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外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

マーケット

「万感の思い」などお前も大げさだな、と言われるかもしれません。そうでしょう、普通の方ならたかが利下げぐらいで、と思うでしょう。しかし、この4年半ぶりの利下げにはコロナという人類史上まれに見る大激動の歴史、そしてポストコロナで想定外の物価高という副作用に対して経済学と人間の英知による処方箋でようやく平静に向けて落ち着きを取り戻しつつあるのです。そして世界で最も影響力あるアメリカが通常の2倍幅で利下げをしたのは極めて意味深いと考えています。そう考えると壮大な話であります。

人間の経済行動は基本的に平常時に平常心で判断することを前提にしています。我々が気兼ねなく消費できるのもそれは消費者が期待した通りのものが期待した範囲で入手できるという枠組みの中で行動しているからです。まぁ、一種の期待経済学。だから広告宣伝で「いつものお店がやっていて良かった」といった類のキャッチが多いわけです。この意味合いを理解することこそ重要なのです。

ところが想定外の事態が起きると人間はおおよそパニックに陥り、過剰な行動に走ります。最近では令和のコメ騒動がありましたが、かつては石油ショック、そしてコロナのマスク争奪戦もありました。パニックは必要以上に買いだめをして想定された平常時の需要をはるかに凌駕します。すると供給側サイクルが狂ってしまうことから価格や生産体制、更には人員配置やロジスティックスまで狂うわけです。令和のコメ騒動の場合は比較的軽微でしたが、コロナは全世界でそのサイクルが狂い、人々が家から出られないという究極の体験をしたのです。

その時、人間のエゴや我儘など様々な欲望が渦巻き、法外な価格でも自分の欲望を満足できればそれを得るという常識では考えれらない経済行動すら起きたわけです。これは一部の価格を論外なところまで引き上げました。ところがそれが購入できた人はごく一部でした。99%の庶民はそれぞれの国の政治的判断にゆだねるしかなく、段階的な開放は人々に喜びと同時に通常以上の反動的な消費行動に及んだわけです。

併せてアメリカやカナダでは労働者の賃上げ要求が激しくなります。卵が先か、鶏が先かの議論と同じように「物価上昇対策が先か、労働環境改善が先か」よくわからないケースもありました。BtoBの取り引きでは企業は様々な理由のもとサーチャージをつけ、実質値上げ、そしてそれを最終価格に転嫁せざるを得ないところまで追い込みます。この1年以上、テレビでは食品を中心に「今月は〇品目の値上げが予定されています」と報じ続け、それは経済状態の危機感を募らせ、煽ったわけです。ここはマスコミが反省すべき点。

ところが例えばカナダでは物価は明らかに鎮静化しています。原油価格が落ち着いていることからガソリンが1割以上安くなり、スーパーマーケットに並ぶ食品価格も明らかにコロナ前水準に近いものが並びます。また売れない商品の処分セールで5割6割引きが並んでも消費者が飛びつかない構図も見えてきています。これは今までは「焦る必要」があったのに「もう大丈夫」という安ど感が消費活動に出ているといえます。

インフレというのは消費を抑え込む効果もあるのですが、その初期には消費を促進する効果があります。「急がないともっと上がるよ」と。カナダでは8月の消費者物価指数は2.0%上昇、つまり、目標値にたどり着きました。一部報道では次回の政策決定会合では0.50%の利下げもありうるのではないか、とささやかれています。私は0.25%だと思いますが、それでもカナダは病院から退院できる状態であります。

一方、アメリカは集中治療室から一般病棟に戻ったという状態です。今後については感覚的に申し上げれば2025年までかなり頻繁に0.25%刻みの利下げが継続的に行われるとみています。もちろん、諸般の状況次第ではこの平常運転に差し支える事態もあり得るでしょう。大統領選挙の結果と来年1月に就任後にどのような政策を打ち出すか次第で状況は変わります。また2つの戦争の行方も影響するでしょうし、中国経済の行方も気になるところです。よってあくまでもサプライズがないという前提に立つなら少なくとも年内は落ち着きを取り戻し、我々が先々を予見できる状況にある、と言えるかと思います。

2020年初頭から始まったドタバタは4年半でようやく事態収拾に向かいます。今生きているすべての人にとってこの4年は忘れえぬ思いになるでしょう。そしてようやく平常に戻れるのは感謝そのものであります。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。
今日は後講釈をします。

7月11日以降、日経平均は下落を開始しました。そして月曜日の崩落はリーマンショックとかコロナの時のような明白な理由がないとされました。私は為替主犯説をとったのですが、そうであれば世界中の株価に激震が走る理由はありません。しかし対日本円と為替と株価の連動性が非常に高かったのも事実。

その間、私は北米市場を見ていたわけですが、7月以降見えたのはマグニフィセントセブンの株価の動きが今一つだったことです。正直なところ、エヌビディア祭りが派手過ぎて私がいつかは「宴のあと」と申し上げた通り、半導体がらみでネガティブな報道が出始めるとそれまでの買い一方が売りに転じます。ここで私はちょっとした見落としをしたのかもしれません。エヌビディア個別銘柄の調整局面を妥当だとみたことです。しかしどうもそれだけではなかったのです。この時期、株価は全般さえない動きとなっており、4-6月の各社決算がネガティブに反応していたのです。

お化けの正体はキャリートレードか?

キャリートレードという言葉を聞いたことがある人は案外多いと思いますが実際にどういう動きをしているのかを見ることはなかなかないでしょう。非常に簡単な例です。ドル円が160円の時1億円を借ります。借りるので為替はありません。これを全部円を売り米ドルに換え、例えばマグニフィセントセブンの株を買います。625000ドル分です。日本円の借入金利はただみたいなものですから無視します。あとはマグ7の株価が上がればよいわけです。仮に株価が上がりドル建て価値が650000ドルになり決済をするとします。ところが円が150円になっていると9750万円にしかなりません。つまりこの人は本来1億円借りてマグ7の株で25000ドル儲けたはずなのに為替で結局250万円損をするのです。

少なくともこのキャリートレードの巻き返しが雪崩のきっかけを作った可能性は大いにあるとみています。

為替主犯説

私が為替主犯説と申し上げたのはまさにこの点なのですが、では誰がこのような取引を行っているか、といえば高いアメリカの金利と低い日本の金利を利用するプロの投資家たちが好んで使う手法であります。これがキャリートレードと称するものです。1−2か月前、円は世界主要通貨で最も売られすぎているとこのブログで指摘しました。なぜ円だけが売られたかといえばこのいびつな為替取引で円を売ってドルを買うことでドルは必要以上に押し上げられ、円の価値が下がりすぎるのです。

では一体いくらぐらいの規模だったのでしょうか?ブルームバーグの調べによると7月初めのキャリートレードとみられる残高は140億ドルだったものが暴落直前で60億ドルぐらいに減っているとされます。今の為替で見れば9000億円相当の残高まで減少したということです。これを巻き返しと称するのですが、キャリートレーダーは
日銀や財務省が円相場の行き過ぎに懸念を示してる⇒円が動くぞ、ヤバい。早く持ち株を売れ⇒ドルを売って円を買いキャリーの解消⇒急激な円高を演出⇒株安
というシナリオは確かにあり得ます。もちろん、キャリートレードの巻き返しだけでは日本の株価全体をそこまで動かすほどではないのですが、「お化け」は正体がわからないところに意味がある、ということではないでしょうか?

日銀はチキン(弱虫)か?

8月7日に日銀の内田副総裁が「市場が不安定な状況で利上げはしない」と講演の一環で発言し、これが好感を呼び日経平均は目が覚めるような反転をしました。この原稿は内田副総裁が用意したとみられ、個人的発言でリップサービスだろうと考えています。市場が不安定な時に利上げは当然できないのですが、日銀としてはもう数段の利上げはしたいはずだし、事実、8日に公開された政策決定会合の主な意見を見ると段階的継続的引上げとなっており、中立金利を1%程度とみている節があります。ただ市場の極端な反応にビビったというのが正解でしょう。チキンというのはそういう意味です。海外では「永遠のハト(=弱気)、日本銀行」とも呼ばれています。

ただし、私は問題の本質は日本の金利が低すぎてしばしばキャリートレードの道具となっていることに不満があるのです。キャリートレードは今世紀に入るまではマイナーなオタクの領域だったものが日本の金融政策があまりに低位安定の金利水準を提示し続けるのでプロの投資家の間でキャリートレードがビジネスとして確立したのです。もしも日米でこれほどの金利差がなければ為替水準の大幅な変位も少なく、キャリーもしにくいはずです。当然ながら健全な投資家が慌てふためくこともなかったのです。

キャリーの残高が60億ドルというのは一面の統計で多分、その何倍もの残高があるはずです。これをより積極的に解消させるにはアメリカが断続的な利下げサイクルに入り、日本があと数段利上げすればほぼ解消するでしょう。よって日銀は市場との対話を上手にしながらも利上げ姿勢は崩さない方がよいと考えています。

お化けは消えるか?

お盆までにお化けは消えないかもしれませんが、秋にかけて更に漸減していくとみています。日本株は為替に踊らされています。それと半導体関連業種が今年前半のテーマだったこともあり、指針をなくした状態にあります。ただ、多くの輸出企業は現地化が進んでいるし、為替は先物でヘッジをしているので1−2年先まではさほど大きなリスクは出ないはずです。現地化している日系企業の場合は現地の儲けを日本に送金しないことが円安の原因の一つとされたこともあります。ただ、それも昔と今の比較であって円転しない日本企業が持つ海外の流動資産は常態化してきているのでこれが今後も影響するとは考えにくいです。

今回の世界規模の株式市場の大混乱は日銀の利上げがきっかけだった可能性はあります。そして夏休みで市場に参加するトレーダーが少なかったことも事実でしょう。「俺の夏休みを返せ」とぼやいている人もいらっしゃるのではないでしょうか?

ただ、アメリカの景気の行方という別の課題もありますので引きつづきデータや経済事象には留意が必要かと思います。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。
昨日のブログでは専門家の理由は後付け、問題の本質を極めよ、と申し上げました。それでも世界はこの8月のお化けに縮み上がっています。お前が考える本質について述べよ、と仰る方もいるでしょう。私なりの考えを述べたいと思います。

今日現在、世界ベースで抱えている大きな関心事とは何でしょうか?
ウクライナとイスラエルの2つの戦争の行方
アメリカ大統領選挙の行方
物価高の行方
日本の政局の行方
為替相場の行方

場合によっては中国経済の行方も不安材料になるかもしれません。

7-8月は夏休みで経済や社会、政治の動きは緩慢になります。ところが日々生活している我々にとってはこの2か月間の緩慢で判断が起きにくい時期の不満、不安、懸念などが時として膨張しやすくなります。不安の振幅です。歴史的に株式相場が荒れるのはこの2か月間の空白時期に生じたクラックが秋に具現化する、これが問題だったとみています。

では今回はなぜ、秋まで持ちこたえられなかったのでしょうか?トリガーは日銀の利上げかもしれません。私は植田総裁の利上げの判断は今でも悪くなかったと思っているのです。問題は為替相場にあったと思います。利上げにより為替が円安から円高に反転するのは予見できたのですが、その動きが異様な勢いだったのです。なぜ、ここまで為替が動くか、もちろん過剰反応であり、論理性はほとんどなく、モメンタムでしかないと思います。

FRBの判断ミス、これも後付的に言われていますが、私は以前から一つ指摘していたことがあります。それはFRBが重視にする統計には遅行性がある点です。統計資料として挙がってくる数字は概ね実体経済の変調後、数カ月から時としては半年、1年近くたってから数字に表れることもあります。

例えば企業の売り上げが下がり始めたとしても企業は一定期間は数字の動きを見て慎重姿勢を取ります。その上で数字が改善しない場合、手段の一つとしてレイオフの判断を下します。経営側が判断をしても実務的にはそれが行われるにはまた数週間からひと月は準備に追われるし、レイオフをしてから統計の数字に出るにはまたひと月かかるのです。つまりFRBが金科玉条としている統計は企業経営にインパクトが見えてから我慢期間を経て相当時間が経ったある一つの判断事象を捉えているのであり「とにかく古い」のであります。

経済が平常時、つまり一定高度で安定飛行している場合は一定のタイムラグは吸収できます。ところがコロナ禍で始まった利下げ、その後の激しいインフレと利上げ、そしてインフレの鎮静化とビジネスの実態は渦潮のような状態でこの4年間、何一つ安定ということがなく、新しい水準が次々と生まれてきました。FRBが判断ミスをしたとすれば乱気流下における経済活動について実態面から相当遅れた判断をした、ここに痛恨のエラーがあったとみています。

もう一つ、私の考える8月の「お化け」とは見えない不安です。個人的にはイスラエルを取り巻く問題が大きな懸念で何が起きるのか、歴史の教科書になるような事態になるのか、であります。もう1つは日本とアメリカの政局であり、共に何らかの変化が起きそうな気配がある、だけど誰もその先がわからないという不安であります。

昨日申し上げたように社会は99.9%のフォロワーにより成り立っていますが、そのフォロワーはフォローする際にいろいろ色付けするのです。今、英国で起こっている少女3人の殺害事件について事実と全く関係ないのに移民が事件を巻き起こしたと勝手なストーリーが作られ、嘘だと分かっているのに移民反対派が暴動を起こしています。つまり彼らは移民反対運動をするための理由付けが欲しかったのであり、社会への不満とストレスを爆発、発散させたかったのです。

同じような問題はアメリカの大統領選挙でも起きるかもしれないし、その点はおとなしい日本でも荒れた政局になるかもしれません。要は明日のことが分かりにくい中、人々のマインドが異様に繊細になっており、全てに過剰反応する、そういうことだと思います。

「8月のお化け」はお盆を過ぎると出ないのが通例です。私はそれを信じたいと思います。日本の株価は過剰反応ですが、為替がトリガーであり、強烈な巻き返しと個人投資家がその大きな波にのまれてしまいました。ただ、日本の株価乱高下を為替原因説だとすれば私が先週申し上げた対米ドルで140円というラインは一時期、見えそうなところまで行きました。そこを超えてまで円高が進むにはかなりハードルが高いかもしれません。

ということで私の頭にはフランクシナトラのマイウェイの歌詞にある「And now, the end is near ...」がふとよぎるのです。歌詞とは全然違う意味ですけれど。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。
2024年08月01日10:00
日銀がようやく利上げしました。上げ幅0.25%。私は市場に忖度して0.10%ぐらいの軽いジャブを入れる可能性も考えていましたが、植田総裁の記者会見からの発言はタカ派的な感じも見受けられました。様々な報道がなされているのですが、今回の重要な政策変更についていくつか気になる点があります。

1 なぜ、前夜に利上げ情報が漏れたのか?
2 なぜ、一部の記者団や専門家がサプライズだと感じているのか?
3 なぜ、利上げをネガティブにとるのか?
4 なぜ、日経平均は後場に急伸したのか?
5 金利は今後も上がるのか?
6 為替はどこまで修正されるか?

前夜に利上げ情報がリークしたのは3月の時も同じ構図だったので植田総裁か政策委員か日銀幹部が市場との水面下でのコミュニケーションを図ることでショックアブソーバー的な役目を果たそうとしたのではないかと思います。もちろん、利上げ情報がそのままリークされたわけではないと思いますが、暗示を受けての報道各社の推察的報道だと思います。個人的にはこれは以前のサプライズ感に反感があったことから日銀によるつまらない配慮で、極めて日本的な「根回し」の一種だと思います。

記事を読む限りメディアは今回の利上げを「よくやった」という感じでは捉えていません。むしろ与党あたりからの外圧で日銀はそれに負けたのではという声すら上がりそうですが、個人的には違うと思います。あくまでも私見ですが、黒田前総裁が壊した金融政策を植田総裁が元に戻しているだけだと思います。黒田氏のことを評価する声が多いのは知っていますが、私は相当評価が低く、個人的には平成の鬼平、三重野康氏と真逆ながら金融悪政の親玉ぐらいに思っています。

失われた〇年の根本理由は金融政策で飴玉となる超低金利政策を維持したことで「ムチ打ちの刑の恐怖症」に陥り、長期にわたる「ぬるま湯金融政策」をとったことは否めないのです。日本経済が世界の中で凋落した理由はバブル崩壊で体力を失ったことと同時に金利に抵抗する「筋力」も失った、ここが落とし穴だったと考えています。

そういう意味からは金融政策の早期正常化は日本経済の再浮上のきっかけと同時に将来、金融不安や大幅な景気後退があった際、伝統的手法に基づく調整機能の余力を残すことは重要なのです。さもなければ非伝統的な黒田氏が好むマニアックな手法を取らざるを得なくなり日本の金融政策だけが世界の中で特異な状況に陥ることになるのです。

株価の反応です。先週末のつぶやきで「今の日経平均37000円台はチャート的にはいかにも売られすぎで、木曜日の1300円近い暴落は日銀の政策発表分を前取りして吸収したようにも取れますので水曜日後場からは逆に落ち着く公算も出てきたようにも感じます」と申し上げました。ほぼビンゴになりました。チャート的には昨日の日経平均が1200円以上の乱高下で一応下値を確認したので目先はニュースを吸収していくこととなりそうです。

ではどこまで利上げが進むのか。これはもちろん誰もわからないですが、個人的な感覚としては今の景気状態ならあと1年で1.0%まで引き上げるのが妥当かと思います。つまりこれから1年であと3回の利上げです。

「お前はなぜそれほど利上げに肯定的なのか」と思うでしょう。海外で仕事をしていると金利と税金という2つのハードルとの戦いなのです。税金は利益にかかるわけですが、金利は借り入れがある限り必ずついて回るもの。事業ではそれを払ってでも利益をを計上するビジネスモデルこそ勝者なのです。だけど日本には金利すら払えないゾンビ会社が多すぎるのです。なので金利正常化によりしょうもない会社を一掃し、打たれ強く世界に通用する筋肉質な会社を育てる必要があるのです。

最後に為替はどこへ、ですが、金利を上げる前の論理的水準は148円と申し上げました。私は世界通貨との比較を今回の論理基準としていますが、他にも為替の論理的考察手法はいくつかあります。ただ、世界通貨比較手法は米ドルとの対比という点で他通貨からみた日本円の妥当性を探る上では有用だと思っています。今般、日銀が利上げし、アメリカが9月に利下げ方向なので当然148円のバーは円高方面にぶれます。

非常に大雑把な計算をすると148円の算定基準となるドル指数は7月初めが106程度で現在は104程度。9月の利下げを踏まえるとこの先、100程度まで下がるとみています。約6%の下落になるので148円の水準は140円に見直すのが妥当かと思います。とりあえず10月ぐらいまではここが円高基調になった場合のターゲットになるように感じます。

では今日はこのぐらいで

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7月10日ごろにピークを付けた日米株価はその後、大きく調整に入りました。日経平均の場合、42400円台から昨日の39500円台ですからざっくり2900円の下げです。比率にして6.8%。2週間での下げとしては大きいと思います。ダウは1000ドル程度の調整幅で比率にして2.4%、ナスダックも1000ドル、5.3%程度の調整でしたがこちらは一足先に立ち直りが見えます。チャートだけを見ると日経平均もダウも調整が進んでいるようにも見えます。

一方、為替についてもドル円で見れば7月10日ごろに円が最安値を付けて7円ほど円高に振れたところにあります。

マーケットを語るにあたって、まず大局として夏休みシーズンにあり、市場に買収などの企業ニュースが少なく市場参加者もやや減っていること、次に4−6月決算発表が始まるところでこれから2週間程度はその内容に一喜一憂することを想定しておかねばなりません。決算については個人的には日米ともにまちまちだろうと予想しています。

次に大統領選に向けて候補者がどのような発言をするかにより大きな影響を受けます。例えば1週間前まではトランプトレードなどと称し、氏の公約や発言をベースに銘柄を選択する動きが強まり「東高西低」(伝統銘柄が高く、ナスダックが安いこと)現象が起きましたが、バイデン氏が大統領選からの撤退を表明し、ハリス氏がその指名に確実に歩を進めていることから「西高東低」へのシフトにゆり戻しているように見えます。

3つ目に来週に迫る日米の中央銀行政策決定会合で何が語られるかが大きな焦点となります。日程はともに30日から31日ですが時差の関係上、日本が半日ほど先に発表することになります。今回の注目点は日銀が国債買い入れペースをどのようにスローダウンさせるのか、そして利上げに向けた具体的な動きがあるのか、です。

国債買い入れのスローダウンは前回の会合で既に明示されているのでそのペースがどうなるかが注目ポイントです。利上げについてはやや躊躇しているようにも見えます。ただし、9月は自民党総裁選が間近であり、自民党関係者から無言の圧力が日銀に向かうはずで動きづらいだろうとみています。一方、その次の10月30−31日まで待つとインフレが進行するリスクと金融政策正常化の勢いに乗りそこなうことになるため、かなり難しい判断になりそうです。

一方アメリカのFOMCではパウエル氏は「我々の望む方向に状況が改善していることが統計からも見て取れるので次回の会合で一定の判断を下す可能性もある」という趣旨の発表ではないかと勝手に想像しています。9月利下げは市場関係者ではほぼ織り込み済みです。インフレと雇用状況から政策金利を今ほどの高い水準に維持する理由は無くなりつつあるとみています。

とするとこれから先、2週間はネタが多く、株価、為替とも大きく動く公算はあると思います。また市場参加者が少ないということは値動きが荒くなるという意味でもあります。個人的にはチャートから見ると目先は日米とも調整完了となれば再度上昇に向かうように見えます。ただし、日本が31日に利上げないしそれに近い具体的発表があればマインド的に拒絶反応を示す可能性があり、円高も伴えば再下落の覚悟は必要です。その場合、チャート的には崩れます。一方のアメリカは比較的堅調になると予想していますが大統領選の行方が混とんとなれば市場が「がっぷり四つ」になる可能性もあります。

もう一つ、私が気になるのはイスラエルの動きで戦争が新局面に入ってきているように感じます。フーシ派との直接交戦が始まり、イスラエルは二面作戦を展開せざるを得ません。ところが国際世論はイスラエルに協力できる状況になく、盟友アメリカはバイデン氏が大統領選からの撤退を表明した以上これから来年1月までは外交の長期ビジョンが形成されにくくなります。ところがフーシ派は徹底的な争いをする姿勢を見せており、深刻な事態に陥ることもあり得ます。それでも株式市場だけは踊れるのか、ここは不安材料として掲げておきます。

投資をするにはファクターを並べる、そして大局をつかむことが大切です。ただし、個別銘柄は大局とは無関係に動くこともあり、実に奥行きが深いと思います。頭のトレーニングだと思いながら皆さん、是非とも勝ち抜いていただければと思います。

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2024年06月25日10:00
もしもあなたが巨額ファンドを自由に扱えるマネージャーだったら今、どこにどう投資するでしょうか?ファンドというのは基本的に現金で持っていることがないので「今はお休み」というのがあまりないのです。もちろん、現金が滞留するときはありますが、それはあくまでも一時的で資金を動かすことがマネージャーの仕事になります。さもなければマネージャーのポジションは途端にはく奪されるでしょう。

こういうシビアな世界の中で資金運用を考えるとき、私ならまずは地球儀ベースで今世界がどういう状況でどこに向かっているのか、これを大づかみしたうえで少しずつ焦点を絞っていくやり方になるかと思います。また巨額の資金を想定する場合、その資金受け入れ先というのは割と限られているということも考えなくてはいけません。

例えば日本の株式市場でグロース市場に上場している銘柄は企業規模が小さく、浮動株が少なかったりするものも多く、一般投資家が売り買いするだけで価格が動いてしまうものもあります。「板」に数百株単位の売買注文が値が飛びながら並んでいるとすれば5000株すら動かすのは案外大変なのです。そういう観点からすると巨額ファンドを扱うマネージャーは基本的に量を扱える市場に注力するしかない、これが基本になります。それが日欧米です。その日本でもトヨタですら、時価総額約48兆円。一方日替わりで順位が入れ替わるアメリカトップ御三家のマイクロソフト、アップル、エヌビディアの時価総額はそれぞれが530兆円前後です。10倍以上の規模があるということは売買取引額も巨額で資金運用者には極めてありがたい存在になるわけです。

こう見るとアメリカの巨大ハイテク企業が実質的に世界のマネーを吸い上げているのは運用側の理由も当然ながらあるといえそうです。ただ一般論からすると資金が集まるから企業業績が上昇するという方程式があるわけではなく、どこかで深い調整が起きることもあります。そのきっかけは恐慌に近い景気後退、戦争、国家体制や産業界の革命的変化などがあるといえます。

例えば台湾のTSMCは世界で最も注目される半導体メーカーでトヨタの時価総額の3倍以上の160兆円規模ですが、大きなリスクを背負っている会社でもあります。それはTSMCが将来アメリカと中国どちらを向いて仕事をするのか、であります。半導体のような戦略性の高い製品の場合、今のように両方にいい顔というのは政治的にも難しく、今後、強い選択を迫られるかもしれません。そのため、同社が高いコストをかけてアメリカに工場を作っているのも「顔つなぎ代」であると考えています。つまり、巨額の投資をしていますが、個人的にはアメリカで儲かる半導体事業経営ができるとは考えにくいのです。特に日進月歩の技術の中にあって工場建設は古典的なペースでしか進みません。その間、中国は同社を取り込もうと画策するでしょう。これがあるので世界を見据えた投資をしなくてはいけないと考えているのです。

世界は二分化、ないし三分化しつつあります。民主主義、権威主義、そしてグローバルサウスです。それぞれが対比語になっていないところがミソなのですが、もっとわかりやすい言い方にすると体制主流派、反体制派、新興勢力とした方がよいのかもしれません。体制主流派と反体制派の関係は共産主義発生からスタートし、形を変えながらアンチアメリカが醸成されたといえます。

特にこの傾向が強まったのはパクスアメリカーナの反動が大きいと考えています。つまり、ソ連が崩壊するも中国が台頭し、アメリカ覇権主義がそれを抑えようとする動きです。時代は前後しますが、911のテロが起きたのもアンチアメリカが世界に非常に多いということは理解する必要があります。

そしてグローバルサウスという新興勢力はパワーゲームにつきあい、どちらかの勢力図に入ることが得策ではないと考えはじめたともいえます。これが思った以上に台頭してきています。このように分極化する世界において投資は日欧米のマネーはもともとは地球規模だったものが体制主流派というパイにまで縮小するリスクはあるのだろうと考えます。例えばアメリカの国債はいつまでも様々な国が喜んで買うという常識が通じなくなるかもしれないと考えています。

現在、三極で価値のバイアスが起きにくい投資対象は金(ゴールド)や資源、農作物を含む商品、および仮想通貨であります。それ以外は政治色が非常に強くなり、投資選別の対象になると考えてよいでしょう。

ところで農林中金が米欧債で10兆円規模売却し、1.5兆円の損失を計上すると報じられています。これはよくわからないです。欧米の金利がピークに達しており、いよいよ下落場面に入る、つまり国債価格が上昇し、金利が下がる局面に入る矢先にわざわざ今売るのかな、という気がします。国債投資は安全とされたものの欧米の急激な金利政策の変化に日本の金融機関は手痛い思いをしたのですが、グローバルなマネーの動きからすると今回の売却方針で株主の理解が得られるのか気になるところです。

マネーはうろつきます。そして時として津波のように一気に押し寄せるのですが、今後は一定のリスクヘッジをすることを考えたほうが良いとみています。それぐらい世界は不安定でいつ何が起きるのかわからない、そんな恐怖感すらあるのが今日の経済であるとも言えそうです。

では今日はこのぐらいで。

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2024年05月03日10:00
円が対ドルで乱高下しています。政府日銀による2度にわたる合計8兆円規模の介入が理由とされています。日本はゴールデンウィーク中でニュースが少ない中、為替関連のニュースであふれています。いったいどう見ればよいのか、私の見方を展開してみたいと思います。

円の評価について米ドル独歩高というのがメディアが現在多く使う表現ですが、実態としては円の独歩安といってよいでしょう。対ユーロは2020年初めは110円台でしたが、今は170円、英ポンドは120円台が今は200円、韓国ウォンは0.08円台が0.11円台、中国人民元に対しても1.5円が2.2円です。しかも2020年頃から長期的にほぼ直線で円独歩安トレンドを形成しています。

では今回大規模介入したのは何のためか、といえば政界財界そして国民まで留まるところを知らない円安の行方にようやく懸念を示し始めたからでしょう。一部の専門家は150円ぐらいの時に介入しておけばよかったという声もありますが、個人的にはいつやっても同じだと思います。なぜならファンダメンタルズは何一つ変わっていないからです。

今回衝撃だったのは日銀の政策金融決定会合で植田総裁が円安が物価にもたらす影響は現状軽微という趣旨の意見を述べたことでした。これには私も即座に異論を述べましたが、日経は社説で総裁の発言について「物価情勢や政策運営の説明がやや抽象的で、すれ違いの一因となった」と批判しています。

為替は通貨量の比率というのが理論派の主張ですが、それなら110円台程度、日経均衡為替レートは23年7−9月データで133円程度にしかならず、理論派の主張からは大きく乖離します。為替は理論では交換比率が基礎にはなりますが、短期、長期の国の経済成長性など多数のマクロデータと目先の要因やファクターが絡みます。現在の円安は「アメリカの金利が高いからだろう」という説明なら対人民元でも安い円の説明がつきません。

私の考えは日本が経済成長力を落とし続けていることによる国力の問題だとみています。端的に言えば、内需を通じた通貨の需要が盛り上がらず、海外からの直接、間接投資も増えないため、通貨需要が他国に比べて低いことが理由だとみています。物価も上がらず、企業は内部留保をしっかりため込み、銀行は貸出先不足に悩んでいます。このような日本円を誰が欲しいのでしょうか?

つまり円を株式市場に上場する株の売買に見立てると日本円は欲しくないので売りなのです。理論派の通貨量の説明ならROEとかPERといった会社の価値の算出基準こそが株価の決定要因であると説明するはずですが、実際の株式市場ではそんな計算通りの動きではありません。それらは指標にはなりますが、市場は思惑のぶつかり合いなのです。

個人的には植田総裁の珍妙な発言が円を売りたい筋には絶好の支援材料になったと思います。では円安がドンドン一方的に進むのか、ここはわからないのですが、シナリオは3つあると思います。1つは円売り筋がそろそろ飽きてくること、2つ目が2021年から続く対米ドル安のトレンドが今後も似たようなペースで続くこと、3つ目はかつてのソロス氏のような通貨戦争を仕掛けてくる輩が日本政府を相手に戦いを挑む公算です。

円売りに飽きが来るか、ですが、昨日、パウエル議長が利上げはいくら何でもunlikelyと何度か明白に述べていたので日米金利差はこれ以上開かないという観点に立てば飽きが来てもおかしくありません。ただ、2つ目のシナリオである今のトレンドを続ける可能性がまだあると私が思うのは日本がどんなに立ち向かっても金利差が大きく改善するのは1−2年かかるとみるのが妥当だからです。とすれば目先を見れば引き続き円安トレンドが正しいというシナリオはあり得ると思います。

3つ目の通貨戦争を仕掛ける輩が出るかどうかです。これは政府があと数回為替介入を施すと資金的に無制限に出せるような状況にならなくなります。枯渇するわけじゃないですが、為替介入用の準備資金ではないところから捻出の必要があります。ならば、政府の連続する介入で弾切れの頃を見計らって一気に巨額の資金で仕掛ければ10円20円は動くでしょう。その戦争に勝つ輩がいれば巨額の利益を得ることも可能です。

私は日本の世論がようやくこの円安は「ヤバいぞ」と気がついてくれたことは進歩だと思います。当地カナダで日本の食材やシャンプーや美容関係の商品がいたるところでかなり安い金額で並べられていることにこの私でも喜びではなく、「マジか!」と思う日々であります。韓国の商品よりも安い日本製では話にならないでしょう。

では今日はこのぐらいで

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また明日お会いしましょう。
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