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【コラム】戸塚啓

唯一OAを招集していない日本

[ 2024年7月27日 08:00 ]

<日本・パラグアイ>試合後、ハイタッチをする藤田(中央)ら=撮影・小海途 良幹
Photo By スポニチ

チーム編成の勝利だった。

パリ五輪に出場しているU-23日本代表が、白星発進を飾った。現地時間7月24日に行なわれたグループステージ開幕戦で、南米予選1位のパラグアイを5対0で下したのだ。五輪での1試合5得点は、16年のナイジェリア戦(4対5)、21年のフランス戦(4対0)を上回って過去最多となる。

大勝の直接的な要因は、パラグアイが退場者を出したことにある。日本が1対0とリードする25分、相手MFがレッドカードを受けた。11対10になったことで木村誠二と高井幸大の両CB、それにアンカーの藤田譲瑠チマへ相手のプレスが届かなくなり、ビルドアップがスムーズになった。パス回しのテンポが上がらない時間帯もあったが、後半に4点を追加したのだった。

その裏づけとなったのがスムーズな連携だ。1点目、2点目、3点目は個で局面を剥がしつつ、複数の選手が連動して相手の守備陣を揺さぶっている。

この試合では平河悠が前半途中で負傷退場し、佐藤恵允が急きょ出場した。佐藤は得意とする左サイドではなく右サイドからプレーすることになったが、試合の流れにスムーズに入ることができていた。73分からピッチに立った川﨑颯大、荒木遼太郎、藤尾翔太も、すでに3点差がついていることもあり、いつもどおりのプレーを見せている。

今大会の日本は、オーバーエイジ(OA)なしで臨んでいる。招集には動いたが、選手が所属するクラブとの調整がつかなかった。

所属クラブが招集に難色を示すということは、プレシーズンのキャンプに参加してほしいから、ケガのリスクを抑えたいから、といった理由からだ。つまりはクラブ側が戦力として計算しているからだ。言い換えれば選手たちが価値を高めているということで、それ自体は歓迎すべきことだが、日本を除く15か国はOAを加えている。

開催国フランスはFWアレクサンドレ・ラカゼット、ギニアはMFナビ・ケイタ、アルゼンチンはDFニコラス・オタメンディとFWフリアン・アルバレス、モロッコはDFアクラフ・ハキミといったように、実績十分の選手を招集した国もある。

ビッグクラブに所属しているU-23世代やOAもいる。U-23世代の松木玖生が「移籍の可能性がある」として招集を見送られたが、フランスのミカエル・オリーズは今夏にクリスタル・パレスからバイエルン・ミュンヘンへ移籍している。移籍1年目のシーズンだが、彼は五輪に出場できている。

クラブとの交渉が難しいのは理解している。しかし、多くの国が国外でプレーするOAの招集にこぎ着けている。その事実に着目すると、交渉のプロセスに改善の余地があると感じる。

いずれにせよ、U-23世代のみで戦う日本は、チーム結成から培ってきたコンビネーションを発揮している。途中出場の選手もフィット感が高い。OAがもたらす経験値は得られなかったが、チームとして蓄積してきたものが大きな強みとなっている印象だ。攻守ともに連動性が光ったパラグアイ戦は、はからずもチーム編成が勝因となった。

16か国で唯一OAを招集していない日本が、どのような結果を残すのか。大岩剛監督と選手たちの歩みは、次回以降のチーム作りにも関わってくる。(戸塚啓=スポーツライター)

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