『サハリン島』(Остров Сахалин)の原書(2018年04月01日)

好天の日曜日に<A.P.チェーホフ 『サハリン島』 文学記念館>に立寄りました。

↓館の入口辺りに在る渋い胸像の周辺から雪が消えたので、久し振りに一寸眺めてみたかったということで立ち寄ったのでした。
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そして何となく館内に入ったのですが、入口辺りのチケットを売っている窓口で、何やら本等を売っていました。

眼に留まったモノを係の方に見せて頂いたのですが、1冊「これは!」と思って半ば衝動的に求めてしまいました。

↓<A.P.チェーホフ 『サハリン島』 文学記念館>で売られていたのは、2017年に新たに刷ったという『サハリン島』(Остров Сахалин)の原書でした。
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↑一冊が600ルーブルでした。<A.P.チェーホフ 『サハリン島』 文学記念館>の後に道草したカフェで、何となくテーブルに出して眺め入ってしまいました。

↓チェーホフがサハリンを訪れた1890年というような頃をイメージした画が使用された表紙で、なかなかに趣きが在る本です。
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「本」は、当然ながら手に取って確りと読むべきモノではあります。が、「持ち歩いて随時読む」にはやや嵩張るような感じのこの一冊は、「とりあえず持っているだけで嬉しい」かもしれないような一冊です。

サハリンに在って、この『サハリン島』は「地域の歴史を伝える貴重な文献」であって、同時に「誰でも名前位は知っているような"大作家"が若き日に、遠路遥々サハリンを訪れて綴った」という代物で、サハリンでは「一寸特別な本」かもしれません。

モカチーノ(2018年03月31日)

近所のカフェで飲物を愉しむ場合、一度頼んだモノが気に入ると、毎回のようにそればかりを頼んでしまいます。そのうちにお店のスタッフと顔馴染みになって来て、「アレ...ですよね?」という話しになって、速やかに好みの飲物が用意されるようにさえなってしまいます。

そういうのも好いのですが、そういうことばかりやっていると、色々と在るメニューの中に「あのしろまるしろまるというのはどういうモノだ?」というのが残ってしまいます。「アレ...ですよね?」に対して「今日は一寸違う...」という位に応じて、その「どういうモノだ?」を敢えて頼んでみるという「どうでもいい程度に細やかな挑戦」も愉しいものです。

↓「どうでもいい程度に細やかな挑戦」の結果、席に運ばれて来た飲物です。
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↑オーストリアのウィーンでは、コーヒーの上にホイップクリームを載せて、色々と飾るという流儀が在りました。日本でも「ウィンナーコーヒー」等と呼んで出て来る場合が在ります。それを想い出しましたが、これは違います。<モカチーノ>と名付けられているモノです。

<モカチーノ>?日本国内では然程知られていないコーヒーであるように思います。

モカチーノは、エスプレッソコーヒー、チョコレートシロップ、ミルクを組み合わせたモノです。"モカ"というのが、「コーヒー豆の種類」(エチオピアやイエメンの産が知られる、少し個性的な味のモノ)ではなく「チョコレート」という意味なのだそうです。その"モカ"に"カプチーノ"を併せて<モカチーノ>という名前が出て来たようです。

日本国内の有名なチェーン店では、<モカチーノ>という呼び名は余り見受けられないと聞きます。カプチーノを頼む際に「チョコレートシロップを追加」と御願いすることで、実質的な<モカチーノ>が出来上がって愉しめるということになっているようです。

↓ユジノサハリンスクのカフェでは、最初から<モカチーノ>とメニューに載っている場所が見受けられます。
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↑この店では、エスプレッソコーヒー、チョコレートシロップ、ミルクを合わせたモノの上にホイップクリームを載せて、そこにチョコレートを飾っています。

特段に、横に在る砂糖を加えるまでもなく、充分に甘い感じです。コーヒーのバリエーションでありながら、何か「美味いココア」を頂いているかのような、少し不思議な気分の飲物でした。

こういう次元の「あのしろまるしろまるというのはどういうモノだ?」は未だ色々と在りますから、そのうち挑戦してみたい感じです。

観劇:<チェーホフセンター>の新作劇『犬の心臓』(Собачье Сердце)(2018年03月30日)

"セゾン"(シーズン)と呼び習わされていますが、ユジノサハリンスクの劇場<チェーホフセンター>での演劇の公演が催される期間が未だ続いています。

↓3月30日、観に行った劇の幕間に、一寸戸外に出て眺めた<チェーホフセンター>の建物です。
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↑午後8時過ぎの様子です。

シーズンの中、色々な演目が上演されていますが、時々「"新作"の登場」というのが見受けられます。

3月下旬にこの「"新作"の登場」という話しが在って、少なからず興味を覚えました。かのミハイル・ブルガーコフの小説を原案とした新作劇だというのです。3月24・25日に全く初めての上演で、「2回目」になる3月30日に行ってみました。

ミハイル・ブルガーコフ(1891-1940)は戯曲や小説を綴っていた作家ですが、小説の人気が高く、幾つかの小説が舞台化されている経過が在ります。今回、<チェーホフセンター>で取り上げたのは『犬の心臓』(Собачье Сердце)です。

ブルガーコフは医学部に学んだ経過が在り、科学に造詣が深い一面が在ると見受けられますが、そうした科学知識を作中に持込んだ、今風に言うと「SF?」というような着想、仕掛けの作品が幾分見受けられます。『犬の心臓』もそうした系譜の作品です。

『犬の心臓』は、1920年代のモスクワを舞台に、SF的な動物の改造実験が行われ、そこから騒動が巻き起こるという物語です。

フィリップ・プレオブラジェンスキー教授は、犬に手術を施して実験を行いました。その結果、犬が人間のようになって行くのです。教授が犬に着けた"シャリク"という名を転訛して、「人間化」してしまった犬は"シャリコフ"という、何となくロシア語に在りそうな姓を名乗り、教授を苛立たせる粗野な言動を見せるようになって行きます。そしてどうするのか、という物語です。

<チェーホフセンター>での新作劇ですが、通常な型で「ホールの客席に観客が入ってステージで劇が演じられる」のではなく、ステージのホール寄り辺りに、階段状に椅子を配した100席余りと見受けられた特設席を設ける方式の上演でした。何となく「小さなホールで、演者が出るステージに近い客席で劇を観る」感じになります。随分以前にも、こういうような「ステージ上に少数の客席を設えて上演」というやり方を見た記憶が在りましたが、今般はかなり久し振りにこの方式の上演を観ました。

上演の2日程前に<チェーホフセンター>の券売窓口に寄ってみると「前売り券?無い...」という感じで、「当日に窓口で...」というような話しになりました。この新作劇に興味が在ったので、当日に足を運んで券を入手ということになりました。そして無事に券を入手出来て、新作劇を鑑賞しました。

席の指定は無く、"自由席"という次第でした。運好く最前列の端に陣取りました。「端の席」でも、普段の大きなホール程に幅が在るでもないスペースなので、非常に好い感じで観られました。演者が語気を荒げて話すような場面では「唾が多少散るのが視えるような...」という距離感でした。

原案となった「小説」の『犬の心臓』を巧く抽象化し、前後半各々1時間程度の劇に纏め上げた内容でした。限られたスペースで、抽象的な見せ方で小説を原案とする世界観を判り易く、同時に「やや意表を突く見せ方」で魅せてくれました。非常に「現代的な見せ方」とも思いました。

作中の、改造手術を施された犬の"シャリコフ"は「怪物染みた存在」になって行くのですが、何処か「哀愁」も漂う具合でした。

↓こちらが1400ルーブルだったチケットの半券と、凝った美術の折り畳み式になった公演パンフレットです。
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この新作劇に関しては「+18」というマーク、「18歳以上の鑑賞」という指定になっていますが、公演は「大人向けなショー」、「大人向けのファンタジー」と思える設えでした。こういうような新作劇が毎シーズンのように出て来るというエネルギーが鮮烈な印象をもたらしてくれます。

↓因みに『犬の心臓』に関しては2015年に、作品が収録された文庫本が登場しているようです。その他、作品が収録された本は幾分出ていますから、興味を覚えた方は読むことが出来ると思います。