さなぎ日記:あさなぎクリニック心療内科のブログです。こころの健康、コミュニケーション、おいしいお店や、映画のことも。

さなぎ日記:あさなぎクリニック心療内科のブログです。こころの健康、コミュニケーション、おいしいお店や、映画のことも。

あさなぎクリニック・心療内科の
院長ブログです。
こころの健康、コミュニケーション、おいしいお店や、映画のことも。

トルコの絨毯詐欺

トルコの絨毯詐欺 サムネイル画像
トルコの絨毯詐欺について男性(Aさん)からうかがいました。Aさんは朝ホテルを出て歩いていました。ハマム(トルコの風呂です。垢すりなどをやってくれます)に行く途中です。前日に少々飲み過ぎたので、お風呂でアルコールを抜こうと思ったのです。宮殿だった建物を改装したハマムがあると、ホテルのコンシェルジェに教えてもらいました。海に向かってしばらく道を下りました。絨毯屋さんが並ぶ界隈で、店の前にテーブルを出して...全文を表示
2014年11月29日 0 0
街・旅・山
トルコの絨毯詐欺について男性(Aさん)からうかがいました。


絨毯


Aさんは朝ホテルを出て歩いていました。ハマム(トルコの風呂です。垢すりなどをやってくれます)に行く途中です。前日に少々飲み過ぎたので、お風呂でアルコールを抜こうと思ったのです。

宮殿だった建物を改装したハマムがあると、ホテルのコンシェルジェに教えてもらいました。

海に向かってしばらく道を下りました。絨毯屋さんが並ぶ界隈で、店の前にテーブルを出して男性が4人朝ごはんを食べていました。

「おはよう」その内の1人(Bさん)がAさんに声をかけました。

Aさんは40代ではっきりとした顔立ちで、日本人には見えないとよく言われるのですが、やっぱりすぐに分かるんだ、とAさんは思ったそうです。

「おはよう」Aさんが答えると、Bさんは、それからは英語で話したそうです。Bさんは50歳位に見えますが、案外30代かもしれません。外国人の年齢は分かりませんよね。

BさんはAさんにそのハマムの場所を教えてくれました。歩いて10分ほどのその場所まで、わざわざついてきてくれたそうです。親切な方です。

ハマム


約2時間後、Aさんはすっかり筋肉をほぐしてハマムを出ると、入口のあたりでBさんが待っていました。

「そろそろ出る頃だと思って」Bさんは、人懐っこい笑顔を見せます。ちょっとうさん臭いナ、Aさんは思ったそうです。BさんはAさんをランチに誘いました。行きつけの美味しい店があるのだそうです。

怖いもの見たさのAさんはついて行きました。

トルコ レストラン


オープンテラスの素敵なお店だったそうです。少し肌寒い季節でしたが、お店の方がひざ掛けを持ってきてくれました。

Aさんがなにを食べたか分かりませんが、きっと代表的なトルコ小料理のランチコースあたりではないでしょうか。Aさんも街角で食べるケバブや鯖サンド(バルックエキメッキ)には少々飽きていたはずです。

Bさんは気さくで、話し上手です。新宿の伊勢丹で毎年絨毯のフェアをやっているそうです。どうりで東京が詳しいわけです。実はAさんより3才年下でした。

Aさんは目黒に本社があるヨーロッパの家具を販売する会社を経営していて、青山や広尾をはじめ全国に店舗を持っています。BさんもAさんの話に興味津々です。

Bさんの妹さんは観光ガイドをやっているので、案内をさせようとも言ってくれました。さすがにそれでは悪いから遠慮したそうです。

ワインを飲みながらの会話は弾み、Aさんは美味しいランチを堪能しました。Aさんがお金を支払おうとすると、すでにBさんが支払いを済ませていました。いつ払ったのでしょう。実にスマートです。

それじゃあ困るとAさんがいうと、Bさんは「ここは私の国だから私が払う、日本に行ったらごちそうしてくれ」と言います。Aさんは遠慮なくごちそうになったそうです。

Bさんは、Aさんに、ちょっと私のお店を見ないか、と誘いました。すっかりごちそうにもなったことだし、と思ってAさんは行くことにしました。

二人は海沿いをしばらく歩きました。ワインで少し火照った頬に風が気持ちよく当たります。

イスタンブール


朝外でテーブルを出して食事をしていたあのお店に着きました。

お店の中には他のお客さんはいません。

素敵な絨毯が沢山あります。Bさんはフロアに絨毯を次から次へと広げます。ぜひ、靴下を脱いで感触を味わってくれといいます。コットンとシルクでは肌触りはまるで違います。

いいもの100万円は下らないそうです。

「やっぱりいいものはいいですね」、とAさんが言うと、これがいくらだったら買ってもいいと思う?」とBさんは訊ねます。「いやいや、とてもとても買えません」Aさんは答えます。

あらゆる交渉は先に値段を言ったほうが負けだと、子供の頃から父親に言われていたからです。Aさんのお父さんはアメ横でエビ問屋を経営していました。

「もっといいものが下にある」Bさんは地下の部屋にAさんを誘いました。

広い部屋です。高級な絨毯が山のようにありました。

次々と絨毯が広げられます。Aさんは、目を輝かせて見ています。

「こうすると、本物の良さがわかる」、

と言ってBさんは部屋の電気が消しました。Aさんはちょっと怖くなったそうです。

Bさんは、絨毯をコピー機のような装置に乗せました。裏から光を当てて絨毯を見る機械です。絨毯の繊細な模様が浮かび上がりました。幻想的です。

何枚か絨毯を見た後で、再び電気がつけられました。いつの間にか閉じられた扉の前には、屈強な若者が立っています。これじゃあ帰りにくいな、とAさんは思ったそうです。

BさんはAさんに、一枚の高級絨毯を見せました。

「素敵な絨毯ですね」、
「青山のお店に敷いたら、家具が引き立つんじゃないか?」
「そうですね、でもこれは自宅の玄関の方がいいかもしれないです」

「これだったらいくらで買う?」
「今日は買う気はありません。でもいくらでなら売ってくれます?」逆にAさんが訊ねました。値段はこちらから聞くことにしています。

Bさんはそれには答えずに、もっと大きな絨毯を出してきました。
「これはどうだ」
「いいものですね、自宅の書斎にちょうどいいかもしれません」

Bさんはさらに大きい絨毯を広げました・・・・・・・・・.

「この4つで総額がいくらになるんですか?」AさんはBさんに訊ねました。

Bさんは、ちょっと戸惑いながら、「定価だと2000万円になるけれど、あなたになら1500万円でいい」
「そんなに安くしてもらっていいんですか?」

「ただし条件がある。日本人は5枚まで絨毯を無税で買える。その枠でもう1枚買ったことにして、来月東京で返して欲しい」

Aさんはしばらく考えました。

「分かりました、ではその条件で了解しました」。

「ですが、高額なので東京の会計の担当者に話を通さなければなりません。彼には明日連絡がつきます。それでよろしいですか」

「もちろん、それでいい」
「明後日までCホテルに滞在しています。明日のお昼にでも来ていただければ、その時に契約できます。よろしいですか?」

Aさんは、はじめに1階で見た100万円と言われた絨毯に目を止めて、「ではこれもお願いします。これだけは今日もって帰ります。ホテルの部屋に敷いて感触を楽しみたいので。ではお支払いは後ほどまとめて」と言ってタクシーに乗り込んで帰りました。

ーーーーーーーーーーーーーー

その絨毯は、現在Aさんのお店の壁に飾られています。Aさんは甲府で小さな洋風居酒屋を経営しています。ケバブなどをアレンジしたトルコセットも人気です。Aさんは、あの日慌ててホテルをチェックアウトしたんだそうです。

バルックエキメッキ


<一部、フィクションです。念のため。トルコ、絨毯詐欺、で検索するとたくさんの実例が出てきます。卒業旅行などで行かれる方はくれぐれもお気をつけ下さい>

トルコの絨毯詐欺について男性(Aさん)からうかがいました。


絨毯


Aさんは朝ホテルを出て歩いていました。ハマム(トルコの風呂です。垢すりなどをやってくれます)に行く途中です。前日に少々飲み過ぎたので、お風呂でアルコールを抜こうと思ったのです。

宮殿だった建物を改装したハマムがあると、ホテルのコンシェルジェに教えてもらいました。

海に向かってしばらく道を下りました。絨毯屋さんが並ぶ界隈で、店の前にテーブルを出して男性が4人朝ごはんを食べていました。

「おはよう」その内の1人(Bさん)がAさんに声をかけました。

Aさんは40代ではっきりとした顔立ちで、日本人には見えないとよく言われるのですが、やっぱりすぐに分かるんだ、とAさんは思ったそうです。

「おはよう」Aさんが答えると、Bさんは、それからは英語で話したそうです。Bさんは50歳位に見えますが、案外30代かもしれません。外国人の年齢は分かりませんよね。

BさんはAさんにそのハマムの場所を教えてくれました。歩いて10分ほどのその場所まで、わざわざついてきてくれたそうです。親切な方です。

ハマム


約2時間後、Aさんはすっかり筋肉をほぐしてハマムを出ると、入口のあたりでBさんが待っていました。

「そろそろ出る頃だと思って」Bさんは、人懐っこい笑顔を見せます。ちょっとうさん臭いナ、Aさんは思ったそうです。BさんはAさんをランチに誘いました。行きつけの美味しい店があるのだそうです。

怖いもの見たさのAさんはついて行きました。

トルコ レストラン


オープンテラスの素敵なお店だったそうです。少し肌寒い季節でしたが、お店の方がひざ掛けを持ってきてくれました。

Aさんがなにを食べたか分かりませんが、きっと代表的なトルコ小料理のランチコースあたりではないでしょうか。Aさんも街角で食べるケバブや鯖サンド(バルックエキメッキ)には少々飽きていたはずです。

Bさんは気さくで、話し上手です。新宿の伊勢丹で毎年絨毯のフェアをやっているそうです。どうりで東京が詳しいわけです。実はAさんより3才年下でした。

Aさんは目黒に本社があるヨーロッパの家具を販売する会社を経営していて、青山や広尾をはじめ全国に店舗を持っています。BさんもAさんの話に興味津々です。

Bさんの妹さんは観光ガイドをやっているので、案内をさせようとも言ってくれました。さすがにそれでは悪いから遠慮したそうです。

ワインを飲みながらの会話は弾み、Aさんは美味しいランチを堪能しました。Aさんがお金を支払おうとすると、すでにBさんが支払いを済ませていました。いつ払ったのでしょう。実にスマートです。

それじゃあ困るとAさんがいうと、Bさんは「ここは私の国だから私が払う、日本に行ったらごちそうしてくれ」と言います。Aさんは遠慮なくごちそうになったそうです。

Bさんは、Aさんに、ちょっと私のお店を見ないか、と誘いました。すっかりごちそうにもなったことだし、と思ってAさんは行くことにしました。

二人は海沿いをしばらく歩きました。ワインで少し火照った頬に風が気持ちよく当たります。

イスタンブール


朝外でテーブルを出して食事をしていたあのお店に着きました。

お店の中には他のお客さんはいません。

素敵な絨毯が沢山あります。Bさんはフロアに絨毯を次から次へと広げます。ぜひ、靴下を脱いで感触を味わってくれといいます。コットンとシルクでは肌触りはまるで違います。

いいもの100万円は下らないそうです。

「やっぱりいいものはいいですね」、とAさんが言うと、これがいくらだったら買ってもいいと思う?」とBさんは訊ねます。「いやいや、とてもとても買えません」Aさんは答えます。

あらゆる交渉は先に値段を言ったほうが負けだと、子供の頃から父親に言われていたからです。Aさんのお父さんはアメ横でエビ問屋を経営していました。

「もっといいものが下にある」Bさんは地下の部屋にAさんを誘いました。

広い部屋です。高級な絨毯が山のようにありました。

次々と絨毯が広げられます。Aさんは、目を輝かせて見ています。

「こうすると、本物の良さがわかる」、

と言ってBさんは部屋の電気が消しました。Aさんはちょっと怖くなったそうです。

Bさんは、絨毯をコピー機のような装置に乗せました。裏から光を当てて絨毯を見る機械です。絨毯の繊細な模様が浮かび上がりました。幻想的です。

何枚か絨毯を見た後で、再び電気がつけられました。いつの間にか閉じられた扉の前には、屈強な若者が立っています。これじゃあ帰りにくいな、とAさんは思ったそうです。

BさんはAさんに、一枚の高級絨毯を見せました。

「素敵な絨毯ですね」、
「青山のお店に敷いたら、家具が引き立つんじゃないか?」
「そうですね、でもこれは自宅の玄関の方がいいかもしれないです」

「これだったらいくらで買う?」
「今日は買う気はありません。でもいくらでなら売ってくれます?」逆にAさんが訊ねました。値段はこちらから聞くことにしています。

Bさんはそれには答えずに、もっと大きな絨毯を出してきました。
「これはどうだ」
「いいものですね、自宅の書斎にちょうどいいかもしれません」

Bさんはさらに大きい絨毯を広げました・・・・・・・・・.

「この4つで総額がいくらになるんですか?」AさんはBさんに訊ねました。

Bさんは、ちょっと戸惑いながら、「定価だと2000万円になるけれど、あなたになら1500万円でいい」
「そんなに安くしてもらっていいんですか?」

「ただし条件がある。日本人は5枚まで絨毯を無税で買える。その枠でもう1枚買ったことにして、来月東京で返して欲しい」

Aさんはしばらく考えました。

「分かりました、ではその条件で了解しました」。

「ですが、高額なので東京の会計の担当者に話を通さなければなりません。彼には明日連絡がつきます。それでよろしいですか」

「もちろん、それでいい」
「明後日までCホテルに滞在しています。明日のお昼にでも来ていただければ、その時に契約できます。よろしいですか?」

Aさんは、はじめに1階で見た100万円と言われた絨毯に目を止めて、「ではこれもお願いします。これだけは今日もって帰ります。ホテルの部屋に敷いて感触を楽しみたいので。ではお支払いは後ほどまとめて」と言ってタクシーに乗り込んで帰りました。

ーーーーーーーーーーーーーー

その絨毯は、現在Aさんのお店の壁に飾られています。Aさんは甲府で小さな洋風居酒屋を経営しています。ケバブなどをアレンジしたトルコセットも人気です。Aさんは、あの日慌ててホテルをチェックアウトしたんだそうです。

バルックエキメッキ


<一部、フィクションです。念のため。トルコ、絨毯詐欺、で検索するとたくさんの実例が出てきます。卒業旅行などで行かれる方はくれぐれもお気をつけ下さい>

コメント 0

トラックバック 0

昔の名前
三光町の大邸宅

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /