「小胞体ストレスと疾患」 by 森和俊さん (甲府内科医会にて 6月23日 2015年)
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森和俊さん(京都大学大学院・理学研究科・教授)の講演を聞いてきました。<森さんは、ラスカー賞というアメリカで一番の医学賞を受賞しました。5人に一人はノーベル賞を受賞する賞です(山中伸弥さんや利根川進さんもそうです)。ノーベル賞にもう一歩まで迫っています>「小胞体ストレス」についてでした(医学の大きな進歩に通じる研究です)。森さんはとっても噛み砕いて説明してくださったので、なんとか理解できましたが、...全文を表示
森和俊さん(京都大学大学院・理学研究科・教授)の講演を聞いてきました。
たまご
<森さんは、ラスカー賞というアメリカで一番の医学賞を受賞しました。5人に一人はノーベル賞を受賞する賞です(山中伸弥さんや利根川進さんもそうです)。ノーベル賞にもう一歩まで迫っています>
「小胞体ストレス」についてでした(医学の大きな進歩に通じる研究です)。
森さんはとっても噛み砕いて説明してくださったので、なんとか理解できましたが、かなり頭が疲れました。
以下はその内容の要約です。
人の体はDNAの指示で作られるタンパク質でできています。
DNA.jpg
DNA→RNA→ポリペプチド(→タンパク質)
DNAの情報をコピーすることでタンパク質は作られます。DNAは二重らせん構造ですが、それが複写される時にはらせんがほどけて一本になり、それを鋳型にしてRNAが作られます。
リボソーム
RNAの情報を元にして、小胞体に結合したリボソームでタンパク質が作られます。
<高校で生物を履修した方は習いましたよね>
大切なのは、こうしてできたタンパク質は真っ直ぐなことです。
ですが、タンパク質は3次元構造に折りたたまれないと効力を発揮しません。
例えばこんな形に。
成長ホルモン受容体
(これは成長ホルモンの受容体です。リボンが綺麗に折りたたまれています)
立体じゃないと、(たとえば)成長ホルモンの受容体(カギ穴)に成長ホルモン(カギ)が結合できません。
この立体構造自体はDNAの設計図に書かれているのですが、条件が良くないときちんとした形になりません。
<以前は、簡単に立体構造になると思われていました>
小胞体に結合したリボソームで、タンパク質のもとになるポリペプチドが作られるのですが、細胞の中が込み合っていると、ちゃんとした立体構造にならないのです(疎水性の部分が立体構造の内部にきちんとしまわれてないと、お互いにくっついたりするので)。
<蛋白同士がくっつくことを凝集と言います。生卵をゆでると固まるのは、熱によって卵の白身を構成しているタンパク質の構造が変わって、タンパク質同士が凝集するからです>
シャペロンがあると、込み合った細胞内でもちゃんとした立体構造のタンパク質を作ることができます。
シャペロン
<シャペロンとはフランス語で、社交界にデビューする若い女性の介添え役の女性のことです。以前シグマ1受容体は受容体シャペロンとして機能し、フルボキサミンがシグマ1受容体に親和性があるで触れました>
小胞体ストレスとは、沢山の蛋白を作るように小胞体が命じられた状況です。細胞の中が混雑していると、異常なたんぱくが増えて正常な蛋白ができません。
小胞体ストレスに対して小胞体が適切に応答(=小胞体ストレス応答)できないと、必要なタンパク質が作られず、病気になるわけです。
<DM(糖尿病)、ALS(筋委縮性側索硬化症)、AD(アルツハイマー型認知症)、双極性障害(最近はミトコンドリア異常によると言う説が有力ですが)などがそうだと言われています>
小胞体にストレスがかかった時に、それに対して応答するメカニズムには何種類かあります。
・異常タンパク質が沢山作られるならいっそのこと翻訳を止めると言う方法(翻訳抑制)、
・シャペロンをたくさん作って異常タンパク質の構造を直す
・異常タンパク質を分解する
小胞体ストレス応答
などです。
ここで、どのような応答(翻訳抑制、シャペロン産生、異常タンパク分解)をするかを決めるためのセンサーがあります。
臓器によって、どのメカニズムを働かせると効率がいいかが違うからです。
このセンサーが壊れると病気になります。どのセンサーが壊れるとどんな病気になるかは、あるセンサーのないマウス(ノックアウトマウス)を作れば調べられます。
癌細胞の増殖は速いので、小胞体ストレスがかかっています。ここで小胞体ストレス応答に関連したセンサーを壊せば癌細胞の増殖を抑えることができます。
その方向で、製薬会社は研究を進めています。
(うーん、上手に説明できましたでしょうか、心配です)
<先日亡くなった西岡雄一さんが企画した講演でした。森和俊さんは西岡さんのアメリカ留学時代の友人とのことです。とても刺激的な講演でした。甲府内科医会の会員ではないのですが聞かせていただきました>
たまご
<森さんは、ラスカー賞というアメリカで一番の医学賞を受賞しました。5人に一人はノーベル賞を受賞する賞です(山中伸弥さんや利根川進さんもそうです)。ノーベル賞にもう一歩まで迫っています>
「小胞体ストレス」についてでした(医学の大きな進歩に通じる研究です)。
森さんはとっても噛み砕いて説明してくださったので、なんとか理解できましたが、かなり頭が疲れました。
以下はその内容の要約です。
人の体はDNAの指示で作られるタンパク質でできています。
DNA.jpg
DNA→RNA→ポリペプチド(→タンパク質)
DNAの情報をコピーすることでタンパク質は作られます。DNAは二重らせん構造ですが、それが複写される時にはらせんがほどけて一本になり、それを鋳型にしてRNAが作られます。
リボソーム
RNAの情報を元にして、小胞体に結合したリボソームでタンパク質が作られます。
<高校で生物を履修した方は習いましたよね>
大切なのは、こうしてできたタンパク質は真っ直ぐなことです。
ですが、タンパク質は3次元構造に折りたたまれないと効力を発揮しません。
例えばこんな形に。
成長ホルモン受容体
(これは成長ホルモンの受容体です。リボンが綺麗に折りたたまれています)
立体じゃないと、(たとえば)成長ホルモンの受容体(カギ穴)に成長ホルモン(カギ)が結合できません。
この立体構造自体はDNAの設計図に書かれているのですが、条件が良くないときちんとした形になりません。
<以前は、簡単に立体構造になると思われていました>
小胞体に結合したリボソームで、タンパク質のもとになるポリペプチドが作られるのですが、細胞の中が込み合っていると、ちゃんとした立体構造にならないのです(疎水性の部分が立体構造の内部にきちんとしまわれてないと、お互いにくっついたりするので)。
<蛋白同士がくっつくことを凝集と言います。生卵をゆでると固まるのは、熱によって卵の白身を構成しているタンパク質の構造が変わって、タンパク質同士が凝集するからです>
シャペロンがあると、込み合った細胞内でもちゃんとした立体構造のタンパク質を作ることができます。
シャペロン
<シャペロンとはフランス語で、社交界にデビューする若い女性の介添え役の女性のことです。以前シグマ1受容体は受容体シャペロンとして機能し、フルボキサミンがシグマ1受容体に親和性があるで触れました>
小胞体ストレスとは、沢山の蛋白を作るように小胞体が命じられた状況です。細胞の中が混雑していると、異常なたんぱくが増えて正常な蛋白ができません。
小胞体ストレスに対して小胞体が適切に応答(=小胞体ストレス応答)できないと、必要なタンパク質が作られず、病気になるわけです。
<DM(糖尿病)、ALS(筋委縮性側索硬化症)、AD(アルツハイマー型認知症)、双極性障害(最近はミトコンドリア異常によると言う説が有力ですが)などがそうだと言われています>
小胞体にストレスがかかった時に、それに対して応答するメカニズムには何種類かあります。
・異常タンパク質が沢山作られるならいっそのこと翻訳を止めると言う方法(翻訳抑制)、
・シャペロンをたくさん作って異常タンパク質の構造を直す
・異常タンパク質を分解する
小胞体ストレス応答
などです。
ここで、どのような応答(翻訳抑制、シャペロン産生、異常タンパク分解)をするかを決めるためのセンサーがあります。
臓器によって、どのメカニズムを働かせると効率がいいかが違うからです。
このセンサーが壊れると病気になります。どのセンサーが壊れるとどんな病気になるかは、あるセンサーのないマウス(ノックアウトマウス)を作れば調べられます。
癌細胞の増殖は速いので、小胞体ストレスがかかっています。ここで小胞体ストレス応答に関連したセンサーを壊せば癌細胞の増殖を抑えることができます。
その方向で、製薬会社は研究を進めています。
(うーん、上手に説明できましたでしょうか、心配です)
<先日亡くなった西岡雄一さんが企画した講演でした。森和俊さんは西岡さんのアメリカ留学時代の友人とのことです。とても刺激的な講演でした。甲府内科医会の会員ではないのですが聞かせていただきました>
森和俊さん(京都大学大学院・理学研究科・教授)の講演を聞いてきました。
たまご
<森さんは、ラスカー賞というアメリカで一番の医学賞を受賞しました。5人に一人はノーベル賞を受賞する賞です(山中伸弥さんや利根川進さんもそうです)。ノーベル賞にもう一歩まで迫っています>
「小胞体ストレス」についてでした(医学の大きな進歩に通じる研究です)。
森さんはとっても噛み砕いて説明してくださったので、なんとか理解できましたが、かなり頭が疲れました。
以下はその内容の要約です。
人の体はDNAの指示で作られるタンパク質でできています。
DNA.jpg
DNA→RNA→ポリペプチド(→タンパク質)
DNAの情報をコピーすることでタンパク質は作られます。DNAは二重らせん構造ですが、それが複写される時にはらせんがほどけて一本になり、それを鋳型にしてRNAが作られます。
リボソーム
RNAの情報を元にして、小胞体に結合したリボソームでタンパク質が作られます。
<高校で生物を履修した方は習いましたよね>
大切なのは、こうしてできたタンパク質は真っ直ぐなことです。
ですが、タンパク質は3次元構造に折りたたまれないと効力を発揮しません。
例えばこんな形に。
成長ホルモン受容体
(これは成長ホルモンの受容体です。リボンが綺麗に折りたたまれています)
立体じゃないと、(たとえば)成長ホルモンの受容体(カギ穴)に成長ホルモン(カギ)が結合できません。
この立体構造自体はDNAの設計図に書かれているのですが、条件が良くないときちんとした形になりません。
<以前は、簡単に立体構造になると思われていました>
小胞体に結合したリボソームで、タンパク質のもとになるポリペプチドが作られるのですが、細胞の中が込み合っていると、ちゃんとした立体構造にならないのです(疎水性の部分が立体構造の内部にきちんとしまわれてないと、お互いにくっついたりするので)。
<蛋白同士がくっつくことを凝集と言います。生卵をゆでると固まるのは、熱によって卵の白身を構成しているタンパク質の構造が変わって、タンパク質同士が凝集するからです>
シャペロンがあると、込み合った細胞内でもちゃんとした立体構造のタンパク質を作ることができます。
シャペロン
<シャペロンとはフランス語で、社交界にデビューする若い女性の介添え役の女性のことです。以前シグマ1受容体は受容体シャペロンとして機能し、フルボキサミンがシグマ1受容体に親和性があるで触れました>
小胞体ストレスとは、沢山の蛋白を作るように小胞体が命じられた状況です。細胞の中が混雑していると、異常なたんぱくが増えて正常な蛋白ができません。
小胞体ストレスに対して小胞体が適切に応答(=小胞体ストレス応答)できないと、必要なタンパク質が作られず、病気になるわけです。
<DM(糖尿病)、ALS(筋委縮性側索硬化症)、AD(アルツハイマー型認知症)、双極性障害(最近はミトコンドリア異常によると言う説が有力ですが)などがそうだと言われています>
小胞体にストレスがかかった時に、それに対して応答するメカニズムには何種類かあります。
・異常タンパク質が沢山作られるならいっそのこと翻訳を止めると言う方法(翻訳抑制)、
・シャペロンをたくさん作って異常タンパク質の構造を直す
・異常タンパク質を分解する
小胞体ストレス応答
などです。
ここで、どのような応答(翻訳抑制、シャペロン産生、異常タンパク分解)をするかを決めるためのセンサーがあります。
臓器によって、どのメカニズムを働かせると効率がいいかが違うからです。
このセンサーが壊れると病気になります。どのセンサーが壊れるとどんな病気になるかは、あるセンサーのないマウス(ノックアウトマウス)を作れば調べられます。
癌細胞の増殖は速いので、小胞体ストレスがかかっています。ここで小胞体ストレス応答に関連したセンサーを壊せば癌細胞の増殖を抑えることができます。
その方向で、製薬会社は研究を進めています。
(うーん、上手に説明できましたでしょうか、心配です)
<先日亡くなった西岡雄一さんが企画した講演でした。森和俊さんは西岡さんのアメリカ留学時代の友人とのことです。とても刺激的な講演でした。甲府内科医会の会員ではないのですが聞かせていただきました>
たまご
<森さんは、ラスカー賞というアメリカで一番の医学賞を受賞しました。5人に一人はノーベル賞を受賞する賞です(山中伸弥さんや利根川進さんもそうです)。ノーベル賞にもう一歩まで迫っています>
「小胞体ストレス」についてでした(医学の大きな進歩に通じる研究です)。
森さんはとっても噛み砕いて説明してくださったので、なんとか理解できましたが、かなり頭が疲れました。
以下はその内容の要約です。
人の体はDNAの指示で作られるタンパク質でできています。
DNA.jpg
DNA→RNA→ポリペプチド(→タンパク質)
DNAの情報をコピーすることでタンパク質は作られます。DNAは二重らせん構造ですが、それが複写される時にはらせんがほどけて一本になり、それを鋳型にしてRNAが作られます。
リボソーム
RNAの情報を元にして、小胞体に結合したリボソームでタンパク質が作られます。
<高校で生物を履修した方は習いましたよね>
大切なのは、こうしてできたタンパク質は真っ直ぐなことです。
ですが、タンパク質は3次元構造に折りたたまれないと効力を発揮しません。
例えばこんな形に。
成長ホルモン受容体
(これは成長ホルモンの受容体です。リボンが綺麗に折りたたまれています)
立体じゃないと、(たとえば)成長ホルモンの受容体(カギ穴)に成長ホルモン(カギ)が結合できません。
この立体構造自体はDNAの設計図に書かれているのですが、条件が良くないときちんとした形になりません。
<以前は、簡単に立体構造になると思われていました>
小胞体に結合したリボソームで、タンパク質のもとになるポリペプチドが作られるのですが、細胞の中が込み合っていると、ちゃんとした立体構造にならないのです(疎水性の部分が立体構造の内部にきちんとしまわれてないと、お互いにくっついたりするので)。
<蛋白同士がくっつくことを凝集と言います。生卵をゆでると固まるのは、熱によって卵の白身を構成しているタンパク質の構造が変わって、タンパク質同士が凝集するからです>
シャペロンがあると、込み合った細胞内でもちゃんとした立体構造のタンパク質を作ることができます。
シャペロン
<シャペロンとはフランス語で、社交界にデビューする若い女性の介添え役の女性のことです。以前シグマ1受容体は受容体シャペロンとして機能し、フルボキサミンがシグマ1受容体に親和性があるで触れました>
小胞体ストレスとは、沢山の蛋白を作るように小胞体が命じられた状況です。細胞の中が混雑していると、異常なたんぱくが増えて正常な蛋白ができません。
小胞体ストレスに対して小胞体が適切に応答(=小胞体ストレス応答)できないと、必要なタンパク質が作られず、病気になるわけです。
<DM(糖尿病)、ALS(筋委縮性側索硬化症)、AD(アルツハイマー型認知症)、双極性障害(最近はミトコンドリア異常によると言う説が有力ですが)などがそうだと言われています>
小胞体にストレスがかかった時に、それに対して応答するメカニズムには何種類かあります。
・異常タンパク質が沢山作られるならいっそのこと翻訳を止めると言う方法(翻訳抑制)、
・シャペロンをたくさん作って異常タンパク質の構造を直す
・異常タンパク質を分解する
小胞体ストレス応答
などです。
ここで、どのような応答(翻訳抑制、シャペロン産生、異常タンパク分解)をするかを決めるためのセンサーがあります。
臓器によって、どのメカニズムを働かせると効率がいいかが違うからです。
このセンサーが壊れると病気になります。どのセンサーが壊れるとどんな病気になるかは、あるセンサーのないマウス(ノックアウトマウス)を作れば調べられます。
癌細胞の増殖は速いので、小胞体ストレスがかかっています。ここで小胞体ストレス応答に関連したセンサーを壊せば癌細胞の増殖を抑えることができます。
その方向で、製薬会社は研究を進めています。
(うーん、上手に説明できましたでしょうか、心配です)
<先日亡くなった西岡雄一さんが企画した講演でした。森和俊さんは西岡さんのアメリカ留学時代の友人とのことです。とても刺激的な講演でした。甲府内科医会の会員ではないのですが聞かせていただきました>