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November 30, 2018

KORG KTV-1 修理記録

Kaptivatorの名でVJ業界では知られている名機中の名機
KTV1 取扱説明書 - Korg
2005年にKORGより発売された映像向けのサンプラーであり,当時のVJブームに影響を与えた機種の一つである.

入力端子にCVBS(コンポジット),S端子(miniDin4pin)そしてDV端子(IEEE1394 4pin)を装備する等,4Kも定番化しつつあるデジタルI/F主流の2018年現在となっては,些か古さを感じるが,これほどまでに手軽に映像ソースをポン出しできる機器は未だ数少ないと筆者は思う.


なお,10年代になってから個人的に買い漁っていたVJ機器収集も現在は下記ラインナップまでになった.
Pioneer DVJ-1000(2006) DVDスクラッチプレーヤー
Roland CG-8(2005) ビジュアルシンセサイザー
Roland VR-3(2011) ライブ配信向けビデオスイッチャ
Korg KPE1 Kaoss Pad Entrancer(2006) ビデオエフェクタ
そして今回ご紹介のKORG KTV-1(2005) ビデオサンプラーである.

その他に,関連商品として以下の物品が連なっている.
EDIROL VMC-1(DV対応メディアコンバータ)
Roland TBC-802(タイムベースコレクタ)
SWIT M-1048H(3連液晶モニタ)
EPSON EB-1770W(3LCD液晶プロジェクタ)

KORGやRolandの名を見ると思わずシンセサイザーと思ってしまうのだが,2000年代は割と精力的にコンスーマ向け映像機器製品を作っていた.
コンスーマとは言っても,当時20万円超えの製品がゴロゴロしていて,一般人には高嶺の花であり学生だった筆者も指をくわえてディスプレイされている該当機種を眺めていた口だ.
現在でもKORGは映像機器から撤退してしまったが,Roland社はBlackmagic Design社と並ぶ映像機器メーカーとして成長を続けている.

10年以上の月日の経過は残酷で最近では流石の当時20万超えの製品群も利用シーンの影響もあってか動作品で3〜6万,"ジャンク品"等と銘打つものに至っては2万円を切る等,非常に手の届きやすいものとなっている.


今回購入したジャンク品は名目通りのジャンク品だった.
シルクはもちろんはがれているし,写真では判らないかもしれないがフェーダーも少し曲がっておりガタついている.
後述するが理由があり電源を入れるにあたって分解しなければならなく分解してみたところ,表からは見えない様々な問題が浮上したのでその内容と対策方法を記載する.


<電源アダプタ問題>
写真では既に電源立ち上がっているが元々は『電源アダプターが欠品で動作確認していない』故のジャンク品扱いとの事だった.
この電源アダプタが第一関門で対応するアダプタ"KA240"は専用品,2018年現在メーカー推奨代替えモデルなしなのである.
しかも,コネクタジャックはKAOSS PAD3等KORGではメジャーなジャックであるものの日本独自規格のEIAJ-4で,加えてHDDを搭載しているせいかアダプタ本体の仕様はDC12V4Aと既製品からの選定は難しかった.

で,筆者はどうしたかと言うと手元にたまたま余っていた12V4A品のDCアダプタを流用すべく本体側のDCジャックを部品変更したという流れ.

本体をいじるのはあまりやりたくなかったのだが,EIAJ4コネクタを調達してアダプタ側を付け替えるのと,基板のジャックを手元にある在庫部品から交換するのではリードタイム面でももコスト面でもジャック交換に分があると判断しての苦肉の策である.
一応,定格電流等は取り付け後の実測値を元に担保したつもりとしている.
仕様上,満たせていそうなアダプタは以下の通り(実証試験はしていないので責任は持たない)


5Aというのが少し気になる.
0〜4A間の電流を引いた状態でも安定した12Vが配給できる設計になっているかを電子負荷装置で試験してから使う必要はあるだろう.


<本物のネジは何処へ>
電源ジャック交換に伴い,届いてすぐに分解をしたわけだが分解開始直後既に問題が発生.
取り付いているネジが,そもそも実際についていたはずのモノと一致していない.

何故分かったかというと,CVBS端子に利用されているネジがミリネジになっていたため.
確かに色はオリジナル通り黒が付いており一見すると間違えていないように感じるかもしれないが,CVBSに利用されているコネクタは基本的に新品の状態でネジ切りされていない部品なのだ.
故に,基本的にはここはミリネジではなく木ネジのように先端のとがったタップネジが利用されていなければいけない.
前オーナーさん辺りが分解したのだろう事が思わぬ形で発覚した.

その後も本来あるべき個所についているネジとは別のものがついていたり,分解時にネジを紛失したのか内部では一部がネジ未実装だったりが散見された.

ネジは本体強度に直結する可能性もある為,安易に外したり別のものを利用するのは止めて欲しいというのが筆者の考え方.
近所のホームセンターで代替えネジを入手して付け直す必要があり,必要数をピックアップしたところ計6個も未実装となっていた.

また,フロントにあるサイドフレームを取り付けているT型トルクスネジに関しては錆がひどく浮いていたので,こちらは筆者の在庫部品から同サイズのタップネジを拝借して交換した.
T型トルクスではなくなってしまったが見た目は大きく差が感じられないので結果オーライとする.


<油まみれの基板>
スライドボリュームにガリが発生していたのだろうか?
本体を開けたら接点復活剤を必要以上に散布した跡が見受けられた.
メイン基板の裏側にまで染み渡るほどの状態に唖然・・・
治らなかったんだろう,そうだろう...

これが影響してかFANや基板のあちこちには黒いホコリが付着する等,内部は劣悪だった.
OA洗浄剤等を利用して基板をきれいに清掃したのは言うまでもない.

接点復活剤は応急処置にはいいだろうが,基本的にガリというのは金属くずやチリが接点に付着する等して抵抗値が正常に変化出来なくなってしまう現象であり,残念ながら最終的には該当箇所の部品を交換する他ないのだ.

接点復活剤の多量散布は基板や他の部品を痛める恐れがあり,お勧めできない.
こちらの60mmフェーダーと思われる部品に関しては手元に在庫がないので後ほど交換で暫定クローズ.


<CLIPパッドが>
16個ついているCLIPパッドと呼ばれるタッチパッドの内1つが素人による別部品実装に代わっていた.
何故素人と断言するかというと,スイッチのIn/Out同士がはんだ付けされておりショートしていた為である.
タクタイルスイッチの使い方を知らないで実装したのだろうか・・・?
結果的には基板が壊れていなかったからよかったものの,一つ間違えればメイン基板が昇天していたかもしれないと思うと壊れないで私のところに来れてよかったなと思う.

4つ足で2系統のOn/Offが可能なモーメンタリータイプのスイッチを実装するまではよかったのだが何故にIn/Outをショートしたのか?不可解である.

残念ながらタクタイルスイッチもサイズ感の合うものが筆者の部品在庫にないため部品は危ないのできれいに取り外し代替品を選定しつつ未実装のまま暫定クローズとした.


<液晶から画が出ない>
一通りの作業を終えて火入れ確認を行ったところ
予想に反して(❓)動作はしたのだが問題点がもう一つ浮上した.
搭載されている2.5インチ画面の1つが映っていないのである.

電源On/Offを実施すると白表示にノイズが映り込むため,電源等は生きている様子.
液晶か,液晶駆動エンジンのどちらかに問題があると踏んで再度分解を実施した.

分解にて取り外した液晶がこちら.


"A025CN03"と丁寧に型番が記載されており検索してみたらACEMI OPTRONICS TECHNOLOGYなる中国の会社にて2003年頃に作られた液晶パネルがヒットした.
丁寧にデータシートやカタログが出てきてフレキの端子数や別途記載のドライバボード写真からほぼ同一のもので間違いないと断定.
ドライバボード含めて流動品からの設計だったようで助かった.

同時に様々な画像が出てきたのでGoogle大先生の力を借りて画像検索をしたところ幸いにも国内サイトより某オークションがヒット.
海外からの取り寄せも念頭に入れていただけに嬉しい誤算である.
写真を見る限りノーブランドのように記載されているがA025CN03のセットそのもの.
他の画像検索結果の中には定価3万超えのセットが印字されたカタログもあったが,こちらは送料込み2,705円と良心的.
あくまで推測の域を達していないためダメ元で落札した.
安いのでストックにもう2個とも頭をよぎったが送料が205円との事で,倍かかっても動作確認してからとグッとこらえたという裏の葛藤はナイショである.


届いて開けたら待ってましたと言わんばかりのほぼ同一品.
ほぼと書いたのには理由があり,型番の末尾が違ったからである.
恐らく写真の通りだがフレキの長さが違い,違う部品として出荷されたからなのではないかと考えられる.
V1の刻印からカスタム出荷としてKORGがファーストベンダーだったのでは?と勘ぐってしまう。。。

購入した液晶モニタセットに付属の液晶駆動基板へKTV-1の異常モニタをつないでみたところ白画面にノイズという同一現象が発生した.
恐らく正常にバックライトが付いたのだろう.
ピンアサインも同じと踏んで正常に動作している液晶をつないでみたところCVBS端子に接続したEDIROL製CG-8の映像が期待通りの発色にて映った.
これで間違いなく同等品と断定できた.
KTV-1に新品と思われる液晶を載せ替えて組み上げ動作させたところ難なく正常に出画した.


正直ジャンク修理において,これほどまでにスムーズに事が進むケースは稀である.
液晶が映らなかったのを目にした時は半分諦めてしまった自分が居たのはここだけの話.
スタートアップの黒画面を見るとやはり古い側は黄色みがかっており明るさも暗い.
近いうちにもう一つを購入する事になると思う.

なお,実装後に詳細解析をしたところ動作不良の液晶はフレキの一部が断線していた事が判明.
白く映っていたのはバックライトのラインが生きていたため,ノイズが乗っていたのはフレキの一部が接点不良状態だったため,接触と非接触を繰り返していたものと推測できる.
(注記)右端数本は未だつながっていたが撮影の為に意図的に切った


このタイプのモノにはよくある現象ではあるのだが,それはあくまで可動部にフレキがくる場合の話.
KTV-1はフレキが固定状態で負荷がかかることなく実装されている.
あくまで推測だが,これは前オーナー辺りが分解した際に何等かの負荷をフレキに与えてしまい破損させたと考えるのが自然だ.
何故液晶部分を分解をしたのかは判らないがゴミでも入り込んでしまったのだろうか?残念な結果になってしまった可能性が高そうである.
そして,液晶が映らない事を知っていながら隠して売却した恐れがあるという見方も出来る.
一つ間違えれば『景品表示法』に触れる可能性もあるので出品の際は表記方法などに気を付けて欲しい.


<動いている内にHDDの交換>
HDDはメカニカルな構造故,経年劣化の症状が顕著に表れる部品の一つ.
壊れる時は兆候があるのでSSDのように逝く時は前触れもなく突然に!に比べれば悪い事はないのだが,やはり衝撃等に弱いので専用機器になるべく載せておきたくないものである.
特別問題が起こっているわけではないのだが動いている内にバックアップと交換をしようという事でSSD化を実施した.

SSD化に対して準備したのは以下の通り.

玄人志向 KRHK-MSATA/I9

(mSATA→IDE変換アダプター)


Zheino製 CHN-mSATAQ3-120

(120GB mSATA)


120GB品を選んだ理由は単純に安かったから.
KTV-1はパーティションが3つに別れており恐らく内部データ容量が固定のシステムと考えられる為,大容量にしたところで恩恵を受ける事はできないと思われる.
サイズ変更等は後々の改変ネタで取っておくとして今回はクローンのみの実施とした.

クローンにはPCレスクローナの玄人志向製KURO-DACHI/CLONE/U3とSATA-IDE変換のセンチュリー製CROO-ISを使用.
前述の通りパーティション変更はしないので,EaseUS Todo Backupでイメージ化とイメージからの復帰にて動く事の検証は簡単に実施し,本番用クローンはPCレスで実現させた.


玄人志向の変換アダプタは2.5"ドライブとサイズが変わらないので周辺の固定部品もそのまま流用出来てキッチリ収まった.
mSATAがワンタッチでクリップ固定されるので正直振動に対してここまで手厚い必要はないが固定方法を別途考えるのも面倒なので元のまま実装し閉じた.


もちろん何の問題もなく動作したので一安心である.


<今後の課題>
今後の実施事項としては欠品のタクタイルスイッチ実装,ガリが発生しているスライドボリュームの交換,そしてガタ付きが出始めているロータリーエンコーダ*2個の交換である.

何はともあれKTV-1も無事筆者のVJセットに仲間入りができそうなので,これにて筆者がショーケースを眺めていた当時に堂々とラインナップされていたVJ機器はほぼ集まった感じである.
そろそろVJに転向しても―.
などと無意味なことを考えているとかいないとか?
まずは機材セッティング図でも作って不足のコンポジットケーブル類の調達でもしながら妄想を膨らませようかと思う.

参考程度に筆者の本件に関する実作業時間約4H.
液晶モニタが思いのほかすぐに見つかったおかげだ.
費用としてはモニタ2,705円+mSATA変換基板1,825円+mSATA2,880円の計7,410円也.
残りの修繕部品と送料を合わせて込々10,000円程度と考えれば,プレミア価格の半額程度で入手できた計算となるので結果オーライと言えそうである.
あと,課題としては劣化している片側の液晶を入手できるうちに交換するか否かだけだろう.
プラス2,705円、、、非常に悩ましい.


(注記)本記事に記載の改造や代用品にて生じたトラブルについていかなる損害も筆者は一切の責任を負いかねます

タグ :
KORG
Roland
VJ

コメント一覧

1. Posted by イーザス November 30, 2018 10:26
アカツキ堂
管理人様

お世話になっております。
イーザスソフトウェアでございます。

突然のコメント、失礼致しました。

御ブログで弊社の製品をご紹介頂きまして感謝しています。

この記事を拝読した後、ちょっとお願いしたいことがございますが、宜しいでしょうか?

より詳しい内容を読みたい読者様のために、お手数ですが、製品名EaseUS Todo Backupへ下記の公式ページをアンカーテキストにて貼り付けて頂けませんでしょうか?

https://jp.easeus.com/backup-software/free.html

お忙しい中ご無理申し上げまして大変恐縮でございますが、ご検討頂けば幸いに存じます。

どうぞよろしくお願い致します。
2. Posted by 管理人 November 30, 2018 20:54
EaseUSご担当者様

お世話になっております.
ご連絡ありがとうございます.
メッセージの件,承知いたしました.
近日中にリンクの貼り付けを実施いたします.

なお,本コメントは実施後非公開にするべきでしょうか?
または,公開のままでもよろしいでしょうか?

ご返答いただけますと幸いです.

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traq

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