびながらもセンスのよい車で早くから場所をおさえていたようですが、
遅れてきた葵の上方に無残にも押しのけられてしまいます。
このときの屈辱が、のちに御息所を生霊にし、正妻・葵の上を死に至らしめる、というのが
葵巻における重要な出来事です。
ですので、わたしがこのとき画いた場面は、あまり知られていないかもしれません。
上記の騒ぎのあと、光源氏は、まだ結婚前の若紫(紫の上)と同車して葵祭に出かけます。
そこで、以前関係を持っていた色好みの老女・源典侍の車とばったり出会い、彼女の方から
歌を詠み掛けられるのです。
(源典侍)はかなしや人のかざせるあふひ(葵/逢ふ日)ゆゑ神のゆるしの今日を待ちける
注連の内には
(つまらないことです。あなたは人のものになってしまったのに、神の許しがある今日の逢瀬を待っていました。とてもしめ縄の内に入ることはできません)
とある手を思し出づれば、かの典侍なりけり。あさましう、古りがたくもいまめくかな、と憎さに
はしたなう
はしたなう
(光源氏)かざしける心ぞあだに思ほゆる八十氏人になべてあふひを
(男に逢おうとして葵をかざしているあなたの心は浮気っぽいものでしょう。今日は誰彼分け隔てなく逢える日なのですから)
女はつらしと思ひ聞こえけり。
(源典侍)くやしくもかざしけるかな名のみして人だのめなる草葉ばかりを
(あなただけを思って葵をかざしていたのに悔しいことです。逢う日とは名前ばかりで人に空頼みさせる単なる草の葉にすぎないのに)
と聞こゆ。人とあひ乗りて、簾だに上げたまはぬを、心やましう思ふ人多かり。一日の御ありさまの
うるはしかりしに、今日はうち乱れて歩きたまふかし、誰ならむ、乗り並ぶ人、けしうはあらじはや、
と推しはかりきこゆ。
年の功か(この時六十を過ぎていたという説も)、はたまたその性格か、源典侍は、他の女と
同車している源氏をあてこするような歌を堂々と詠みかけることができますが、他の女性では、
光源氏と一緒にいる方に遠慮して、とてもやりとりなどできないだろう、といった語り手の言葉が
このあとに続きます。
先日の、源氏の行列における「うるはしさ」とはうってかわって、もう正妻以外の女性と「乱れ歩き」
をしていると、人々(とくに女性たち)の気持ちは穏やかではありません。
「うるはし」の語は、物語中、よく葵の上の形容に使われますが、古語としては「端正な、整った」
美しさを表します。ですので「乱る」の語とは対照的な言葉になります。
しかし、周囲の心配とは裏腹に、源氏と同車しているのは、まだ少女である「若紫」。
源氏は、正妻と恋人との間で疲れていて、無邪気な「若紫」に癒やしを求めているのです。
そこに場面を賑わす「源典侍」の登場。「老い」と「若さ」の対比も見事です。
六条御息所の心内描写や、葵の上の死など、息苦しい場面の多い葵巻ですが、ここだけは楽しい祭
を思わせる、ほっとした場面で、私は好きです。