子供の虐待と脳の変化 友田明美さん(小児発達学・福井大学教授)
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子供の虐待は、脳に傷痕を残します(以下は友田さんの研究です)。(図1:DVの目撃による視覚野の萎縮部位)<友田明美さん(福井大学教授・小児発達学)は、ハーバード大学と共同で虐待と脳の関係を調べました>米国に住む18〜25歳の約1500人を対象に、虐待のあった人となかった人の知能検査とMRIを実施して比較しました。以下のことが分かりました。 ・虐待によって脳が変化し、 ・虐待のタイプによって変化する部位が4...全文を表示
子供の虐待は、脳に傷痕を残します(以下は友田さんの研究です)。
視覚野
(図1:DVの目撃による視覚野の萎縮部位)
<友田明美さん(福井大学教授・小児発達学)は、ハーバード大学と共同で虐待と脳の関係を調べました>
米国に住む18〜25歳の約1500人を対象に、虐待のあった人となかった人の知能検査とMRIを実施して比較しました。
以下のことが分かりました。
・虐待によって脳が変化し、
・虐待のタイプによって変化する部位が4パターンある
(1)体罰による前頭前野の萎縮──感情や理性をつかさどる「前頭前野」が約19%萎縮(右前頭前野内側部:ブロードマン10野)。図1
(2)暴言による聴覚野の拡大──会話や言語をつかさどる「聴覚野」の一部が約14%拡大(左上側頭回:ブロードマン22野の灰白質)。図2
(3)性的虐待による視覚野の萎縮──視覚をつかさどる「視覚野」が約18%萎縮(左の一次視覚野:ブロードマン17-18野)。図3
(4)両親のDV目撃による視覚野の萎縮──視覚野の一部が約6%萎縮する(左の一次視覚野)。図4
虐待 聴覚
(図2:暴言による聴覚野の変化)
視覚野
(図3:性的虐待による視覚野の変化)
虐待 DV目撃
(図4:DV目撃による視覚野の変化)
友田さんによると、虐待された子供は、過酷な体験に適応するよう、脳の部位が変化しているのではないかとのことです。
脳は2歳ごろまでにシナプスを大量に作り、その後不要なシナプスを刈り込みます。必要なシナプスを残し、要なシナプスを減らすわけです。これが脳の柔軟さや可塑性に関連しています。
子供が虐待を受けると、それに適応するように脳が変化するのかもしれません。
だとしたらとても悲しい適応ですよね。
<体罰は理不尽な体験なので理性を麻痺させ、見たくないものを見なくて済むようにし、怖い目に合わないように耳を澄ませるのでしょうか>
ーーーーーーーーーーーーーー
境界性パーソナリティ障害や解離性障害や線維筋痛症の患者さんに虐待を体験した方がとても多いです。当時の記憶が欠けている方も多いです(虐待によって、左海馬や左扁桃体が委縮するという研究もあります)。
クリニックの初診の患者さんに必ず尋ねる3つの質問があります。
・きょうだい仲はどうでした?
・ご両親は優しかったですか、厳しかったですか?
・お父さんとお母さんは仲が良かったですか?
きょうだい仲が良く、優しい両親で、両親の仲が良いと、ホッとします。心の病気の根は深くないからです(過食も、不登校も、うつも、パニック障害も・・・)。
ところが、この3つの質問のどこかに問題がある場合には、さらに細かく尋ねることになります。
お父さんはお酒を飲んで家族に暴力を振わなかったか、大きな音に敏感かとか、子供の頃に怖い思いをしたことがなかったか、どこか痛いところはないか、気がつくと別の場所にいたことはないか、もう一人別の自分がいると感じたことはないか、幻聴があるか、記憶がごっそりかけている時代はないか・・・・・などです。
<甲府医師会の班会で小児科医の先輩に教えていただきました。虐待も様々な科との連携が必要な領域だと思います>
視覚野
(図1:DVの目撃による視覚野の萎縮部位)
<友田明美さん(福井大学教授・小児発達学)は、ハーバード大学と共同で虐待と脳の関係を調べました>
米国に住む18〜25歳の約1500人を対象に、虐待のあった人となかった人の知能検査とMRIを実施して比較しました。
以下のことが分かりました。
・虐待によって脳が変化し、
・虐待のタイプによって変化する部位が4パターンある
(1)体罰による前頭前野の萎縮──感情や理性をつかさどる「前頭前野」が約19%萎縮(右前頭前野内側部:ブロードマン10野)。図1
(2)暴言による聴覚野の拡大──会話や言語をつかさどる「聴覚野」の一部が約14%拡大(左上側頭回:ブロードマン22野の灰白質)。図2
(3)性的虐待による視覚野の萎縮──視覚をつかさどる「視覚野」が約18%萎縮(左の一次視覚野:ブロードマン17-18野)。図3
(4)両親のDV目撃による視覚野の萎縮──視覚野の一部が約6%萎縮する(左の一次視覚野)。図4
虐待 聴覚
(図2:暴言による聴覚野の変化)
視覚野
(図3:性的虐待による視覚野の変化)
虐待 DV目撃
(図4:DV目撃による視覚野の変化)
友田さんによると、虐待された子供は、過酷な体験に適応するよう、脳の部位が変化しているのではないかとのことです。
脳は2歳ごろまでにシナプスを大量に作り、その後不要なシナプスを刈り込みます。必要なシナプスを残し、要なシナプスを減らすわけです。これが脳の柔軟さや可塑性に関連しています。
子供が虐待を受けると、それに適応するように脳が変化するのかもしれません。
だとしたらとても悲しい適応ですよね。
<体罰は理不尽な体験なので理性を麻痺させ、見たくないものを見なくて済むようにし、怖い目に合わないように耳を澄ませるのでしょうか>
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境界性パーソナリティ障害や解離性障害や線維筋痛症の患者さんに虐待を体験した方がとても多いです。当時の記憶が欠けている方も多いです(虐待によって、左海馬や左扁桃体が委縮するという研究もあります)。
クリニックの初診の患者さんに必ず尋ねる3つの質問があります。
・きょうだい仲はどうでした?
・ご両親は優しかったですか、厳しかったですか?
・お父さんとお母さんは仲が良かったですか?
きょうだい仲が良く、優しい両親で、両親の仲が良いと、ホッとします。心の病気の根は深くないからです(過食も、不登校も、うつも、パニック障害も・・・)。
ところが、この3つの質問のどこかに問題がある場合には、さらに細かく尋ねることになります。
お父さんはお酒を飲んで家族に暴力を振わなかったか、大きな音に敏感かとか、子供の頃に怖い思いをしたことがなかったか、どこか痛いところはないか、気がつくと別の場所にいたことはないか、もう一人別の自分がいると感じたことはないか、幻聴があるか、記憶がごっそりかけている時代はないか・・・・・などです。
<甲府医師会の班会で小児科医の先輩に教えていただきました。虐待も様々な科との連携が必要な領域だと思います>
子供の虐待は、脳に傷痕を残します(以下は友田さんの研究です)。
視覚野
(図1:DVの目撃による視覚野の萎縮部位)
<友田明美さん(福井大学教授・小児発達学)は、ハーバード大学と共同で虐待と脳の関係を調べました>
米国に住む18〜25歳の約1500人を対象に、虐待のあった人となかった人の知能検査とMRIを実施して比較しました。
以下のことが分かりました。
・虐待によって脳が変化し、
・虐待のタイプによって変化する部位が4パターンある
(1)体罰による前頭前野の萎縮──感情や理性をつかさどる「前頭前野」が約19%萎縮(右前頭前野内側部:ブロードマン10野)。図1
(2)暴言による聴覚野の拡大──会話や言語をつかさどる「聴覚野」の一部が約14%拡大(左上側頭回:ブロードマン22野の灰白質)。図2
(3)性的虐待による視覚野の萎縮──視覚をつかさどる「視覚野」が約18%萎縮(左の一次視覚野:ブロードマン17-18野)。図3
(4)両親のDV目撃による視覚野の萎縮──視覚野の一部が約6%萎縮する(左の一次視覚野)。図4
虐待 聴覚
(図2:暴言による聴覚野の変化)
視覚野
(図3:性的虐待による視覚野の変化)
虐待 DV目撃
(図4:DV目撃による視覚野の変化)
友田さんによると、虐待された子供は、過酷な体験に適応するよう、脳の部位が変化しているのではないかとのことです。
脳は2歳ごろまでにシナプスを大量に作り、その後不要なシナプスを刈り込みます。必要なシナプスを残し、要なシナプスを減らすわけです。これが脳の柔軟さや可塑性に関連しています。
子供が虐待を受けると、それに適応するように脳が変化するのかもしれません。
だとしたらとても悲しい適応ですよね。
<体罰は理不尽な体験なので理性を麻痺させ、見たくないものを見なくて済むようにし、怖い目に合わないように耳を澄ませるのでしょうか>
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境界性パーソナリティ障害や解離性障害や線維筋痛症の患者さんに虐待を体験した方がとても多いです。当時の記憶が欠けている方も多いです(虐待によって、左海馬や左扁桃体が委縮するという研究もあります)。
クリニックの初診の患者さんに必ず尋ねる3つの質問があります。
・きょうだい仲はどうでした?
・ご両親は優しかったですか、厳しかったですか?
・お父さんとお母さんは仲が良かったですか?
きょうだい仲が良く、優しい両親で、両親の仲が良いと、ホッとします。心の病気の根は深くないからです(過食も、不登校も、うつも、パニック障害も・・・)。
ところが、この3つの質問のどこかに問題がある場合には、さらに細かく尋ねることになります。
お父さんはお酒を飲んで家族に暴力を振わなかったか、大きな音に敏感かとか、子供の頃に怖い思いをしたことがなかったか、どこか痛いところはないか、気がつくと別の場所にいたことはないか、もう一人別の自分がいると感じたことはないか、幻聴があるか、記憶がごっそりかけている時代はないか・・・・・などです。
<甲府医師会の班会で小児科医の先輩に教えていただきました。虐待も様々な科との連携が必要な領域だと思います>
視覚野
(図1:DVの目撃による視覚野の萎縮部位)
<友田明美さん(福井大学教授・小児発達学)は、ハーバード大学と共同で虐待と脳の関係を調べました>
米国に住む18〜25歳の約1500人を対象に、虐待のあった人となかった人の知能検査とMRIを実施して比較しました。
以下のことが分かりました。
・虐待によって脳が変化し、
・虐待のタイプによって変化する部位が4パターンある
(1)体罰による前頭前野の萎縮──感情や理性をつかさどる「前頭前野」が約19%萎縮(右前頭前野内側部:ブロードマン10野)。図1
(2)暴言による聴覚野の拡大──会話や言語をつかさどる「聴覚野」の一部が約14%拡大(左上側頭回:ブロードマン22野の灰白質)。図2
(3)性的虐待による視覚野の萎縮──視覚をつかさどる「視覚野」が約18%萎縮(左の一次視覚野:ブロードマン17-18野)。図3
(4)両親のDV目撃による視覚野の萎縮──視覚野の一部が約6%萎縮する(左の一次視覚野)。図4
虐待 聴覚
(図2:暴言による聴覚野の変化)
視覚野
(図3:性的虐待による視覚野の変化)
虐待 DV目撃
(図4:DV目撃による視覚野の変化)
友田さんによると、虐待された子供は、過酷な体験に適応するよう、脳の部位が変化しているのではないかとのことです。
脳は2歳ごろまでにシナプスを大量に作り、その後不要なシナプスを刈り込みます。必要なシナプスを残し、要なシナプスを減らすわけです。これが脳の柔軟さや可塑性に関連しています。
子供が虐待を受けると、それに適応するように脳が変化するのかもしれません。
だとしたらとても悲しい適応ですよね。
<体罰は理不尽な体験なので理性を麻痺させ、見たくないものを見なくて済むようにし、怖い目に合わないように耳を澄ませるのでしょうか>
ーーーーーーーーーーーーーー
境界性パーソナリティ障害や解離性障害や線維筋痛症の患者さんに虐待を体験した方がとても多いです。当時の記憶が欠けている方も多いです(虐待によって、左海馬や左扁桃体が委縮するという研究もあります)。
クリニックの初診の患者さんに必ず尋ねる3つの質問があります。
・きょうだい仲はどうでした?
・ご両親は優しかったですか、厳しかったですか?
・お父さんとお母さんは仲が良かったですか?
きょうだい仲が良く、優しい両親で、両親の仲が良いと、ホッとします。心の病気の根は深くないからです(過食も、不登校も、うつも、パニック障害も・・・)。
ところが、この3つの質問のどこかに問題がある場合には、さらに細かく尋ねることになります。
お父さんはお酒を飲んで家族に暴力を振わなかったか、大きな音に敏感かとか、子供の頃に怖い思いをしたことがなかったか、どこか痛いところはないか、気がつくと別の場所にいたことはないか、もう一人別の自分がいると感じたことはないか、幻聴があるか、記憶がごっそりかけている時代はないか・・・・・などです。
<甲府医師会の班会で小児科医の先輩に教えていただきました。虐待も様々な科との連携が必要な領域だと思います>