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船木和喜氏 陵侑の技術が最大限に生きる舞台 ジャンプ男子LH

[ 2022年2月11日 05:30 ]

小林陵侑(AP)
Photo By AP

【船木和喜 今日のツボ教えます ジャンプ男子LH】混合団体という新種目が行われたことで、五輪では初めて男子がノーマルヒル(NH)2試合をこなした後にラージヒル(LH)へと移行する。切り替えを心配する意見もあるだろうが、私からすれば少しのミスも許されないNHより、多少のミスは長い滞空時間でリカバリーできるLHの方が「楽」。今回も優勝争いの中心は陵侑であることは間違いない。

より滞空時間の長いLHは、陵侑の技術がより生きる舞台といえる。横からの映像を見てもらえば一目瞭然なのだが、踏み切って空中に出た後、陵侑の腕はジャンプ台にではなく、地面に対して水平を保つ。これで(1)踏み切り直後は体と腕は離れ(2)前傾が深まる空中の中盤は腕と体が近づき(3)着地前に起き上がろうとする体とはまた離れる、という流れになる。この腕の動きが絶妙のバランスを生み、前方に進む方向性につながっている。

実は世界中の選手がこれを真似ようとしているのだが、真似できていない。決定的な違いは、陵侑の場合は腕のポジションが踏み切り直後にビシッと決まってしまうこと。他の選手は腕のポジションを探しながら動かすので、時間を要する。陵侑だけが無駄な動きがなく、空気抵抗も少ないために、飛距離に影響が出ない。

もちろん、新しいジャンプ台にフィットして大飛行をする選手が出れば、それがライバルとなる可能性はある。世界のトップ10選手はいい風さえあれば飛距離を伸ばす。だが、現状では助走開始位置となるスタートゲートは、最も飛距離が出るであろう陵侑を基準にセットされることになる。陵侑が主導権を握ることは間違いない。

もう一つの注目は他の日本選手の出来だろう。団体戦でメダル争いをするためには、陵侑以外の選手が少なくとも1本ずつはヒルサイズに迫る飛躍が必要と思う。誰が団体メンバー入りへアピールするか。そこにもぜひ注目して、日本を応援してもらいたい。(98年長野五輪スキージャンプ2冠)

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