ショートトラック 500m (女子・男子):<アジアの子ども達 サハリン2019>(2019年02月10日)

児童生徒による冬季競技の国際大会である<アジアの子ども達 サハリン2019>は、夏季大会が長く行われて来た大会の歴史の節目となる「初めての冬季大会」ということになりますが、前日に「開会式」も終えて各競技の熱戦が繰り広げられていました。

<ショートトラック>という競技が在ります。ロシア語では「Шорт-трек」(ショルトトレック)と呼ばれます。

これは屋内競技です。アイスホッケーやフィギュアスケートで使用するアイスアリーナのリンクで競うスピードスケートです。リンク上に目印になるゴムのマーカーを置いて、1周が111mとなる走路を設定します。そこを複数の選手が一斉にスタートし、規定した距離になるように走路を周りながら走り、「着順」を競うという競技です。タイムは計測していますが、これは「全参加選手の順位を決めなければならないような場合の参考」という感じです。

「着順」を競うので、例えば「"1回戦"で4人ずつの組でスタートし、各組の1位と2位の選手が"2回戦"へ」という具合に競技が進行し、最終的に残った8人が4人ずつの組に分かれて1位から8位の入賞者を決めて行くのです。

ロシアに在っては「比較的新しいスポーツ」という感じになると見受けられます。1980年代末頃に各国で普及し、五輪種目になって行ったことを受けてロシアでも競技団体が起こったようです。ソ連時代末期からロシアに体制が変わって行ったような時期に、当初は"ソ連チーム"、そして"ロシアチーム"として国際競技大会にも選手達が参加する例が見受けられるようになりました。最初の頃は、「フィギュアスケートからの転向」というような、他のスケート競技をやっていた選手が取り組んでいたような例が目立ったようですが、近年は最初からショートトラックに取り組んでいる例も多く見受けられるようです。

ユジノサハリンスク辺りでは「ショートトラックをやっている」という例は聞きません。スケートに関する活動で耳目に触れるのは、アイスホッケーの少年チームが幾つも在ることや、フィギュアスケートをやっている子ども達が在るということです。そういう状況ですが、ショートトラックの会場となった<クリスタル>―アイスホッケーの<アジアリーグ>の試合会場になっている場所です。―には大勢の人達が観戦に訪れていました。自由席になっていた場内で、空席が見当たらず「そこ!空いてますか?」と何回も尋ねながら漸く座っていたというような人達が大勢見受けられました。実は筆者は、学生時代に生でショートトラックの試合を間近に観たという経験が在って、以後は生で観戦する機会こそ無かったものの、冬季五輪のテレビ中継等では「やっている!」とショートトラックを愉しく視ていますから、今般は「かなり久し振りに生で!」と張り切り、休日でもあったので入場が許されるようになる早い頃合い、選手達が試合前の練習に勤しんでいるような時間帯から会場に足を運び、確りと席を確保していました。

<アジアの子ども達 サハリン2019>のショートトラックですが、日本、韓国、モンゴル、香港、タイ、フィリピン、インド、クウェート、カザフスタン、ロシアの10ヶ国からチームが出ています。ロシアに関しては地方毎にチームを組んでいるので、極東連邦管区、シベリア連邦管区、ウラル連邦管区、サハ共和国(ヤクーチヤ)と4チームが出ていました。

「屋内リンク」を使用する競技であることから、「ウィンタースポーツ?」というイメージの温かい地域のチームの選手達も登場し、「国際大会!」ということを強く実感させられた感でした。雪や氷と縁が薄そうな地域の皆さんは、ユジノサハリンスクの最近の低温や、街に雪が積もっている様子をどのように感じたのだろうか、というようにも思いながら彼らの様子も何となく見ていました。

ショートトラックには13歳から16歳の選手が出場していて、4日間で1500m、500m、1000m、3000mリレーという競技が催されるようです。今般観戦したのは500mでした。

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500mに関しては、1周が111mとなる走路を4周半走って着順を競うことになります。スタートのファウルを2回犯してしまうと出走出来ないというルールや、スタート直後の第1コーナー周辺での転倒が発生すると再スタートというようなルールも在りますが、「原則的に4人でスタートする各選手の着順を競う」という「誰にでも判り易い!!」という内容なので会場は盛り上がりました。ショートトラックの観戦では、スタートの場面では静粛を求められますが、それ以外は「行け!!」というように、或いは選手の名前を呼んで応援というようなことも許されますから、走っている選手のチーム関係者等が「〇〇!良いぞ!!〇〇!!行け!!」と一生懸命に声援を贈っている様子も随分と見受けられました。

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試合前に選手達がリンクに入ってウォーミングアップをする場面から観ていましたが、「練習の動き」という時点で「あの選手!巧い...」という感じで、目立って速く滑走している感じの選手達が目に留まりました。着ていたユニフォームを視れば、韓国の選手達でした。このショートトラックは、韓国ではかなり盛んであると聞きます。確か、韓国で冬季五輪のメダルと言えば、大半がショートトラックでの実績だった筈です。

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ショートトラックの試合が催されるリンクは少し独特な雰囲気になります。リンクの端、壁の辺りに安全のための分厚いマットが取り付けられます。これは速度が上がっている中で「弾ける様に転倒」という場合に衝撃を吸収するためのモノです。実際、転倒した選手達がこのマットの御蔭で大事に至らずに済んでいる様子も若干見受けられました。そして弾け飛んだマーカーを拾って元の位置に置くことや、レースの合間にリンクを整える作業を行う人達が4名程入り、スーツ姿の主審と2名の副審が入ってリンクの真ん中、選手達が走らない場所からレース状況を見守ります。リンクの脇、ホッケーの試合の時に各チームのベンチになっている場所辺りで、出番を待つ選手達が待機します。そしてそういう辺りに、ピストル形の機器でスタートの合図をする係が役目を果たします。更に審判団が動いている辺りに、ビデオカメラを持ったカメラマンが入っていましたが、白いカッパの上下に身を包んで、カメラも白いモノで覆ってしまっていました。「目立たないように」ということなのだと思いますが、リンクの脇にそのカメラマンが最初に現れた時は「あの人??何者!?」と一寸注目してしまいました。

レースは「32名→16名→8名」と勝ち抜きで、「5位から8位決定戦」、「1位から4位決定戦」と女子、男子と交互に順次進められました。

4周半走って45秒程度というレースですが、「一気に勝負!」という、独特な迫力が在るものでした。

日本の選手達も出場しましたが、不運な転倒等も見受けられた、残念ながら早い段階で敗退してしまいました。レースを制したのは、ウォーミングアップの時点で「巧い...」という感じだった韓国の選手達でした。女子の「1位から4位決定戦」では韓国選手2名、ロシア選手2名が出場でした。男子では韓国選手3名にカザフスタン選手1名の出場でした。

↓「1位から4位決定戦」では、選手紹介を少しショーアップしていました。
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↑やや不思議な白い服装のカメラマンも画に写っています。

この<アジアの子ども達 サハリン2019>のような国際競技大会は、参加国での「競技の普及」に資するという側面も在るように見受けられます。今般、早い段階で敗退してしまった競技の歴史が浅い国々のチームも、この大会への参加が切っ掛けで人気競技になって、何時か「なかなか手強いチーム」が国際大会に出て来るようになるのかもしれません。

アイスホッケーのように「サハリンのチームへの声援」というのは、出場が無いので見受けられませんでしたが、ショートトラックの会場ではロシア国内の各チームへの声援や、カザフスタンチームへの声援が目立ちました。また、大きく遅れてしまっても最後まで走った選手達への温かい拍手も沸き起こりました。

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