「稚内旅行」が切っ掛けで始まった文化活動:<墨絵展―『日本の息吹』>(2018年12月21日)

稚内市サハリン事務所では、色々な文化行事に関して、関係各方面からの御案内を頂くことが時々在ります。

つい最近、<墨絵展―『日本の息吹』>という催しのオープニングセレモニーが催されるとの御案内を頂きました。

「墨絵」と言えば、墨汁の濃淡で風景やモノ等を描くという絵画で、個人的なイメージとしてはモノクロ写真や、単色での印刷を前提に描かれるイラストというようなモノに通じるような、面白いジャンルだと思っています。そういう作品を展示する機会ということで少し興味を覚えましたが、「是非ともお訪ねしなければなるまい!」ということになる、興味深いお話しが伝わって来ました。

展示される画の作者、リュボーフィ・スミルノーワさんはサハリンの税関職員であったという女性です。サハリンの旅行会社が募集した、稚内・コルサコフ航路のフェリーを利用する旅行に参加し、稚内滞在を愉しまれた経過が在ります。

リュボーフィ・スミルノーワさんが墨絵に魅せられて自ら取組むようになったのは、この「稚内旅行」が切っ掛けでした。「漢字というモノを筆で書く?書道というモノがどういう感じなのか、経験してみたい」という希望を表明され、稚内の関係者が奔走して地元の書家である中本青岳さんに御願いし「書道体験」が出来たのです。この体験が切っ掛けで、墨汁の濃淡で何でも表現する墨絵を知って取組むようになったのです。御自身で描く他、"絵画サークル"というような愛好者の活動の中で墨絵を描いてみるという活動にも取組まれているようです。

そうして活動を続けて来た中、職場のサハリン税関のバックアップ、会場となった<ヒストリーパーク>の協力で展覧会開催に至ったというのです。

↓<ヒストリーパーク>へ行ってみると、オープニングセレモニーに集まった人達で大変に賑わっていました。
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↑サハリン税関の幹部の方達、広報担当者やリュボーフィ・スミルノーワさんと一緒に仕事をした経過の在る皆さんや後輩の皆さんが多く来場していて、「港や空港で視掛ける税関吏の緑系の制服が溢れている?!」と多少驚きました。更に何台もテレビカメラが入り、メディアの取材も入っていた様子です。

↓<ヒストリーパーク>の2階に在る会議室にオープニングセレモニーの会場が設えられていました。
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↑もっと「ささやかなセレモニー」を想像して会場に足を運んだので少し驚きました。

サハリン税関の広報担当者が、「本職のアナウンサー」のように見事に司会を務めてセレモニーは進行しました。永くサハリン税関に務め、ホルムスクの現場が永かったというリュボーフィ・スミルノーワさんを全面的にバックアップという感じです。

セレモニーでは、リュボーフィ・スミルノーワさんが「稚内旅行」での経験から墨絵に取組んだことや、日本での墨絵は14世紀頃に中国から伝わったとされ、武士達が好んだと伝えられるという知識も紹介されました。

↓関係者が帰って落ち着いた後、改めて展示を少し拝見しました。
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↑<ヒストリーパーク>1階のスペースです。オープニングセレモニーの中で館長が「"私達"が皆で創る広場を目指して館を運営しているが、その皆の1人ということになる州内に住む方の手になる独特な絵画作品が、館内の展示スペースを彩って行く準備の様子を昨日は見守っていた」と話されていました。墨絵の展示が為され、空間に独特な演出が施されたかのようです。

↓各作品を拝見すると、古くから「墨絵の画題」のようになっているような作品や、サハリンの山河に着想を得たと見受けられる作品が在り、なかなかに愉しめました。
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↑「日本の流儀」で表現を試みているということで、作品展を『日本の息吹』と命名されています。

稚内は、稚内・コルサコフ航路を介して日本の北海道とロシアのサハリンが交差する場所です。同時に「異なる背景を持つ日ロ両国の文化の交差点」でもあります。「稚内旅行」でロシアの方が「日本の流儀の絵画表現」に出会い、創作活動を立派に続けていらっしゃるのです。

2018年は「文化交流の年」という位置付けで、日本文化関連の催事が色々とサハリンで催されている中、「日本で出逢った文物」に関する活動を続けている方の作品展が開催されました。そこで「稚内旅行」が「切っ掛け」となっているのは大変に嬉しい話題です。

サハリン州郷土博物館(2018年12月15日)

11月下旬に一時帰国でユジノサハリンスクを離れた際には、積雪は然程気にならない感でした。月が改まってユジノサハリンスクに戻ってみれば、積雪が"定着"という感じになっていました。

↓博物館の独特な建物や屋外展示の大砲ですが、「少な目な積雪」の時季は、何となく見栄えが好いような気もします。
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↑ユジノサハリンスクに入って程無く土曜日ということになり、天候が好かったので近くを通って眺めてみました。

↓「寒さに強い」とされる、所謂"石州瓦"の流れを汲む赤茶色の瓦屋根に雪が載っている様子は、なかなかに「画になる」という感じです。
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↑画の右側から当たっている光線で、独特な感じの建物の立体感が強く感じられるような感じになっています。

この博物館に関しては「建物そのもの」が「重要な展示品」という趣きが在るようにも思います。辺りの木の葉が落ちてしまっている冬季、更に雪が未だ少な目な間は見栄えが好いように思います。