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外から見る日本、見られる日本人

バンクーバーの日本人社長ヒロが仕事、生活を通じて感じた経済、経営、社会、日本人観などを綴っています。

2019年08月

2019年08月24日10:00
アマゾンのクラウドサービスであるAWSの日本事業の一部で大規模システム障害を起こしたと報じられています。さすが日本というかAWSというか、その日の午後10時までにはおおむね復旧したとあります。実は当地の最大の通信会社、TELUSでもサーバーの大規模システム障害が先週木曜日に発生、各地でメールが送受信できない状態になりました。普及したのは月曜日朝。つまり、3日半かかりました。数日前、TELUSから詫びのメールと共に次回請求から10ドル割引しますと。うーん、あの不便を10ドルでかわされるのか、とおもうと癪ですが、ごねても仕方がないですね。

では今週のつぶやきです。

ジャクソンホール、パウエル議長、利下げ...
世界中の金融関係者が注目したジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演。どこかの国家元首の講演よりはるかに意味があったのは議長が現在の経済をどうとらえているのか、金利をどういう方向に持って行くのか、という点にありました。

結論から言うとアメリカ経済の基調は健全だが、significant risks(重大な恐れ)にさらされていると述べました。7月の利下げから何が変わったかといえば米中通商戦争の激化、ドイツ経済と中国経済の深刻さ、英国のEU離脱の可能性、香港の緊張などを踏まえ、金融市場は大変不安定な状態にあると指摘しました。

このスピーチの中で明白に9月の利下げに言及したわけではありませんが、市場はハト派的ととらえ、すでに9月は100%の利下げ予想の確率を更に後押しする形となっています。

私が着目しているのは物価や労働市場についての言及はしているもののFRBが「世界経済の中でアメリカの取るべき金融政策」というスタンスを前面に打ち出した点が明らかに変調した部分とみています。つまり、中央銀行の任務は物価と労働の調整が第一義であったものの今回のパウエル議長の論調からは「世界の中のドルとその防衛」という位置づけに見えます。もしもこの解釈が正しいなら中央銀行のポジショニングは歴史的転換ということになるかもしれません。

GSOMIA、すれ違う日韓、収拾の目途立たず...
私の情報筋の一つから昨日、連絡あり、韓国の状況は「今回は違う」と。今まではそれでも日本びいきの人は気にせずに普通を装っていたけれど、今は公然と日本の商品を買うのが恐ろしいからネットで買っている人が増えているらしいのです。韓国の学校では改めて「歴史教育」に取り組み、「日本がどれだけ悪いことをしてきたか徹底的に教え込んでいる」というのが韓国人からのボイスです。こういう一般社会からの生情報はニュース記事より真に迫ったものを感じます。

GSOMIAについては今更私がコメントすることでもないのでは省きます。日韓のすれ違いぶりは「かすりもしない」ほど離れてしまったようです。かつてイラク戦争を仕掛けたブッシュ大統領はそれまで低迷していた支持率が世論の圧倒的支持を得て9割にもなったことがあります。文大統領のそれは選挙対策とも言われていますが、彼を糾弾する野党保守党の声が高まれば高まるほど日本へのバッシングを強めることで文大統領自身が抱える国内問題のはけ口を日本に求めているように感じます。これではかつての尖閣の時と同じです。韓国総選挙は2020年4月。それまでは日本を梃に絶対に譲歩しない戦略をとるでしょう。

では日本はどうすべきか、ですが、韓国側には今まで同様、ボールを相手に投げた状態にして「ご提案をお待ちしている」というスタンスを続ける一方、国際世論には日本の立場を明白に説明すべきと思います。欧米の人は「日韓は不仲」という事実は知っていてもなぜ不仲か、具体的には99.9%の人は知りません。「歴史問題だろう」という大局的なくくりではなく、今回の事案がどれだけ理不尽なものか、きちんと知らしめるべきです。日本国政府および外務省のコミュニケーション能力が問われます。

議論百出 横浜市のIR(統合型リゾート)誘致 開発表明...
林文子横浜市市長も苦渋の表明だったのでしょうか?横浜市の将来を考えると「ビジネスになり」「お金が落ちてくる」IR(統合型リゾート)がやっぱり欲しいと思ってしまったようです。

私はこれは全然違うと思っています。林さんもそのブレーンも読み方を間違えたと思います。というより想像力がなさ過ぎです。大失望です。

神奈川県は全国の都道府県の中では平均年齢が45歳で若さでは5番目に入ります。つまり、極めて恵まれた人口構成をもつ都道府県であり、東京へのアクセス、東海道新幹線の経路、数多くの観光資源を含め、日本の都道府県の中ではベストオブベストの一県です。その中心にある政令指定都市では全国1位の人口を誇る横浜市あります。

今回計画されている山下ふ頭はみなとみらいからもう少し海沿いに進んだところでベイブリッジの手前に位置し、港の見える丘公園や中華街を後背地にもつデベロッパーであれば垂涎のウォーターフロント開発用地であります。ぶっちゃけていうならばこの場所は何をやっても成功するわけでなにをもってIRなどという麻薬のような手法を使わねばならないのかさっぱりわかりません。

基本的にはこの土地には職住接近の高品質で最新のハイテクを施した開発を施すべきでしょう。敷地内の自動運転の移動手段やドローン配達など日本の未来系を一足早く実現する実験ビレッジにすると同時に日本政府が後押しする特例的開発案件とすべきであります。みなとみらい線も一駅延長させるだけで都心への直通アクセスは確保できます。

本件をめぐり横浜市では議論百出になっているようですが、林市長、一旦クールダウンして大局を見直した方がいいと思います。私はブレーンが悪い気がします。

後記
当地で弊社とビジネスパートナーで推進するシニア向け施設の開発計画は当局と何度かの折衝を経て当局内部のコンセンサスがとれたので土地の用途変更申請と新しいプランの提出を本日行いました。私にとって用途変更申請は1989年以来になるので規模こそ全然違いますがとてもエキサイトしています。計画通りなら約2年でとてもユニークな施設ができます。こういうドキドキ感は開発業者の冥利に尽きます。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。
この数十年、経済の調整機能は各国中央銀行の金融政策に委ねているところが大きくなっています。報道などでどこどこが利下げをした、利上げをしたと大きく報じられているのは金融政策が経済政策において花形であり、国家の、ひいては世界の経済の温度調整の主たる運営者として絶大なる信頼がおかれているからであります。

ところで経済学ほどエスタブリッシュされていない主要な学問も少ないでしょう。私も経済学部卒ですが、不動で明白なる理論がいまだに存在しないメジャーな学問であります。ノーベル賞の発表に経済学賞もありますが、あれも本来のノーベル賞とは別枠であり「ノーベル経済学賞」とは通常言わないのであります。単にほかのノーベル賞と一緒に授賞式をやるだけであれは「経済学賞」とノーベルの冠はつけないことになっています。

今日、主流を占めている金融政策はマネタリストと称するシカゴ学派が主導するものであり、ケインズ学派を批判して60年代に勃興した学派の一つであります。学派とはいくつかある学問上の流派の一つであり、絶対ではないのでありますが、現代社会では金融政策の運営者たる中央銀行こそが経済のかじ取りの主導的立場にあると考えられています。そして中央銀行の政策に対して一般的には当該国の政府は関与せず、「独立性」を持たせることが多くなっています。

その花形である金融政策運営者は金利の上げ下げを通じて貨幣量を調整することで景気循環をうまく乗りこなせると考えています。よって金利は下げれば景気が回復し、いずれ金利は上がるものだ、と信じられているわけです。ところが日本でその原則論は早々に崩れ、いつまでたっても金利が上がらなくなりました。いや、上げられなくなったといった方がよいのかもしれません。

日本が低金利時代に突入したころはまだバブルの後始末が残る中であり、人々は疲弊する経済の中でようやく光明を見出した状態でありました。そこに金利引き上げ論が出た際に世論は「せっかくの回復も水の泡」「俺の住宅ローンはどうなる」と猛反対の声が出たのであります。金融政策担当者も人の子、結局、循環するべく利上げが達成できなくなったのです。

私は北米で90年代、金利が下がる過程において金利は「もう上がる」という言葉を専門家やバンカーから何度となく聞いていましたが私は「上がりません!」と断言し続けました。当時、私は銀行引受手形による借入資金のロールオーバーをほぼ毎月しており、その運用は数億円から数十億円に達するときもあったため、金利に対して極めて慎重な分析と対応が必要でした。その過程において利上げはないと感じたのは金利上昇圧力に対する抵抗感は日本と同じであり、いずれ金利は低迷し上げられなくなると読み込んだからであります。

それから20年以上経ちましたがこの見方が正しかったことは今、断言できます。

多分ですが、金融政策の前提である循環の論理に不完全性があるのだろうと思います。下げるのは簡単だが、上げることほど難しいものはないというのはまるで重力に逆らうのと同じであります。世の中の金利がどんどん溶けてなくなりやすくなる方向にあるのは至極当然の成り行きだったのであります。

ただ金利が∞(無限大)のプラスサイドであればまだ問題は少なかったのですが、金融政策当事者がマイナス金利という禁断の果実を手にしたことにより私はマネタリストの理論は崩壊しつつあるとみています。つまり、一学派としての限界を露呈したかな、と考えています。もちろん、私は学者でないのでそこから先は踏み込めません。ではケインジアンという財政派が再び勃興してくるのかといえばそれも違うだろうと思います。

経済学において複雑になった現代社会を解明し、学術的な論破と実働性がある論理が不在である今日においてトランプ大統領が金利を引き下げろと吠え、ドイツでは30年物の国債が入札不調の上平均落札利回りがマイナス0.11%というあり得ない水準の利率だったことは専門家の間では驚愕の事実と受け止められています。しかし、これらは今後、当たり前のニュースになると思えば、私はかなりの危機感を持っています。

経済のかじ取りはどうするのか、案外、我々の盲点はそのあたりにあるのかもしれません。金融政策が十分に機能しなくなる日が来るのでしょうか?ぞっとする話であります。

では今日はこのぐらいで。

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2019年08月22日10:00
日韓問題。最近、辟易としているのでニュースもスルーするものが多いのですが、概ね、日本側はたいして盛り上がっているわけではなく、韓国側だけが一部で頑な、かつ、奇妙な不買運動で自分で自分の首を絞めている状態にあります。

一方、輸出管理規制が強化された半導体材料については2例目の許可も出ており、サムスン電子向けであったようです。このあたりは韓国政府も理解しており、「なーんだ、90日もかからないで許可が出るじゃないか」という振り上げたこぶしの持って行き場がない状態になりつつあります。これは私が当初から指摘してきたように大した影響は出ないはずだ、と指摘した通りです。

直近では不買運動、訪日反対運動の煽りからか、大韓航空が6路線を運休にしました。しかし、ただでさえ赤字の同社に於いてこの運休で空いた機材を回すところがないという頭痛の種を抱えています。韓国の航空会社8社は4-6月決算が全社赤字ですが、その理由には最低賃金引上げによる人件費高騰、ウォン安、日本向け不振といったところが並びます。この3つの理由は全て文大統領の生み出した理由であります。

文大統領は典型的な左派的経済政策の一環として最低賃金引き上げを通じて所得と消費を増進させることを掲げていました。それを受け、最低賃金を2018年は16.4%、19年が10.9%引き上げたのです。これだけの引き上げをすればどうなるか、利益が出ている企業なら吸収できますし、最終消費者に転嫁できればそれもアリです。しかし、財閥系と中小企業の集まりといういびつな企業体系で若年層の失業率が高い中、更なる失業率の増大や消費の低迷と逆効果が出やすい環境を作っているわけで「処方箋の使い方の誤り」であったと申し上げます。つまり、文大統領は経済音痴であります。

そこに外交音痴もついてくるのですから文大統領の得手としているところは何ですか、と伺いたくなります。

文大統領の政策を見てると昔、私が勤めていた会社で一時期上司だった方の顔がいつも思い出されるのです。彼はどっからともなく様々な情報を集めてきて情報マンと化してしまい、最終的に自分が何をしたいのか、情報の壁で身動きが取れなくなってしまっているのです。「いやー、どうしたらいいかなぁ。うーん、困った!」とばかりこぼしていたのですが、この手のタイプの人は情報に攪乱させられて推進力がないのです。

韓国の場合、ポピュリズムの典型で最高裁ですら「時の過行くままに...」のようなところですから、圧倒的カリスマ性をもった指導者が出ないところに悲劇があるとも言えるでしょう。国民も軽い性格で「飛び乗り、飛び降り型」ですのでぱっと見て「これ大好き」「もう人生で最高の出会い...」と言っていたのもつかの間、「もう最低、飛び降りたい気分よ」とあっという間に変わるのはほとんど表層の情報だけに左右されやすい国民性という点もあります。

日韓問題ですが、韓国政府はGSOMIA、日本向け輸出審査規制、福島の汚染水放出計画へのいちゃもんなど何でもござれで好き勝手やり放題となっております。世界の見方は当初の喧嘩両成敗から「韓国はおかしい」に変ってきています。

日本はもともとあった直近の問題である徴用工、慰安婦像の在外公館前設置の問題、和解癒し財団の一方的解散などについて河野大臣が韓国側に善処を求めていますが、昨日の会談でも暖簾に腕押しでありました。

個人的には「粛々」で済ませられるのは半導体材料の輸出管理強化だけだと思います。慰安婦問題は世界でも非常にセンシティブな問題だけに気を付けなくてはいけないのですが、徴用工問題や和解癒し財団の一方的解散は声を大にして世界に実情を訴えるべきかと思います。

日本の外交は概して真面目過ぎる取り組み方が時として損をすることにつながりやすいと思います。世界のバトルを見ると激しさは常日頃で別に日韓バトルだけが世界の中で異質感があるわけではありません。

そろそろ日本側も公明正大に声を上げてもよいのではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。

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G7が8月24日からフランスで開催されます。その時、初登場の英国、ボリス ジョンソン氏の発言に注目が集まるでしょう。彼は合意なき離脱もやむを得ず、という立場を貫き通す姿勢を見せており、欧州の首脳とは全く異質、異次元の立場を取ろうとしています。欧州首脳は「今更何を...」と内心思っていますが、ジョンソン首相がそれを意に介さないところにこれから始まる欧州の混沌を見て取っています。

離脱期限は10月31日ですからあと2カ月強しかありません。メイ首相時代に作り上げたであろうシナリオのちゃぶ台返しに「ふざけるな」と思う大陸首脳陣も盤石な体制だとは言えません。その上ジョンソン首相のスタイルはトランプ大統領のそれとそっくりであり、大げさでストレートトークであり、相手に衝撃を与えることを何ら慮ることはないでしょう。

大陸首脳陣がさえないもう一つの理由はドイツの不振であります。4-6月のGDPはマイナス0.1%に沈みましたが、このところ囁かれているのは7-9月GDPもマイナスになるのではないか、という点であります。そのため、財政均衡に対して厳格な同国もこのままでは国内景気が維持できない可能性をシナリオに取り込み始めており、緊急的な財政出動ができる体制を準備しているようだと報じられています。

ドイツが不振なのは生産面、輸出の両面の不振が挙げられていますが、とりもなおさず、中国向け及び英国離脱に揺れるEU内での景気不透明感が響いているものと見られます。ドイツ中央銀行であるドイツ連銀は景気を「停滞」と表現していますが、その中に偶発的ではないとする表記から構造的低迷に陥ったと見られれば、しばし経済成長率は低迷するかもしれません。

次いでイタリアです。非常に分かりにくい連立与党を指揮するコンテ首相が20日、辞意を表明しました。イタリアは急進右派の同盟と左派の五つ星が水と油の状態で連立を組んで18年6月に政権が発足したものの形の上では同盟のサルヴィーニ書記長の強気姿勢に押される形で分裂が顕在化しました。現時点で同盟への支持率は高まっており、首相選になった場合の動向が注目されます。

こう見ると今週末に開催されるG7に於いて日本、アメリカはともかく司法介入疑惑で倫理委員会からクロを付けられ、今秋の総選挙で敗退の可能性が高まるカナダ トルドー首相及び欧州陣営では新加盟のジョンソン、半ばレイムダック化しているメルケル、辞任発表したばかりのコンテ、それを支える議長国のフランス、マクロン各氏では何かを期待する方が間違っているでしょう。

個人的にはフランス、マクロン首相の手腕についてもあまり高く評価していません。支持率は12月の23%からじわじわ切り返し、7月の世論調査で32%まで盛り返していますが、そろそろ戻り一杯だろうと思っています。その手腕を試すのが英国との問題であり、またEU全般の経済問題において機能不全となりつつあるドイツに代わり、どこまでサポートできるかであります。以前もご紹介したようにフランスとイタリアは大戦以降最悪の関係となっていることも念頭に置く必要があります。

ところで、欧州中央銀行は金融緩和を推し進めるバイアスにあり、マイナス金利が当たり前になりつつあります。

マイナス金利は何を意味するか、様々な見方がありますが、一つの尺度に「時間」があります。金利とは「時間を買う」という意味です。とすればマイナス金利は時間が逆行しているともいえるわけでマイナス金利になること自体が時計の針が逆さに動き始めている極めて危険な状態だといえないでしょうか?

英国の離脱とはEU発足後、英国が参加したあの時まで時計を戻す、とまでは言いたくないですが、それほど混とんとしつつあるのです。その底辺には日本では実感しにくい中東などからの難民が押し寄せることに対する欧州各国の国内世論の分裂、爆発とも言えます。イタリアの首相辞任表明はその端的な例だともいえるでしょう。

世の中の目は米中問題に行きがちですが、欧州でもジワリと秋風が吹きこんでいるようです。

では今日はこのぐらいで。

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日本でたまに行く観光施設はよく整備され、展示物とその説明も充実しています。去年だったか、名古屋城に行った際も長蛇の列、でも確かにこれは並ぶ価値があると思わせる立派な改築と展示物だったと思います。日本は水族館、動物園、美術館などとにかく施設のレベルは非常に高く、満足させてくれる度合いは高いと思います。

一方でハード(うつわ)頼みの傾向が無きにしも非ず、という感じもあります。正統派と言うべきか、まじめな取り組みが多く、まずはお客様に失礼がないような箱物を提供します。なるほど、これは大事でありますが、サプライズが少ないのが難点かもしれません。

この数年、上野動物園に2、3回行ったのですが、あの動物園も私が幼少の頃と何一つ変わっておらず、体験型のアトラクションが極めて少ないのです。つまり、遠目から中にいる動物を見るだけで動物に触れるといった双方向性や面白いエンタテイメントがあるわけではないのです。なぜないのだろうか、と誰も感じないのでしょうか?

あるいはパンダ舎の前はひたすら長い行列でしたが、行列する人に飽きさせないパントマイムや大道芸の見世物、あるいはパンダの知識を広める動画を流すとか、工夫がないのが不思議でしょうがないのです。

浅草や御徒町アメ横は何が面白いか、といえば活気と発見なのだろうと思います。豊洲市場はわたし、まだ行っていないのですが、きっときれいなレストラン街が整備されているのだろうと思います。しかし、人々はそんなきれいなところに行くことにドキドキ感を持っていないのです。「へぇ、こんなところで」というサプライズが面白いのでしょう。

週末の昼のテレビで街を探訪する番組がいくつかあるのも結局与えられた施設ではなく、こんなところにこんなものが、という発見なのではないでしょうか?

その点、バンクーバーなんて整備されたところは極めて少ない街です。日本の施設に比べたらしょぼいを通り越しているかもしれません。80-90年代は年間50-60万人も日本から観光客が来たバンクーバーも今や25万人。理由はリピートするほど面白くないから。しかし、地元の人たちはお金を払ってどこかに行くところがなくても面白ことを見つけ出す能力は長けているかもしれません。

バンクーバーから1時間ちょっと行った有名な景勝地。ゴンドラで10分ほど登れば雄大な景色が見られますが、私は歩いて登ります。そのルートはゴンドラの終点まで切り立つようなところを這いあがり、ロープや鎖をつかみよじ登るような「難所」を含め全行程7.5キロ。2時間半で登り、上で心地よい風に吹かれて下りはゴンドラで帰ります。(最近、馬鹿者が早朝、無人のところでこのゴンドラの太いケーブルを切って逃げました。ゴンドラは無残にも地面に落ち今年の復旧は絶たれました!)

もっと簡単なハイキングもあるし、無料野外コンサートもいくつかあります。BBQなんていうのも楽しいですし、何もないから何かを作り出すのが上手だな、と思うのが欧米のスタイルかもしれません。

日経に「『ショボい』水族館、アイデア集客 小さい・古い・お金もない...でも魅力いっぱい」という記事がありました。伊勢シーパラダイスなどではお金がなく設備も古いところは工夫をすることで集客をしていて成功しているという記事です。

日本は箱ものに金をかけ過ぎ。逆にこれだけかけたから客は来るという奇妙な自信が運営側にあるのですが、それは運営者の驕りというもの。客は非日常を体験できるのか、サプライズがあるのか、ストレスなく、楽しかったね、と家族に笑顔を提供できるのか、この工夫はもっとできると思います。

池袋サンシャインのショッピングモールの中に吹き抜けの噴水エリアがあり、週末には無料のイベントが時折開かれています。それ以外にも建物内の各所でミニコンサートやイベントが随時開催され、このイベント目的でわざわざ駅から10数分もかけてサンシャインにくるお客さんも多いようです。

一方で駅直結のデパートは何の工夫もない、商品を売るだけ。これじゃ、ダメだって何年もこのブログで指摘しているのですが、一向に経営者は気がつきません。(いや、おひとりだけいました。日本最大級のデパートの元社長、O氏が私のブログに至極同意いただき、個人的にやり取りしていたこともありました。その後、彼はいろいろ言われ、失脚してしまいましたが見方を変えればアイディアマンだったようです。)

日本がもっと面白くなるように皆さんで盛り上げていけたらいいですね。

では今日はこのぐらいで。

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覚えている方も多いでしょう。尖閣問題を端に日中関係が悪化した際、中国はレアアースの事実上の輸出規制をしました。その際、自動車業界に多大な影響が出ると大騒ぎしたのが2010年でした。それから2年後の産経新聞の一説にこうあります。

「安価な中国産レアアースに頼り切っていた日本の産業界だったが、2年前のチャイナリスクへの反省から足腰を鍛えた。対中依存度を引き下げようと日本企業は、レアアースを使わない製品やレアアースのリサイクル技術を続々と開発した。この結果、中国の対日レアアース輸出量は11年に前年比34%減となり、今年も大幅な減少傾向にある。日本企業も『やればできる』ことを証明した」。

1970年代、二度の石油ショックで大打撃を受けた日本経済。その時の反省は原油の供給元を複数抱える、ということでした。その石油ショック後中東依存比率を一時は68%程度まで引き下げたこともあります。一方、影響をもろに受けた電力会社はその発電方法を様々な種類にすることで何かあった時にすぐに対応できるようにしました。英語ではfail-safeと言います。適当な日本語が思いつかないのですが、「失敗した時の対応」とでも訳すのでしょうか?

人間、追い込まれたらやり返すという方法もありますが、対策を立てるという賢明な手段を選ぶようになってきました。政府レベルでは対抗措置になる場合も多いのですが、企業ベースになると国際化が進む中で敵を作らないようにしたいというのが本音です。そのためには相手を刺激せず、問題解決をするというのは今ではごく当たり前になってきたと言えるでしょう。

日本が半導体材料を韓国に対して包括処理から通常手続きに引き戻したことに端を発した韓国側の常軌を逸した行動にはただただびっくりしていますが、それらで本当に影響を受けるであろう韓国企業の声はほとんど聞こえてきていないことにお気づきでしょうか?

つまり、大騒ぎしているのは周りだけで肝心な韓国企業はその解決策を必死に探すという対策に出たわけです。日経が報じたようにサムソンはベルギーの会社から調達手段を見つけたようです。その会社は日本のJSR(旧日本合成ゴム)とベルギーの研究所が設立した合弁会社ではないか、と見られています。なるほど、そういう迂回手段は政府のコントロールから外れます。それ以外にも品質は劣るが中国企業からも調達か、と報じるところもあるし、経産省は「通常手続きを経て輸出承認が出たケースもある」と発表しました。時間と共にいろいろな「対策、対応」が出てきたわけです。

圧倒的シェアを持つ企業の弱みとはそれ以上シェアを増やせないことになります。こう考える人は少ないと思いますが、チャレンジとか成長、目標という点に於いてシェアが100%とかそれに近い企業ほどその分野での伸びしろが少ないともいえるのです。これは逆に言えば今回のような政治的問題が起きると業界地図を書き換えることすら起こりうると考えています。普通は「シェア100%だから」とか「圧倒的な品質だから負けない」という強気姿勢が継続する前提があると考えますが、ビジネスをする者からすればそんなものは長く続かないし、守るのは大変と考えています。

冒頭のレアアースの件は今でも中国に頼っているものの着実にFail Safeの準備は進んでいます。今でももちろん進んでいます。一方の中国は日本が韓国に取ったような「レアアースの輸出管理の厳格化」を再び講じる可能性があるとしてされています。中国は日韓問題の行方を見守っているものと思われますが、日本がそれに成功したと確信を持てた時、中国をはじめ他国は日本のやり方を見習う可能性は大いにあるかもしれません。ただ、その副作用というリスクには気をつけるべきかと思います。

タイトルにある「不仲は不利なものを奮い立たせる」というのは企業だけではありません。北朝鮮を奮い立たせたことも当てはまるでしょう。規制に次ぐ規制をして苦しくてたまらないからロケットを打ち上げ、注目を浴び、トランプ大統領と3度も会うという「功績」を挙げたのはまさに金正恩委員長を奮い立たせたから、ともいえるでしょう。

人間、追い込まれると120%の力を発揮すると言います。我々は今、追い込まれていないのか、もっと力を発揮できないか、自分自身を見直す機会でもありそうです。

では今日はこのぐらいで。

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2019年08月18日10:00
バンクーバーで28年もビジネスをし続けていれば「ビジネスの体感温度」は案外感じやすいものです。北米は景気がいいのか、悪いのか、このあたりをカナダを中心に私の感じる肌温度で考えてみたいと思います。

マリーナの世界から
私の会社で所有、管理するマリーナ。今年の夏はボートが動かない、これが一つ目の体感温度です。この業界、ボートオーナーが数週間から月単位で外洋に出ることもあり、空いたボートの停泊場所を短期のビジターに「また貸し」し、その収益をそこを借りているボートオーナーとシェアする仕組みになっています。

ところが今年は長期どころか短期で出かけるボートオーナーすら少なく、マリーナに行けばボートオーナーたちが動かないボートを囲むようにたむろして酒を飲んでいます。完全な社交場であります。最低でも数千万円、中には数億円するボートのそれらのオーナーが気にしているのは案外、船を動かす燃料費だったりするのです。当地の燃料費は北米で最も高く、燃料をバク食いするクルーザーのオーナーにとって燃料費高騰は航海に出るには気のりしないということでしょうか?高級クルーザーと燃料費の関係は全く論理性がないのですが、高額所得者ほどこんなことが気になる傾向はあり、心理的影響は否定できないかもしれません。

不動産の世界から
不動産が高いのもバンクーバーの象徴でありました。が、この1-2年はスポットライトも当たらず、あきらめムードすらあります。ビジネス中心のトロントの不動産市況は明らかに戻り歩調で薄明りすら差していますが、バンクーバーの市場は中国本土からのマネーに翻弄されたこともあり、市場の落ち着きどころを未だに探している状況であります。

不動産開発は計画してから建物完成まで今や5年以上かかる時代です。今進む数多くの建築中の物件は最低でも2年前、つまりまだバンクーバーの不動産景気が良かったころに開発計画が進んだものであります。空高くそびえつつある建築中の物件が果たして予定通りの収益を上げるのか、開発業者の心中は如何に、というところかと思います。最大のポイントは建物完成3年前に締結された売買契約で個人の経済的事情がその間に変わらず、引き渡し時に約束通り履行されるか、ここにかかっているようです。

商業の世界から
目抜き通りだったロブソン通りはいまや、空き店舗だらけの通りと化したかもしれません。通りに面した不動産所有者たちはビジネスが成り立たないような賃料を当たり前のようにテナントに課し、それでも入居したテナントは6カ月、1年ぐらいでギブアップ、一部の物件では空きスペースである期間の方がはるかに長くなってきました。その中でもロブソン通りのほぼ中心のある建物は路面店スペース6軒のうち5軒が空きになっています。そこを通るたびに思うことは活気のない通り、ということになります。これでは逆効果で「ロブソン通りってつまらないね」というイメージにもつながってしまうのです。こういうのは消費の心理的をすっかり冷やしてしまいかねません。

レンタカーの世界から
レンタカーの事業は好調なのですが、案外、不思議なのが提携ホテルからの問い合わせ。「お客様がいるのですが、クルマは何が空いていますか?」というコンシェルジュから問い合わせに〇〇としろさんかくしろさんかくという具合に答えると電話の向こうにいる客から「一番安いやつを」と電話越しに聞こえています。私の心中は「なになに、一泊5万円も払って1日5000円のクルマですか?」であります。冒頭のボートオーナーの燃料費の話と同じで金持ちはどういう経済感覚のバランスを持っているのか悩みます。昨年までチラチラ見られたおカネに糸目はつけず、というスタイルは明らかに少なくなっています。

結論は?
7月のアメリカの小売売上高統計は5カ月連続の上昇で7月は事前予想の0.3%増をはるかに上回る0.7%増となっています。アメリカの消費はさほど悪くありません。カナダも全く悪くなく、カナダ中央銀行は今のところ、金利引き下げをする姿勢は見せていません。何が悪いかといえばマインドが悪く、企業が投資を手控えていることが大きく影響しているとみています。

とすれば個人の懐はさほど痛んでいない、だけど、みんなが「R」(リセッションのことをよくRと表現します)というのでちょっと財布のひもを引き締めようかな、という感じに見えます。人々の表情に悲壮感などは全くなく、今日も観光客で街は人で溢れています。

こんなバンクーバーの街を見ていると経済は心理的要因が本当に大きいのかなぁと思ってしまいます。

では今日はこのぐらいで。

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また明日お会いしましょう。
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