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外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

2019年05月

日経ビジネスの「世界の最新経営論」にドミニク テュルパンというスイスの教授が興味深いことを記しています。「トレンド転換の前後で勝ち続けたプレーヤーはいない。鉄道会社から自動車メーカーになった企業はなく、自動車から航空機メーカーになった企業もない」と。

携帯電話についても同様だと指摘しています。「1Gの時代の勝者はモトローラだった。しかし、モトローラは2Gの移行に失敗した。2Gではブラックベリーが台頭した。だが、今ではブラックベリーも姿を消した。3Gではノキアが飛躍したが、4Gの勝者はアップルだった。さてこれから5Gの時代になった時、果たしてトップ企業はどこになるのだろうか?おそらく、5Gのトップは上記以外の会社だろう」と述べています。

昨今の時代の流れはより早く、激流ともいえる時代になってきました。もしもテュルパン教授の指摘に汎用性があるとなれば勝者は今後、どんどん変わり、いわゆる「長期安定政権」樹立は難しいとも理解できそうです。

果たして本当にそうでしょうか?

今、クルマの世界は大きな変革期にあるとされています。考えてみれば1920年代に大きく勃興した自動車産業はT型フォードが全盛を迎えます。ただ、どれも黒で同じ車ばかりが走っている中、20年代後半にGMがカラフルでかつ、GMACという金融子会社を使い、ローンで車を買えるという仕組みを生み出します。これが市場を席巻し、フォードは落日を迎えます。ただ、その後、GMは一度倒産したものの、フォードもGMも健在で次の時代のリーダーとなるべく彼らなりの最先端技術を武器に挑戦を続けています。

他方、電気自動車の時代になれば今よりはるかに多くの会社が電気自動車業界に参入し製造するだろうと指摘されています。確かに電気自動車というハードだけ見ればそうかもしれませんが、今やソフトとハードの融合の時代です。今までも考えもしなかった会社が突然自動車メーカーのトップに君臨することはあるのでしょうか?

トヨタは強い危機感を持ち、MaaS(Mobility as a Service)という新しい概念をソフトバンクと取り組んでいます。車は移動手段の一つでしかなく、それは用途と目的に応じて使われるものだ、とも言えます。つまり、あらゆる輸送手段、バス、電車、航空機、自動車などをコネクトし、人の移動をあたかもどらえもんのタケコプターのごとくシームレスに移動できる方法を生み出すハードとソフトの融合を次世代の移動手段としてとらえています。トヨタはすでにそれに気が付き、次世代のための準備をしているのです。

こう見るとテュルパン教授のいうプレーヤーの交代はあるのか、私は必ずしもそうではないという気もしています。

一つは企業規模とテリトリーが明らかに変化しています。かつての企業は専門分野の深堀的発想でしたが、今はインキュベーションしたばかりの新興企業をGAFAやソフトバンクといった資本力ある大企業が買いまくっています。その結果、一つの大企業の守備範囲が異様に広まっているのです。

資本の力と政治力によるいびつな力関係が経営やイノベーションの世界まで直接的に影響することは過去、あまりありませんでした。5Gは誰が制するか、という上記の例で行くとファーウェイの可能性もあったはずです。しかし、それは政治的に潰されかかっています。そして大資本を持つ企業ほど有利な展開が進んでいるようです。

私が専門の不動産開発。あちこちで高層マンションが建っていますが、個人的にはこのトレンドは20年ぐらいで終わるとみています。建物というハードにソフト機能がほとんどない上、管理組合という管理がまともにできない古典的手法に固執する発想そのものがナンセンスなのです。既存の不動産スキームは時代にほとんどマッチしているとは思えません。

私ならマンションは全部居住権リースにします。つまり、土地建物の所有権はデベロッパーないし、REITが維持したまま、居住権だけを売ります。前払い一括リース(Life Leaseといい、私が関与した物件の一部で15年ほど前に既に導入しています。)という案もあるでしょう。それによりデベロッパーが住宅にサービスを提供する自由度を高めます。フードデリバリーサービスから食物工場のシェア、自転車や自動車のシェアに各種教室、更には高齢者向けディサービスやケア施設などを取り込むのです。面白いものができるはずです。

このアイディアは既存のマンションデベロッパーが十分にできるはずです。気が付くかどうか、そこだけなんですね。もしもやらないとすれば「そんなもの売れるわけがない」というメンタルバリアが破れないだけなのです。だいたいマンションを所有している人が自分の土地の持ち分に固執する人はいますか?いないでしょう。マンションとは何の権利を実質的に買っているかといえば’コンクリートに囲まれた一定の空間の居住権だけなのです。なぜならマンション所有者の自由度はほとんどなく、一例として、ベランダは専用できる共用エリア、玄関ドアも通路側は共用といった具合です。

トヨタの豊田社長もパナソニックの津賀一宏社長も気が付いています。津賀さんの「今のままでは10年も持たない」という発言の真意とは「トレンド変わり」がすぐそこまで来ている、だからぬるま湯につからず、視線を新たに、ということかと思います。

ビジネスの賞味期限が伸びてテュルパン教授の予想が当たらないようにするのが我々ビジネスマンの使命ではないでしょうか。そのために既存の殻を破るのです。頑張らなくちゃなりません。

では今日はこのぐらいで。

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2019年05月30日10:00
安全通貨を買う、という言葉を聞いたことがあると思います。世界の中で米ドル、円、スイスフランはその典型とされます。では安全通貨同士の比較はどうでしょうか?ドルと円の為替は相対なのでどちらかが上がればどちらかが下がるシーソーゲームですからこれだけ見ても何もわかりません。

いわゆるドルストレートではなく、クロス円(米ドル以外の通貨ペア)では円は2年半ぶりの高い位置にあり、世界的に見て円は強くなっているとロイターは報じています。ただ、ドルも強いため、双方が強くなってしまい、ドル円の為替に表れていないという状態とも言えそうです。ただ、一部の為替専門家は引き続き対ドルの円高予想をしており、105円という数字が目先上がっています。

ちょっとマニアックですが、これを複数の通貨の比較インディックスチャートに当てはめて指数基準日を18年10月1日とし、19年5月27日における各国通貨の強弱を比較してみました。10月を基準としたのは米中通商交渉が世の中で懸念され始めた頃だったからです。すると主要通貨で一番強いのは円で指数では105.83、ドルが100.88に対してユーロは97.15、ポンドは意外と98.13をつけています。

ユーロが世界主要通貨の中では弱い傾向が止まらないわけですが、通貨安は輸出競争力の上昇ですからドイツは有利になります。それが反映されるのがユーロ圏各国の国債であり、更にいびつな関係が生じてしまいます。つまり、ドイツやフランスの国債が買われ過ぎる傾向にあるともいえるのです。為替がトリガーとなり、様々なひずみを生み出す、ともいえるのかもしれません。

ところで通貨とは政府保証のマネーであります。ではなぜ、自分の国では自国通貨だけを使うのでしょうか?アメリカからのお客さんが日本でドルをそのまま使えてもよさそうな気がしませんか?もちろん、小売店からすればレジにいろいろな通貨があるわ、為替レートはあるわ、となったら大混乱します。だからかつては両替商にいって現地通貨をゲットしたのです。

でもちょっと待ってください。最近、海外旅行に行って現地通貨に両替しましたか?少額はするかもしれませんが、かつてあったトラベラーズチェックなんて死語ですよね。ほとんどの方はクレジットカード決済のはずです。アメリカ人が日本で買い物するクレジットカードはアメリカ発行のものですからドルベースなんです。よって考え方としては日本で買い物したものをドルで払っているのと同じなのですが、受け取った店が困るのでカード会社が円転してくれるという見方もできます。

こう考えると日本に年3000万人も来る海外からの旅行者はみな、違う通貨を日本で使っているとも言えないでしょうか?これはある意味、AIやらIoTだと言っている現代世界に於いてずいぶん遅れているシステムなのかもしれません。

もしも仮想通貨で世界通貨をバスケットし、バランスさせて為替変動が少ない安全な仮想通貨を流通させたとしたらどうでしょうか?仮想通貨の場合、その発行額に対する保証がどうなっているのかが問題になります。その発想をいっそ、新通貨使用者全員が発行者であり使用者という「とんでも発想」があったらどうなりますか?言うだけ言って深堀していないのですが、絶対不可能ではない気がするのです。

例えば日本人が円ベースで100億円、アメリカ人がドルベースで1億ドル、欧州からも1億ユーロ分参加すればその総通貨をバスケットに入れ、安定的な交換比率を提示し、商品がどの国でも新通貨で両替なく買えるという仕組みを作ったらどうでしょうか?多分、誰も考えたことがないはずですが理論的には可能なはずです。私は実現不可能とか素人、と言われようが新しい取り組みが必要だと思うのです。

今の世界で不満ばかり言うのではなく、じゃあ、どうしたらよいのか考える、という癖が必要だと思うのです。現代の為替システムは私にとってもっとも改善を要するエリアだと思っています。海外送金もスイフトシステムという前近代的システムがようやくだめだと指摘されてきてます。

日本は為替変動のたびに企業業績に影響し、株価が揺らぎ、時としてニュースで大きく報じられます。それがなく、安定したグローバル社会の発展ができればこれほど良いことはないでしょう。私は今の為替システムがどうにか早くアップデートされないかと心待ちにしています。

では今日はこのぐらいで。

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2019年05月29日10:00
カテゴリ
国際
外交
5年に一度の欧州議会選挙が23-26日に行われました。まだ最終が出ていませんので報道も少ないようですが、当初の予想通り、中道右派と中道左派による安定時代から多政党化が進み、EU一体化に対する様々なボイスを真摯に受け止めなくてはいけない時代になったようです。ただ、フランス マクロン大統領が推す共和前進が現在第三党であるALDEに合流する見込みで最終的には第一党から第三党を中心とした連立で欧州議会運営は乗り切るのではないか、と見ています。

中道右派(EPP)は2014年の際は221議席だったものが今回は177議席、第二党の中道左派(S&D)は前回の191議席に対して150議席となり、両派合わせて412議席から327議席へ減少、全議席数の比率でみると54.9%から43.5%となっています。いわゆる連立与党の過半数割れであります。ただ、上述のALDEが107議席取りましたのでこれを合わせれば63.2%となり、議会運営は安定するでしょう。

国別でみるとやはり目立ったのが英国のブリグジット党が第一党となり、残留派の自由党が第二党となったことでしょうか?二大政党の中心だった保守党や労働党は下に追いやられています。フランスもルペン氏率いる国民連合(RN)が第一党、マクロン大統領率いる共和党前進を押さえました。

イタリアは極右の同盟が30%を確保、最大議席数のドイツは中道のCDUとSPDの支持率が前回に比して大きく下げているものの体制は維持できている模様です。注目された極右のAfDはさほど伸びていない模様です。

さて、この傾向をどう見るかですが、私は欧州に限らず、世の中全体の最近の傾向が虚実に表れていると思います。平易な例えをすると「総合雑誌より専門雑誌が読まれる時代」と申しましょうか?

かつては男性もの、女性ものの総合週刊誌はよく売れたものです。が、今はそれよりももっと的を絞ったものを求める傾向があります。理由は総合誌は分析が浅く、読者を満足させられないのだろうと思います。その背景はもちろん、無料の情報が瞬時に誰にも均等に届くという背景があります。同様にファミレスよりも料理にこだわる専門店という流れもあります。「百貨」店という名のデパートより専門店に行くのも同じでしょう。

この結果、広く薄い知識よりも狭く深いものをもとめ、それが人々の行動規範にも表れてきていないでしょうか?いわゆる劇場型選挙はある意味、究極の一点について是非を問うわけでほかに考えなくてはいけない99の項目は横に置いておく、という発想です。それはフェイスブックの「いいね」も同じである意見について「いいね」を押してもその人全体を肯定しているかどうかは問わないのです。

専門家は今回の欧州議会選挙の動向について「現状の否定」と評しています。現状の否定という表現が妥当かは個人的には懐疑的ですが、少なくとも「我慢できなくなった」という傾向が強く押し出されてきています。

EU28カ国はつい75年前までは長い戦禍に見舞われた国々です。そこには民族的問題が常時横たわり、強いナショナリズムが各々の国家にありました。が、悲惨な二つの大戦を経て「もう止めよう」と思い立ったのがEUの前身であり、アメリカに対抗するUNITED思想の発祥地点であります。

これが今になって変化しつつあるのは75年経って時代の循環と考えるべきなのか、強い紐で結ばれた関係に嫌気がさしたのか、あるいはそれをしっかり引っ張るリーダーシップの欠如なのか、様々な見方はできると思います。ただ、はっきりしていることは英国は期待できず、メルケル首相は先が見えているし、マクロン大統領の支持率は最悪期を脱したもののやはり不人気であることは変わりません。

むしろ周辺国であるイタリアやハンガリーあたりのボイスが気になりだしたというのが現状ではないかと思います。

ただ、三歩ぐらい下がってこの問題を見ると多くの国が掲げる問題はほぼ移民問題に集約されます。かつて欧州の金融危機があり、ギリシャなどが苦しんだ際、一部ではEUの制度疲労などとも言われましたが、EUの根本的結束力は衰えなかったと思います。仮に移民問題を解決することでEUの結束力を維持できるならその解決に全力を施し、EUを維持することに努めるべきでしょう。

今年はトゥスク欧州理事会議長、ユンケル欧州委員会委員長が改選となります。新たなリーダーシップが欧州を結束させるか、壊すか、真価を問われることになりそうです。

では今日はこのぐらいで。

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2019年05月28日10:00
カテゴリ
政治一般
外交
トランプ大統領ご夫妻訪日のニュースは尽きないようですが、一部にはいろいろつまらないことをいう人もいるようです。

共産党の小池書記局長は日米貿易交渉に関して8月に何か大きな発表ができる、という点に関して「参院選対策でアメリカに口止めしたのではないか」、立憲の枝野代表は「天覧相撲でも2階から見るのになぜ升席なのか」、はたまた立憲の辻本氏に至っては「トランプ氏は観光旅行で日本に来るのか。安倍晋三首相はツアーガイドか」(以上産経要旨)と述べています。ここまで言うとこの方の性格のひねくれ方は私の家のドライヤーのコードと同じ(直しても直してもすぐよじれる)かもしれません。

テレビでもフジテレビ系の「バイキング」で東国原英夫氏が貿易交渉スタンスについて日本はTPP11と同程度の水準で妥協を狙っているのでは、という見方に「トランプ大統領はそんなこと聞かない。それだったらTPPに入ってますよ。二国間で(交渉)するってことは、農産物の関税をタダにしろ、それで自動車は25%(の追加関税を)取るぞと」とトランプ大統領の交渉内容が強気であると強調。すると司会の坂上氏が「そしたら(日本はアメリカの)舎弟だよ?」などと大統領に対し、批判的ともとれるコメントを繰り広げた、(リアルライブより要約)と報じられています。

東国原氏の論点は違います。トランプ氏は多国間交渉が嫌で常に二国間でベストディールを引き出すことを目論んでいます。それは多国交渉間になると双方の国のインタレストを最大限にアピールできず、必ず妥協の産物になりかねない点、および、自分の短い任期中に最大限の成果を上げるというアメリカ短期効率主義が背景です。司会の坂上氏においては受け狙いのつもりかもしれませんが、フジ サンケイ グループの放送において風上に置けない発言です。

今回で安倍氏とトランプ氏は5回目のゴルフ外交をしています。トランプ氏との外交においてゴルフを5回もできる人はいません。時間がかかるゴルフを一緒にするのはよほど気が合わないとできないものです。では他にゴルフ出来る首脳はいないのかといえばゴルフをする理由が立つ国でないとなりませんが、そうなると日本やイスラエル、英国といった主要同盟国で長く安定した歴史が背景にあることは要件でしょう。

その育まれた蜜月関係から今回、イランに関してアメリカが日本に仲介を求めたように見て取れます。安倍首相は北朝鮮問題についてアメリカにお願いをしてきたわけですが、イランについてはトランプ大統領からその手助けを求めたとすればこれはかつてないほど大きな意味合いを持ちます。

日本はキリストでもユダヤでもイスラムでもないという宗教背景とイランとの外交関係は悪くない点からの話だろうと思いますが、素晴らしいことではないでしょうか?アメリカ外交の一部を手助けするようなそんな日米外交史は私の記憶にはありません。

一昨日、自民党の二階氏が野党に政権が移ることはない、と断言していましたが、日米関係を安定的かつ、発展的にしてきたのはもちろん首相の個人的アピールもありますが、ぶれない組織力がその背景にあることを見逃してはいけないでしょう。

トランプ大統領が到着初日にビジネス界の代表を集めたアメリカ大使館内でのパーティ。あの招待者リストをじっくり見ていると「ははーん、政治だな」と思わせるところがあります。例えば大手商社はなぜここが選ばれたのでしょうか?なかなかそういう点はシビアなんでしょうね。

今回のトランプ大統領の訪日で指をくわえているのが韓国の文大統領でしょう。結局G20のあと、トランプ大統領が韓国に行くことになったようですが、文政権は「死に体」になりつつあります。あらゆることで八方ふさがりの中、トランプ大統領が何を述べるのか、むしろ、楽しみになってきたとも言えます。

外交は一日にしてなりません。長い関係の中で一つだけの事象を取り上げてしまうと正しい判断はできなくなります。その中でオバマ前大統領は広島で献花しました。トランプ大統領は令和初の国賓として来日しました。日米関係は着実に発展するとみています。

では今日はこのぐらいで。

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2019年05月27日10:00
カテゴリ
経営
自動車
週末にとんでもないニュースが飛び込んできました。FCA(フィアット クライスラー オートモービル)とルノーの提携ないし統合話が進んでいるというのです。本件、現地時間月曜日朝8時より交渉が開始されるため、日本では火曜日にも大きなニュースをもたらす可能性があります。

どの様な形で両社がくっつのかはまだ不明で英語ニュースのタイトルもteam upであったり、partnershipであったりするので日経の記事にある「統合」まで踏み込むのかはまだわかりませんが、あり得る話ではあります。

FCAはリーマンショックを受けてフィアットがクライスラーを吸収合併した新会社であります。当時の経営責任者はイタリア系カナダ人、セルジオ マルキオーネ氏でなかなかのやり手でした。ところが66歳にしてがんで亡くなります。2018年のことでした。フィアット社はここで創業ファミリーからジョン エルカーン氏を会長に投入しながらも更なる合併相手を探し続けます。今回、先に提携交渉していたプジョーから色よい返事がもらえず、ルノーに乗り換えたものと思われます。

FCAは旧クライスラー系のブランド以外にフィアット、マセラッティ、アルファロメオがあり、ルノーに不足する高級車を一部配していることから経営の提携には一定のうまみはあるものと思われます。

ブランドを傘下にずらりと配するのはフォルクスワーゲンが得意とするところでしたが、仮にルノー/FCAグループができるとフォルクスワーゲンよりもはるかに強力なアライアンスになるはずです。理由は世界の市場をよりくまなくカバーしている点でしょうか?中国はやや弱みがありますが、相当の影響力は持つことができます。

では日産はどうだったのかという点ですが、推測ですが、蚊帳の外だった可能性もあります。日経にも「日産側は、FCAとルノーとの交渉については『何も聞いていない』(幹部)」とコメントされています。思うにルノーはFCAとの交渉が水面下で進んでいる際、その行方次第では日産との経営統合問題はFCAとの案件の展開次第でコントローラブルと考えた節がないでしょうか?

一方でルノーとFCAのアライアンスの噂は春先ごろからあり、当然、日産側は知っていたはず。これに対して日産側がFCAに水面下での事前の根回しができたかどうかは不明であります。もし、日産がFCAと事前交渉ががないとすれば交渉では不利な位置に立たされたことになります。ルノーとFCAがどういう形にしろくっつけば主導権は両社が握り、日産は中心的役割を果たしにくいでしょう。こういうことはビジネスの世界では往々にして起きるので今後の日産の出方に注目でしょう。

ではFCAはなぜ、提携先を探し続けたか、といえば次世代型自動車への開発能力の欠如以外の何物でもないと思います。北米を走る旧クライスラーの車はライトトラックも乗用車もパワーを重視した車が多く、根強いファン層を確保していますが先端技術という点ではフォード、GMに比し、完全に出遅れているとみてよいでしょう。

よって自動車業界の規模の経済のみならず、先端技術を求めるのであれば日産がキーになるはずで、このあたりが今後の交渉どころになるかもしれません。日産としてはこのアライアンス計画でどうやってポールポジションを取るのか、これが腕の見せ所となるでしょう。同社は幹部人材をシャッフルしている最中でタイミング的には難しいところですが、期待したいと思います。

では今日はこのぐらいで。

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2019年05月26日10:00
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経営
国際
海外駐在が今の時代、エリートだとは思いませんが、誰でも赴任できるものでもありません。またアジア方面と欧米ではある程度の違いはあるのかもしれません。アジアならば現地スタッフが日本の企業に学びたいという気持ちをまだ強く持っているでしょうから多少、言語が下手でも、教え方がまずくてもついてきてくれたりするのでしょうが、欧米はそうはいかないでしょう。(アジア方面の駐在の認識が違っていたらぜひ、ご教示ください。)

さて、駐在員は現地レップ(代表)としてビジネスシーンにおいて様々なところを把握しなくてはいけません。いわゆる会社の顔ですから取引業者、顧客、同業者を含めた情報網の確立は駐在になったら第一歩的な仕事ですが、自分からそれに突き進む駐在員は少ないと思います。

一般的には駐在員は会社のラインの仕事はしないようです。ラインの仕事とは日々の業務にかかわる生産工程、経理、顧客対応、業者とのやり取りなど企業が生み出す価値の基礎部分です。なぜ、やらないかといえば駐在員が数年でくるくる変わり、そのたびにやり方や指導内容が変わると現地スタッフが混乱するから、と以前聞いたことがあります。

複数の駐在員がいる会社の場合はよりラインの仕事に入り込むこともあると思いますが、それでも部門の長(経理や生産部門、マーケティングのトップ)ですから上がってくる数字や情報に対して現地スタッフに指示を出す、という仕事になるかと思います。

こう考えると会社によってだいぶ事情は違いますが、駐在員の仕事は管理業務が主体であとは本社とのコミュニケーションが主たる業務です。これが楽か大変かはあえてコメントしませんが、一つ言えることは駐在員が主導してビジネスの成長や改革を行うという点ではあまり期待できるようには思えないのです。

日本企業において海外事業展開の決定は本社で行うことがほとんどではないでしょうか。では本社は誰が動かすのかといえばやはり本社が主導するのであり、海外事務所はその決定に従い、受動的業務になりやすくなります。

もちろん、海外事業所から本社に能動的に働きかけをする場合もあるはずですが、どこかで潰されることが往々にして起きているはずです。私もいやというほど経験しました。

何故、私が今日、こんなテーマを書いているかと言えば日本企業の海外進出戦略が消極的すぎやしないか、そして現地事業所とレップの存在を十分に生かしていないのではないか、という気がするのです。

私も海外にこれだけ長いと様々な情報が入ってきます。自分の会社の事業範疇とはかけ離れているものは時折、興味ありそうな会社に話を振るのですが、まず、モノになったことはありません。本社の設定する資金枠、営業方針に合わないというのが主ですが、本社のトップまで上がるようなことはないでしょう。

何も新しいことができないというジレンマを繰り返していると駐在員は何のためにいるのか、という自問をするようになります。「3年の辛抱」とは時折聞く言葉なのですが、駐在は「いやいや」ということなのでしょうか?こんなことでは日本企業はいつまでたっても国際化できないでしょう。

私は駐在員の滞在期間をもっと長め(最低5年)、権限をもっと与え、タスクを与えることが重要だと思います。同時にキャッチャーである日本側の窓口、国際事業部とか海外営業部といった部門が海外業務に対する考え方を変えるべきと思います。管理するのではなく、経営する、という発想です。

私は長年ここにいながら、自社で開設する日系銀行のレップにもよく利用する航空会社のレップにもめったにお会いしません。会わないから日系に出す仕事のウエイトは減らす、という悪循環です。日本では取引先銀行の店長にはいくたびに必ず会うのに、です。

駐在員の敷居ということが言われた時代もあります。我々現地で起業した会社とはなかなか接点すら生まれないのです。しかし、名刺だけで商売できる時代ははるか昔に終わっています。せっかくのビジネスチャンスをもっと利用されるようになればよいと切に願っています。

では今日はこのぐらいで。

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2019年05月25日10:00
話題の丸山穂高議員。一部で発言への擁護論が見受けられたのですが、私から見れば読み手がそういうふうに自己都合の解釈をしたかっただけと思っています。当の本人は大トラ状態であって言葉の重みはありません。おまけにその後報じられたここに書くのがはばかれるような発言の数々、そして維新から明らかにされた酒に溺れた男じゃどこを卒業してもどれだけ頭が良くても評価はゼロ。休養2カ月の診断書をもらったということは当然断酒するんですよね?

では今週のつぶやきです。

ファーウェイに振り回された株式市場
米中貿易戦争が一時休戦になったと思いきや、ファーウェイを取り巻く企業群から次々と取引停止が報じられました。個人的にはソフトバンクが持つアーム社の取引停止が完全なる致命傷になると見ました。グーグルソフトがなくてもクアルコムの半導体がなくてもアマゾンで販売できなくても代替策が完全になくなったわけではありません。ただ、アーム社の半導体設計図がなければ物理的に作るのは難しいでしょう。

個人的には本件、勝負あった、と思います。中国側はどうやってでもファーウェイ制裁を解除すべく手立てを考えるでしょう。そのための貿易戦争への譲歩はやむを得ないかもしれません。中国はメンツの国ですが、今回メンツを潰されたのはアメリカ側。出来上がりつつあった通商協定案の重要な部分を削除したのは習近平氏の指示とも言われています。

アメリカの株式市場は半導体関連を中心に確かに下げに見舞われましたがパニック的ではなく、代替先はあると見られており、じわじわと市場のエネルギーは回復するとみています。日本の株式市場は先週、弱々しいと書きましたが、まさにその通りの状況が今週も続きました。ただ、少しずつ、明るさを取り戻すと期待しています。

メイ首相の涙
これほど苦悩を抱えた首相も久しぶりだったと思います。2年10カ月の在任期間でその多くを英国のEU離脱問題に注ぎ込んだものの、何ら進捗があったわけでもなく、むしろ、与野党はくちゃくちゃになり、党利党略なんてものはなく、「お前は俺の敵か、味方か」的な議会構成となってしまいました。

ご本人は悔やんでも悔やみきれないと思いますが、多分、彼女には人徳がなかった気がします。圧倒的地位を作り上げたならともかく、根回しや仲間づくりはどこの世界でも必要だと思います。それが彼女はできなかったと私は思っています。

問題は次です。誰が首相になるのか、です。この混沌とした議会を過半数の支持をもって一定方向にもっていくほどの指導力がある人はいるのでしょうか?ボリス ジョンソン氏が最有力候補とされますが、彼が首相になったら英国は壊れます。彼は声と態度はデカいですが、物事を緻密に積み上げることはできないです。ロンドンの霧は当面、晴れそうにありません。

元徴用工問題、着地点はあるのか?
産経が日韓外相会談記事を「凍り付いた雰囲気」と評していますが、相も変わらず、日本側が押す、韓国側が必死に防御するという姿勢に見えます。韓国政府は最高裁の判決を尊重し、政治的にその判決を損ねることはできないという立場を貫いています。2011年の慰安婦判決の時と同じです。表現は悪いですが、最高裁、憲法裁判所の判決は絶対唯一で完全服従と見えます。ところがその裁判所は日和見判決であり、裁判官が国民からの突き上げを恐れているというのがありありと見て取れます。

今回のステップは日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の開催を迫るものであります。双方、および第三国から代表を出し議論をし、ここでの決定は絶対なものになります。韓国側はこれを嫌っているのだろうと思います。もしも仲裁委員会で最高裁判決と違う判断が出た場合、その判断が両国間の絶対判断であり、韓国最高裁判断を覆すことになるからであります。

これは現政権の信任問題にも繋がる致命的問題となり得ます。この委員会は一種のアービトレーションであり、ごく普通の解決方法ですが、韓国が先に裁判所判断を出してしまった「順番の間違い」という究極の間違いを犯したことはあまり指摘されていないと思います。これは詰将棋状態にあるように見受けられます。

後記
25日午後、トランプ大統領がやってきます。今回は数々の日程がありますが、個人的には大相撲観戦に興味があります。誰がトランプ杯をとるのか、これがほとんどニュースにならないのですが、面白いのです。最有力候補は前頭8枚目富山出身、朝乃山で13日目を終えて2敗。これを追うのが横綱鶴竜で3敗。今日の取り組み次第ではこの二人に行方は絞られます。個人的には日本人力士に優勝杯をとってもらいたいです。

では今日はこのぐらいで。

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