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外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

週末、いつものように日経ビジネスを読んでいた。ぺらぺらとめくるとそこには懐かしい名前の人の特集インタビューがあるではないか。
僕はその3ページにわたる記事を目を皿のようにして読んだ。そして、また読み返した。それから数時間後にもう一度読み返した。
興奮させられた記事だった。僕の血が沸きあがるような、そんな気持ちよい興奮だった。

青木智栄子、ブルーツリーホテルズアンドリゾーツ会長兼CEO

そう、あの青木建設の元会長、青木宏悦のワイフ、智栄子である。青木がホテル事業を売却した97年以降、彼女はブラジルでホテル事業の立ち上げをしているという噂は聞いていた。その後、青木が倒産した後の2004年頃にはブラジルで大々的にホテルマネージメント会社をやっていることも聞いていたし、ブラジルの代表的女性起業家としても君臨していることも聞いていた。が、あらためてこういう風に雑誌で写真つきで見るとずいぶん、立派な会社を作ったのだと改めて感心している。

智栄子さんとは僕が青木宏悦の秘書をしている時に知り合った。その後、秘書時代は青木家のプライベートまでみる事が多かったので智栄子さんとも近いポジションでずっと仕事をしていた。彼女は決して日本人受けしなかった。が、僕はなぜか、智栄子さんには別の魅力を感じていたので同僚たちが言うほどの悪意はまるでなかった。智栄子さんも僕には考えすぎだろうが、いつも気遣いをしてくれた。が、その気遣いの智栄子さんから僕はずいぶん学ばせてもらった。僕は秘書の仕事から離れても数年間、青木家のことは面倒を見ていたので智栄子さんとも長年、やり取りをしていた。

記事は大変興味ある内容で一杯だった。 が、そのなかの記述でブルーツリーのホテルの宿泊客が外出している時、靴磨きをしておき、お客様に気持ちよく靴を履いてもらうという話はまるで僕に昔話を回顧させるようなものだ。僕には二つの靴磨きの話がある。一つは青木宏悦と始めてであったときの靴の話で宏悦さんは僕を木下籐吉郎と呼んだ。1987年ごろの話である。

それと、僕が秘書になって宏悦さんと智栄子さんと一緒にフロリダのオーランドで青木が建てたディズニーワールドのホテルのオープニングに行った時。あの時、朝、部屋にいつものように迎えに行くと宏悦さんが智栄子さんと夫婦喧嘩をしていて二人がものすごい剣幕で出発するとき、宏悦さんが「君は来なくていいからそのかわり洗濯と靴磨きをしておけ。」といったとき。まぁ、靴は磨いておいたが、宏悦さんはのちほど靴が磨かれているのを見て「うむ」という顔をしたのは覚えている。あれを智栄子さんはビジネスで今、実践しているわけだ。

僕はこの記事を単に懐かしむ意味で三度も読んだわけではない。智栄子はホテルの仕事を自分の子供のような熱意をもって接していたのに青木が倒産するという結果で失うのが悔しくてブルーツリーを立ち上げたのである。
僕もまさしく同じ理由だった。宏悦さんが青木最大の海外住宅プロジェクトと称したバンクーバーのベイショア住宅開発の仕事が会社の倒産で中途半端で終わるのがいやだった。だから僕は多額の借金をして会社を買収しプロジェクトの完成へと導いた。僕もそういう意味ではこのプロジェクトが僕の子供であり、成長する姿を見るのが楽しみだった。ちなみに僕の会社の名前もブルーツリーだ。

智栄子さんも僕もある意味同じ土俵にいるのだろう。そして、ブルーツリーの名前を引き継ぎながら青木のブラッドを生かしてきた。宏悦さんもある意味うれしく思ってくれると思う。

こういうとき、僕は本当の人生の満足感と仕事のやりがいを感じる。

ではまた。

コメント一覧 (5)

    • 1. 元社員
    • 2008年11月08日 11:19
    • 5

      元社員です。倒産前に逃げ出しています。

      懐かしく拝見しました。

      自分は支店勤務が長かったので、このような話とは無縁でした。

      氏には言いたい事が山ほどありますね。

      このようなお話をまたお願いします。




    • 2. 元女性社員
    • 2012年05月11日 12:32
    • はじめまして。偶然こちらの記事を拝見しました。ヒロさんは私の勤務していた時期と少しかぶるようです。
      でも、事務職の私は社内の動向に疎かったので、上の方のことは正直よく分かりませんでした。一応、本社には勤務していたんですけどね。

      現在は小さいながらも起業しています。
      今思うと、男性社員が青木宏悦氏の一挙手一投足に右往左往していたのを思い出しました。あの社風じゃあ、倒産して当たり前ですね。(笑)
    • 3. 元男性社員
    • 2012年09月08日 12:58
    • 5 建築作業所(現場)勤務で地方に居ました。
      当時青木社長の訓辞テープが送られてきて中身を聞き終えたらすぐに次の現場にまわすよう指示がありました。海外への展開や国内受注方針など明確で力強いお話であったかと思います。経営者としての使命は果たされていたと感じました。
      入社後の研修で事務職幹部が「最大の重要な会社方針は会社を潰さないこと」とお話しされていました。
      言ったとおり実行することはなんと難しいことでしょうか。
    • 4. ブラジル在住
    • 2013年06月28日 23:49
    • http://www.nikkeyshimbun.com.br/2013/130627-71colonia.html
      フォーブス
      ブラジルで最も影響力のある女性2位だそうです。すごいですね。

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