近所に、ボリュームが在るサンドイッチを頂きながらビールを呑める店が在り、何となく足が向きます。
↓その店で流れていたテレビに映った、映画を紹介する映像です。
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↑<Спасти Пушкина>(スパスチー・プーシキナ)(プーシキンを救え)という、2017年のロシア作品!4月27日から公開されたばかりの作品です。テレビで紹介されるのを視た時には「近日公開」という扱いでした。
アレクサンドル・セルゲイヴィチ・プーシキン(1799年06月06日-1837年02月10日)は、ロシアでは最も有名で、最も評価が高い詩人で、所謂"近代文学"の礎となるような作品を多く遺したとされます。
サハリンで、或いはロシアの何処ででも「プーシキンの誕生日?」とでも話題を持ち出せば、10人中8人か9人は「6月6日ですよね...」と躊躇無く応えられるような、そういう程度―日本でも文学史を飾る多くの作家が在りますが、「誕生日?」とでも話題にすれば「知らない...」という作家ばかりだと思います。―に有名な詩人です。この"超"が付く程度に有名な19世紀の文学者が、21世紀の街に現れるという、SF調な設定と、学園ドラマ的な要素が絡まり合ったようなコメディー作品が<Спасти Пушкина>(スパスチー・プーシキナ)(プーシキンを救え)という作品です。
1837年...小雪が舞う中で、プーシキンは命を落とすことになった"決闘"へ向かっていました。プーシキンは相手と対峙しています。
2017年...モスクワの、その名も<プーシキン高校>では、担任の先生の指導の下、生徒達が学校行事の準備を賑々しく行っています。スピーチ大会、詩の朗誦の会のような催しで、校内のホールに学校名に因んだプーシキンの大きな肖像画を飾ろうとしていました。
その場で、「おじいちゃんの宝物をこっそり持って来た」というエゴールが、親友のフョードルに<プーシキンの時計>なるモノをこっそりと見せています。年代モノの懐中時計です。他の生徒がそれを視て、「おい、見せろよ!」というようなことになり、何やら争奪戦のようになり、終いに時計が宙に舞いました。落ちて壊れては大変と、エゴールとフョードルが時計が飛んでしまった方に飛び込んで、モノを無事に掴んだのでしたが、そこで妙なことが起こりました。
エゴールとフョードルは、時間と空間が捻じれた中に飛び込んでしまって、プーシキンが決闘して銃弾が発せられる瞬間にタイムスリップし、そして次の瞬間にプーシキン本人と諸共に元の2017年に戻ったのでした。
気候の好い5月頃の設定という感じの学校に、冬の外套姿で粉雪を少々被ったプーシキンが不意に現れ、居合わせた生徒達や先生は驚いて騒ぎます。プーシキン本人も「何処に居るんだ?私は?」と困惑しています。
こういう騒ぎになれば、早速にプーシキン高校の生徒達の中の"ブロガー"がビデオをネットで流します。それを視て、多少名前の売れたトークショーの司会者が、番組一本を制作する、カメラに照明や音声に、メイク係から番組内の"ジングル"を生演奏するバンドと歌手に至るまでの大チームを引き連れてプーシキン高校に乗り込んで来て、生放送まで始まりました。
「あなたは本物のプーシキンなのですか?」と問う司会者。対するプーシキンは「私には皆さんの御質問の意味が...判らない...」という反応。そんな小さな騒ぎが続きます。
こういう騒ぎの他方、エゴールとフョードルは「何とかプーシキンを元の世界に戻さなければ...」と色々と考えます。そこに彼らと仲が好い女子生徒のミラーナが現れ、「戻っても命を落とすだけなのだから、助けてあげましょう」と言い出します。しかし、エゴールとフョードルは「そんなことをして歴史を変えると、大変なことになってしまう!」と必死です。
そうして何やら混乱する中、「恐らく"タイムマシーン"」と見受けられる時計の争奪戦が始まったり、プーシキンを金儲けのネタにしようとする人達が蠢きます。他方でエゴールとフョードル、加えてミラーナと担任の先生の4人で、先生の愛車で走り回って、プーシキンに「21世紀のモスクワ」を見せて回ります。
余りにも有名な文学者の"ホンモノ"と、妙な切っ掛けで交流することになった現代の高校生達。自身の時代から200年近くも後の時代の少年少女達と不思議な交流を経験する19世紀の詩人。凄く愉しい物語でした!
プーシキンが21世紀の街を行く場面では、カフェで視掛けたウェイトレスが素敵だと、紙に詩を書き残して去ってみて、ウェイトレスが後から感激していたとか、プーシキンの銅像の真似をする大道芸人に「商売の邪魔をしてくれるな!」と絡まれて大喧嘩になる寸前の騒ぎが起こったり、大きな銅像を視て「私に似ている!」と驚き、子どもが「プーシキンだ!」と寄って来て写真をお願いされ、親が何やら現代の紙幣を彼に渡してみたり等々、笑いが止まりませんでした。
映画は、商業施設<シティーモール>の館内に在るシネマコンプレックスで観ました。最も小さい部類のホールで上映されていたのでしたが、筆者が立ち寄った回の上映は"貸切"状態でした。
"人気作品"と呼び得るのか否か、よく判りません。凄く愉しみましたが。日本での紹介が在るのか否かは判らないのですが、出来れば紹介されて欲しい作品です。