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岡崎真氏 ISUの方向性に一石投じた 得点のためではなくプライドを懸けた五輪連覇王者の挑戦

[ 2022年2月11日 05:30 ]

北京冬季五輪第7日・フィギュアスケート 男子フリー ( 2022年2月10日 首都体育館 )

男子フリーの演技を終えた羽生結弦は手についた氷を握りしめる(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

【フィギュア斬る・岡崎真】羽生の4回転半は片足で着氷し、少し間が空いて転倒した。着氷から転倒までに間があった場合、そのジャンプはより成功に近いとみられる。6分間練習で良質のものを跳び、手応えを感じた表情も見せており、全日本選手権時に比べて、完成に近づいたことは明らかだった。

その一方で、やはり回転数が増えるということは、難度が飛躍的に上がることなのだと改めて感じさせられた。踏み切りから高さもあり軸もしっかりしていたが、徐々に遠心力に振られ体が左へと流れた。走り幅跳びの選手が一度体を反らせて跳んでいくように、慣性に逆らう運動は、想像以上の難しさを伴うのだろう。

近年、高難度のジャンプが勝敗を決するケースが増えたことで、ISUはジャンプの基礎点を下げている。実際、4回転ジャンプで最も難度が高いとされるルッツの11・5点に対し、4回転半は12・5点しかない。これは3回転ルッツ5・9点と3回転半8・0点の差との比を考えると、あまりに加点度合いが低い。

表現力なども含めた総合的な評価をするのがフィギュアだ。同時に、誰も成功したことがないジャンプへの挑戦に報いる対価は、競技レベルの向上につながると思う。得点のためではなく、プライドを懸けた五輪連覇王者の挑戦は、ISUの方向性に一石を投じることにもなったのではないか。

羽生の挑戦と同時に、SP上位が死力を尽くした演技を披露したことも、素晴らしい試合になった要因だ。4回転5本というプログラムに挑戦した宇野は、転倒もあったが、レベルの取りこぼしはなかった。五輪連続表彰台は立派の一言だ。鍵山は緊張感あふれる中でよく耐えた。さらに高難度の4回転ジャンプを身に付ければ、手のつけられない存在になる可能性が高い。そして、4年前に屈辱を味わったチェンの「やるべきこと」に集中した演技は、圧巻で五輪王者にふさわしいものだったと思う。(ISUテクニカルスペシャリスト、プロコーチ)

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