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koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

くらげの月

秋学期の授業が先週から始まりました。緊急事態宣言下ということで、オンラインとの併行授業。でも、教室で久々に元気そうなみなさんを見て安心しました。

秋学期の始まりは、4月ほどの慌ただしさはありませんが、先にある入試や学位の判定を思うと、
気持ちの上では、身の引き締まる感じになります。

今年は専攻主任ということもあり、教授会も対面で出ていますので、様々な資料や話を見聞きしますが、そこで思うのは、「公(世間)に出すものは、厳密な審査が必要である」ということです。

これは、学術的なお堅いものから、SNS上のたわいない言葉にまで言えることですが、人から審査を受ける前に、自分自身でまず審査・判断すること、それがとても大事だと感じます。

それを最初からまるきり他者にゆだねてしまうと、何か間違いがあった時に、自分を省みることが難しくなります。またすべて周りが判断基準となり「自分」を見失いがちです。

同調圧力の強い昨今、「人からどう見られるか」ではなく「自分がどうあるべきか」ということが一層重要になっている気がします。他者の意見に幅広く耳を傾けることも大事ですが、まずは自分の軸をしっかり持てるようになるといいですね。

さてさて、話は変わって、今月は9月。先日、9月21日は、中秋の名月(旧暦で8月15日)で、8年ぶりに満月だと話題になりましたが、家からは雲が厚くて月はよく見えませんでした。

ただ、家族がどうしても「お月見団子」を作りたいというので、「芋名月」にちなんで「さつまいも団子」を作りました(本当は里芋を供えます)。
すすきと芋団子
(蒸したさつまいもを潰し、牛乳と砂糖を少し加えてまるめました)

この時期、栗のお菓子も出る頃ですが、「すや」の栗きんとんにも負けない(?)、甘さ控えめの美味しいお味でした(月より団子?!)。

また今月は、「9」にちなんだくらげ月間ということで、江の島水族館でくらげの催しがさまざまあり、くらげ好きの家族とともに行ってきました。
DSC_0208
(新種のクラゲが発見されたという展示の説明。面白かったです)


kurage
(今月登場したクラゲのぬいぐるみくじ。大人気で一度品切れになっていました。我が家は3等をゲット)

くらげのメモスタンド
(事前予約で作れる「クラゲのメモスタンド」(現在は終了)。タコクラゲと
かつおの月クラゲ←「家族の想像上のクラゲ」を作りました)

古典で「くらげ」と言えば、古事記の冒頭部に、まだ若い地上世界の様子が「くらげなすただよへるとき」(くらげのようにふわふわと漂っている時)と表現されているのが有名です。

また『枕草子』では、「中納言(藤原隆家)まゐりたまひて」の段で、中宮定子の弟である隆家がたいそう立派な扇の骨を手に入れたので、その紙を探しているとやってきますが、その骨が「さらにまだ見ぬ骨のさまなり」(全く今まで見たことのない骨の様子です)と言われるのを聞いた清少納言が次のように答えています。

「さては、扇のにはあらで、くらげのななり」(さては、扇の骨ではなく、くらげの骨であるようです)

隆家も大いに笑ったとありますが、平安貴族の人々は、海のくらげを実際に見たことはなくても、書物の世界で「骨のないぐにゃぐにゃした生き物」ということは知っていたのだと思います。だからこそ通じる冗談であったのでしょう。

それにしても、まさに当意即妙な、うまい洒落ですね。さすが清少納言。



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