<サハリンロシア民俗楽合唱団>(Сахалинский Русский Народный Хор) 『50年記念公演』(2017年12月14日)

<サハリンロシア民俗楽合唱団>は1967年に設立され、ロシアの伝統的な音楽を中心に歌や演奏を行うユジノサハリンスク市の文化団体です。メンバーによる公演等の他、若い世代への指導や普及の活動も行っているようです。

<サハリンロシア民俗楽合唱団>は作曲家、バヤン奏者として高名であったウラジーミル・ナウモフ(1931-2015)の尽力で設立され、活動を展開しました。ナウモフはサハリンを含む各地で音楽教師を務め、演奏家、作曲家としての活動を展開し、現在の<サハリンスカヤ・フィルアルモニヤ>の芸術監督を務めた経過もあるそうです。

<サハリンロシア民俗楽合唱団>はソ連時代にはソ連全土、更に一部は国外での公演を成功させて高い評価を得るようになり、活動を続けていました。近年でも、伝統音楽系統の各地のグループが参加する催しに加わり、高い評価を得ています。

<サハリンロシア民俗楽合唱団>と言えば、何か判り悪いかもしれませんが、稚内の皆さんにとっては「あの<ルースキー・テーレム>の母体になっている団体」と言えば判り易いかもしれません。

<ルースキー・テーレム>は、大人数の合唱団に対し、色々な場所へ出て行って演奏活動を行い易いように、選抜メンバーでグループを編成したことが起こりであると聞きます。<ルースキー・テーレム>の愉しい演奏にも、その背景に「半世紀に及ぶ活動歴を誇る合唱団の伝統」が在った訳です。

実を言えば、今回の公演に関しては<ルースキー・テーレム>の、同時に<サハリンロシア民俗楽合唱団>のリーダーであるアンドレイ・メリニチェンコさんに聞いて、「それは是非!」と足を運んだのです。彼らのレパートリーに『サハリンの吹雪』という作品が在るのですが、その題名のとおりに酷い雪で大変だった翌日、普通な感じの天候になった中、「ユジノサハリンスク市の文化団体」にとっては"ホームグランド"的な<文化センター"ローディナ">を会場に公演が催されたのでした。

↓20名前後のフルメンバーによる合唱は凄い迫力です。
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今回の公演は、何か「ファンタジーの世界」のような古い時代のロシアの村落で沢山の出店が出ている祭りが催されていて、近在の人々が集まって歌っているというような演出で展開しました。

ロシアの古くからの音楽では、「人の声による合唱」の表現が非常に豊かです。ロシアで主流を占めるロシア正教の教会では、催事の際にカトリックやプロテスタントの教会で見受けられるオルガンのような楽器を用いません。須らく「人の声による合唱」なのです。勿論、合唱を行う人数が揃わない場合も在るので、そういう場合には音楽は使わないのかもしれませんが。恐らくは、そういう基礎の上に"合唱文化"のようなものが発展したのでしょう。

今回の合唱に関しても、正しく「お祭りの陽気な感じ」の曲から、静かな草原や森を想い起すような曲に至るまで、様々な表現が在りました。

↓<ルースキー・テーレム>では舞踏も披露するのが稚内ではお馴染みですが、今回も一部の曲ではダンサーも参加しました。
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↓リーダーであるアンドレイ・メリニチェンコさんの独奏も一曲入りました。
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↑画の「銀色のバヤン」は、稚内公演にも持って来て演奏しているものです。今回の公演の前半では、ゲスト演奏家も交えた型で合唱の伴奏をしており、その際には少し違う「黒いバヤン」を演奏していました。

↓公演の最後の方には、何度も稚内にやって来た<ルースキー・テーレム>のヴォーカリスト4人が前面に出ていました。
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稚内にやって来る<ルースキー・テーレム>は新旧のポップスやロシアの伝統的な楽曲を披露してくれます。今回の公演では、後者の「伝統的な楽曲」が披露されていて、直ぐに曲名は思い出せずとも「稚内の<ルースキー・テーレム>公演で何度も聴いた」という曲が多く、大変に嬉しく聴きました。

<ルースキー・テーレム>も、その母体である<サハリンロシア民俗楽合唱団>も、半世紀の伝統を背景に元気に活動しています。公演会場には老若男女様々な皆さんが集まって、各々に楽しんでいました。

さて<ルースキー・テーレム>ですが、年が明けた2月15日から3月15日で「稚内公演」を計画していて、目下準備が始まっているところです。今回、『50年記念公演』での元気な様子も見て、何度も公演を催行している中で既に「稚内の地元のスター」という趣きさえ在って、「憧れの歌のお姉さんが街にやって来る!」と心待ちにしている子ども達さえ見受けられる「稚内公演」が益々楽しみになります。

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