April 08, 2015
Steinberg UR28M 紹介
ICONにて私も使用するSteinberg社URシリーズの記事が出ていた.
記事のURL
技術開発者自らがインタビューに応えていると言う事で非常に興味深い内容だった.
シリーズ初期のSteinberg UR28Mが私のメインI/F.
USBになってURシリーズが出た走りのモデルでありデジタル部分としては96kHz24bitと時代遅れと言われてしまうかもしれないモデルだが現在でもファームウェアの更新等は継続している.
購入当時は,T'sLABの再開や自己のアルバム制作に奮闘しており,この据え置きタイプなモデルをスタジオと自宅で崩してはセットしてをしまくって大変だった記憶はあるが,不都合があっても不具合に見舞われたことはない.
実は,私のAudioI/F歴は短くYAMAHA社のUW500から始まり,同社GO46を経て現在のSteinberg社MR816XやUR28Mという流れである.
悪名高きGO46で泣いたこともあったがその点,URでは不安定さをほとんど感じたことがない.
その秘密はノウハウが蓄積されたUSBという熟成された通信規格のお陰だと思っていたが実際にはMRシリーズ(FireWire搭載モデル)もコンセプトは同じらしい.
その内容はメーカーが取り組んだ地道な検証とマイナーアップデートによる修正の繰り返しによるものであるとこの記事を読んで明確になった.
ついでなので私的にUR28Mというモデルを少し紹介.
・外見について
ボディー構成は現状のURシリーズにて標準である金属フレームは採用されておらず,EMI(電磁妨害)やEMS(電磁感受性)等のEMC(電磁両立性)観点から言えば少し弱そうにも見えるかもしれない.
実際問題,目に見えるものではないしその影響性を確認するためにはスペクトラムアナライザで磁場を見るしかない.
ただ,厳しい規定をクリアした上で出荷になるわけであり大きな問題になる事は無いだろう.
因みに,昔使っていたYAMAHAのUW500は金属ボディー.
UWは発熱の多いDC/DCがメイン基板から浮いており金属フレームに取り付けられていた.
EMCと言うよりは排熱の観点や持ち運びを考慮した筐体強度からボディーの金属化が採用されるケースもあるため一様には言えない.
UR28Mはもとより据え置き型として設計されており筐体は大きく内部空間もあるためUR22や44他,兄弟モデルに比べて基板上の部品間クリアランスも多く取れているハズであり排熱や落下試験での問題はエンドユーザーが気にする事はないのだろう.
筐体サイズは少し大きいため,狭い部屋でノートパソコンによるDAW環境を考える人には不向きかと思う.
その分,出力やモニタリングコントロール機能の充実度が高い.
重量はそれなりにあり,導入当初スタジオを行き来していた私にはネックだったが,据え置きと言う観点ではケーブルの抜き差し時も安定するし,全ての端子にケーブルがジョイントされていても浮いたり動いたりしないという点で優秀である.
操作パネルが上方にあるおかげで,場所は占有されるがその分ミュートやボリューム操作は非常にやりやすい.
宅禄などで,UR824のような1Uラックタイプだと背面接続やラック固定化等が起因でかえって使いにくい場合がある.
そういう人たちにはUR28Mのデザインは非常にいいのではないかと思う.
塗装はUR824との一貫性なのかシルバーがメインで整えられている.
私はMac使いじゃないのでシルバー感に特別な意識はないがTomのUR22やUR44を見ても質感はいい.
UR22以降のモデルでは黒に重点を置かれている気がするがシリーズとして違和感はない.
デスクトップにあると気になりやすいのがイルミネーション.
UR28Mは電源ボタンが白色,その他が橙と緑で整えられている.
赤/緑のLEDで調整しているのだろうか光度はまぶしくもなく暗くもない.
私は色盲ではないと思うのでこの配色で困る事は無い.
最近はカラーユニバーサルデザインと言うか色盲(色覚)バリアフリーの観点から青色LEDや白色(3色)LEDが使われるが,空間上にあまりない青色は光度が低くても非常に目につきやすく冷たさも感じる配色.
現行のURシリーズは全て青色だがUR28Mはそういう意味でもイルミネーションが多い割に気にならない.
・機能について
まずUR28Mの特徴は入力はもちろんだが出力の充実度と言える.
トップパネルの使い勝手や内部配線の設定方法等はとりあえず置いておいて,出力系統がステレオ4系統(アナログ3,デジタル1,ヘッドフォン2)使えると言うのは一般ニーズには十二分な構成である.
個人的には8chADATやMIDI I/Oもあって欲しかったというのが本心だが価格を考えれば仕方がない.
スタジオ作業ではフロアモニタ用,ヘッドフォンモニタリング用,レコーディング用と出力毎にミックスが異なることもしばしば.
もちろん,それ用にDAWでデータを整えておかないといけないため事前準備は非常に大変なのだがレコーディングの時はヘッドフォンアンプだとか,サブミキサーだとかを余分に持ち出す必要がない分,現場作業(セッティング)が楽なのは言うまでもない.
ただ,UR28Mのサイズ感だとモバイルよりは据え置きを想定している事から矛盾感もあるのは否めない...
宅レコ環境としてはサブウーファーやモニタスピーカ等,複数の出力機器に分岐出力(バイアンプ接続風)する時にスプリッタ等を用意しなくてすむ点がいい(DAW側でチャンネル毎にミックスをすればチャンネルデバイダーもいらない)
また,開発側でも注力した機能だと思うが複数のモニタースピーカを切り替える用途での勝手は非常によい.
例えばAポートにEDIROL MA20D,BポートにYAMAHA MSP3,CポートにGenelec 8020Bをつないだ場合ケーブルの抜き差しも電源のON/OFFもする事なくトップパネルのボタン一つで切り替えが可能になるためスピーカ別出音の違いがスムーズに確認できる.
その他にDIMMER(一気に弱音化させるボタン),モノミックスまたミュートが各1ボタンでできる点が素晴らしい.
制作中は余分な作業が一番時間を無駄にし,本来の目的を見失う原因になりやすいため切り替え器としての機能も意外と重要だし,制作スペースである机の上にいくつものハードが並ぶのは逆に非効率になったりする.
モニタリングのための機能を全てデスクトップの1機種で賄えるというのは非常に理に叶っているのだと思う.
また,スプリッタ類が必要ないと言う事はそれだけ間に機器がないわけだから出音の差も出にくいだろう.
実質的に差がケーブルとスピーカ配置程度になるのは検証にもってこいのセッティングが確保できる事になる.
URシリーズで一番評価すべきはDSPを利用した『dspMixFx』機能だと思う.
オーディオI/Fでありながらもミックスが細かく指定出来たりコンプレッサや空間エフェクトはもちろん,現在のバージョンではアンプシミュレータ等もスタンドアロンで使用可能と言うのはすごい事である.
DAWソフト作業でもその恩恵は受けられる.
視聴用の音だけにエフェクトをかけるダイレクトモニタリングレコーディングが可能だし,低スペックのPCでもDSPが処理しているエフェクト部分は負荷がかからないわけで余計な心配をしない分作業に没頭できる.
因みに,現状のバージョンではiPad等でも使える(モデルにより電源の有無は異なる)
出力には今やエントリーモデルにも当然のように装備されているがTRS出力が標準装備.
スタジオやステージでDIを用いることなくロング配線できるのは個人的にうれしいが,自分がPAの時くらいしかできないのが残念(XLR-TRS変換が必要なのでPA屋は毛嫌いするため)
ただ,恩恵を受けている人がどれだけいるかはわからない.実際,自宅では私もほとんどTS配線...
こう書くと意外とオーバースペックな部分が沢山あるのかもしれない.
因みに,パラ出力や各チャンネルの細かな設定はPCやiOS等のアプリケーションからしかできない.
持ち歩かない前提ならいいのかもしれないがミキサーやスプリッター,マイクプリアンプとしても使いたいと思うユーザーにとっては不便かもしれない.
・入力について
入力部分はマイクプリアンプ搭載ポートが2chとアナログ入力が2ch1系統,デジタル(S/PDIF)コアキシャルが1系統,その他にミキサーで言うところのTAPE IN的な役割のステレオ入力が1系統(DAWとして録音ポートとしては使えない)と充実している.
個人的にはTAPE IN的なステレオ入力がポイント.
DAW用のモニタスピーカでiPod TouchやKindoleのオーディオ出力を再生させたりするシーンは結構あるが,再生の度に差し替えたり録音もしないのにDAWの入力ポートに入れるのはナンセンスと感じるが,それを解消してくれるのがこのステレオ入力ポート.
トップパネルにて独立してMUTEが可能な部分はPA屋も納得の仕様だと思う.
UW500ではRCAピンコネクタを採用していたが,おそらくI/F基板の都合や用途からステレオミニ化されたのだろうと思う.
プリアンプ部分は民生機器信号レベルからギター等のハイインピーダンスに至るまでを各種PADやHi-zスイッチにて対応可能の万能入力ポートとなっている.
回路はその分多くなっているだろうが低ノイズのロスレス感は高級機に匹敵すると感じるレベルであり,プリアンプ性能バツグンで入力音も申し分ない.
インピーダンス測定等をしっかりと行った事は無いが,逆を言えば調査するほど気になる事がなかったと言う事でありその優秀さはアマチュアが使うに十二分な性能である.
私は"ピュアモニタ感"とか"原音忠実"という無責任な言葉をあまり多用したくない派だが,メーカーが設計や評価段階での『原音忠実』を謳っているだけの事はあるとだけ付け加えておく.
記事にも書いてあるがURシリーズの『D-PRE』という名のプリアンプはインバーテッドダーリントン回路を採用している.
インバーテッドダーリントン回路を低価格帯のましてやAudioI/Fで採用しているケースはあまり聞いたことがない.
私自身も色々なオーディオ回路を分解しているが出会った事は無い.
個人的にはインバーテッドダーリントン回路はその他の回路構成のアンプよりも発振しやすい傾向がある印象がある.
故に回路調整が非常に難しく調整時間がかかる為,一般的には高価なAudio機器にしか採用されなかったりする.
こだわりDIY派の人だと自分で組むのかもしれないが,少なくとも私は自分用の回路で採用した事はない.
DIYでも回路をただ組むだけではなくオシロスコープで実波形を確認しながら追い込んでいくだろう.
それでも実際,ブレットボードで組んだ回路をプリント基板化したらアートワークやその他の要因で波形特性が変わってしまったり部品精度のバラつきで全く意図しない出音になってしまったりとオーディオDIYの難しさを感じる部分とも思う.
メーカー設計でも蓄積されているノウハウの量と質が桁違いなだけで基本的には同じだと思う.
また,オーディオ機器は波形測定にも限界があり,聴感評価が結構多くなる.
趣味のDIYなら自分の好みに調整すればよいのだが,メーカーとして製品カテゴリー内に収まる音を作るためには部門をまたいでの製品評価が必要になるわけで非常に大変なのではないかと思う.
記事ではサラリと"調整しました"と述べているに過ぎないが,これらの事を総合してもインバーテッドダーリントン回路を採用したと言う事は相当の開発費が費やされた事が明確であり本気度が伺える.
インバーテッドダーリントン回路が万能で最優秀だとは思わないがその開発姿勢には脱帽である.
何よりもその技術を高級モデルから入門モデルに至るまで惜しげもなく採用しているという太っ腹感は日本ならではなのかもしれないと思ってしまった.
そういう意味でもURシリーズは今後のAudioI/F業界を大きく動かす原動力になるかもしれない.
以上のようにURシリーズの人気の裏側は記事からももちろんの事ながら機種単体を細かく見てもその魅力がわかるのではないかと思う.
GO46の不具合には頭を悩まされ独自に色々調べたりPC側の解析にはPanasonicにも協力してもらって―.結局,YAMAHAには解析協力してもらえず数か月後には生産完了してサポートを打ち切りされてしまいと相当苦悩した.
値段的にはUR28Mクラスだったのだが当分YAMAHA製AudioI/Fは買いたくないとすら思ったものだ.
ただ,如何なものかと思いつつも独自に調べ上げた結果,私の環境ではまずLet'sNote&PCカードtoFireWireでの作業確立をあきらめPrimePCを調達.それでも不具合は収まらずFireWirePCIボードをTEXAS INSTRMRENTS製チップセット化.
電源が不安定になる事が起因でも不具合発生と言う話からPCからの電源配給を無効かするため6pinを4pin変換化までしてだましだまし使っていた.
エンドユーザーの立場からすれば,決定的な慢性トラブルだったのかもしれないけど,使う側もそれ相応の知識がないといけないと僕は中学の時から学んでいたためあれこれ苦戦しながらも手を尽くして使っていた.
こう言う考え方は小学校時代からMSXやPC98を触れられる環境を作ってくれた兄のおかげなのかもしれないとつくづく思うがGOシリーズを用いていた頃,制作に集中できなかったのは言うまでもない.
それに比べ技術的な部分を設計者自らが説明している内容からもうかがえるだろうが,URシリーズは信頼性バツグンであり自信を持って皆さんにお勧めできる機種だ.
音響機材は市場サイズの大きさから海外シーンが重視されてしまう傾向があるがモバイル用途の目立つURシリーズは非常に日本のシーンにマッチしている気がする.
仕向け別にモデルを分けているかは記事からでは判らないが日本人にも好まれるYAMAHAスタイルがうまく取り入れられているのだと思いたい.
当分,I/Fの更新は考えていないが今後もSteinbergには売れている現状に甘んじることなく安定したAudioI/Fの販売を期待する.
記事のURL
技術開発者自らがインタビューに応えていると言う事で非常に興味深い内容だった.
シリーズ初期のSteinberg UR28Mが私のメインI/F.
USBになってURシリーズが出た走りのモデルでありデジタル部分としては96kHz24bitと時代遅れと言われてしまうかもしれないモデルだが現在でもファームウェアの更新等は継続している.
購入当時は,T'sLABの再開や自己のアルバム制作に奮闘しており,この据え置きタイプなモデルをスタジオと自宅で崩してはセットしてをしまくって大変だった記憶はあるが,不都合があっても不具合に見舞われたことはない.
実は,私のAudioI/F歴は短くYAMAHA社のUW500から始まり,同社GO46を経て現在のSteinberg社MR816XやUR28Mという流れである.
悪名高きGO46で泣いたこともあったがその点,URでは不安定さをほとんど感じたことがない.
その秘密はノウハウが蓄積されたUSBという熟成された通信規格のお陰だと思っていたが実際にはMRシリーズ(FireWire搭載モデル)もコンセプトは同じらしい.
その内容はメーカーが取り組んだ地道な検証とマイナーアップデートによる修正の繰り返しによるものであるとこの記事を読んで明確になった.
ついでなので私的にUR28Mというモデルを少し紹介.
ur28m
・外見について
ボディー構成は現状のURシリーズにて標準である金属フレームは採用されておらず,EMI(電磁妨害)やEMS(電磁感受性)等のEMC(電磁両立性)観点から言えば少し弱そうにも見えるかもしれない.
実際問題,目に見えるものではないしその影響性を確認するためにはスペクトラムアナライザで磁場を見るしかない.
ただ,厳しい規定をクリアした上で出荷になるわけであり大きな問題になる事は無いだろう.
因みに,昔使っていたYAMAHAのUW500は金属ボディー.
UWは発熱の多いDC/DCがメイン基板から浮いており金属フレームに取り付けられていた.
EMCと言うよりは排熱の観点や持ち運びを考慮した筐体強度からボディーの金属化が採用されるケースもあるため一様には言えない.
UR28Mはもとより据え置き型として設計されており筐体は大きく内部空間もあるためUR22や44他,兄弟モデルに比べて基板上の部品間クリアランスも多く取れているハズであり排熱や落下試験での問題はエンドユーザーが気にする事はないのだろう.
筐体サイズは少し大きいため,狭い部屋でノートパソコンによるDAW環境を考える人には不向きかと思う.
その分,出力やモニタリングコントロール機能の充実度が高い.
重量はそれなりにあり,導入当初スタジオを行き来していた私にはネックだったが,据え置きと言う観点ではケーブルの抜き差し時も安定するし,全ての端子にケーブルがジョイントされていても浮いたり動いたりしないという点で優秀である.
操作パネルが上方にあるおかげで,場所は占有されるがその分ミュートやボリューム操作は非常にやりやすい.
宅禄などで,UR824のような1Uラックタイプだと背面接続やラック固定化等が起因でかえって使いにくい場合がある.
そういう人たちにはUR28Mのデザインは非常にいいのではないかと思う.
塗装はUR824との一貫性なのかシルバーがメインで整えられている.
私はMac使いじゃないのでシルバー感に特別な意識はないがTomのUR22やUR44を見ても質感はいい.
UR22以降のモデルでは黒に重点を置かれている気がするがシリーズとして違和感はない.
デスクトップにあると気になりやすいのがイルミネーション.
UR28Mは電源ボタンが白色,その他が橙と緑で整えられている.
赤/緑のLEDで調整しているのだろうか光度はまぶしくもなく暗くもない.
私は色盲ではないと思うのでこの配色で困る事は無い.
最近はカラーユニバーサルデザインと言うか色盲(色覚)バリアフリーの観点から青色LEDや白色(3色)LEDが使われるが,空間上にあまりない青色は光度が低くても非常に目につきやすく冷たさも感じる配色.
現行のURシリーズは全て青色だがUR28Mはそういう意味でもイルミネーションが多い割に気にならない.
・機能について
まずUR28Mの特徴は入力はもちろんだが出力の充実度と言える.
トップパネルの使い勝手や内部配線の設定方法等はとりあえず置いておいて,出力系統がステレオ4系統(アナログ3,デジタル1,ヘッドフォン2)使えると言うのは一般ニーズには十二分な構成である.
個人的には8chADATやMIDI I/Oもあって欲しかったというのが本心だが価格を考えれば仕方がない.
スタジオ作業ではフロアモニタ用,ヘッドフォンモニタリング用,レコーディング用と出力毎にミックスが異なることもしばしば.
もちろん,それ用にDAWでデータを整えておかないといけないため事前準備は非常に大変なのだがレコーディングの時はヘッドフォンアンプだとか,サブミキサーだとかを余分に持ち出す必要がない分,現場作業(セッティング)が楽なのは言うまでもない.
ただ,UR28Mのサイズ感だとモバイルよりは据え置きを想定している事から矛盾感もあるのは否めない...
宅レコ環境としてはサブウーファーやモニタスピーカ等,複数の出力機器に分岐出力(バイアンプ接続風)する時にスプリッタ等を用意しなくてすむ点がいい(DAW側でチャンネル毎にミックスをすればチャンネルデバイダーもいらない)
また,開発側でも注力した機能だと思うが複数のモニタースピーカを切り替える用途での勝手は非常によい.
例えばAポートにEDIROL MA20D,BポートにYAMAHA MSP3,CポートにGenelec 8020Bをつないだ場合ケーブルの抜き差しも電源のON/OFFもする事なくトップパネルのボタン一つで切り替えが可能になるためスピーカ別出音の違いがスムーズに確認できる.
その他にDIMMER(一気に弱音化させるボタン),モノミックスまたミュートが各1ボタンでできる点が素晴らしい.
制作中は余分な作業が一番時間を無駄にし,本来の目的を見失う原因になりやすいため切り替え器としての機能も意外と重要だし,制作スペースである机の上にいくつものハードが並ぶのは逆に非効率になったりする.
モニタリングのための機能を全てデスクトップの1機種で賄えるというのは非常に理に叶っているのだと思う.
また,スプリッタ類が必要ないと言う事はそれだけ間に機器がないわけだから出音の差も出にくいだろう.
実質的に差がケーブルとスピーカ配置程度になるのは検証にもってこいのセッティングが確保できる事になる.
URシリーズで一番評価すべきはDSPを利用した『dspMixFx』機能だと思う.
オーディオI/Fでありながらもミックスが細かく指定出来たりコンプレッサや空間エフェクトはもちろん,現在のバージョンではアンプシミュレータ等もスタンドアロンで使用可能と言うのはすごい事である.
DAWソフト作業でもその恩恵は受けられる.
視聴用の音だけにエフェクトをかけるダイレクトモニタリングレコーディングが可能だし,低スペックのPCでもDSPが処理しているエフェクト部分は負荷がかからないわけで余計な心配をしない分作業に没頭できる.
因みに,現状のバージョンではiPad等でも使える(モデルにより電源の有無は異なる)
出力には今やエントリーモデルにも当然のように装備されているがTRS出力が標準装備.
スタジオやステージでDIを用いることなくロング配線できるのは個人的にうれしいが,自分がPAの時くらいしかできないのが残念(XLR-TRS変換が必要なのでPA屋は毛嫌いするため)
ただ,恩恵を受けている人がどれだけいるかはわからない.実際,自宅では私もほとんどTS配線...
こう書くと意外とオーバースペックな部分が沢山あるのかもしれない.
因みに,パラ出力や各チャンネルの細かな設定はPCやiOS等のアプリケーションからしかできない.
持ち歩かない前提ならいいのかもしれないがミキサーやスプリッター,マイクプリアンプとしても使いたいと思うユーザーにとっては不便かもしれない.
ur28m_rear
・入力について
入力部分はマイクプリアンプ搭載ポートが2chとアナログ入力が2ch1系統,デジタル(S/PDIF)コアキシャルが1系統,その他にミキサーで言うところのTAPE IN的な役割のステレオ入力が1系統(DAWとして録音ポートとしては使えない)と充実している.
個人的にはTAPE IN的なステレオ入力がポイント.
DAW用のモニタスピーカでiPod TouchやKindoleのオーディオ出力を再生させたりするシーンは結構あるが,再生の度に差し替えたり録音もしないのにDAWの入力ポートに入れるのはナンセンスと感じるが,それを解消してくれるのがこのステレオ入力ポート.
トップパネルにて独立してMUTEが可能な部分はPA屋も納得の仕様だと思う.
UW500ではRCAピンコネクタを採用していたが,おそらくI/F基板の都合や用途からステレオミニ化されたのだろうと思う.
プリアンプ部分は民生機器信号レベルからギター等のハイインピーダンスに至るまでを各種PADやHi-zスイッチにて対応可能の万能入力ポートとなっている.
回路はその分多くなっているだろうが低ノイズのロスレス感は高級機に匹敵すると感じるレベルであり,プリアンプ性能バツグンで入力音も申し分ない.
インピーダンス測定等をしっかりと行った事は無いが,逆を言えば調査するほど気になる事がなかったと言う事でありその優秀さはアマチュアが使うに十二分な性能である.
私は"ピュアモニタ感"とか"原音忠実"という無責任な言葉をあまり多用したくない派だが,メーカーが設計や評価段階での『原音忠実』を謳っているだけの事はあるとだけ付け加えておく.
[フレーム]
記事にも書いてあるがURシリーズの『D-PRE』という名のプリアンプはインバーテッドダーリントン回路を採用している.
インバーテッドダーリントン回路を低価格帯のましてやAudioI/Fで採用しているケースはあまり聞いたことがない.
私自身も色々なオーディオ回路を分解しているが出会った事は無い.
個人的にはインバーテッドダーリントン回路はその他の回路構成のアンプよりも発振しやすい傾向がある印象がある.
故に回路調整が非常に難しく調整時間がかかる為,一般的には高価なAudio機器にしか採用されなかったりする.
こだわりDIY派の人だと自分で組むのかもしれないが,少なくとも私は自分用の回路で採用した事はない.
DIYでも回路をただ組むだけではなくオシロスコープで実波形を確認しながら追い込んでいくだろう.
それでも実際,ブレットボードで組んだ回路をプリント基板化したらアートワークやその他の要因で波形特性が変わってしまったり部品精度のバラつきで全く意図しない出音になってしまったりとオーディオDIYの難しさを感じる部分とも思う.
メーカー設計でも蓄積されているノウハウの量と質が桁違いなだけで基本的には同じだと思う.
また,オーディオ機器は波形測定にも限界があり,聴感評価が結構多くなる.
趣味のDIYなら自分の好みに調整すればよいのだが,メーカーとして製品カテゴリー内に収まる音を作るためには部門をまたいでの製品評価が必要になるわけで非常に大変なのではないかと思う.
記事ではサラリと"調整しました"と述べているに過ぎないが,これらの事を総合してもインバーテッドダーリントン回路を採用したと言う事は相当の開発費が費やされた事が明確であり本気度が伺える.
インバーテッドダーリントン回路が万能で最優秀だとは思わないがその開発姿勢には脱帽である.
何よりもその技術を高級モデルから入門モデルに至るまで惜しげもなく採用しているという太っ腹感は日本ならではなのかもしれないと思ってしまった.
そういう意味でもURシリーズは今後のAudioI/F業界を大きく動かす原動力になるかもしれない.
以上のようにURシリーズの人気の裏側は記事からももちろんの事ながら機種単体を細かく見てもその魅力がわかるのではないかと思う.
[フレーム]
GO46の不具合には頭を悩まされ独自に色々調べたりPC側の解析にはPanasonicにも協力してもらって―.結局,YAMAHAには解析協力してもらえず数か月後には生産完了してサポートを打ち切りされてしまいと相当苦悩した.
値段的にはUR28Mクラスだったのだが当分YAMAHA製AudioI/Fは買いたくないとすら思ったものだ.
ただ,如何なものかと思いつつも独自に調べ上げた結果,私の環境ではまずLet'sNote&PCカードtoFireWireでの作業確立をあきらめPrimePCを調達.それでも不具合は収まらずFireWirePCIボードをTEXAS INSTRMRENTS製チップセット化.
電源が不安定になる事が起因でも不具合発生と言う話からPCからの電源配給を無効かするため6pinを4pin変換化までしてだましだまし使っていた.
エンドユーザーの立場からすれば,決定的な慢性トラブルだったのかもしれないけど,使う側もそれ相応の知識がないといけないと僕は中学の時から学んでいたためあれこれ苦戦しながらも手を尽くして使っていた.
こう言う考え方は小学校時代からMSXやPC98を触れられる環境を作ってくれた兄のおかげなのかもしれないとつくづく思うがGOシリーズを用いていた頃,制作に集中できなかったのは言うまでもない.
それに比べ技術的な部分を設計者自らが説明している内容からもうかがえるだろうが,URシリーズは信頼性バツグンであり自信を持って皆さんにお勧めできる機種だ.
音響機材は市場サイズの大きさから海外シーンが重視されてしまう傾向があるがモバイル用途の目立つURシリーズは非常に日本のシーンにマッチしている気がする.
仕向け別にモデルを分けているかは記事からでは判らないが日本人にも好まれるYAMAHAスタイルがうまく取り入れられているのだと思いたい.
当分,I/Fの更新は考えていないが今後もSteinbergには売れている現状に甘んじることなく安定したAudioI/Fの販売を期待する.
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