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August 2016

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Photo:Tomoki Hirokawa2016

この夏、縁あって初めて出演した舞台、劇団テトラクロマット第三回公演『風は垂てに吹く〜愛していると言うかわりに、空を飛んだ〜』。稽古から上演までの全日程が、今週終わった。

物語の主人公は、グライダー乗りだった夫を自分の決断で人工呼吸器につないでしまった画家の夏月。彼女はある日、この世とあの世の狭間、夢と現実の狭間にある"ハザマ"の世界に迷い込む。この"ハザマ"の世界の住人はみな飛行機と関係のある過去の実在の人物なのだが、私はそのひとり、アメリア・エアハートを演じた。女性で初めて大西洋単独横断飛行を成し遂げ、その後ナビゲーターのフレッド・ヌーナンと共に赤道一周飛行に挑戦中、行方不明となったアメリカンヒロインだ。

ストーリーもファンタジー要素が強いが、演出も単純ではなかった。舞台上には、人と人の繋がり(時にしがらみ)を表す紐が何本も張り巡らされている。また「闇」と呼ばれる120cm程の深さの穴が舞台上手にぽっかりと空いている。ハザマの衆はその中を踊ったり、変わったムーブメントをしたりしながらストーリーが進む。さらにクライマックスには長さ16mの黒ビニールの「闇」がみなを飲み込んだり、天井から伸びる長さ25mの布を棚引かせたり、舞台上をグライダーが飛んでいるように見せたりするのだが、それら仕掛けや小道具の操作はすべてキャストが自ら行う。毎公演滞りなく再現できるのか不安になる細かな段取り。私が小道具を取り忘れたら、或いは移動が間に合わなかったら、そのあとの展開が立ち行かなくなる。全員がその責任を果たさないと即座に崩壊する演出は恐ろしくもあった。

それらを形にするための1ヶ月以上の稽古は並々ならぬハードさだった。慣れぬ私は初日に早くも腰を痛め、毎日汗だく、アザだらけになりながら動きを体に落とし込んだ。また、アメリアという人物の感情をどう体全体で表現するか、演技についても試行錯誤。自分の能力の低さがもどかしかった。精神および肉体修業のようだったが、共に稽古をするキャスト仲間に救われた。人格もプロ根性も素敵で、ほんと大好きになっちゃう、愛のあるキャストばかりだったのだ。

舞台は誰ひとり欠けても上演できない。苦しい稽古はキャスト同士の信頼関係を育み、チームプレイを作るためでもある。その凄さは本番で体感した。11人のキャストが完全に一体になり、互いを想い合い、支え合える素晴らしいチームに育っていた。人間、人のためだと踏ん張れることがある。彼らのためだと思えばハードな公演もがんばれた。仲間の笑顔がこんなにもご褒美になるものか、と驚いた。結果、舞台は連日満席状態、好評のうちに幕を閉じた。

公演後、私は心身ともに抜け殻のようになった。疲れがどっと出たのはもちろんだが、それだけでない。自分たちが創り出した"ハザマの世界"の空気感や"ハザマ衆"の仲間たちが愛しくてならなかった。自分の演じたアメリアも、最早、私の中にしっかり存在していた。彼女の強さや真っ直ぐさ、勇気、かわいさが、大切な友のように居場所を得ていたのだ。

もうこれらハザマの世界の全てに会えないのかと思うと、心の中にぽっかりと大きな穴が空いたようである。そこまで、自分が全力で注ぎ込んだという証かもしれない。頭だけでなく、心ごと。

物語のテーマでもあった「人と人との繋がり」。人と関われば、ありがたいことも、煩わしいこともある。でも、人はひとりで幸せを感じることはできない。何かが終わってしまう切なさも。そう心底感じた大切なひと夏...決して一生忘れないであろう。

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Photo:Tomoki Hirokawa2016

お忙しい中お運びいただきご鑑賞くださった皆様、
そして、ご一緒いただいたみんな、
心から 心から
ありがとうございました。

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初めて出演する舞台、
『風は垂てに吹く
〜愛しているという代わりに、空を飛んだ〜』
の初日まで、ついに1週間を切りました。
ひえー。
毎日かなりハードに稽古が続いています。
必死です。
すごい汗です。
すごいアザです。
不安要素バリバリです。
蓄積疲労も半端ないです。

そんな中、きょうも笑顔でがんばれているのは、
共演者がほんっっっと大好きになっちゃうような方々ばかりだからです。
毎日彼ら彼女らと会えるから稽古場に行く力が湧いてくる。
一緒だから、少しでもよい舞台にしたいという気持ちが起こってくる。
力足らずの私にいろんなことを教えてくれる、みんなのプロ魂には感激です。

芝居は誰ひとり欠けても、全体が成立しない。
そして、必ず起こるハプニングや誰かのミスをいかに仲間が救うか、そのために稽古を重ねている。
舞台の現場は、毎日が人生勉強であります。

まだ本番すら始まってないけど、このみんなに出会えて本当によかった!
みんな本当にありがとう〜
明日もがんばろー。

*******
『風は垂てに吹く〜愛しているという代わりに、空を飛んだ〜』
8月18日(木)〜23日(火)
吉祥寺シアター
前売り4500円 (22歳以下は3000円)

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珍しく早く稽古が終わり、初めてみんなでごはん行けたの図。

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キャスト女子部。
左上から時計回りに、北川弘美さん、タマルさん、儒河さん、小飯塚貴世江さん。

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今年の夏は、
初めての本格的な舞台に挑戦している。

8月18日〜23日
吉祥寺シアターで上演する
テトラクロマット第三回公演
『風は垂てに吹く』
ウェブサイト

7月半ばから始まった舞台稽古、
稽古期間の半分ちょっとが終わりました。

肉体表現を多用する芝居のため、
毎日6〜8時間近く体を動かし、声を出し、汗をかき、創っていく・・・
完全に夏の部活状態。

お芝居、舞台表現の世界ってすごいな、
ということを身を以て体験している。
いままであまり追求したことがなかった、
身体全体で、情報を伝えたり特定のことを表現したりということがいかに大変かを実感中。
なかなか思ったようにできない。

そして、人間や人間関係について分析して考え、
それを形に落としていくことなどは、
実に深い。
人というものについて、じっくり考える。
そういうことを考えるのはもともと好きなので、おもしろい。

さらに、ほぼ全員が出ずっぱりの2時間弱になる予定で、
芝居の流れを展開していくために、
毎回生で再現できるのだろうか、とドキドキするほど、
細かな段取りがある。
"このときに私がこの小道具を取り忘れたら"、"この場所に移動できなかったら"
そのあと他の出演者の動きや展開に迷惑がかかる。
あ〜どきどき。

それだけではない。
歳的にも、身体能力的にも、
自分の限界の低さに自己嫌悪になる、もどかしい日々。
痛みが耐えなかったり、思う形に動かなかったりする自らの肉体とも向き合う、
精神的・肉体的な修業の日々である。

と書くと、なんやそりゃ、おもしろいのか?
と思うかもしれませんが、
ストーリーや目指す演出効果はかなりかっこいい舞台だ。
共演キャストも人間的魅力溢れる方々ばかり。

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ぷぷぷ。ゴミ袋、か?
穴から覗くのは、キュートすぎる実力派女優、小飯塚貴世江ちゃん。

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不思議な世界のkingと助手の二人。
才能と経験値でみんなを支える俳優の宮本大誠さんと、シンガーソングライターのタマルさん。

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創るのには手間とエネルギーが要ります。

『風は垂てに吹く』のストーリーは:
人工呼吸器に自分がつないでしまい、
もう二度と普通のコミュニケーションが取れない状態の夫のことで
罪悪感を抱え、悩む夏月は、
夫の好きだった雲の絵を描こうと、古い天文台に足を踏み入れる。
夕日が沈む頃、そこには不思議な人たちが飛行機を製作している不思議な工房が現れるのだった。
現実と夢の狭間のような、その世界とはいったい...?

テーマは、
人と人の繋がり。
人との繋がりって、時に煩わしかったり、時に本当に有り難かったりする。
でも、やっぱり、ひとりっきりで生きていける人はいないと思うのだ。
そして、ひとりっきりで、幸せを掴むことも難しいと思う。
そんなことを考えさせてくれる物語だ。
見たあとには、爽やかな気持ちになっていただけるかと。

大人のファンタジー、興味ある方、舞台好きな方、是非お運びください。
(アラフォーの捨て身の挑戦の姿に、勇気を感じていただける可能性もあります)

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