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外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

2015年09月

先日、翁長雄志沖縄県知事が国連の人権理事会で名護市辺野古に移設を進める米軍基地について強い懸念を表明しました。日本政府はこの夏、工事を一か月間止め、菅官房長官自らがその先頭に立ち、翁長知事と会談を重ねましたが、平行線のままで終わり、政府と沖縄県知事の確執は決定的な状態になっています。

非常に悩ましく思います。

在日米軍基地は北海道から沖縄まで各地に存在し、東京周辺でも横須賀、座間、立川、更には麻布ヘリポートなどというものもあり、見方によっては沖縄ばかりに集中しているとも言いがたいところもあります。東アジアに於ける日本の国防を見ると対ロシア、朝鮮半島、中国がその防御対象となりますが、特に東シナ海は中国海軍が太平洋に出ようとするのを防ぐ重要な生命線となります。更に中国は東シナ海の微妙な位置でガス田の開発を進め、尖閣についても最近は話題になりませんが、相変わらず高いレベルの「来船」を保っています。

つまり、日本の自衛、国防という観点からすると沖縄は戦略的位置であることに疑う余地はありません。国防の役割を他県に移しにくいという宿命がそこにあります。そしてその防衛は日米地位協定に基づき、米軍と共に安全保障を担うことになります。

翁長知事の主張はなぜ、沖縄だけが苦しめられなくてはいけないのか、ということでありますが、日本政府も米軍も沖縄に嫌がらせをしているわけではなく、重要な戦略的要素がある故であります。そんな中、翁長知事が国連に先立って行われたシンポジウムでの発言が気になります。「沖縄が独自の言語、文化を持つ独立国だった点を説明し、1879年に日本の一部となった琉球処分や、戦後の米軍基地建設など、『自己決定権が侵害された』歴史への理解を求めた」(毎日新聞)の一説であります。

翁長知事のこの発言はいわゆる民族問題を明白に提示するものであり、民族的差別観を持って日本国政府との対峙を進める戦略のようにも思えます。沖縄を「琉球民族」と称する説もありますが、学術的には明白になっていないと理解しています。それをあえて区別化し、先住民的地位の主張をするとなるとほぼ単一民族日本に於いて歴史上あまり例をみない問題に展開することになります。

日本で民族問題が起きるとそれに悩む中国はほくそ笑むし、その不和に乗じて中国が沖縄に接近することは大いにあり得るでしょう。事実、知事は4月に李克強首相と面談しています。その点からすれば翁長知事の発言は極めて慎重に検討、対応する必要があります。カナダやアメリカでは先住民の権利を尊重する姿勢が高じて今では「腫れ物に触る」ような状態になっていることは正直、国家の統一感に極めて異質な空気を作り上げています。

逆説的な論理になりますが、沖縄を満足させるには米軍が退去し、日本の自衛隊ががっちりそこを抑え、守るというシナリオになりますが本当にそれを望んでいるのでしょうか?それで本当に守れるのでしょうか?

知事の民族的地位の利用はふさわしくないアプローチであるとともに歴史に遺恨を残します。知事は徹底抗戦を考えているようですが、法的に勝ち取るのはなかなか難しいように思えます。米軍で悩んでいるのは沖縄の人たちだけではありません。そこは理解して頂かねばならないでしょう。

もう一つ、不動産を専門とする者として一言付け加えると「住むところは個人の選択」であります。これを言うと10中8,9の方はなんで俺が動かなくてはならないのだ、とおっしゃると思います。北米的なドライな見方と言われるかもしれませんが、嫌なところで我慢するなら新天地に動くのはその人の人生をよりハッピーにしないでしょうか?

非常に難しいテーマでありますが、対話を通じて少しずつでも前進していくことが重要でしょう。政府と沖縄の間に立つ裁定人の選定というアプローチも考えた方がよさそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
米中首脳会談は予想通りほとんど成果がない形で推移しました。私は今回の習近平国家主席の訪米の目的は「存在感」の誇示であってアメリカと一定の和解なり折衷なり価値ある共同声明なりをするつもりは全くなかったと考えていました。事実そのように展開したわけです。

それでもアメリカがぐっとこらえているのは中国という国土、人口、政治力などそのサイズを無視できないからであり、今、力で押し切れるものではないからであります。例えばこれがもっと小国であれば経済制裁をすぐに実施し、身動きが取れない状態にします。仲直りしたイランではその日、国中が歓喜の渦となっていました。同じことはキューバも言えるでしょう。長い制裁で「近くにある遠い隣国」の関係を維持してきた同国にとってアメリカとの国交回復は極めて大きな支援材料となるのです。今だ制裁を受け続けるロシア、北朝鮮などは厳しい状況を余儀なくさせられています。

戦前の日本への制裁も含め、アメリカが制裁を実施している国、した国はそのパワーで圧倒的に相手国を抑えることが出来るという比較優位の立場に立っています。その多くは経済力であるという点に注目したいと思います。

日本は戦前、モノを海外から購入することがほぼ不可能になりました。それ故、戦後直後、日本の食料自給率は実に100%になっています。これは日本が敗戦を選択した背景の一つともいえます。つまり国民生活と経済活動の疲弊であります。今、イランがアメリカとの核を取り巻く合意に至ったのは石油を輸出できず、国内経済が疲弊したからです。あのプーチン大統領をウクライナ問題でグッと締め付けることが出来たのはロシアは経済が下降気味だった上に1億4000万人強の国家規模で厳しい気象条件の国だったからです。食料を始め、外国からのモノに頼らなくてはならないゆえにアメリカには比較優位があると判断したからでありましょう。

国家と国家の争いの原因はある日突然始まるのではありません。争いの原因に対して双方が努力しても譲歩できず、物理的な紛争を具現化しても致し方ないところまで行き着いた結果です。多くは宗教的背景やイデオロギーでしょうか?そしてその制裁の手段はかつては武力でしたが今はもっと効果のある経済制裁が主力となっています。なぜなら経済制裁は武力行使よりもっと広くその国家全般に影響が行き渡るため考え方次第では軍人と軍人の争いである戦争よりたちが悪いとも言えるのです。

そのような背景を考えると米中首脳会議がなぜ、平行線で終わったのかお分かりいただけると思います。アメリカはどれだけ外交を通じて相手国家を愚弄してもiPhoneを売り、スターバックスやマクドナルドが展開される中国に経済制裁など恐れ多くてできないのであります。つまり、比較優位の立場に立っていないのであります。

ではかつての二大大国の関係、ソ連とアメリカの場合はどうだったのでしょうか?世界を二大陣営に分け、双方の経済関係が疎遠になっても双方陣営は譲らない状況を長く続けることが出来ました。理由は、極論すれば当時は地球が二大陣営により半分の経済規模であっても十分やっていけたからです。ところがグローバル化が進み、地球規模の経済がメジャメントとなった以上、人口3億人で18兆ドル近いGDPのアメリカにおいて世界人口の18%を占める中国とはどうしても喧嘩できない関係になったと言えるのです。

両国間にとって戦争も出来ない、経済制裁も出来ない、だけどイデオロギーも違う中で双方が帰着点を見出すのは難しいでしょう。どちらかが経済的に失速するか、クーデターなりの内政問題が起きるなど自国の内部崩壊がない限り厳しいと思います。

しかし、VWがつまづいただけでドイツ経済云々ということすら言われるぐらいですから世の中、何が起きるか分かりません。少なくとも米中という大国に挟まれた日本がその存在感をどう高めるか、戦略的にそして、賢くその道を選んでいかねばならないでしょう。日本が日本としての明白なるポリシーをきちんと外に発信しないと両国間に埋没することになってしまいます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
2015年09月28日10:00
カテゴリ
日本経済
経営
シャープの経営についてはこのブログで折をみて取り上げてきました。もう書くことはないだろうと思わせないのがこの会社の特徴で、突っ込みどころが実に多い会社であります。ここにきて再び動きが出てきましたのでアップデートしていきたいと思います。

まず、4-9月の半期決算見込みですが、日経によると当初の100億円の黒字見込みから300億円程度の赤字に転落するだろうと予想されています。まだ9月が終わっていないのでこの数字は当然動く可能性が高いのですが、厳しい数字になるのは間違いないでしょう。通期の営業損益ベースで同社は800億円の黒字を達成することが銀行団との「握り」になっています。

銀行と「杯」を交わしたわけですから800億黒字が達成できないという言葉は絶対にありえないのであります。(日本の銀行は本当に怖いですから。)要するに本業で稼げないのなら持てる資産を売却させ、会社を解体しようが、骨抜きにしようが貸した金を回収することに全力投球します。この時期に本社売却に始まる固定資産の流動化は3月までに目標が達成できない可能性が既に想定されており、不動産市況が比較的良好な今、処分に走る、という流れかと思います。

分社化して部門ごとの流動性を高めるというプランも銀行の思うつぼだったのですが、その中で現時点で価値的にボリュームがある液晶事業の行方に注目が集まっています。

液晶を通じた事業も半期ベースの予想では黒字化確保が難しいと見込まれています。理由は中国市場のスマホ向け中小液晶が競争激化と伸び悩みとなっているためであります。そのため、液晶事業は売却ないし、第三者との合弁が検討されています。その相手が台湾の鴻海精密工業か日本の産業革新機構であります。鴻海ならばアップルとの連携が取りやすくなる半面、技術の海外流出などが懸念されます。一方、産業革新機構はジャパンディスプレーとの関係がありますので独禁法に引っかかる可能性がないとは言い切れません。

どちらも一長一短ですが、今のところ鴻海側のディールを進めているように見えます。

同社の液晶部門ですが昨年と今年の第一四半期の数字で見ると昨年は21億の利益を計上していたのですが、今年は137億の赤字に転落していることが非常に大きく響いています。ただ、それ以外もセグメント別でみてもわずかな黒字部門とその額に対して多額の赤字部門が目につくというアンバランスさとなっており、会社の組織がもはや維持できていないように見受けられます。

既に3500人規模の希望退職募集に対してほぼ集まりつつあるとされる中で組織を切り刻んだ経営によりシャープの原型はほぼとどめない状態になりつつあるのではないでしょうか?よって同社の場合、液晶部門の売却なり合弁なりが決定した時点で残り部門の再生にどう取り組むか、これにかかってきます。

個人的には清算会社との分離を行い、その時点で現経営陣は退任し、社員がフレッシュな気持ちで再度チャレンジする風土を作らざるを得ない気がします。同社の経営再建に伴うごたごたは長すぎ、社員は完全に疲弊状態であります。つまり、シャープの再建は社員のやる気の起こさせ方にかかっているとみてよいでしょう。負のサイクルの主である高橋社長が16年3月までにそこまでリストラクチャリングすれば一旦は会社規模は小さくなりますが、やり直しの道筋を立てることは可能だろうと思います。

経営再建中の企業における社員のマインドが如何に下がっているか、それはそういう組織にいた人ではないと分からないでしょう。個人ベースで頑張ろうとしても周りがネガティブモードだともはや立ち直れなくなってしまうのです。そういう意味でそこまで壊してしまった経営者の責任はやはり相当重いと言わざるを得ないでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
マイナンバー制度が導入されるまでもはや、時間の問題となりました。ただ、実際にどのようにそれがワークするのか、持ってみないと分からない、使ってみないと分からない部分もあるでしょう。1-2年の間に次々と問題が浮かび上がるとみています。しかしながら、現状ではマイナンバー制度に過大な期待があると同時にシステム上の負荷もどんどんかかるようになるのが気になります。

世の中、システムの導入時には必ず、何度かつまづくものでそれが心配なところであります。

さて、その中で普通の被雇用者が気にしなくてはいけないのが副収入と副業であります。マイナンバー制度があると企業側に給与以外の収入があると社会保険料や税額が変化するため、判別可能となってしまいます。この場合、一番引っかかるのが副業なのですが、これがひょっとすると社会問題化する可能性があります。

まず、企業は副業を禁じています。禁止する理由は明白ではありません。本業がおろそかになるとか、就労時間のフレキシビリティが無くなるとか、そんなの当たり前だ、といった精神論的なものすらあるのですが、法律で禁じているわけではありません。いわゆる会社のルールであります。

では、会社は個人をどこまで拘束できるかといえば就労時間までであって、それ以外の時間はその個人のプライバシーであり、ずかずかと個人の時間に入り込むわけにはいきません。よって、副業禁止と言われても副業をする人も当然いるわけです。よく女性の夜のアルバイトが挙げられますが、男性でも専門知識や能力を利用して週末のバイトをする人もいるでしょう。平日のバイトもありだと思います。外国人や高齢者が増えてきているので1時間、2時間の通訳や介護手伝いなどの需要もあるかもしれません。

特に企業が残業を減らす努力をするようになってから時間を持て余す人も出てきています。また、ワークシェアリングという発想もあるし、ユニクロは今後、一部で週休3日を始めるわけです。3日の休みをただぼんやりと過ごせ、という意味だとしたらとんでもない発想です。生かせる知識、能力を思いっきり活用する為でしょう。ましてや20代、30代のうちなら一日12時間働くぐらいの意気込みが欲しいわけで本業にチカラが入らなくなるから副業禁止というのは昭和の時代の廃れた発想であります。

マイナンバー制度が引き起こすであろう問題点はこの副業が会社にばれる、あるいは副業、副収入が会社に知られることが個人のプライバシーを侵害する法律違反とならないか、という点であります。

私は北米という副業は当たり前のところにいますが、面接の際、あまり副業のことを聞かないようにしています。それが理由で採用判断が変われば「差別」されたとして訴えられる可能性があるからです。結婚しているかどうかも聞けないのに副業を聞くのもタブーでしょう。

多分ですが、日本でも誰か必ず訴えを起こす事態が生じると思います。その際の判決の行方次第ではマイナンバー制度に大きな瑕疵が生じるということになります。その場合の修正は大変だろうと思います。

ただ、簡単に解決する方法として確定申告を選択制にさせてみたらどうでしょうか?副業や副収入がある人は確定申告を選択し、企業には収入の情報が入らないようにします。そうすればプライバシーは保つことが可能になります。

不動産収入や株式や為替などを通じた投資収入がある人はかなりいると思います。時としてサラリーより稼ぐケースもあるでしょう。それがその人の勤務と何ら関係なく、勤務態度や能力が変わるわけでもなければ問題ないわけです。なのに人事部が「こいつは副収入が多い」と感情的になって人事異動をさせた場合、訴訟対象になり得ます。そしてその場合、企業は敗訴するでしょう。ならば、知らぬが仏、ということではないでしょうか?

今日は副業や副収入がもたらすであろうマイナンバー制度の弊害をフォーカスしましたがたぶん、びっくりするほど問題が出てくるはずです。政府はその対応で来年あたりは大わらわかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
国交省が先日発表した15年7月1日時点での基準地価は想定通り東京、大阪、名古屋の三大商業地が2.3%上昇(14年は1.7%上昇)、住宅地が0.4%上昇(14年は0.5%上昇)と堅調な動きを見せています。これはほぼ2年ぐらい前から想定していた動きであります。また、地方都市も新幹線効果の金沢を始め、仙台や福岡でも上昇しており、いわゆる波及効果が見えてきています。

今日はこの数字をどう読み解くか、考えてみたいと思います。

まず、堅調なのは住宅ではなくて商業地であることに注目すべきでしょう。商業地の地価はそこに入るテナントがどれだけの収益をあげられるかが賃料に反映し、結果として土地の価値につながります。つまり、人が多く集まり、お金を落としてくれる場所がキーであります。ですので東京は明治屋銀座ビル、大阪はりそな心斎橋ビルが上昇率トップに躍り出るわけです。両地ともショッピングのキーステーションのようなものでしょう。

不動産は相対取引です。よって欲しいという人がいてこそ、相場が成り立ち、そこから不動産価値が類推されます。また、近年の商業ビル、オフィスビルは物件が大型化すると同時に価格も上昇しているため、一企業がポンと購入できる状況にありません。その多くの取引はREITやファンド、機関投資家となります。REITは多くの投資家がお金を出し合って資金プールし、物件を購入するわけですから、リターンの成果が全てになります。銀座や心斎橋に不動産を持ちたいというエゴは基本的に出ません。

REITは概ね、5割が投資家からの資本、5割を借り入れで賄い、賃料などの収入からコストやREITのマネージメントフィーを引いた後、投資家に分配します。その際、どれだけのリターンが確保されるかによってREITの評価は大きく変わってきます。リターンだけで言うと実は大都市圏の物件は既に高騰してしまっており、地方物件に分があります。

地方物件の場合、不動産の相対的価格が安いことと一等地であればテナントが埋まっており、ある程度安定したリターンを確保できるという旨みがあります。一方、リスクとしては物件の需給が少なく、いざ売却するにあたって売りたくても売れないという問題を抱えやすい弱みを持っています。

いずれにせよ、商業不動産はそこからの収益が不動産価値を決定づける大きな要素となります。一方、住宅地の場合には住みたい人がいての話です。住宅地でも投資として考えるなら賃借人がそれに見合う賃料を払うか、引く手あまたの人気エリアで希少価値がある土地でない限り住宅地の不動産価値が突然高騰することはありません。

言い換えれば住宅地は純粋にそのエリアに対する需給関係で決まるため、商業地の不動産価格上昇が必ずしも住宅街の不動産価格上昇を引き起こすわけではないのです。

特に日本の居住トレンドは戸建てからマンションに転じています。マンションは狭い土地に高層の建物を建てるため、土地に対する需要は極めて小さいものになります。(相続税対策ではそれの方がメリットであるため、余計にマンションの引き合いが強まります。)

こう考えると基本的には商業不動産は一般的な景気、訪日外国人、外国からの投資マネーの流入による影響を受けますが、住宅地は人口政策、人気度、安全度、便利度などが尺度になりながらも景気の波による振れ幅は小さくなります。

今後数十年の住宅地のトレンドを考えるにあたり、健全な一定水準の上昇を維持させるために思い当たることは二つしかありません。一つは移民受け入れ政策、もう一つは相続税の廃止であります。移民受け入れでもいわゆる高度技能者、マネージメントレベルなどへの移民制約や一定の資産所有要件をつけると移民の資産水準は間違いなく上がり、不動産需要は上昇します。

また、相続税は今や、先進国では撤廃するのが流れとなりつつあり、日本は逆行しています。個人的にはこれを撤廃すると宅地が建売業者の小さく切り分けた安売り物件の対象にならず、価値を維持する効果も生まれます。

もっともその両方の案はまずもって日本で受け入れらえることもないでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
見事予想通りに「経済重視の安倍首相」のスタンスを見せました。安保関連法案を連休前に通し、5連休でゴルフもしてリフレッシュ、気持ちを切り替えての初日に「新三本の矢」を放ちました。しかし、これはマスコミからあまり大きく取り上げられていない気がします。多分ですが、新鮮味がないのだろうと思います。

新しい三本とは「一億総活躍社会」と銘打って
希望を生み出す強い経済 (GDP600兆円を目指す)
夢をつぐむ子育て支援 (希望出生率1.8)
安心につながる社会保障 (介護離職ゼロの実現)

であります。ただ、どれも今一つ漠然としている上にアベノミクス三本目の矢に内包されている内容もあり、そちらはどうなのか、という疑問も当然出てくるでしょう。初めの三本はもはや放ってしまったから新しい矢ということならば的には何本当たったのでしょうか?特にGDP600兆円はいつまでに達成するという目標期限がないのです。民間企業ならしろまる年までに売り上げしろまる円という具合に必ず時期を明示するものです。

GDPは15年7-9月期で名目がほぼ500兆円、実質が530兆円です。内閣府試算によると2020年から21年にかけて実質2%、名目3%の成長率で600兆円に届くようです。しかしアベノミクスブームで久々に景気回復を実感した2013年でさえ実質2.1%だったことを考えればこの計画はこのままでは絵に描いた餅と言われてしまいます。

例えば勢いの続く訪日外国人客。しかし、もはや日本で受け入れる器がないと言ってもよいでしょう。ホテルが足りません。分かりやすい例えで言うとどれだけ流行っているように見えるレストランでも席数が決まっている以上、売り上げには限界があるのと同様、今の日本では来年以降これ以上の人を受け入れるのは無理ということであります。

では、仮に既存のホテルが旺盛な外国からの需要に対して大幅値上げを断行したとします。とすれば日本のサラリーマンは出張時に何処に泊まるのでしょうか?最近、カプセルホテルが再びオープンしていますが、そんなところに追いやられてしまうのでしょうか?私は下手をしたら外国人向けに緩和した日本向け査証をもう一度厳しくせざるを得ない禁じ手すら絶対にないとは言えなくなる気がします。要はバランスが非常に悪いのです。

相続税の税制でもそうです。東京の中古マンションがこの1年で10%以上も値上がりしているその理由は相続税を減らすため土地部分が少ないマンションを購入する節税プランを高齢者の方がせっせと実行しているからです。その結果、住宅地は虫食いの様に空き地が出来始めています。国交省が主管する都市計画と国税のポリシーがかみ合っていないので奇妙な街が生まれようとしているのです。これが本当に豊かな国づくりに繋がるのでしょうか?

今回の新三本の矢が陳腐化したように感じるのは既存の問題点の焼き直し程度にとどまっているからでありましょう。圧倒的なインパクトがあるものではありません。如何にも小手先のプランという感じがします。同様だったのが財務省が試みた消費税還付のポイント制度でした。

なぜこういう傾向が続くのか、と考えた時、役人は作業に追われていて余裕をもって大所高所からモノをじっくり考えることが出来ないのではないかと思います。情報化、グローバル化で外交も内政もあまりにも多くのことが起きており、それをこなすのが精いっぱいなのではないかと思います。

これは役人に限らず、一般サラリーマンの方ももしかしたらリタイアされた方でも同じかもしれません。情報化が後押しして今まで以上に周りで刺激的なことが起きているということなのでしょう。それをマスコミが更に煽ります。一連のオリンピック問題でも見方次第ではやっつけ仕事的な感じがなかったとは言い切れません。

今さらと言われるかもしれませんが、日本の縦割り行政をもう一度仕切り直す方が三本の矢よりも効果的な気がします。構造的改革とは行政そのものにあります。また、役人は「国家の為に」という気持ちが時として強すぎて民間とのコラボがうまくいかない時があります。双方の良さを持ち寄りながらプロジェクトを進めるPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)をもっと前面に出すなど行政側のフレキシビリティがもう少し欲しいところです。

個人的には今さら新しい矢を放つのではなく、もっと違うアイディアを打ち出してもらいたかったと思っています。そうは言っても発表してしまったのですから成果ある具体性を持った形に仕上げてもらいたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。
2015年09月24日10:00
習近平国家主席がアメリカ入りしています。現在シアトルで主にビジネスを中心とした日程をこなしていますが、24日にワシントン入りし、いよいよ政治的日程に入っていきます。昨今の中国を取り巻く案件は非常に多く、今回の米中首脳会議でどのように議論され、落としどころを見つけていくのか注目されます。

シアトルではボーイング社とのディールが目につきました。同社から300機購入すると同時に中国に合弁で工場を作ることを決めるなど相変わらずスケールの大きな取引が目立ちます。政治的交渉の前に習近平国家主席自ら爆買いを進めることで交渉をしやすくする効果は多少なりともあるでしょう。

案件は山積しています。南シナ海の埋め立て問題、サイバー攻撃問題、人権問題、経済や為替、株式問題、在米の汚職官僚引き渡し問題、AIIBなどなど相当の時間とエネルギーを費やさないと一定の成果は出ないものばかりです。しかし、これら問題を事前に中国で調整してきたのはライス大統領補佐官であります。彼女はどちらかというと中国にひいき目な感じがあり、これも会談の流れをある程度色付けするのではないでしょうか?

習近平国家主席の性格や今の立場を考えればアメリカと各種問題でそう簡単に合意するとは思えません。もともと強気な論調が目立ち、折衷なり、軌道修正をあまりしてこないタイプですからオバマ大統領がどう議論を吹っかけても平行線で終わるような気がします。むしろ、レームダックのオバマ大統領としては「言いたいことは言った」ぐらいの「成果」しか上げられない可能性が高いのではないでしょうか?

一方の習近平国家主席が期待するアメリカ訪問の成果ですが、一義的には「存在感」でありましょう。アメリカ人の好き嫌いにかかわらず、中国の存在は政治、経済、社会に強く影響するということをアピールすることだろうと思います。折しもサンフランシスコで慰安婦像建立が決定しましたが、先日の公聴会の様子をビデオで見ていても韓国側のパワーではなく中華系の力で圧倒したという感じがいたしました。中国系の市長は人権を盾に初めから建立ありき、のトーンがありありと見えていました。(ならばサンフランシスコに中国の人権問題をテーマにする像を建立するプランを立てたらどうなるのか、と思いましたが。)

昨今の上海株式市場での騒動が世界に波及したことは中国からすれば「ほら見ろ、中国の世界に与える影響は果てしなく大きい。だからこそ、世界は中国の存在を改めて認識するはずだ」ぐらいの議論展開は平気でしてくるでしょう。既に欧州やオーストラリアは経済的便益から中国サマサマであり、足を向けて寝られないでしょう。ですが、これでは世界のパワーバランスが崩れてしまいます。

地球上の人口70億に対して中国の13億人は確かに大きいですが、全体の18%しか占めないという見方もできます。18%のバランスで考えれば、一国としての人口が大きく共産党一党体制を敷く中国であっても中華思想に基づく拡張主義で好き勝手にしてよい理由はないのであります。経済的には確かに過去10数年、中国の存在は大きく、グローバル化の流れの中で大きな役割を果たしました。しかし、一人っ子政策の歪、更には都市部での少子化はこの国の最大のテーマであり、人件費が上がる中国がかつてのサクセスストーリーを延々と描くことはできないでしょう。

アメリカに期待するのはこの拡大主義をどう抑え、世界の道徳観をシェアできるように説くことでしょう。すぐさまの効果は期待していませんが、世の中は必ず変化するという前提に立てば中国のモザイクは他の国のモザイクと同様同じ大きさであるべきではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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