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外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

外交

今日の報道には驚きを隠せませんでした。ヒズボラ戦闘員が所持するポケベルがほぼ一斉に「爆発」し、2750名もの死傷者が出たというのです。誰がどうやって爆発させたか、これを書いている段階でポツポツ情報が入り始めていますが、あくまでも推測としてポケベルにマルウェアが入り、ある時間に一斉に爆発するように仕組んだとみています。爆発の瞬間の画像を見る限り威力はさほど強いものではなくポケベルの電池を爆発させたのではないかと思います。

一部の報道では出荷段階で爆薬を仕組んでいたのではないかとされますが、2750台のポケベルすべてが爆薬装填済みだったのかと考えるとやや怪しい気もします。もしかするとモノによっては爆薬が入っていたものもあり、爆発が軽微なもの、シリアスなものが入り混じっていたのかもしれません。

たまたま私は今日の午後にイスラエルの立場から見たガザ地区問題の円卓会議にオブザーバー的参加をするので当然話題にはなってくるのでしょう。今回のポケベル爆破事件の犯行はたぶん、イスラエル、そしてその目的はヒズボラ戦闘員をあぶり出すことだったと思います。またポケベルという通信手段がなくなったことでヒズボラ戦闘員のコミュニケーションが断ち切れた点も大きいでしょう。爆薬がなくてもマルウェアで電池を爆発させることができるなら携帯電話(スマホ)はもっと大きな爆発を引き起こすわけでヒズボラ側もそれゆえに前近代的なポケベルを持たせていたとされます。

戦争の手段は我々が狭義の意味で使う肉弾戦、つまり地上戦を含む激しい「人対人」の戦いから高度、かつあらゆる手段を使ったものに変わってきています。戦略物資の輸出制限、イラン、ロシア、中国、北朝鮮など特定国への強力な貿易制限、入国制限や外国人の不動産購入制限、さらにはテロもあります。トランプ氏は短い間に2度も暗殺されかかっているし、安倍元首相は暗殺され、岸田首相にも暗殺未遂事件がありました。いかに特定のターゲットを抹消するか、007の映画顔負けの事態が今や日常的に行われているといって過言ではありません。

敵対者を作らなければよい、という発想はあります。しかし、現在進む自民党総裁選の各候補の主張を見ても面白いことが起きています。本来同じ政党仲間のはずがあのような論戦を繰り返し、それぞれの考えと主張をし続けることで候補者双方に敵対関係の意識を醸成します。保守派から中道派までその温度はバラバラ、支持層もバラバラにするのです。これは保守派にしろ中道派にしろ、将来、当選者に対する反発を生むことになり、当然、敵対者が生まれるのです。自民党が分裂の芽を生み出しているのです。

同様にトランプ氏の2度目の暗殺未遂事件は犯人がトランプ氏の対ウクライナ政策案について不満を抱いたからともされています。敵は常に存在するのです。

昨年、アメリカ、ダラスに行った際、ケネディ氏が暗殺された場所に行きました。犯人がどこからどう狙撃したか見ましたが、狙おうと思えばそんな場所は無数にあると言わざるを得ないのです。あの時、オープンカーではなければまだ犯行の可能性は低かったかもしれません。では犯人から見てターゲットが常に絶対防備されているかといえばそんな可能性はほとんどないのです。

私が恐れるのは国家元首級や戦闘相手といった犯人にとって明白なターゲットに限らず、ちょっとしたいざこざ相手を報いる手段が我々の社会にはあふれ、高度な手段も可能になってきている点です。殺人へのハードルが明らかに下がっています。チベット密教の述語である「ポア」とは嫌な奴を抹消せよとの意ですが、人間の理性のブレーキが利かなくなっている点に極めて大きな懸念が生まれています。

では現代において敵はどうしてできるのか、といえば国際関係や人間関係などがこの数十年間で大きく発展し、複雑化したからだと考えています。国際関係はグローバル化と地域や経済を通じた同盟づくりが進みました。日本が加入している各種同盟の集合を合わせていくと結局誰が友達で誰が敵かすら不明瞭になります。敵の敵は仲間ではなく敵かもしれない時代になったのです。人間関係もSNSでつながり、お互いの影響力がぶつかり合います。組織の中では常に醜い人事などの争いごとが起きています。憎しみが絶えず、その仇の取り方が問題である、ということです。

敵から守る危機管理はあるのか、と言われると正直ないかもしれないです。もしも私が人間社会から完全に離脱し無人島で孤独な人生を送れば人間という敵はいなくなるかもしれません。ですが、自然災害とか、ジャングルに潜む毒蛇や人を襲う動物が敵になるでしょう。

とすれば敵との共存という逆説的な考え方が有効なのかもしれません。人間が高度で知的である限りにおいて対話をし、一定の妥協のもと共存共栄をすることしか有効な手段は思いつかないのであります。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。
長崎市が平和記念式典でイスラエルに招待状を送らなかったとして西側主要国が式典に大使級の参加者を送らないという事態がありました。長崎市長は「不測の事態に備える」としたのですが、個人的にはその言葉には真意がないと思います。多分ですが、一線を越え一般人を数多く巻き込んだガザ攻撃を行う卑劣な行為をする国に鎮魂の行事参加はふさわしくない相手であると考えたのでしょう。

ただ長崎市はパレスチナは招待したという事実において「政治的意図はない」という主張に対して「そうですか」と理解する外交筋はほとんどないのでしょう。つまり片方に肩入れすることが政治的結果を生むのであり、長崎市が純粋に平和を祈念するのであれば両国とも呼ぶべきだった、そう思います。「不測の事態」が可能性として考えられるならできる限りの防御線を張っておく、これが平和祈念式典のようなイベントにはふさわしい判断であったと思います。

世界は以前から分断化傾向があります。最近ではグローバルサウスが力をつけてきて第三極という見方も出てきています。米中の関係が目先改善するとは思えず、世界の二大大国がにらみ合いを続ける限りにおいてきっかけがあれば分断化が促進されることは目に見えています。

特に欧米による経済制裁で苦しむ中国、ロシア、イラン、北朝鮮などは経済を廻すために国家間の連携強化は当然の対策であり、BRICSの加盟申請が急増していることもその表れの一つであります。2000年代初頭に始まったブラジル、ロシア、インド、中国を総称してBRICsと小文字のsだったものが南アフリカが加わったことで大文字のSに進化、その後、イランを含む中東諸国が続々加盟し、その波はトルコや東南アジア諸国にまで広がりを見せています。人口比や地域比でみれば西側連合を凌駕する勢いであります。

その本意はどこにあるかといえば各国各様の理由によるアメリカ嫌いだとみてます。個人的に感じるのはアメリカ主導に対する嫌悪感でしょうか?それは「自分たちも中進国として経済的な成長を遂げている」という自負の芽生えともいえるかもしれません。言い換えると経済のグローバル化が生み出した副産物であります。自分の子供が中学生ぐらいまでは従順だったのが高校になって突然反抗期を迎え、大学で一人住まいし就職する頃になれば親の顔は年に一度しか見ない話と似たようなものです。

イスラエルに対してイランの報復はいつ起きてもおかしくない状況。それに対してアメリカはイスラエルを支援するべく準備をしています。報復合戦は継続的な戦争となるわけですが、その相手は誰なのか、イラン本体なのか、ヒスボラなのか、あるいはもっと多面的な攻撃なのか作戦の手の内は見えません。しかし、それで最後の一線を超える可能性は高まるし、それがアメリカ世論にどのような影響を与えるか計り知れないのです。いかんせん、民主党出身の現大統領が指示を出す話であり、トランプ氏は「俺は責任ないし...」とほくそ笑んでいるのですから。

ではなぜこのような泥沼になっているかといえばネタニヤフ首相の策略であります。よくある手法なのですが、物事をくちゃくちゃにしてしまい、関係者をそこから抜け出せなくするやり方です。実はそっくり同じなのがゼレンスキー氏で、戦争が始まってすぐ同氏は世界に声を出し、支援を求め、ロシアがどれぐらい卑劣かを訴え続けました。そして今般ロシア領内に進撃し、成功を収めているとメッセージを送っています。

これに各国政府が乗るのか、静観するのかであります。ウクライナの場合は静観以上の何物でもないはずです。欧米は後方支援すらしないでしょう。ですが、イスラエルとなるとアメリカは支援せざるを得ません。相手はもともと経済制裁をしていたイランと実質的に舎弟であるヒスボラであり、「やる気か?」とリング外で脅しをかける構図です。

イスラエルにしろ、ウクライナにしろ戦況が新展開入りしつつある中、この二つの戦争が引き起こす世界の分断化が強烈な副作用をもたらすことはほぼ確実です。地球儀ベースでの二極化ないし多極化が起こると同時に反グローバル化が起こり、世界経済のシュリンクには要注意だと考えます。それでも商品の流通ぐらいならどうにかやりくりできますが、私が最大の懸念を持つのが基軸通貨ドルの陰です。アメリカが借金大国なのは基軸通貨ドルのおかげという話は80年代からあるのですが、経済が良好だとついその話が忘れ去られます。

(アメリカ)ー(基軸通貨)=(普通の国)という方程式は学校では習わないけれど重要な公式のはずです。

私は何度か指摘してきたと思いますが、パクスアメリカーナが引き起こした世界の地殻変動が今、表面化しつつある、これが端的な表現だと考えています。世界の動きから目を離せません。

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2024年08月02日10:00
イスラエルの敵対勢力との戦い方が変わってきているように見えます。当初の構図は対ハマスでその拠点であるガザ地区を徹底的に攻撃し、学校や病院など攻めにくい施設の地下にある組織の拠点を叩き、一定の効果を上げたものの国際世論は反イスラエルの声で盛り上がってしまいました。

一方、イスラエル北部はヒスボラによる攻撃で先日もゴラン高原のサッカー場への空爆で子供を含む犠牲者が出たことを受け、イスラエルの猛反撃が行われました。ただ、一般的には二面作戦は不利であるため、イスラエルとしては戦略変更に臨みつつあるのではと推察しています。

ガザ地区はほぼ壊滅状態といってよく、ハマスの拠点と幹部はまだ若干残っているかもしれませんが現地の勢力としては相当の衰えになっています。そこでイスラエルは既に一部の戦力を北に移し、対ヒスボラに重点を変えてきています。

一方、この数日で注目されたのが要人の暗殺や殺害であります。大きく報道されたようにハマスの最高指導者、ハニヤ氏がイランの新大統領就任式に出席後、宿泊先で暗殺されました。イスラエルは公式声明を出していませんが、シオニストの犯行とされます。シオニズムはユダヤ人国家建設思想の根源であり、一種の原理的思想と考えてよいのでしょう。問題はハニヤ氏がイラン新大統領の就任式の後、数時間でテヘラン郊外で殺害された点です。これはイランの情報当局に大穴があったとしか言いようがないのです。

私が見る限り今回の主役はイスラエル情報機関モサドがハニヤ氏の行動をほぼ完全に掌握していたとみています。ではなぜそれが起こりえたか、その可能性としてイランの情報機関の組織的分裂があった可能性が指摘されています。つまり同国の情報機関が複数に割れ、諜報部隊が分裂することで情報が錯綜しやすくなり、潜伏するモサドに漏れていた公算が高いのでしょう。

スパイ戦術は第二次大戦前に世界で極めて広く横行し、手法も高度化しました。ただ、当時から「スパイのスパイ」とか二重スパイといった「どこまで信じてよいかわからない」スパイ情報も数多くあり、逆にそれを分析する能力が本国にあったかどうかで天下分け目の合戦の勝敗が決まったりしました。日本の大本営は自らが送り出したスパイ情報の分析能力がほぼなく「お前、何言ってんの?」ぐらいで「大本営の方針はもう決まったのだ」として情報の握り潰しが頻繁に起き、それが判断の過ちにつながっていったのは周知の事実です。

イスラエルの戦略の話に戻しますが、このところ敵のキーパーソンをピンポイントで殺害してきています。7月だけでもハニヤ氏以外にヒスボラの司令官、ヒスボラの指揮官、ハマスの軍事司令官らを殺害しており、他に数名が殺害ターゲットに挙がっています。モサドは世界でも最高峰の諜報部隊ですが、昨年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃を見逃した点において極めて大きな汚点がついていました。そのため、その汚名挽回を含め、ここに来て極めて大きな成果を次々と出しているとみています。

では、キーパーソンをピンポイントで殺害することで国際世論の批判をかわし、かつ、この戦いをイスラエルの全面勝利として終わらせることができるのでしょうか?個人的にはにわかには信じられません。

ハメネイ師が報復を明言しているのでその規模と攻撃方法がどうなるか注目ですが、「目には目を...」的な発想の可能性を考えています。つまりロケットを打ち込まれればロケット弾で返すというように報復は基本的に同じ形にするケースが多くなっています。例えばアメリカと中国の経済制裁戦争でもアメリカが仕掛け、中国がお返しするという方法だし、中国人が拘束されればアメリカやカナダ人を拘束するというスタイルです。これがイランでも同じ発想だと想定すればイスラエルの要人暗殺には相当の注意が必要になってきます。

イスラエルがイランをはじめ、敵対国にスパイ網を張り巡らしているようにイランと同盟部隊も当然ながら同じようにイスラエルにスパイ網を巡らしています。そこから一定情報をもたらし、ピンポイントで攻める可能性は大いにあり、イスラエルの要人は今まで以上に注意が必要ではないかと思います。

私が恐れているのは仮にその報復戦が成功裏に終わった時、イスラエルの抑止力はなくなり、全面対決を当然のごとく推し進めるリスクです。それも早ければ8月とか9月の話です。これは大統領選を控えるアメリカにとっても頭痛の種であり、大統領選に大きな影響が出るとみています。それこそ「ほぼトラ」とか「確トラ」だった話は10月の選挙直前の世界の状況を見なければわからないという話になってきます。

昨日もバンクーバーの目抜き通りでは反イスラエルの集会が開かれ、祈りをささげるイスラム系の方と共にその周辺をどう見てもイスラム系には見えないカナダ人が反イスラエルを声高に訴えていました。同様の反戦の動きは北米各地の大学でずっと続いており、世論のイスラエルへのイメージは悪化の一途を辿っているように見えます。

先行きが懸念されます。

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イスラエルのネタニヤフ首相がアメリカ議会で演説し、ハマスに完全勝利するまで戦闘を続けると述べました。第三国での議会演説ですからその発言には通常以上の重みがあると考えるべきでしょう。イスラエルの政策を巡ってはバイデン大統領は6月に停戦にむけた3段階のロードマップを打ち出しましたが、その内容は第三国からも一定の評価があり、これで話がまとまるように見えたのですが、結局、実行に繋がっていません。

ネタニヤフ氏自身の国内での非常に難しい政権運営のかじ取りが背景にあることは事実ですが、氏自身が強い保守思想であり、首相の座を降りた瞬間に氏個人にかかる様々な嫌疑、逮捕収監の可能性を考えるとやるだけやる方が得策という考え方もあるのかもしれません。

ただ、それ以上にイスラエルという国の成り立ちと今日に至る困苦を理解しないと彼らの必死の抵抗は分かりにくいかもしれません。

いわゆる一神教の三大宗教といえばユダヤ、キリスト、イスラムであり、時代的にユダヤ教が一番古くなります。この三大宗教の共通点は旧約聖書のアブラハムを祖としている点であり、兄弟とか姉妹関係と言われてます。それゆえに双方が譲れない関係にあるもののユダヤ教徒に関してはいかんせん世界にいる人数が1400万人程度で人数的に他の二つの信者に比べ、二けた足りません。

またユダヤの国としてイスラエルが建国されたのは1948年。ユダヤ人の長い歴史とは裏腹になかなか自国を持てませんでした。よってイスラエル人にとってその意味合いは宿命を通り越した祖国防衛の塊だと言ってもよいでしょう。

ユダヤ人を「死の商人」とも称し、日本では美化された意味合いにすることもありますが、少なくとも私の周りではそういう訳ではないと思います。敢えて言うなら「えげつない」という表現がぴったりくると思います。私も長年多数のユダヤ人とお付き合いさせてもらいましたが、ビジネス感覚についていえば「がめつく」、人付き合いについては「ユニークさを強く打ち出す」であり、社会の中に上手に溶け込めない雰囲気があります。言い換えれば「社会に妥協しない」性格と言ってよいでしょう。

死の商人は裏返せば、人がやりたくないことをやってビジネスにする面でもあります。私の知るあるユダヤ人は牛や豚などから出る脂から工業製品にする事業をしていますが、彼らが築いた財産は果てしないものがあります。なぜ動物脂からそれだけの資産を形成できたかといえば動物の解体を経るビジネスは一般の人が誰もやりたくなかったので独占できたのです。さらに創業者家系のたゆまぬ投資姿勢は強烈でした。特に大きな事業になったのがバンクーバーの競馬事業と不動産賃貸事業であり、本業を起点として大グループ会社を組成していくのです。

世界に君臨するユダヤ人の政界、財界での活躍ぶりとはまさにこのような経緯を辿りながら圧倒的成功者となり、社会の中でどう思われようが強みを増していく、そういう生き方なのです。

ネタニヤフ氏がガザ地区に完全勝利するまで譲らないという思想はユダヤの魂である「信じられるのは自分だけ」という考えを地で行っているように感じるのです。そしてネタニヤフ氏は1948年にようやく得たユダヤ人の地をカラダを張って守ろうとしているわけでそこには論理も妥協も国際世論への協調もないのであります。

ただ、私が懸念しているのはイスラエルが現在対峙しているのは宗教戦争の色合いが濃いわけで仮にガザ戦闘でイスラエルが一定の成果を上げたとしてもそれで終わることはまずないだろうという点です。この戦闘が始まった時はいつもの3日戦争で終わるのかと思っていました。それは双方、それが泥沼になることが分かっていたので「お互い様」になった時点で停戦していたのです。ところが今回は暴走列車のようなブレーキが全く効かない状態に見えます。

イスラエルの敵はハマスだけではないのです。背後にはいくらでもいるしモグラたたきのようなものなのです。西側諸国が冷たい姿勢をとればとるほどイスラエルは頑なになり、祖国防衛をより意識することになるのでしょう。トランプ氏が大統領になればイスラエルには強力な追い風になりますが、ハリス氏ならばイスラエルの孤独感はより強まるでしょう。

個人的にはネタニヤフ氏はアメリカ大統領選挙の結果が出るまでは現状のスタンス、つまり敵と徹底的に対峙する姿勢を貫き、アメリカ大統領が決まった時点で大きな判断をする節目を迎えるように感じます。ただ、トランプ氏が大統領として中東政策に首を突っ込むとなればそれは中東とビジネスディールをするか徹底的な敵対関係になるか、黒白はっきりした要求を突き付けるわけですからそれはそれで予見が難しい外交だとも言えそうです。

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明日のアメリカ建国記念日を横目で見ながら「この国はどこに向かうのだろう」と思うと良きアメリカと共に歩んだあの頃が懐かしく、今のアメリカはやや遠い感じがしているのは私だけでしょうか?

11月に迫る大統領選挙において民主党側は先日の不甲斐ないバイデン氏の討論を受け、世論はバイデン交代論で湧きあがりました。本人は打ち消し、「過密な外交日程だったから」(ブルームバーグ)と言い逃れているのは頂けません。仮に本当に代替論があるなら隠密裏にやっているはずで完全に準備ができたところでそれが突如アナウンスされるような気もしますが極めて難しいところです。日程的にはもうぎりぎりで今すぐにもそれを発表しないとアウトであります。

ただ、誰が民主党候補になったにせよ、トランプ氏の追い風は確かな気がします。選挙資金においてもトランプ氏が4−6月期に集めたのが3億3100万ドル、一方のバイデン氏は2億6400万ドルで差をつけられました。更に大統領の免責特権がアメリカ最高裁で認められたことでトランプ氏には追い風となり、口止め料裁判において有罪とされたその量刑判断を最大9月18日まで延期すると発表しました。この件は既に量刑だけの問題になっていて罰金刑程度になると予想されるのでトランプ氏はうまくかわしていくだろうとみています。

選挙が進むにつれ世論調査などで状況は刻々と見えてくるのですが、いつもなら割と接戦で最後にどちらかが突き放すケースもある中、今回はバイデン氏がそのまま走るなら勝負あったり、とみています。私が非現実的ながらケネディ氏が民主党に戻ってくれば面白い対決になると予想したのはケネディ氏はアメリカでは珍しい第三極ながら一定の支持率を得ているからです。18−34歳層では22%となっていてトランプ、バイデン氏双方がそれぞれ30%台前半であることを考えると独り相撲にしては出来過ぎともいえる状況になっています。

よって私はいまだにどんでん返しの可能性はあるとみていますが、現実的にはトランプ氏のアメリカが帰ってくるのが本命だろうと考えるのが北米でビジネスをする者としての判断です。その場合、何が一番重くのしかかるか、というと経済政策と外交であります。

経済政策については貿易関税を一律10%、中国製に限り60%をシナリオに掲げています。またUSMCAについて大統領になったのち、見直す可能性があると考えています。特にメキシコに中国企業の投資が集中しており、USMCAの特例を活用するケースが多々生じており、中国製電気自動車も虎視眈々とアメリカ市場参入を狙っていることからこれをシャットアウトすべき厳しく制度見直しをするとみています。

これで困るのはアメリカへの物品が10%から60%の輸入関税でコスト増となるため、消費者はその値上がり分を甘受しなくてはならないのです。これがアメリカにスタグフレーション的なインフレを持ち込むことになり、せっかく下がり始めているアメリカの消費者物価水準がポンと跳ね上がってしまうのです。そのため、ゴールドマンサックスからはFRBが1.5%から2.0%程度を5回の利上げで対応するだろうという予想すら出ています。そうなるとハイテク株を中心に株式市場にはネガティブインパクトになります。一方、トランプ氏はパウエル議長はクビにして新議長には利下げをさせる議長を選ぶとしています。こうなると私はアメリカ経済がどうなるのか予想すらできないのです。

これに似たケースはトルコのエルドアン大統領が物価上昇率が80%を超える中、利下げをさせた異様な経済政策と同じことになります。こうなると通貨の評価引き下げしかなく、USドルの価値が1−2割下がるとみるのが正しくなります。これは米ドル建て表示のNYマーカンタイル原油や金、ビットコイン価格が跳ね上がるシナリオになります。当然ながら国家は疲弊するでしょう。

一方、外交については孤立主義と二国間協定主義を再び持ち込むはずです。その中で最注目点はウクライナ政策ですが、トランプ氏自身は明白には言わないですが、たぶん、ロシアとウクライナを無理やりディールをさせるのだろうと思います。一定条件下の東部割譲はあり得るシナリオになります。

アメリカとロシアは今は冷たい関係ですが、この100年で見ると必ずしも悪い時期ばかりではありません。世間を驚かせたのが1933年のアメリカとソ連の国交樹立でありますが、時の大統領ルーズベルトはアメリカとソ連が手を結ぶことでドイツと日本に対抗しようとする動きでした。ある部分に於いてルーズベルトとトランプ氏は共通点がないとも言えず、そうなれば外交については世界分断を促進する結果を生むでしょう。

日米安保についてもトランプ氏は極めて淡白になるとみています。アメリカ人はもともと戦争は嫌いなのです。なるべくなら自国と関係のない国への関与は下げる、このスタンスはずっと変わらずで政治的に他国にちょっかいを出すメリットがある場合のみそれをしてきました。トランプ氏は欧州の問題についても例えばNATOの負担金に関して「大西洋の向こう側」と述べています。これは重要な意味を成し、中国台湾問題は太平洋の向こうの話、ということになりかねません。

またトランプの内政、外交の手腕は既に十分研究されているはずで手の内が読まれていることも含め、トランプ氏の第一期目のようなハチャメチャぶりは期待できないとみたほうがよさそうです。

建国記念日に見る隣国アメリカは何処に向かうのでしょうか?

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ウクライナ関係のニュースが途切れることはあまりありませんが、多くの報道は戦争状況そのものであったり、それぞれの当事国の発表、更には関係諸外国の外交的施政の話であったりします。ありそうでないのが「ウクライナを支援します」と言いながら武器の支援以外は明白な支援の目的と具体的な再建計画を提示したものがまだ少ない点です。

その中で6月16−17日にスイスでウクライナの和平サミットが開催される予定で80か国以上が参加表明していますが、ロシア、中国は参加しません。バイデン大統領も参加しません。よってこのような和平サミット開催までこぎつけたのは立派ですが、ゼレンスキー氏がどう参加者に問いかけるのか注目です。引き続き一歩も引かないというスタンスを貫くならそれは和平サミットではなく、決起集会になってしまうのです。

先月のイタリアのG7財務相会談ではウクライナ支援の一環で凍結済みのロシアが持つ海外資産の有効活用について大枠合意されたと報じらています。記事を読む限り世界で凍結済みのロシア資産は約47兆円規模あり、その資金運用分をウクライナ支援に回すという風に読めます。例えば単純にそこから生み出される利息だけも年間2兆円にもなりますし、アメリカ案だとそれにレバレッジをかければ何倍にもする錬金術が可能になるのかもしれません。

この資産活用はアイディアとしては基金方式でロシア資産47兆円の原資には手をつけず、そこから生まれる期間利益=利息/収益をウクライナに回すというコンサバな発想が原点にみえます。仮に基金になる原資に手を付けると非常に難しい問題に直面するのが目に見えており、そこは避けたというのが私の理解です。

一方、プーチン大統領は「目には目を、歯には歯を」を既に発表しており、ロシアの在外資産を各国が没収するならばロシアが確保している各国の資産を没収するとしています。もちろん、規模が違うし、民間企業はロシア資産を既に損失計上している場合も多く、この点ではロシアに分はないのですが、個別で見ればそう簡単ではないのかもしれません。例えば日本はサハリンのガスプロジェクトなど宙ぶらりんのものもあるし、漁業権も水産業者にとっては死活問題になるかもしれません。

では本題の「世界はウクライナをどうしたいのか?」であります。私にはこのピクチャーが全然見えてこないのです。ウクライナを支援するという美辞麗句とは別に戦争をどう終結させ、誰がどうやってウクライナを再建させるのかについては淡泊な気がするのです。

うがった見方ですが、戦争当事者に対して第三国が支援する場合、それなりの理由があるものです。1同盟としての支援 2延焼を防ぎたい=自国への被害拡散を止めたい 3国際関係上の義務感 4 戦後を見据えた経済的便益の争奪戦に加わること、が主なものではないでしょうか?

1から3はともかく、案外4が本音であることは多くの国が隠すものです。イラクを攻めたブッシュ氏は石油利権を期待していました。ではウクライナはどうなのか、といえば私には穀倉地帯以外思い当たる節がないのです。ではウクライナの人たちは自国をどう見ているのでしょうか?例えば戦争が終わったら世界各地に避難しているウクライナの人たちは戦禍でボロボロになった自国に戻りたいと本当に思っているのか、移住先の生活を手放さないのか、ここは大きな判断になるでしょう。

ウクライナは戦争前から極端な人口減少に悩まされてきた国であり、政治的不安定さも含め、国家としてソ連からの独立後も明白なビジョンを持ち合わせていなかったというのが私の個人的見解です。世界の歴史を見れば不安定な国家は誰が政権を握るか次第で右にも左にもブレるわけですが国際世論は内政不干渉であり、何が起きようとそれを尊重しなくてはいけないのです。

つまり今回、復興のための資金プランは出来たけれど何をどう使っていくのか、その管理はどうするのか、汚職が多い同国にそのままお金を渡したらどうなるかぐらいは当然分かっているはずです。

どういう形にしろ、戦争が終結した段階でウクライナの自律回復は極めて困難ですから一種の信託統治のような形で第三国チームが国家再建を担う案が出てくるのだろうとは思います。ではその間に日本のGHQ統制期間と同じようなことをするのか、今の時代にそれが可能なのかという点も含め、より慎重にプランすべきだと考えています。個人的にはロシアと国境を接しているウクライナに対して西側諸国中心の信託統治が可能だとは思えないのです。

ウクライナの再建は相当困難が予想されますが、その中で現実的解として大農業国に仕立てるのはありなのかもしれません。また農業産品をそのまま輸出するのでは脳がないのでいわゆる第六次産業化を進めるといった経済再建はやりやすいと思います。第六次産業とは1次産品業者である農家が第二次である加工と第三次の流通を行う産業化のことで1x2x3=6次産業という名がついています。

これは一つの案ですが、国家の再建にはその国のファンダメンタルズを考えたうえでもっとも再建しやすいところから手を付け、自助努力できる勢いをつけることが大事です。移民政策をとり、人材を取り込みながら国民総生産の基礎体力をつけていくのがベストだと思います。

このようなウクライナの将来のピクチャー案がほとんど出てこない中でお金の話だけで盛り上がるのはある意味、無責任な国際世論の議論のように感じるのは私だけでしょうか?

とはいえ、早く戦争を止めること、それと合わせ、ゼレンスキー氏の身の置き方を自身が明白にしないと既に大統領の任期が切れているのに大統領をずるずるやり続けるのは国民のベクトルを考えても愚策だと思います。

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2024年05月30日10:00
オバマ政権が終わるころ、このブログで同政権への総括をしたことがありますが、株価は上昇、国内景気はリーマンショックからの回復期という特殊要因もあり、経済は概してよかったのですが、外交が散々だったと評したことがあります。オバマ氏自身の手腕の問題か、同氏の母体である民主党の体質なのか、はたまた両方だったかもしれないと思っています。

バイデン氏の第一期目は3年4か月を過ぎ、とりあえず残り8か月となっています。11月の大統領選挙で勝てば更に4年延長戦があるのですが、外交という分野だけに絞って考えるとバイデン氏もオバマ氏同様、散々だと思うのです。この「散々」は個人の受け止め方により差があると思います。また、社会がより複雑化し、情報化社会が進み、かつての手法、常識、制御が効かなくなってきた中で「良き時代の良人ぶり」でどっちつかずの八方美人的なやり方が最終的にコトを複雑化させたのではないか、という気がしてならないのです。

バイデン政権の間に起きた2つの戦争、ウクライナ問題とイスラエルのガザ侵攻に対するアメリカのスタンスはともに微妙でありました。たぶん、民主党のもつ弱者救済的な精神が中途半端さを引き出したのだろうと感じています。これはオバマ政権の時にも共通しています。

ウクライナについてはロシアを叩くなら戦争の初期に一気に攻める必要があったと思いますが、近年まれに見る地上戦でアメリカも欧州も心の準備が十分できていなかったし、誰にどう支援すべきかという枠組み作りをNATOを中心に議論したことが筋違いではなかったのか、という気がするのです。

つまり、当初西側諸国は、ロシア軍は戦線をウクライナ以外にも広げるかもしれないという憶測のもと、NATOは加盟国の防御を最重要課題とし、NATOに加盟してないウクライナをどう支援するかということと併せ、NATO加盟国に戦火の拡大があった場合に備えたわけです。これが「問題の本質の取り違い」ともとれる形になったと考えています。またゼレンスキー氏が各国を回り救いの手を求めたことがまるで被災者への募金活動的な雰囲気となり、戦略的考察が後回しになった感もあり、2年たっても一向に終わらない戦争になってしまったと考えています。その点ではゼレンスキー氏の立ち回りは政治的に見れば失敗だったような気もします。

イスラエルのガザ侵攻についてもネタニヤフ首相の怒りや恨みの気持ちはわからないでもないのですが、今のガザ侵攻のようなやり方しかなかったのか、アメリカが代案を含め、説き伏せられなかったのでしょうか?アメリカの国務長官は相当頻繁に通い詰めたし、それ以外の高官や要人も年中、イスラエルや周辺国との調整を行ってきましたが、大枠の流れはほぼ何も変わったことはありませんでした。

挙句の果てにICC(国際刑事裁判所)がネタニヤフ氏らの逮捕状を請求したと報じらています。バイデン、トランプ、ネタニヤフ氏らが怒り心頭のようで逮捕状が本当に出るのか世界が注目するわけですが、ICCのプライドからして出るような気がします。ですが、私は逮捕状が出るような外交をしたバイデン氏の手腕のなさこそが理由ではなかったのかとも取れないでしょうか?

このあたりを見るにつけ、アメリカ外交の限界なのか、バイデン外交の限界なのか判断がつきにくいところではあります。ここにきてトランプ氏と大統領候補予備選で最後まで戦ったニッキーヘイリー氏が「トランプ氏に投票する」と明言したと報じられています。様々な読みがあるようですが、私は「究極の二択ならトランプ氏のほうがまだまし」という意味だと感じています。11月の選挙まで5か月以上も残す中でヘイリー氏が明白な判断をした理由はバイデン外交はもはや地に堕ちたといいたいのではないかとみています。試験でいうF(Fail)スコアであって仮にトランプ氏が70点でもまだましということかと思います。

最後に日本にはどのような影響があるのか、一言だけ述べてみたいと思います。東アジアの安全保障についてバイデン氏は中国や北朝鮮には十分なプレッシャーが出せない、よって中国や北朝鮮からは足元を見られていると私は見ています。バイデン氏が岸田首相に「北朝鮮、どうぞどうぞ、直接外交やってください」という趣旨だったのはバイデン氏の興味も余力も体力も時間も何もないので岸田氏に頑張ってもらうしかないという意味もあるのだろうと考えています。できればついでに日本がもっと中国問題に腰を入れてよ、と言いたかったのではないかと思います。

こうなれば日本にとってもバイデン外交への期待感が下がってしまうので戦略的に考えれば次期大統領は誰がベターかという議論になってくるのかもしれません。これこそヘイリー氏の論理と同じと言われても致し方ないかもしれません。究極の選択ですが、我々には選択の自由すらないともいえます。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。
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