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<羽生結弦を語ろう(7)>俳優・石坂浩二「上杉謙信が目指した精神表現」「見るたびに完成度が上がる」

[ 2022年2月9日 07:30 ]

インタビューに答える石坂浩二
Photo By スポニチ

第7回は1969年のNHK大河ドラマ「天と地と」で戦国武将・上杉謙信を演じた、俳優・石坂浩二(80)。羽生はあす10日のフリーで同ドラマの楽曲で舞う。4回転半に対する恐怖心を克服しようとする姿を、謙信と重ね合わせた。

羽生さんが「天と地と」を披露した20年の全日本選手権を見ましたし、昨年の全日本選手権の演技も見ました。音楽との一体感が、さらに増したなと感じました。我々は芝居をしている時、演じている自分と、それをコントロールしているもう一人の自分がいます。昨年の全日本は、羽生さんをコントロールしているもう一人の自分が、ゆったりとしていたんじゃないかな。

初めて羽生さんを見たのは、ジュニアの頃だったと思います。「細いな」という印象を持ったのを記憶しています。今もその印象はそれほど変わってはいないのですが、よりしなやかになりましたよね。どこにあれだけの力があるのか。本当に素晴らしいと思います。

「天と地と」の曲がフィギュアスケートで聞けるなんて、考えてもいませんでした。昨季、羽生さんが演じると聞いた時はうれしかったですね。この曲は、そんなにテンポがあるわけじゃないんですよ。大河ドラマのオープニングでは、演出の岡崎栄さんが映像を効果的につなげるのに苦労していたくらい、難しい曲なんです。ですから、あの曲で滑るのはたいしたもんだな、と思います。

私が上杉謙信を演じたのは、今の羽生さんと同じ27歳の時。当時の私は、自分の今後が大きく分かれるような気がしていました。役者として上杉謙信という人間を表現するんだ、上杉謙信とはこういう人なんだ、というのを見ていただこうと思っていました。

羽生さんは上杉謙信を演じると同時に、上杉謙信が目指した精神をも表現しようとしているように映ります。羽生さんが成功を目指している4回転半ジャンプは、絶対に怖いと思います。上杉謙信も、恐怖心にかられたことはあるはずです。そこを乗り越えるため、毘沙門天(びしゃもんてん)にいかに尽くしているかということを自信に変えたのではないでしょうか。それが、羽生さんの場合は日頃の鍛錬なのでしょうね。

羽生さんの演技は、見るたびに完成度が上がっていきます。北京五輪で4回転半ジャンプを跳ばないのは、本人は望んでいないのでしょう。そう考えると、ぜひ跳んでもらいたいし、私は跳べると信じていますよ。素晴らしい時間だったと、羽生さん自身が思えるような演技を期待しています!

◇石坂 浩二(いしざか・こうじ)1941年(昭16)6月20日生まれ、東京府東京市(当時)出身の80歳。本名は武藤兵吉。慶大在学中の62年、TBS系「潮騒」で本格デビュー。卒業後に劇団四季に入団した。NHK大河ドラマなどで人気となり、76年の映画「犬神家の一族」で金田一耕助を演じる。作家、司会者、クイズ番組の解答者としても活躍。1メートル77。

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