27日にウィーンで開催されたOPEC総会。サウジアラビアなどが減産に同意しないのではないかと事前から囁かれていましたが予想通りの展開となってしまいました。石油の先物価格は急落しており、明日のニューヨーク市場では70ドルを下回る気配もみえています。また、サウジアラビアのスタンスは短期的視野というより売れるだけ売るという姿勢に見え、市場では60ドルの声も聞こえてきました。
サウジの姿勢はアメリカのシェールとの戦いとも指摘されています。当初、アメリカはロシアとの不仲な関係から石油価格を引き下げることでロシア経済を窮地に追い込む作戦でありました。また、シェール革命によりアメリカは石油輸入に頼らない体制にすることができるため、政治的には中東との同調が必ずしも必要なくなる政治的戦略も見て取れました。
ところが、今の状況はサウジがそのプライスリーダーシップを譲らず、アメリカのシェールすら脅かそうとしているのであります。理由はシェールの算出コストが一般的には80ドルを超えるとされるため、今の価格ではシェールは赤字となるからです。しかも初期に開発されたオイル分が多く良質なシェールならともかく、雨後のタケノコのように参入した開発業者、投資会社、あるいは日本の商社の中にはシェールガスと比べ販売価格が高いオイルが少なく、産出コストも高い案件を抱えているなどの問題が多いとされています。つまり、サウジがこのまま減産をしなければ新規参入したシェールの開発会社は立ち行かなくなる可能性もあり、それを狙って横綱相撲をしようとしているのではないか、とされるのです。
さらにシェールは油田と違い、同じところから出るガス、オイルには限界があり、すぐに枯れてしまうという弱点があります。つまり、その度に開発しなくてはならず、長期安定性に欠けている点でサウジが力任せの勝負に出ているとも言えそうです。
もう一つは石油に対する世界需要の低迷があるのでしょう。急速なグローバル化の反動も含め、アメリカを除き、世界経済は厳しさを増しています。中国は来年以降の成長率を7.0%に引き下げ、背伸びしない成長を遂げようとしています。その上、自動車などの燃費効率向上も含め、石油に対する需要に陰りが見えていることも大いなる影響となります。
この石油価格に対して日本ではどういう影響があるのでしょうか?
笑うのが電力各社を含む石油製品販売会社、苦り切っているのが黒田日銀総裁であります。
石油の輸入価格は為替の円安が響き、相当の痛手となっていたのですが、石油価格が3割以上下がってきていることで為替分をある程度相殺できることになり、このトレンドが続けば輸入価格は一息つけることになります。これは一部製品の価格転嫁に歯止めをかけることができて消費者や需要者にはうれしい話となるはずです。
一方、2%のインフレをどうしても達成したい黒田日銀総裁としては異論の多かったバズーカ第二弾を放ってでもインフレ率という数字の目標に達成するつもりでした。その最大の敵の一つとされたのが石油価格の下落であります。今回のOPECの減産に至らず、という結果は日銀の目標へのハードルが何枚か上がってしまったことになります。
もっとも石油価格が下がったからすぐに石油製品の価格が下がるわけではなく、各社の契約や為替予約によりその影響が出るのは来春以降ではないかと思います。それは黒田総裁の2年のお約束の時期と重なることになり、安倍首相の戦略も矢面に立たされる可能性はあります。
世の中の動きはかつて以上に複雑でエレメントが多く、政策や経営戦略の難しさを改めて教えてくれた気がします。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
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ではまた明日。
サウジの姿勢はアメリカのシェールとの戦いとも指摘されています。当初、アメリカはロシアとの不仲な関係から石油価格を引き下げることでロシア経済を窮地に追い込む作戦でありました。また、シェール革命によりアメリカは石油輸入に頼らない体制にすることができるため、政治的には中東との同調が必ずしも必要なくなる政治的戦略も見て取れました。
ところが、今の状況はサウジがそのプライスリーダーシップを譲らず、アメリカのシェールすら脅かそうとしているのであります。理由はシェールの算出コストが一般的には80ドルを超えるとされるため、今の価格ではシェールは赤字となるからです。しかも初期に開発されたオイル分が多く良質なシェールならともかく、雨後のタケノコのように参入した開発業者、投資会社、あるいは日本の商社の中にはシェールガスと比べ販売価格が高いオイルが少なく、産出コストも高い案件を抱えているなどの問題が多いとされています。つまり、サウジがこのまま減産をしなければ新規参入したシェールの開発会社は立ち行かなくなる可能性もあり、それを狙って横綱相撲をしようとしているのではないか、とされるのです。
さらにシェールは油田と違い、同じところから出るガス、オイルには限界があり、すぐに枯れてしまうという弱点があります。つまり、その度に開発しなくてはならず、長期安定性に欠けている点でサウジが力任せの勝負に出ているとも言えそうです。
もう一つは石油に対する世界需要の低迷があるのでしょう。急速なグローバル化の反動も含め、アメリカを除き、世界経済は厳しさを増しています。中国は来年以降の成長率を7.0%に引き下げ、背伸びしない成長を遂げようとしています。その上、自動車などの燃費効率向上も含め、石油に対する需要に陰りが見えていることも大いなる影響となります。
この石油価格に対して日本ではどういう影響があるのでしょうか?
笑うのが電力各社を含む石油製品販売会社、苦り切っているのが黒田日銀総裁であります。
石油の輸入価格は為替の円安が響き、相当の痛手となっていたのですが、石油価格が3割以上下がってきていることで為替分をある程度相殺できることになり、このトレンドが続けば輸入価格は一息つけることになります。これは一部製品の価格転嫁に歯止めをかけることができて消費者や需要者にはうれしい話となるはずです。
一方、2%のインフレをどうしても達成したい黒田日銀総裁としては異論の多かったバズーカ第二弾を放ってでもインフレ率という数字の目標に達成するつもりでした。その最大の敵の一つとされたのが石油価格の下落であります。今回のOPECの減産に至らず、という結果は日銀の目標へのハードルが何枚か上がってしまったことになります。
もっとも石油価格が下がったからすぐに石油製品の価格が下がるわけではなく、各社の契約や為替予約によりその影響が出るのは来春以降ではないかと思います。それは黒田総裁の2年のお約束の時期と重なることになり、安倍首相の戦略も矢面に立たされる可能性はあります。
世の中の動きはかつて以上に複雑でエレメントが多く、政策や経営戦略の難しさを改めて教えてくれた気がします。
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>2%のインフレをどうしても達成したい黒田日銀総裁としては異論の多かったバズーカ第二弾を放ってでもインフレ率という数字の目標に達成するつもりでした。・・・
すこし分かり辛い説明なので、確認したいのですが? 2%インフレはコストプッシュインフレでも黒田総裁は頭に描いているということなのでしょうか?
つまり、コアコアCPIはこうした石油価格の低迷で物価を押し上げる材料にはならない・・・つまり、インフレは期待できなくなったと言うことですかね。
実際にはエネルギー資源の輸入が拡大して2011年以降、貿易赤字が拡大しました。そのことが電気代の上昇につながったり、電力の余力に影響を与えたのではないでしょうか、そしてそれに加えて消費税の引き上げで一挙に消費が落ち込み,GDPに影響を与えたと思いますが・・・。
別な言い方をすれば、消費税の引き上げ分が帳消しになるくらいの原油価格が下がったとも言えるわけで、すぐには影響はないですが消費者には朗報であり、企業の再生産投資も進展すると思ってますが・・それとこれによって新興国が活性化すれば需要も伸び、世界経済の復活にもつながる可能性もあります。
11月はかなり上方修正になりそうな報道がありますが・・それの追い風と考えてますが・・。
これはブルームバーグの最新の記事ですが・・
『日本株一段高、空運など原油安恩恵業種に買い−円安で輸出も』
>http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFPZMJ6K50Y501.html
これは原油安を好感して、日経平均が上昇しました。それと円安が進んでます。
このように株価が上がり、供給制約の一つである石油価格の下落、それと消費税の延期で企業の再生産が進むと思いますね。つまり、膨らんだマネタリーベースがマネーサプライ(マネーストック)に回る土台が作られるということだと思います。すぐに影響が出るのは為替と株価ですが・・在庫が減ってきているのと鉱工業指数が改善してます。企業収益も良好な企業が多くなっていると思います。円安はインフレと同義語と考えてますので、原油価格の低下の分だけ日本には朗報だと思います。
日銀のインフレターゲットはコアCPIなので、要するにコストプッシュインフレでもなんでもいいから、とにかく2%にするぞ、という意味です。
>別な言い方をすれば、消費税の引き上げ分が帳消しになるくらいの原油価格が下がったとも言えるわけで、
たった3%の消費増税よりも40%以上の円安の方が今はダメージがデカイかと。
>これによって新興国が活性化すれば需要も伸び、世界経済の復活にもつながる可能性もあります。
原油の価格下落の本質は、世界的な需要減少だと思われます。それは穀物価格やベースメタルの下落をも意味し、輸出元である新興国の経済に打撃を与えます。そして投資資金は新興国から引き上げられ、またもや新興国発の金融危機となるでしょう。
それは狭い視野でみた場合の経済での話です。現在の様に、世界中どこの国も通貨安で自国の景気を良くしようと考えてる場合ですと、通貨安合戦に陥り、結局はどちらも無駄に疲弊するばかりです。通貨安政策に勝者は居ません。
先日、ブログ主は上記の様におっしゃられたと思うのですが、本日の記事を観る限り、その見解が変わったということでしょうか?
ともかく、今一番慌ててるのはシェール関連のファンドや投資した企業でしょう。それから太陽光などの再生エネルギー事業にも大打撃があるかと思います。まぁどちらも投機的なバブルなので当事者たちはそれも覚悟の上でしょうが、シェールバブルの崩壊はリーマンの時と同様に一般の庶民にも大きな影響(迷惑)を及ぼすでしょう。
現在の価格下落は、世界の実体経済のエネルギー需要に見合った価格に落ち着いてきているというところではないでしょうか?今まで先物取引のマネーゲームにより実体からかけ離れ過ぎていたと思います。これを機に「世界経済はデフレに進んでいる」と安易に解釈するだけではなく、「世界的にモノが飽和している時代」ということを追認すべきです。それはアメリカも同様かと。アメリカ政府がいう好景気の根拠もNYダウと都心の不動産価格でしかありませんから。そんな見せかけの金融景気では暴徒は静まりません。
そして、この事実からもう一つ解ることは、アメリカにはサウジアラビアへ制裁を加える余力すら残っていないという事です。原油決済通貨をユーロ立てにするだけでイラクやイランに軍事制裁を企てるかつての強いアメリカの姿は今はもうありません。これは事実上の弱体化を表していると思います。
>http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL27HGI_X21C14A1000000/
求人倍率も、失業率も・・今まで供給制約は人材、資材、電力の不足と高騰ですが、原油価格で輸入額が減るでしょう。輸出が伸びてますから12月から来年が見ものですね。円安はこのまま進めばいいです。そのうち止まるでしょう。株価も来年には2万台に入るかもしれません。
私はかなり期待してますが・・、東南アジアの経済動向が気になりますが・・まずは日本国内の内需の回復・・国土強靭化、東北被災地の復興、地方再生、整備新幹線、など国内でやることが沢山あります。非正規雇用、正規雇用とも伸びてます。就業者数も伸びてますので、これから賃金の上昇に向かうことでしょう。
一挙に解決することはないでしょうが・・上昇機運が高まることが消費の伸びにつながります。 私は大いに期待してます。
>個人的には石油価格引き下げのトリガーはアメリカにあるとみてます。それはそれまでのサウジの価格決定権をシェールに湧くアメリカが奪取、ないしは今後相当の影響力を持たせるという事であります。
先日、ブログ主は上記の様におっしゃられたと思うのですが、本日の記事を観る限り、その見解が変わったということでしょうか?
いや、変っていませんよ。もともとの石油価格引き下げの機運を作ったのはアメリカで間違いありません。明らかに石油の主導権を取ろうとしていました。そしてそれはもっと容易だと思っていた可能性がありますが、サウジがそれ以上に反撃してきたとみています。
では、この競争、どこまで続けるかですが、そこそこで止まる気はします。なぜなら勝者なき競争はだれも望まないからであります。それと原油価格の先物の市場は非常に小さいのでちょっとしたヘッジでガラガラと音を立てて値崩れを起こすこともあります。それが2008年の36ドルぐらいまで下げた時であります。
しかし、実態を伴わない価格は必ず、一定のところに戻ることもある程度歴史が証明しています。石油は有限であり、今だ石油が重要な燃料であることは変わらないため、この価格競争も誰かがどこかで根負けするとは思いますが。
さてさてどうなることやら
夢見る親父さん、
ご理解の通りでよろしいのかと思います。日銀は何でもよいから2%、という姿勢に見えます。ただ、最近、世論のボイスがやや逆流しそうな気配があります。マスコミの表層の報道の裏に隠れた動きを少し注意深く見ていきたいと思います。
それはスミマセン。個人的にはこのタイミングでアメリカがけし掛ける理由が見当たらないので、良ければまた今度詳しくお聞かせください。
どちらにせよ、シェールオイルの産出コストは1バレル70ドル程度に対して、中東の原油採掘コストは1バレル40〜50ドルくらいなので、その間の価格帯をしばらくは推移すると思います。消耗戦には違いないですが、自転車操業のシェール産業にとってこのコスト差は致命的です。アメリカがよほど大きな外的要因を作らない限り、負けるのは確実かと。
また世界6位の石油消費国でありこのまま消費量が増えれば将来石油の輸出は減少しますから原油価格は長期では上がって行きます。
ほんとの狙いは何だろう?
http://www.fsight.jp/29387
米・サウジの密談
ロシアがクリミアを併合した直後の今年3月末、オバマ米大統領はサウジアラビアを訪れ、アブドラ国王と会談したが、ロシアの保守系紙プラウダ(4月4日付)は、オバマ大統領はクリミアでのロシアの行動を「懲罰」するため、原油価格を協力して引き下げるよう提案したと報じた。原油価格が1バレル当たり12ドル下落すれば、ロシアの国家歳入は400億ドル減少する。プラウダは「オバマはサウジにロシア経済の破壊を持ちかけた」と伝えた。
この情報は確認されていないが、その後の原油価格の推移からみて、サウジが価格引き下げに応じた形跡はない。サウジの国家予算は1バレル=85ドルを前提にしており、価格引き下げは自らの首を絞めることになる
『新冷戦の構造』というのが本音なのかな・・
いずれにしろもう少し時間がすぎないとわからない
日本の一般庶民(私も含めて)リッター160円台は厳しい・・148円とか138円とかが望ましいけど(笑)
これからのエネルギー資源はこの先10年で大きく変わるような気がします。
その代表が"核融合です。最近の話題でトヨタの燃料電池車が登場しましたが、この核融合には水素が関わってます。そしてリチュウムですがこのリチュームも海水から採集できる技術が日本で開発されました。何よりも下記の動画を見てください。
1>https://www.youtube.com/watch?v=kZWk00efJKk
世界初 日本が核融合発電所を建設 2019年より電力供給開始
2>https://www.youtube.com/watch?v=GNS91FSMqAs
こうした開発に援助しているのがパナソニックやトヨタ、日立だそうですが、例のトヨタの燃料電池車もこんなに早くできたのかと不思議に感じたのですが、水素が意外と安くできるという話も聞いてます。それとメタンハイドレートや地熱があるにもかかわらず・・・未だに化石燃料に依存している状態です。
事態は思っている以上に変化しているのではないですかね・・。この核融合が実際に使われるようになると資源は無尽蔵であり、原発よりはるかに安全なわけです。
それと常温核融合プロジェクトも日本が中心となって進めてますね。
もしいまだ冷戦時代が続いていたなら、シェールオイルも投資銀行のバブル商材などに使われること無く、非在来型資源の画期的な採掘技術として昇華していたかもですね。しかし、平和な時代で肥え太ったブタさん達にはとても大きな真珠だったのでしょう。現在の様に石油の利権争いが横行する時代では新しいエネルギー開発の芽はことごとく摘み取られるか、バブルのネタにされるのが落ちです。私も核融合炉は生きている間に見たいものです。そういう意味では、ロシア中国の対等は近隣の日本にとっては脅威ですが、脱金融支配、新世界創造を願う人たちにとっては、既に望まれていたことなのかも知れません。
【11月13日 AFP】オランダで12日、世界初となる太陽光発電機能を備えた自転車専用道路が試験的に開通した。最終的には車道でも応用することが考えられる画期的なプロジェクトだという。
この自転車専用道路、通称「ソーラロード(SolaRoad)」には、強化ガラスで覆われた太陽光電池パネルを利用した縦2.5メートル、横3.5メートルのコンクリート製モジュールが使われている。事故を避けるため、ガラスの表面には特殊な滑り止め加工が施されているという。
道路の太陽電池で発電された電気は現在、国の電力網に流されているが、将来の計画では、この電力を利用して街路灯を点灯させることも検討されている。
プロジェクトの開発に参加した物理学者、ステン・デウィット(Sten de Wit)氏は、路面から直接充電を行う「非接触型充電」の機能を利用して、電動自転車や電気自動車に電力を供給できる日が来るに違いないと話している
デモ一般庶民にとってガソリンの値段が下がるのはとっても素敵・・春の行楽シーズンにはぜひぜひ130円くらいになっていてほしいものです
さてよくよく考えたら中東の原油が下がって一番お得な国は・・・ひょっとして中国?
サウジが一番売っている国は中国だし・・下がればロシアの原油・ガスもさらに叩けるし・・うれしくて笑いが止まらない中国って感じでしょうか?
でもまさか中国の為に原油価格下げるわけじゃないでしょう・・裏は全く読めませんね(笑)色々な見方があって人によって違うし最初に思ったように時間が経過しないと判断はできないです
いろんな国が一斉にインフレにしようと色々やっていますけど・・・デフレの渦にはまっていきそうな予感が・・