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外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

2022年07月

先日、台湾系のイベントのグランドオープニングセレモニーを覗かせていただきました。驚いたことにカナダの副総督(クイーンエリザベスの名代であるカナダ総督の元にいる各州にいる代表者)をはじめ、連邦議員団、BC州の大臣ら議員団、そして開催地の市長をはじめとする市議会議員団がステージで次々あいさつするなど政治家の市民への寄り添い方が半端ではなかったのです。議員の総数は20名は下らなかったでしょう。

聞くところによると政党ごとの議員団はイベント会場に5−6人の議員軍団を送り込み、ステージであいさつをし、市民にイベントをアピールします。政治的発言は一切ありません。私も何人か知っている政治家と挨拶を交わしましたが、誰ともごく普通の会話で終始し、とてもフラットな感じがします。

このイベントが開催された場所はバンクーバー市の隣の成長著しいバーナビー市です。当地の成長力はバンクーバー市だけを見てもほとんど参考にならず、拡大バンクーバー地区(メトロバンクーバー)単位で見る必要があります。理由はバンクーバー市の開発余地が少なくなっていることとアフォーダビリティがなく一般の方はより遠い郊外に住まざるを得ないからです。関東で言う埼玉、千葉、神奈川と同じです。

その市議の一人が私に熱弁をふるいましした。バーナビー市は現在4か所を集中都市計画推進地区として開発を進めており、著しい人口増加に対応しているというものです。人口増加率は5年で7%増えており、拡大バンクーバー地区の年平均の1%を上回る状況にあります。現在、それらの地域には40−50階建ての住宅がにょきにょき林立していますが、じきに75-80階建ての住宅が複数建設されるとのことでした。

カナダには土地があるのになぜそんな高層住宅なのか、と疑問を持つと思います。答えは緑地や公園の確保であります。自然との共生ができやすいよう都市計画がしっかり考えられているわけです。また職住接近という発想からは戸建て住宅が広がるより鉄道駅のそばに高層住宅という方がアジア系移民には受けるのです。(白人は真逆で嫌がります。)

最近の傾向は政治の主導権が白人から様々な人種に変わってきている点でしょうか?アジア系移民の多いバーナビー市などは給与所得者の移民が主流です。2016年の国勢調査ですら移民が全人口の50.05%となっていますので今は更に増えているはずです。中華系の移民で有名なリッチモンド市は60%を超える人が移民でその大半はアジア系です。それゆえにそれらの住民を代表する政治家は非白人が半数以上を占めることになります。

これは政治判断にも影響するわけで、基本的にはよりリベラルに近くなります。そもそも連邦カナダが中道左派であり、移民国家の特性をそのまま表しています。では保守派はどこにいるかといえば基本的にはどんどん街の外に追いやられる感じでしょうか?あるいはバンクーバー島の多くの街も保守的な白人のメッカになります。これは英国のロンドンでも同じ傾向があり、街のセンターにいるのは移民と富裕層ばかり、という都市形成になります。バンクーバー市もダウンタウンはそれに近い状態になってきています。

住みやすいかといえばこれは太鼓判を押してよいでしょう。バンクーバーをはじめ、カナダ各都市が世界で最も住みやすい街トップ10に3都市ぐらいは常にランクインしています。その理由はアメリカほど格差を感じることもなく、移民も人種も差別されないことが大きいと思います。社会保障も充実しているし、移民への支援策も数多くあります。

コロナ後、カナダへの留学生が異様に増えているようです。数字として挙がってきませんが、とにかく短期の学校(3−6か月)には学生が溢れており、日本人も急増しています。昨日書いたように、その中にはカナダに残りたい、住みたいという方もいるわけですが、その夢を叶える方法がしっかりあるのもチャレンジや夢という点で人々の心を揺り動かすのかもしれません。

日本がなぜ、移民国家にならないかといえば最大の理由は社会がまだ移民と同化できず、言葉も交わせないことではないかと考えています。その点、カナダはベースが英語であり、アフリカ系でも南米系でもアジア系でも変な英語をしゃべる人も多いのですが、それを苦にすることなく受け入れ、やり取りできることが素晴らしいと思います。

逆に移民国家でのルールとは社会規範を守るということかと思います。どの人種もそれぞれ自分の常識観があり、生まれ育った風習があります。が、それを社会に強く要求することなく、あくまでも自分の希望が受け入れられるかその可能性を確認し、社会はそれをより多く受け入れることに注力します。例えば行政や銀行の窓口では最低でも5−6か国語ぐらいは対応してくれます。日本語サービスも一定程度は備えています。

では良いことづくめかと言えば経済に関しては必ずしも同意しません。競争力という点で劣るのです。地道な研究などはよいのですが、莫大な資金と投じて何か新しいことをするというようなことはアメリカに全くかないません。また優秀な人材がアメリカに流出しやすいという傾向も見て取れます。例えば医者など優秀な研究者はアメリカに行くと言われています。経済のみならず、例えばオリンピックなどをやっても案外メダル数が伸びないのがカナダで、とことん突き詰めるという気持ちにならないのんびりしたところがあるのが弱点といえば弱点かもしれません。

そうは言っても私も30年以上ここに住んでいるということは東京のど真ん中に住むよりもはるかに魅力的だから、ということを身をもって感じた結果なのだろうと思います。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。
2022年07月30日10:00
あまりメジャーなニュースになっていませんが、注目しているのが紳士服のAOKIがオリンピック組織委員会の高橋治之元理事に振り込んだ4500万円を巡る話題です。組織委員会で活動していた時も既に70代をだいぶ過ぎた電通出身の高橋氏が相当のスポンサー企業を集めたとされる中でこの資金が賄賂だったのか、調査が進みます。視点は2つで「また電通?」もう1つはいくら電通専務経験者とはいえ、顧問を降りた後でもこれだけ電通社内に影響力を及ぼすことができるのは人と人の繋がりがビジネスの基盤ということを改めて見せつけたということでしょうか。そういう意味ではずいぶんご活躍されたのだと思いますが、晩節を汚す、という言葉もありますね。さてさて。

では今週のつぶやきをお送りします。

サマーラリー
目先の重大イベントが終了したのでマネー市場はいよいよ本格的な夏休み気分になり、3週間ほどは夏祭りとまでは言いませんが、盆踊りぐらいの相場にはなるとみています。今回、GAFAMの決算発表では決して良い決算ではなかったのに株価は逆行高になり、先行き期待が高まった点です。市場用語でいう「あく抜け」に近い状態です。引き続き、小型銘柄は決算後、暴落するものも散見できますが、前四半期ほどではないのは確かで、これは株式市場にとってはありがたいことでしょう。

個人的には金融政策に於いて利上げの頭打ちがなんとなく見えてきたこと、悪いと言われる企業業績もそこまで落ち込まずに済みそうだということが好感されたとみています。着目したのが「米ドルの為替が高すぎて輸出メリットが取れない」という企業の声でこれは当然パウエル議長にも届いているはずです。利上げによるドル高は必ずしも歓迎しないという市場の声は景気全体を考えれば無視できません。

このところの円相場も重大な転換点です。急激に円高に振れたのは日米長期金利の差が拡大していたこともあるのですが、これが縮小しており、いわゆる「ワニ口」が閉まりつつある中で現時点での妥当な為替は130円程度になりますのであと3円ほどの修正があってもおかしくないでしょう。日本の株価は不思議と円安を囃すので海外はサマーラリーなのですが、日本は一緒に盆踊りできないのでしょうか?

バイデン-習近平電話会談
2時間20分もよく受話器を握りしめていたと思います。報道からは話をしてよかったけれど成果ナシという感じでしょうか?話すテーマはいろいろあったと思いますが、電話ではどうしても伝わらないこともあります。その点で、リアルミーティングを開催すべき事務方への指示はプラスでしょう。両氏とも秋に自身の今後を占う重大なイベントを控えますが、両氏とも取り巻く環境は雨でバイデン氏は土砂降りに近い状態です。双方でポイントをあげたいところでしたが、いかんせん、隔たりが大きかったと思います。

台湾に関してですが、私はバイデン氏のポジション、「ひとつの中国は認めるが、現状変更は許さない」という発想は台湾をより中途半端にするとみています。氏は明白に「台湾独立は反対する」としています。これでは「触らぬ神に祟りなし」にしか見えないのです。ちなみにこの話を台湾の人に振ると口をつぐみます。タブーではないのでしょうが、決して中国本土を刺激しない「腫れ物に触る」ような態度であり、むしろ外野が本質を見ぬままにかき乱しているように感じます。同じことは朝鮮半島の両国間の停戦状態と全く同じで、それを維持しようとするのが西側政策ですが、これが本質論とも思えません。

結局、バイデン外交、ひいては民主党外交はいいとこどりで表面なぞりの政党でしかないということです。では習近平氏は鉄壁かといえば北戴河会議のリーク情報待ちですが、どうも習氏の三期目人事は確定でむしろそのお祝いのために世界の首脳をどう集めるか、そちらに話題が移りつつあるようです。また政治局常務委員会の7名の人事の調整中です。党大会開催場所は北京でしょうが、意表を突いて台北開催としたら世界の驚愕でしょうね。習氏はそれぐらい台湾にこだわっているわけで氏の政治生命を賭けた戦いは続きそうです。

不思議な佐渡金山世界登録遺産の書類不備問題
自民党の佐藤正久外交部長が切れまくっています。韓国からのチャチャも入り、あれだけ話題になった佐渡金山の世界登録遺産に関して末松信介文科大臣が来年の登録断念ともいえる秋までの書類再提出を発表しました。一部からは「書類不備?、なんだ、それは!」という厳しい声があがります。政治的にも満を持して対応すべき内容でしたが奇妙な落とし穴があったということです。

そもそもは申請のタイミングが間に合っていませんでした。本来は21年9月末がユネスコ側の暫定版提出期限ですが、日本政府が暫定版を出したのは21年末で正式申請は2月1日の申請期限日でした。受け付けてもらったものの内容の中で「西三川砂金山の水路が途中で途切れている点」の補足説明不備が指摘されました。これが今年2月28日。ところがユネスコは2月1日時点で書類の修正の受付期限も閉め切ったため、対応策として「説明不備はない」と書類修正せずにユネスコを説得しようとしたわけです。ところがユネスコ事務局が7月27日に「日本側の説明ではダメ。不備は不備(=つまり今年はプロセスしない)ということを通告したため、2月末から粘ったものの決着がついてしまった、ということです。

この流れで見るとユネスコの事務方のプロセスに不明瞭な点はなく、むしろ、日本政府が期限ぎりぎりでの正式申請で一発合格を狙ったわけだったのです。これはいくら何でも無謀です。ではなぜ、昨年9月末に書類を出せなかったのか、ですが、佐渡金山の世界文化遺産申請は長年の地元の夢でしたが、韓国側の反対を含めた外野の整理に時間がかかった、これが本当の理由だろうとみています。そもそも時間に負けていたわけです。これは政府の失態と言われても致し方ないのですが、政治家がそれを言っちゃおしまいよ、と思います。役人に優秀な人がいなくなったと以前、このブログで書きましたが、結局、官僚が不人気職になったことが影響したともいえそうです。不人気職にした一因は政治家にあることをよく考えてもらいたいものです。

後記
この1週間で立て続けに3人の日本人の若者と会ったのですが、その3人の共通点は日本の大学を卒業後、就職をせず、海外に飛び出してきている点です。一昔前は就職もしないでの海外は相当変わり者とされたのですが、もしかするとこれが今のトレンドになりつつあるのでしょうか?その背景は二つあり、「就職が怖い」と「日本の会社には入りたくない」のようです。前者は当事者のメンタル上の問題、後者は日本の将来への警鐘です。明らかに何らかの地殻変動が起きているような気がします。

では今日はこのぐらいで。

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2022年07月29日10:00
アメリカの4−6月度のGDPが発表になり、事前予想のプラス0.4%には程遠いマイナス0.9%と2期連続のマイナスとなりました。2四半期連続のマイナスはテクニカルリセッションとされますが、どうも高官はこれを認めたくないようです。アメリカならではの強引さも見て取れます。

今回のマイナスは一部では事前にそのような予想もありましたので驚愕という感じでありません。一方、パウエル議長は昨日のFOMCの後の記者会見で「明日のGDPは第一次集計の数字だし...」と、どんな数字が出ても後で修正があるのだから鬼が出ようが、蛇が出ようが驚かないというそぶりを見せました。イエレン財務長官も今週初めに「雇用創出ペースがやや減速する可能性が高いが、それはリセッションではないだろう。リセッションとは経済が広い範囲で弱くなることだ。現在のところ、そうした状況は目にしていない」(ブルームバーグ)と述べています。

つまり統計上の結果では「R」マークが点灯するもそれは正しくないと火消しに躍起というところに見えます。

お前はどう思うのか、と言われれば何か経済に特段影響する異変や特異なことが起きない前提ならば景気の高度はブレながらも、引き続き下げトレンドになる可能性がありますが、ドスンとは落ちない、つまり、明白な方向性が出ない踏ん切りの悪い状態に陥ることもあり得るとみています。非常に大きなピクチャーで考えるとアメリカは今日、日本が抱えるような国力の弱体化サイクルの可能性の検証も必要かもしれません。

目先の経済は数日前に述べたように資源食糧価格の高騰、国際輸送のコストと人材不足、及び労働力の3つのエレメントのうち、労働力に於いて労働生産性が下がり、雇用のミスマッチが起きていることが最大のネックだとみています。

国際輸送に関してはここにきて驚くほど改善しており、北米線は私の会社の荷物だけ見ても3か月かかっていたものが2か月以内に収まりつつあり、もう一息で通常ペースという感じになります。物量が減っていることは明らかで、これを消費が落ちているとみるのか、昨年末から年初にかけてコロナ回復後の消費を当て込んだ仕入れ量が多すぎたための調整に入っているかのどちらか、とみています。

資源価格については読みにくいのですが今回は8月初旬に開催されるOPEC+の行方ががぜん注目されます。バイデン氏がわざわざサウジアラビアで増産をお願いし、明白な返事は得られていないもののバイデン氏は感触を感じ取って帰国しています。期待通り、計画より多い増産になれば更なる原油価格の下落が期待でき、現在の90ドル台半ばが80ドル台に落ちることもあり得ます。

ただ、ロシアが欧州向け供給量を減少させているガスが今後の資源価格の最重要指標になりそうです。ガス価格は引き締まっており、本来は夏で注目度が下がるガスが原油より市場では着目されています。ガス需要がひっ迫すれば原油価格は想定ほど落ちず、ある程度の値を保つ可能性はあります。それでも旅行シーズンはあと数週間で終わりですのでガソリン需要もピークアウトとなり、さほど強気になる話でもないとみています。

とすれば最後は労働力です。これが政策的に結果として失敗した気がします。貯蓄率をみると政権が小切手をばら撒いた時に30%以上の貯蓄率になるも激しい変動ののち、21年7月に10.5%を付けた後、漸減、5月で5.4%で近年まれに見る低さです。長期の平均が8.9%ですので消費者が必要以上に使い込んでいるのが見て取れます。これを物価高に伴う一般庶民の赤字キャッシュフローとポストコロナで旅行などに消費が向いている両方ではないかとみています。

一方、この赤字キャッシュフローを埋めるために労働者はコロナ回復で高給が提示された大手のハイテク企業などに雇用先を見つけました。が、問題はその雇用先にありました。いわゆるハイテク企業はコロナ末期の旺盛な需要に対して雇用を増やしすぎたのです。ところがその後、見事に業績が収縮し、それら企業では解雇の嵐となります。つまり多くのハイテク企業やアマゾンのようなEC関連企業が継続するとみた消費欲が続かなかったわけです。併せて企業側の投資欲も減退したというのが私の見方です。

この雇用のミスマッチ解消のため、統計では相殺されたお尻の数字しか見えないものの、雇用の大幅な入れ替えが起きているとみています。賃金の上昇率も明らかにピークアウトしているため、今後は収入増のペースが落ち、物価高や消費欲を吸収できず、家計はタイトな状況が続くとみています。

一方、パウエル議長は想定通りの0.75%の利上げを実施したものの、この先についてはデータ次第とし、予想を避けています。多分、それぐらいこの先の行方が読みにくいのでしょう。「次のFOMCまで8週間あり、その間に消費者物価指数と雇用統計がそれぞれ2回あるし、それ以外の重要な経済統計の発表もあるからそれを見て判断する」と昨日述べているところからすれば春先の強気姿勢は打ち消されています。

現時点で9月の利上げ幅の予想をするのは無意味に近いのですが、私は0.50%か0.25%のどちらかになるとみています。市場は0.75%から0.50%の予想ですが、私は上述の流れから見てもっと弱気な予想としています。7−9月のGDPはプラスに転換すると思いますが、弱々しさが残るような展開を見込んでいます。

では今日はこのぐらいで。

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2022年07月28日10:00
選挙が終わり、解散がない限りこれから3年間も国政選挙がないとされる中、自民党の周辺がどうもにぎやかに感じます。臨時国会が8月3日に召集されるもわずか3日間の会期予定。その間に先日の参議院選挙を受けて参議院議長、副議長を決めること、及び安倍氏の追悼演説が見込まれています。野党はそんな会期では議論を尽くせない、と噛みついていますが、そもそも夏休み期間でコロナで封印されていた議員の外遊も増えており、お盆も近い中、現実的ではないでしょう。日本版「北戴河会議」のような状況も見て取れます。自民党を取り巻くいくつかの話題を拾ってみましょう。

まず、安倍氏の国会追悼演説で甘利氏が演説をする予定になっている件ですが、立民の西村幹事長が「国会追悼演説は他党がやるのが慣例になっており、極めて逸脱している」と述べています。西村氏もあまり人気が上がらないのは主張が下手だからでしょう。まず、「慣例」という言葉を使ったことは一切の改革や改善をしないという意味であり、本来革新派である立民がそれを言ってはおしまいよ、であります。

もう一点、過去、国会議員の追悼演説は戦後だけでも500以上あるわけですが、直近の場合でも2019年に宮川典子氏を野田聖子氏が、2020年に望月義夫氏を佐藤勉氏が、2021年には竹下亘氏を小渕優子氏が行うといった具合に自民党員を自民党員が演説するケースが増えています。これは小選挙区制導入後、遺族の意思が重視されたこともあります。よって「極めて逸脱」しているわけではありません。甘利氏は3A(安倍、麻生、甘利)と言われ、麻生氏が葬儀での弔辞を述べた点を考えればナチュラルでしょう。逆に野党で適任者はいますか?2012年、「世紀のバトン」を渡した野田佳彦氏でしょうか?

次の話題に行きましょう。石破茂氏、浜田靖一氏ら超党派4名が台湾入りしています。このところ、欧米議員が台湾入りし、蔡英文総統らと会談しています。蔡氏も降ってわいたように外交が忙しくなっています。残念なことに台湾外交は台湾での外交が主で相手国ではなかなか実現しません。9月の安倍氏国葬には台湾にも声をかけていることからどなたか高位の方が来られる可能性はあるでしょう。

ところでこの石破氏らの訪台に中国外務省はあまり吠えていないように感じます。訪台の目的はもちろん安全保障もありますが、安倍氏が築いた日台関係を補完するためともされます。このところ、さえなかった石破さんには適任かもしれません。やらせてあげたらよいでしょう。中国外務省が本当に怒り心頭なのはペロシ下院議長の訪台計画で、これには相当やきもきしているようです。明日、バイデン-習電話会談があるのでその際の話題になる可能性もありますが、ペロシ氏はアメリカNo3のポジションだけど現職閣僚でもない石破氏とは反応が違うとなればちょっと寂しい気もします。

最後に安倍氏無き自民党、領袖なき安倍派の行方です。田原総一朗氏が「激しい派閥抗争が起こる可能性がある」と指摘しています。この可能性は私もないとは言い切れないと思います。田原氏は特に触れていませんが、私は現職の閣僚と党幹部ら実権トップ組の粒が小さい点が気になっています。悪く言えば風が吹けば飛びそうな感じがするのです。大物が鎮座し、抑えを利かせる感じではありません。例えば安倍政権の時は麻生氏が圧倒的凄味で閣僚のボディガードだったし、党は二階氏がにらみを利かせました。

今の顔ぶれはどれもポピュリズム政治にどっぷりつかってきた方ばかりなので自分の強い意志で動く人は少ない気がします。その派閥のキーパーソンに急浮上しているのが菅元総理。確かに官房長官時代の菅氏が全盛期だったのはトップではない要職、影のドンというポジションがはまり役だからです。本人も大好きでしょう。とすれば無派閥の菅氏が何らかの綱引きに影響力をもらす公算はあると思います。

産経には「菅前首相に副総理起用説、本人否定的も焦点は求心力維持」とあります。副総理をやっても党内からは文句は出ないと思いますが、副総理の兼任にどの大臣ポストにするかといえばそれは岸田氏も悩むでしょう。つまり岸田氏がやりにくくなるのです。菅氏の実務処理能力は高いのですが、あの「携帯価格引き下げ」は業界からは怨嗟の声ですので菅氏は今回の内閣改造では表舞台には立たない方がよいと思います。

自民党は大きな組織になり過ぎました。若い議員にとって大臣になれる党ともいわれます。まるで甲子園に行ける高校に入るようなもので、その高校が好きで入ったわけではないのと同じなのです。駅伝だって原監督がいるから青学は強いけれど監督が代わればトップ10にも入れなくなるかもしれません。つまり影響力を持つ人と引っ張られる人の関係で組織は動くものなのです。高市さんなどはその典型でしょう。

その点からは菅氏の暗躍と同氏への影の権力集中は今後の自民党を占う意味でも重要かもしれません。

自民党は魑魅魍魎なり、という日が来るでしょう。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。
日経が「『人への投資』ソニーなど100社超連携 相互に兼業も」と報じています。世界と比べ日本企業は従業員への投資が極端に少ないとされる中で日本の大企業が連携してリスキリングを目指すというもので評価できる動きだと思います。

ただ、これをやっても目に見える改善が起きることもないだろうというのが私の予想です。

まず、日本がどれぐらい従業員にお金をかけないか、という点はGDP比率の従業員への投資額(OJTを除く)が厚労省から出ているのですが、日本はこれがざっと0.1%。これに対して欧米は2-3%水準なのでざっくり2−30倍の差があることになります。

なぜ日本企業は従業員に金をかけないのか、といえば私が感じるのは社員へのそもそもの期待度がとても内向きで事なかれ主義的な業務体型になっているのだろうという気がするのです。社員は会社が定めたルールや規範の枠組みから絶対にはみ出ることはなく、言われたことを言われたとおりにやるというスタンスはずっと昔から変わっていません。社員に個性を出されても困るのです。社畜という嫌な表現がありますが、フリーラン(自由に駆け回って育てる方法)ではなく、養鶏場で運動もさせず「しっかり産めばそれでいい」という発想です。

派遣社員制度はそもそも解雇が出来ない日本に於ける自由度の高い雇用形態として取り入れられました。批判が多いこの雇用方法を止める方法はあります。それは企業に解雇を認めることでしょう。そうすれば企業は派遣社員より一般採用を増やすはずです。しかし、それが当面望めないとすれば派遣社員には枠組みの決まったルーチン業務だけを延々とやってもらうことになります。会社の方針について社員から意見を聞くといったことは一般的ではありません。定常業務の枠組みからはみ出ることはありません。しかし、その仕事、楽しいですか?そんな訳、ないと思います。

会社経営に於いて経営をよりよくするには持てる資産の有効活用が問われますが、数多くいる社員を資産と捉えておらず、その機会も限定的です。また様々なアイディアを出してもその上司が「そんな突拍子もないことを...」といって握りつぶすかもしれません。

今回、日経が報じているのは日本を代表するような大手企業が100社単位で人を中心とした交流をすることでリスキリングを磨くというものです。リスキリングとは社員の能力開発のことでこれは世界で急速に広まっていますが、日本ではなぜかDX(デジタルトランスフォーメーション)に偏っているような気がします。いままで自分の会社を出たことがない人にとっては刺激的であろうと思いますが、私がそこまで期待をしていない理由は結局掛け声をするトップ層とコマのように動かされる社員の温度差が生まれるとみているからです。つまりやらされ感です。

一昔前は出向といえば社員にとって永遠のお別れのような感じでした。今の時代は出向は増えており、若い人から年配まで、また永久の出向というより数年間の出向も増えています。ただ、コロナ禍で雇用確保と人件費の調整的理由でも大きく増えた出向者をも踏まえれば出向命令を受けた社員はやる気をなくすだろうなと思います。またご本人も「会社の自分への評価はこんなものだから」と割り切り感も出るでしょう。もちろん、出向先での大活躍で本社に大栄転というケースもありますが、それはごく一部の例外です。

今回の報道も人への投資という立派なお題目は重要ではありますが、スキル(技術)習得という点が主体であり、「Youはなぜ仕事をするのか」という忠誠心や仕事への姿勢とは別世界です。日本人は会社への忠誠心が主要国に比して格段に低く、かといって転職も起業もするわけではない「なんとなくサラリーマン」という方が多いという統計もあります。仕事が生活のため、というフラット感がそうさせるのだと思います。一生懸命やっても普通にやっても手を抜いても給与は大差ないのです。

今週号の日経ビジネスの特集は「異端児に託す経営」。まさに今日のブログのためのような話ですが、冒頭のリードに「変化を起こそうとする異端児の芽を摘み取り、『出る杭社員』を叩きのめし、あえて凡人の集団にしてきたのではないか」と提起しています。異端児の特集は日経ビジネスでも過去何度かやっていますが、結局わたしの達観するところは会社ではそのようなシーンに於いて「異端児と傍観者」でしかなく、他の社員は美辞麗句を並べながら結局、冷たい視線を送るのです。

ならば傍観者であるその他の社員を惹起する方法を考えないといけない、これが私の思うところであり、仕事が楽しい、発見がある、異業種との出会い、学んだスキルを使いこなすなどを末端からトップまでが共有し、「前向き部署」を作るといった外科治療が私には必要だと思います。

以前提言したように例えば新入社員は全員子会社、関連会社からスタートし、頑張った者が親会社に行けるというステップも必要なのではないかと思います。

何事も改革は一歩目から、ですが、いっぺんに全部は変えられないのなら頑張る人を重用するといった明白なアメを与えるなどして10年かけて体質変換を図っていくしかなさそうな気がします。

では今日はこのぐらいで。

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私が20年以上、一度も変えたことがない考えがあります。それは「国家が成熟するほど金利は下がる」です。欧米では80年代ぐらいまで金利が10%を超えるような時はごく普通に起きていました。それが確実に下がってきているのはご承知のとおりです。過去、金利上昇局面でも2-3%ぐらいまでは上げられてもそれ以上は上がらず、その後、また金利が下がる状態になっています。

このトレンドは今回の物価高でも継続するのでしょうか?結論的にはYESと言わざるを得ません。

まず、日本がずっと低金利である理由です。先日、日銀が金利を上げられないのは日本経済が傷んでいることがある、と述べました。これとは別に長く言われてきたのが「総需要不足」です。一言で述べると買うチカラが十分になくて商品が売れなくて困っているということです。では、この買うチカラは本当にないのでしょうか?

私は欲しいものがないのだと思っています。チカラの問題ではなく、無理して消費を煽るようなものがない、これに尽きるとみています。

私が若い頃はクルマは数年で乗り換えるのが当たり前でした。なぜなら欲しくなるクルマが次々と販売され、目移りして興奮するようなドラマを演じてくれたからです。今、それはありません。私が持っているBMW X3は8年前のものですが、革張り、後部座席まであるグラスルーフ、ナビもあるし、走行距離が少ないこともあり、へたりもありません。もちろん、最新型の自動車に比べ見劣りするところは多々ありますが、どうしても新しいものでなくては困るというものでもありません。

同じことはパソコンやスマホ、電子機器にも言えるでしょう。私が今使っているこのパソコンはもう6年にもなるのです。メモリーは増設したものの日常の使用には全然問題ありません。会社のパソコンや周辺機器は定率法の減価償却をするのですが、簿価が1ドルを切っているものもいくつかあります。でも別に買い替える必要もないのでそのまま使ってます。

家の電気製品も調理道具や家電機器は全部あるし、性能に問題あるものはありません。一昨年、15年使った洗濯機と電子レンジが壊れたので買いましたが、17年目の冷蔵庫もワインクーラーも何一つ問題ありません。洋服でもファッションとして着るなら別ですが、ユニクロの服はなぜ、これほど洗っても傷まないのか、というぐらい丈夫で長年着用できてしまうのです。

欲しいものがないという傾向は北米全般、基本同じです。あるアメリカの大手家庭雑貨の上場会社は倒産の危機にありますが、圧縮陳列のこの店に何度行っても「へぇ、こんなものがあるんだ」とは思いますが、買ったことは1度か2度だと思います。店も週末ですら閑散としているのはライフスタイルが物欲からサービス欲、そして行動欲や知識欲といった形を変えたものになっているからです。

日本の場合、世界で最も早く低金利時代を迎えた理由の一つは移民政策が十分ではなかったため、国民経済の成熟度が極めて早かったというのが私の見方です。北米経済は移民こそ多いもののここに来て成熟度が日本に近くなっています。そのタイミングは概ね住宅市場が高騰した時です。日本なら1990年頃、アメリカなら2007年、カナダも英国も実質的に同じ頃でしょう。ここから経済の熟成度が増していくのです。多分、家計に於いて最大の支出である住宅購入を行い、ローンの返済期に入り、消費がインテリアなど家の中のモノに向き、それも一通り揃えば物欲は相当下落せざるを得ないと考えています。

日経の「米欧のインフレ、行く末は日本化か」という記事の一節にこうあります。「停滞リスク拭えずパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長やラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は『低インフレ(低い物価水準)』の時代は終わったとみる。そして通常時の2倍以上の大幅な利上げを競う」というものです。記事のトーンはそんなことないだろう、という私と同じポジションです。

インフレはなぜ起きるのか、その最大の理由は「消費欲」と「消費抑圧の反動」の2つが理由だと考えます。消費欲は上述のように先進国では成熟化が進みます。もう一つ、消費抑圧の反動による爆発的消費がコロナ禍で起きたわけですが、北米だけでみるともう鎮静化していると断言してよいでしょう。統計でもその傾向は見て取れますが、統計が出る前の肌感覚でもなんとなくわかるものです。モールでモノを買っているかを判断するには歩いている人がどれだけ買い物袋を持っているかとか、ラジオやメディアなどでバーゲンのCMをどれぐらいいれているかで見えるものはあります。

今、あえて物価高を演出しているものは何か、といえば労働コストだとみています。中央銀行は原油が高いからとか、輸送が滞っているといいますが、最大の理由は上がり過ぎた人件費と労働生産性の低さ。これに尽きると思います。今、私の周りの40代ぐらいの人は年収10万ドル(1000万円)が当たり前になっています。そしてその多くはその給与が当たり前だと思っています。彼らは家を買います。8000万円のローンといった金額を組むのです。その点においてキャッシュフロー的には決して余力があるわけではなく、せっせと財を成している、ということです。

が、あっさり解雇されるこちらの世界に於いて高額の住宅ローンは私からすればバンジージャンプのような気もします。一旦経済が収縮すると加速度的に経済が逆回転する可能性があり、それを踏まえれば中央銀行は利上げ判断を物価指数や失業率などの主要統計資料だけでは好きなように出来ないというのが解ではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。

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2022年07月25日10:00
カテゴリ
国際
政治一般
ジョンソン首相の辞任に伴う英国の党首選が注目されます。ジョンソン氏のような色濃い候補者がいない中で党首の絞り込み投票が5回行われ、決選投票はリシ スナーク氏とリズ トラス氏の対決となります。決選投票は党員によるオンラインと郵便投票が8月から始まり9月2日に締め切り、9月5日に公表される予定です。

さて、この二人、同じ保守党にいながら全く違う性格、水と油といってもよい争いに対して党員はどう判断するのか、そして保守党以外の国民はそれをどう見るのか、政治の向かうところを具現化するようで夏休みの課題としては最高ではないかと思います。

まず、絞り込み投票で5回全部を1位で通過したスナーク氏です。インド系英国人でゴールドマンサックスから政治家に転向、一見する限り頭は非常に切れそうです。日本の方がインド人をお見掛けするのはインド料理屋ぐらいだと思いますが、孫正義氏がインド人を重用するようにいわゆるインドエリート層は別次元のレベルにあります。バンクーバーはインド人の北米最大級のメッカですのでビジネスなどで接することも多いのですが、物事をはっきり言うタイプで極めて論理的、ポピュリズムは二の次という感じです。IT技術者にインド人が多いのも論理思考の構築ができるためで逆に言えば冷たい感じを受けるかもしれません。

氏は物価高を受けて世論が減税を望む中、供給側に原因があるインフレ下に於いて減税などすれば余計需要を喚起し、物価高を助長する」と明言、減税は物価高が収まったらやるとしました。これは上述したように極めて論理的であり、非ポピュリズムであります。が、私もこれは正しいと思います。

ただ、問題は対中国政策で何が何でも「アンチ中国」ではなく「価値や利益が保護されている分野では中国と関わるべきだ」(産経)とある点が引っかかります。つまりジョンソン首相が築いた強硬な中国政策を見直し、部分的に緩めにして取引をするというスタンスです。当然ながらこれはアメリカの反発が出ます。

事実、オーストラリアも先般の政権交代を受けて、それまでの対中国強硬姿勢から親中に偏るのではないか、と懸念されていましたが、実際に急速な貿易拡大が足元で見られます。オーストラリアから中国への資源輸出です。ということはクワッドがインドの自己中心主義でその団結力に疑問符がついていたところに「オーストラリアよ、お前もか」という感じではあります。英国が対中政策の変更をするのか、ここが最大の注目ポイントだと思います。

では対抗馬のトラス氏はどうでしょうか?外務大臣である氏の最大の特徴はジョンソン首相の政治的思想をほぼ引き継いでいる点です。一部には「新たな鉄の女」(インディペンデント紙)との声もあるそうですが、私が見る限り、首相の器ではないとみています。サッチャー女史にならぶような箔付けをインディペンダント紙がするようならば同紙のクオリティもタブロイド並みではないかと勘繰ってしまいます。要は単なる頑固でジョンソン首相の前任のメイ氏と同じタイプでしょう。

政策についてもポピュリズム一徹です。「減税はすぐやる」「法人税引き上げ計画は撤回」「4月に導入した国民健康保険料引き上げ停止」など経済の本質を十分に理解していない可能性が高いとみています。多分ですが、彼女の手腕では英国をまとめることはできないでしょう。

一方、日本の立場からすればトラス氏の方が都合はいいはずです。厳しい外交路線を貫き、TPP加盟申請に尽力しており、中国との距離もきちんと保つタイプです。

こう見ると私はスナーク氏こそがマーガレットサッチャー女史と同じ系統のタイプで彼こそ「鉄の男」だとみています。つまり一般受けは悪いというのが世間相場です。実際、下馬評でもトラス氏の方が現時点では有利と出ています。

お前はどっちが良いのか、と言われれば正直、強烈な一長一短で何とも判断しがたいところです。外交と英国保守党の体面を考えればトラス氏、英国を再生させるぐらいのビジョンを期待するならスナーク氏ですが、どちらの首相になっても野党の思うつぼだとみています。つまり、保守党政権そのものが維持できなくなるかもしれません。保守党が野党に下野することをそろそろオプションとして取り込んでおかねばならないかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。
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