観劇:<チェーホフセンター>の新作劇『犬の心臓』(Собачье Сердце)(2018年03月30日)

"セゾン"(シーズン)と呼び習わされていますが、ユジノサハリンスクの劇場<チェーホフセンター>での演劇の公演が催される期間が未だ続いています。

↓3月30日、観に行った劇の幕間に、一寸戸外に出て眺めた<チェーホフセンター>の建物です。
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↑午後8時過ぎの様子です。

シーズンの中、色々な演目が上演されていますが、時々「"新作"の登場」というのが見受けられます。

3月下旬にこの「"新作"の登場」という話しが在って、少なからず興味を覚えました。かのミハイル・ブルガーコフの小説を原案とした新作劇だというのです。3月24・25日に全く初めての上演で、「2回目」になる3月30日に行ってみました。

ミハイル・ブルガーコフ(1891-1940)は戯曲や小説を綴っていた作家ですが、小説の人気が高く、幾つかの小説が舞台化されている経過が在ります。今回、<チェーホフセンター>で取り上げたのは『犬の心臓』(Собачье Сердце)です。

ブルガーコフは医学部に学んだ経過が在り、科学に造詣が深い一面が在ると見受けられますが、そうした科学知識を作中に持込んだ、今風に言うと「SF?」というような着想、仕掛けの作品が幾分見受けられます。『犬の心臓』もそうした系譜の作品です。

『犬の心臓』は、1920年代のモスクワを舞台に、SF的な動物の改造実験が行われ、そこから騒動が巻き起こるという物語です。

フィリップ・プレオブラジェンスキー教授は、犬に手術を施して実験を行いました。その結果、犬が人間のようになって行くのです。教授が犬に着けた"シャリク"という名を転訛して、「人間化」してしまった犬は"シャリコフ"という、何となくロシア語に在りそうな姓を名乗り、教授を苛立たせる粗野な言動を見せるようになって行きます。そしてどうするのか、という物語です。

<チェーホフセンター>での新作劇ですが、通常な型で「ホールの客席に観客が入ってステージで劇が演じられる」のではなく、ステージのホール寄り辺りに、階段状に椅子を配した100席余りと見受けられた特設席を設ける方式の上演でした。何となく「小さなホールで、演者が出るステージに近い客席で劇を観る」感じになります。随分以前にも、こういうような「ステージ上に少数の客席を設えて上演」というやり方を見た記憶が在りましたが、今般はかなり久し振りにこの方式の上演を観ました。

上演の2日程前に<チェーホフセンター>の券売窓口に寄ってみると「前売り券?無い...」という感じで、「当日に窓口で...」というような話しになりました。この新作劇に興味が在ったので、当日に足を運んで券を入手ということになりました。そして無事に券を入手出来て、新作劇を鑑賞しました。

席の指定は無く、"自由席"という次第でした。運好く最前列の端に陣取りました。「端の席」でも、普段の大きなホール程に幅が在るでもないスペースなので、非常に好い感じで観られました。演者が語気を荒げて話すような場面では「唾が多少散るのが視えるような...」という距離感でした。

原案となった「小説」の『犬の心臓』を巧く抽象化し、前後半各々1時間程度の劇に纏め上げた内容でした。限られたスペースで、抽象的な見せ方で小説を原案とする世界観を判り易く、同時に「やや意表を突く見せ方」で魅せてくれました。非常に「現代的な見せ方」とも思いました。

作中の、改造手術を施された犬の"シャリコフ"は「怪物染みた存在」になって行くのですが、何処か「哀愁」も漂う具合でした。

↓こちらが1400ルーブルだったチケットの半券と、凝った美術の折り畳み式になった公演パンフレットです。
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この新作劇に関しては「+18」というマーク、「18歳以上の鑑賞」という指定になっていますが、公演は「大人向けなショー」、「大人向けのファンタジー」と思える設えでした。こういうような新作劇が毎シーズンのように出て来るというエネルギーが鮮烈な印象をもたらしてくれます。

↓因みに『犬の心臓』に関しては2015年に、作品が収録された文庫本が登場しているようです。その他、作品が収録された本は幾分出ていますから、興味を覚えた方は読むことが出来ると思います。

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