<横尾歌舞伎>のサハリン公演:『ロシアにおける日本年』の催事(2018年11月11日)
↓ユジノサハリンスクの街の南東側、商業施設であり、オフィスビルでもある<スタリッツァ>に日本語の文字も入った看板が掲出されました。
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↑看板が掲出されている側が地下1階、地上3階に様々なテナントが入っている商業施設で、奥の硝子張りの建物はオフィスビルで、一部に飲食店も入っています。硝子張りの横に、主なテナントの看板も掲出されています。このビルの3階に<カンファレンスホール>という場所が在り、数百人規模の会合やコンサート等に利用されています。
↓この<スタリッツァ>の<カンファレンスホール>で、『ロシアにおける日本年』の催しである<横尾歌舞伎>のサハリン公演が行われました。
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<横尾歌舞伎>というのは、静岡県浜松市の引佐横尾(いなさよこお)地区に受け継がれている伝統芸能です。
歌舞伎は江戸時代を通じて幅広く親しまれるようになって行った演劇です。江戸、大坂、京というような大都市に常設の芝居小屋が設けられて賑わい、発展を続けた他、地方巡業を行う一座も多く見受けられ、全国各地に広まりました。そして各地で「自分達でやってみよう」という動きも起こり、土地の祭りで神社に奉納する芸能のようになる等して永く受け継がれました。横尾の歌舞伎も、そうやって普及して受け継がれるようになったモノの一つで、既に二百数十年の伝統が在るといいます。
引佐横尾地区は概ね200世帯程度の地区ということですが、<横尾歌舞伎>の公演には「殆ど全ての世帯の人々」というような、小学生からお年寄りまでの百数十名が関わっており、演者、音楽、大道具や小道具、衣装、着付けやメイクアップ、その他何でも必要なことを行っているといいます。
その引佐横尾地区の<横尾歌舞伎>に携わる皆さんがサハリンへやって来て公演を行うことになりました。在ユジノサハリンスク日本国総領事館の尽力で様々な準備が進められ、公演本番を迎えています。
↓会場の<カンファレンスホール>に着いてみると、未だ客席が埋まる前でした。少し面白い様子なので、1枚写真を撮っておきました。公演開始直前には、数百席が殆ど埋まりました。
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↑「あっ!歌舞伎...」という独特な色彩の幕が舞台に据えられていました。
芝居そのものの開演に先駆けて、こういうモノを全く初めて視るサハリンの皆さんに向けて、歌舞伎を観る場合に見受けられる"投げ花"や"大向こう"というような、小銭を紙で包んだモノを投げることや掛け声をかけるというような慣習も含めた「歌舞伎ワンポイント講座」のような内容が入りました。
そしていよいよ公演です。
演目は『菅原伝授手習鑑』の第三段からというモノでした。
『菅原伝授手習鑑』は、平安時代の菅原道真の失脚事件を中心に、道真の周囲の人々の生き様を描くという物語です。
上演された第三段の主要な役は、松王丸、梅王丸、桜丸の三兄弟です。三兄弟は各々に貴人に仕えていましたが、梅王丸や桜丸の主人達は失脚の憂き目を見てしまい、二人は浪々の身です。神社の近くで二人が出くわした時、大袈裟な行列が現れ、聞けば二人の主人達を失脚に追い込んだ張本人の時平(しへい)の行列だといいます。二人は行列の襲撃を企てます。が、そこに立ちはだかるのが二人の兄で、時平に仕える松王丸だったのです。
上演中、脇のスクリーンに台詞の概要が「ロシア語字幕」で示されて内容が伝えられていました。が、近くの席の人達の様子を何気なく視ると、独特な所作を見せる、サハリンの皆さんには「不思議?」に視えるかもしれない衣装の演者達をじっと見入っているような人も多かったように見受けられました。そして、三味線や拍子木の音と共に、独特な抑揚で為されるナレーションも、不思議な音楽のようで聴き入ってしまいます。
↓松王丸、梅王丸、桜丸、時平と4人の主要キャストが配布されたリーフレットにも紹介されていました。
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芝居の後は、司会者が関係者に「これはどういうことなの?」と質問をして、それに答えるというトークセッションでした。
"花道"を意識して、一般的に演劇では演者が立たない位置で演じていたこと。舞台上に居るのに「居ないことになっている」という"黒子"のこと。「黒」、「柿色」、「萌葱」の3色を使う定式幕(じょうしきまく)のこと。赤は正義、青は悪、茶色は幽霊や妖怪ということになっているメイクのこと。そういうような、「日本の人でも知らない場合が在る?」ようなことがトークを通じて紹介されました。
また<横尾歌舞伎>の舞台に立った演者の皆さんは、普段は普通の仕事をしている市井の普通な人々なのですが、松王丸、梅王丸、桜丸の三兄弟を演じた皆さんも、各々にコンピュータ関係、地元の浜松市役所、自動車会社と普通に仕事をされていることが紹介されました。
伝統芸が市井の普通の人々によって永く受け継がれているという事例が在って、それがサハリンの皆さんに紹介されました。サハリンに居て様々な活動に携わる日本の関係者も、筆者自身も含めて来場していましたが、こういうものは日本国内に在っても頻繁に観られるでもない訳で、貴重な機会となりました。
ロシアも演劇文化が盛んと言える国で、ユジノサハリンスクでも舞台を観るのが好きな方は多いようです。そういう皆さんに、地域の人達が支える伝統的な舞台というモノは、強い余韻を残してくれたようです。
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↑看板が掲出されている側が地下1階、地上3階に様々なテナントが入っている商業施設で、奥の硝子張りの建物はオフィスビルで、一部に飲食店も入っています。硝子張りの横に、主なテナントの看板も掲出されています。このビルの3階に<カンファレンスホール>という場所が在り、数百人規模の会合やコンサート等に利用されています。
↓この<スタリッツァ>の<カンファレンスホール>で、『ロシアにおける日本年』の催しである<横尾歌舞伎>のサハリン公演が行われました。
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<横尾歌舞伎>というのは、静岡県浜松市の引佐横尾(いなさよこお)地区に受け継がれている伝統芸能です。
歌舞伎は江戸時代を通じて幅広く親しまれるようになって行った演劇です。江戸、大坂、京というような大都市に常設の芝居小屋が設けられて賑わい、発展を続けた他、地方巡業を行う一座も多く見受けられ、全国各地に広まりました。そして各地で「自分達でやってみよう」という動きも起こり、土地の祭りで神社に奉納する芸能のようになる等して永く受け継がれました。横尾の歌舞伎も、そうやって普及して受け継がれるようになったモノの一つで、既に二百数十年の伝統が在るといいます。
引佐横尾地区は概ね200世帯程度の地区ということですが、<横尾歌舞伎>の公演には「殆ど全ての世帯の人々」というような、小学生からお年寄りまでの百数十名が関わっており、演者、音楽、大道具や小道具、衣装、着付けやメイクアップ、その他何でも必要なことを行っているといいます。
その引佐横尾地区の<横尾歌舞伎>に携わる皆さんがサハリンへやって来て公演を行うことになりました。在ユジノサハリンスク日本国総領事館の尽力で様々な準備が進められ、公演本番を迎えています。
↓会場の<カンファレンスホール>に着いてみると、未だ客席が埋まる前でした。少し面白い様子なので、1枚写真を撮っておきました。公演開始直前には、数百席が殆ど埋まりました。
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↑「あっ!歌舞伎...」という独特な色彩の幕が舞台に据えられていました。
芝居そのものの開演に先駆けて、こういうモノを全く初めて視るサハリンの皆さんに向けて、歌舞伎を観る場合に見受けられる"投げ花"や"大向こう"というような、小銭を紙で包んだモノを投げることや掛け声をかけるというような慣習も含めた「歌舞伎ワンポイント講座」のような内容が入りました。
そしていよいよ公演です。
演目は『菅原伝授手習鑑』の第三段からというモノでした。
『菅原伝授手習鑑』は、平安時代の菅原道真の失脚事件を中心に、道真の周囲の人々の生き様を描くという物語です。
上演された第三段の主要な役は、松王丸、梅王丸、桜丸の三兄弟です。三兄弟は各々に貴人に仕えていましたが、梅王丸や桜丸の主人達は失脚の憂き目を見てしまい、二人は浪々の身です。神社の近くで二人が出くわした時、大袈裟な行列が現れ、聞けば二人の主人達を失脚に追い込んだ張本人の時平(しへい)の行列だといいます。二人は行列の襲撃を企てます。が、そこに立ちはだかるのが二人の兄で、時平に仕える松王丸だったのです。
上演中、脇のスクリーンに台詞の概要が「ロシア語字幕」で示されて内容が伝えられていました。が、近くの席の人達の様子を何気なく視ると、独特な所作を見せる、サハリンの皆さんには「不思議?」に視えるかもしれない衣装の演者達をじっと見入っているような人も多かったように見受けられました。そして、三味線や拍子木の音と共に、独特な抑揚で為されるナレーションも、不思議な音楽のようで聴き入ってしまいます。
↓松王丸、梅王丸、桜丸、時平と4人の主要キャストが配布されたリーフレットにも紹介されていました。
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芝居の後は、司会者が関係者に「これはどういうことなの?」と質問をして、それに答えるというトークセッションでした。
"花道"を意識して、一般的に演劇では演者が立たない位置で演じていたこと。舞台上に居るのに「居ないことになっている」という"黒子"のこと。「黒」、「柿色」、「萌葱」の3色を使う定式幕(じょうしきまく)のこと。赤は正義、青は悪、茶色は幽霊や妖怪ということになっているメイクのこと。そういうような、「日本の人でも知らない場合が在る?」ようなことがトークを通じて紹介されました。
また<横尾歌舞伎>の舞台に立った演者の皆さんは、普段は普通の仕事をしている市井の普通な人々なのですが、松王丸、梅王丸、桜丸の三兄弟を演じた皆さんも、各々にコンピュータ関係、地元の浜松市役所、自動車会社と普通に仕事をされていることが紹介されました。
伝統芸が市井の普通の人々によって永く受け継がれているという事例が在って、それがサハリンの皆さんに紹介されました。サハリンに居て様々な活動に携わる日本の関係者も、筆者自身も含めて来場していましたが、こういうものは日本国内に在っても頻繁に観られるでもない訳で、貴重な機会となりました。
ロシアも演劇文化が盛んと言える国で、ユジノサハリンスクでも舞台を観るのが好きな方は多いようです。そういう皆さんに、地域の人達が支える伝統的な舞台というモノは、強い余韻を残してくれたようです。